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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
1章 地上の楽園の太陽
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4話 楽園の記憶

「お兄ちゃんってたまに変なこと言うの。」

シシュチルは言った。


「どこの言葉かとにかく意味が分からないの。」

「棒を二本もって変な仮面をつけて、ポーズをとったり、とにかく変。」


「ソンナ風に見えないけど、見た目は結構イけてるのに。」


「本人は、普通の人間って言ってるけど、変なモノを作ったり、変な事言ったり、だいたいがよく解らない事で、変人というより変態。」


「男の子はいつまでも子供だから、バカみたいなことして、失敗するのよ。」


 女性3人が、寮のテラスでお茶をしながら話していた。


「ヤゴロヲ君大丈夫かしら。それにしても見事にはまったわね。

 カウィールは微笑みながら言った。



 さかのぼること数時間、今日は姫との約束の日だった。でもすっぽかす気マンマンで今朝の朝食をとっていた。


「お兄ちゃんパン遠いでしょ?取ってあげるから手を出して。」

「うん。ありがと・・・」

「ガチャ」手錠が嵌められた。

「なん・・・だと。」


 うしろからオシホに取り押さえられ、妹たちも加勢に加わりあっという間に拘束された。

「事前に手を打っておいてよかったですわ。」そこに姫が現れた。

「打ち合わせどおり捕まえたよ。姫様。」

「それにしてもあっさり引っかかったわね。」

「謀ったなオシホ。おい、やめろ、うわなにをするやめr」

「わりい。姉ちゃんには逆らえなくて。それにしてもお前の妹は姉ちゃんの話にノリノリだったぞ。」

「わたくしはあなたの姉ではありません。決して強制でもなくってよ。」


「さっさと車に運びなさい、オシホも付いてくるのよ。」

 黒服に囲まれつつ、ハイエースされた。




 ここは、よくある尋問室。ってどこだよここ。腕を後ろに回され椅子に座らされている。目の前には姫とオシホ、黒服が数人僕を囲んでいた。

「素直に従ってくれれば手荒な事はしなくて済んだのに、約束の時間に来なかったあなたが悪いんですよ。」

「いや、時間は過ぎてないですよね。拉致って来ないこと前提ですよね。」

「人聞きの悪い事言わないで下さる?あなたのお話を伺うには、この方法が合理的でしたので。」

 ひどい言い分であった。

「皆様席をお外し願います。オシホ、あなたもです。二人きりで話をします。」


 皆、渋っていたが、姫のアイコンタクトにより部屋の外へ出て行った。


「事前にあなたの事は調べさせていただきました。」

「あなた、かの発明少年、ヤゴロヲ君。姓は変えていますが、名を変えