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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第3節 いい男と魔法少女は、黒ノ国主と白の魔法使いにクラスチェンジしました。
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30出立前夜

 昨夜の酒場騒動から明けて、次の朝。


 テヲとギビルは頭を抱えていた。二日酔いである。

 昨晩は大きなトラブルもなく(誰かが何とかしてくれた)どんちゃんさわぎ。

 エージアの王子ギビル。

 ジョシアの王ラフム・チェフとニーナ・アイギス。

 アナトリアのしがない小国出身のアヌ・アプスとその娘トトリ。

 そして、娘の婿養子、次期王候補のテヲ。


 アヌはひとしきり謝罪しっぱなしだったが、親睦を深める目的なのか、なんだかんだでもみくちゃにされていた。



 テヲは昨晩の事は覚えておらず、二日酔いの症状に苦しんでいた。

 ただ、ベットにはおかしな感覚がある。何かいるのだ。

 猫か何かかなと思ったが、大きい。




 気持ちが悪いのを推して見てみれば、ギビルがいた。




 子供たちは、早々に寝入ってしまったので、ほかって置くわけにいかないので、保護者達は早々に引いたが、荒くれものたちと飲み歩いた。そしてどうやって帰ってきたのか不明。


 そして、添い寝なんかしてほしくない人物が隣にいる。

 いくらキングサイズのベットでも、男二人で寝たくない。


「おい。起きろ。」

 テヲはギビルを起こしにかかるが、彼も二日酔いで気持ち悪い。


「うーん。だめ。ねかせて。」

 事後なのか?


「とっとと起きろよ。男同士だぞ。」


「うっ。気持ち悪い。」


「おい!!ここで吐くな!!」


 テヲは仕方なく、痛い頭をかかえギビルを布団から抱え出した。


「おい。側溝まで我慢しろよ。」

 部屋の外には下水を流すための溝がある。


「ぐえー。」

 ギビルは胃の中のものを吐いた。

「ぐえー。」

 テヲももらいゲロをした。


「すこしすっきりした。水、水をくれ。」

 ギビルとテヲが一通り吐き終わったため、口の中が酸っぱい。


 すっと差し出される、水の入ったカップ。

 背後から、サーラがあらわれた。


「テヲ様、お目覚めですね。お水ならこちらです。」


 テヲはカップを取り水を飲み干す。


「俺のは・・・・・・」


「あら、お兄様は自業自得です。そこで反省なさってください。」


 膨れ顔でぷいっと顔をそむける。


「兄に対してとる態度か?」


「テヲ様とお兄様が泥酔してテヲ様にご迷惑をお掛けしている、と、知らせを聞いたときは、何たる事とは思いましたが、ご無事でなによりです。しかし行く先も決めず不祥事があった時はどうするおつもりでしたの?」

 ギビルは、二日酔いのため、怒ることも出来ず受け入れるしかなかった。


「テヲ様もご災難に巻き込んでしまって申し訳ありません。」


「いや。俺は気にしてないよ。それに男同士の付き合いだ。責任は持つ。」


「まあ。頼もしいですわ。わたくしもお付き合いしたいものです。」

 サーラは顔を赤らめ、テヲをじっと見つめる。

 何かしら意味が違う事を考えていた。男同士があの意味なら同じかもしれないが。


 パタパタパタとわらじのようなサンダルの音が廊下に響く。

「テヲーーーーー大丈夫ーーーーー?」

 セセリがテヲにダイブする。目的は目の前で見つめる女を引き離すため。



「痛ててて、頭がガンガンずる。」


「あっ。ごめんなさい。でもこうすれば痛くなるの。」

 セセリがテヲの顔を胸に圧迫して抱き、頭をなでる。


「セセリ様。正室は大きく構えてもらって、その様な事はわたくしの様な者にお任せください。」

 サーラもテヲ背中から胸を押し当て、テヲの腹部から下の手を回し入れ抱き寄せる。


「いいえ。コレこそ正妻の仕事です。」

「いえいえ。その様なお手を煩わせることではありません。」


「テヲは私が。」

「いえ私が。」


 セセリとサーラがテヲを我が物にせんと、引き寄せようとしている。


「うぷっ。いや。まて、気持ち悪い。」

 テヲを再び吐き気が襲う。二人を引き離し側溝に急ぐ。


「だばー。」

「あー、もう一眠りする。しばらく構うな。」

 テヲは、布団の中にもどる。


「では、わたくしは待機しております。お兄様は勝手に帰ってください。」

 サーラは兄をほっといてテヲが一番になっていた。


「いいえここは私に任せて。ギビル様を静養するため連れ帰って。」



 セセリが強くサーラに言い、さすがに兄を放置する事もできず、サーラは了承せざるを得ない。


「セセリ様、わたくしも兄を看病する責務もありますので、ひとまず戻ります。ではごきげんよう。」


「今晩の出立の宴には、参ります。兄もそのころには復活させます。」

 サーラは、従者に兄を支えてもらい、この場を立ち去った。

 下戸は日本人などの東アジア人特有のものなので、たぶん昼前には復活するだろう。




 案の定、二日酔いから復活した。テヲは庭にでて体をのばしていると、門のほうから声が聞こえる。


 昼過ぎから、二人の客がテヲを訪れた。

 アヌとその娘トトリだ。


 二人は、昨晩のお詫びにやってきたのだ。


「すみません。テヲ様にお目通り願えませんでしょうか?」

 アヌは低姿勢に御所の見張りに話しかける。


「何者かわからん者を通すわけにはいかない。」

「昨晩迷惑をお掛けしてしまってお詫びがしとうございます。」

「だめだ。」

「そこを何とかお願いします。」


 問答が続く。



 テヲが門を開け、人物を確認した。


「アヌ殿。昨晩はありがとう。楽しい食事でした。」


「コレは、テヲ様、昨晩は失礼しました。わが娘も反省しております。どうかご容赦を。」

 アヌの後ろにトトリが隠れ、覗き見ている。


「何かありましたか?どうも昨日の記憶がなくて、楽しかった事しか覚えてなくて。」

 テヲは、たしかに曖昧な記憶だったが、酔っ払う前は覚えている。


「あのあと、娘にはよく言い聞かせましたので、二度とあのような事はさせません。」


「いえ。子供は遊ぶものですし、失敗して覚えていくのですから。ほら、怒ってないよ。隠れてないで、顔を見せてもらえないかな。」


 アヌの背中に隠れたトトリは、じっとテヲの顔を見ていたかと思えば、おずおずと父の隣にならんだ。

「トトリ、わるいことしちゃった。おにいちゃん。おこってない?」


「うん。怒ってないよ。」


「ほんと?」


「本当。」


「トトリ、おにいちゃんになでられたところ、すぐにいたくなくなったの。ふしぎ。」


「お兄ちゃんは魔法が使えるんだよ。」


「まほう?まほうつかいなの?」


「魔法使いじゃないけど、魔法が使える人から教わったんだ。」


「まほうがつかえるひとって、いるの?そのひとは、だれなの?」


「今は離れているけど、魔法使いはいるよ。一緒に旅をしたんだ。」


「どんなたびをしたの?」


「土から鉄を作ったり、金の国で泥棒退治したり、鰐退治したりしたよ。」


「へー。つちからてつができるの?きんってなに?わにはどんななのつよいの?」


「うーん。いろいろお話があるから、まず中に入ろうか?」


「うん。おはなしいっぱいきかせてね。」

「テヲ様、わたくし共がテヲ様にお招きいただけるのですか?」

 アヌは、娘とテヲがたわいのない話をしているかと思えば、唐突にご招待を受けさすがに困惑である。


「遠慮なさらずとも。大事なお客様です。私もその後が気になっていたので、良いタイミングでした。」


「そう言って貰えると、私も気が楽になります。」

 テヲは、アヌとトトリを御所に招きいれ、通りすがりで看病のため居残っていたセセリにお茶菓子を用意するよう頼んだ。





 応接室にテヲとアヌ、トトリが話しに花を咲かせていた。

 そこに、セセリがお茶とお茶菓子を持って入ってくる。


「夫を立てるのは妻の仕事ですもの。」

 セセリは、お客様に少しでも正妻の余裕を見せるべく張り切っていた。


「急でしたので、手の込んだものは用意出来ませんが、よいコーラの実がありましたので、御賞味ください。」


 西アフリカ原産のコーラの木から取れる実で、この実からコーラの成分が抽出されている。


「お后様お気になさらず、私には有り余る好意ゆえ。」


「お后とは、まだ結婚していませんので、少し早いですわ。」

 言葉とは裏腹にセセリはうれしそうだ。


 そんなこんなで、夫婦と親子の会話が続く。


「そういえば、今晩、この御所で宴会をするのだが、アヌ殿もいかがか?」


「そんな、私がその様な場には不釣合いでございます。」


「迷惑をかけたあのジョシアの方にもお詫びがしたい。昨日私と共にした縁を大事にしたい。来てくれないか?」


「はあ。私でよいのですか?」


「無論、トトリも一緒で。」


 テヲは今晩の出立前夜の宴へ、アヌ親子を招待した。




 夜、続々と来客がテヲの御所にやってきた。


 アヌ親子、ギブルとサーラ、ラフムとニーナ。荷の積み込みや船の各関係者。



「くれぐれも飲みすぎには注意してくださいね。」

 セセリは昨日の今日なのでテヲに釘を刺す。


「ああ、明日船に乗るんだ。どっちの酔いで気持ち悪いのかって事にならないようにするよ。」



 テヲの周りに人が集まってくる。


「てをさま。おまねきいただきありがたくぞんじます。」

 トトリがつたなく挨拶すると。

「おにいちゃん。おはなしのつづき~。こんばんはおはなしして、いっしょにねていい?」

 さっきまでのカシコマッタ挨拶なんか無視して、腕をつかんで離さず迫るのだった。


 トトリの後ろから、のびる腕があった。

 はるか後方で、国のお偉い様と雑談していたサーラが、腕がヨガの境地でのびるのかというぐらいで、トトリの肩をつかんだ。


「お嬢さん。それは良くないわ。それならお姉さんが代わりにするから。お話しはお兄様が代わりにするから。」


 その後ろから、やはりのびる腕があった。


「サーラさん。こんばんは。添い寝は妻の務めですので、サーラさんは、その子に子守歌がわりにお話しして御上げなさい。」

 セセリがやはり、人間が伸ばせるものなのか疑わしいレベルで、サーラの肩をつかんだ。


「いいえ、奥方様もお疲れですし、テヲ様は明日御出立なさるので少しでも休まれる必要があります。その点私はテヲ様を癒してさし上げる覚悟がございます。」

 サーラは、今宵の相手は私だと、主張するのだ。


「いいえ、サーラさん。私はテヲにとっての港ですもの、一番休まるのは私です。」


 バチバチと女同士で火花が散る。


「トトリは、おにいちゃんがすき。おねえちゃんたちもすき。だからけんかしないでいっしょにねよ。」

 トリリは、穢れのない言葉を投げかける。


「わたしも一緒に寝る~。男の人は一緒に寝るのが楽しい事なんだよ。」

 ニーナも話に割り込む。

「おねえちゃんもおにいちゃんがすき?」


「うーん。これから好きになるのかな?」

 ニーナは好きの概念が子供から思春期に変わる前なので、まだ色恋が分らないでいた。


「また小娘が!!」

「見た目がいいだけに危ない。」

 セセリとサーラが、この金髪娘を等しく危険視した。トトリの比ではない。



「今晩は、仕方ありません。その小さい子に譲りましょう。」

「そうですね。少なくとも間違いは起こらないでしょう。」

 セセリとサーラは、休戦ラインを引いた。

「えー。間違いってなに?子供ができるんでしょ?」

 ニーナはよく分っていない。


「ええい!!あんたもだめよ!!」

「えーーーーーー。」

 セセリとサーラがニーナを説得するため、引きずっていった。



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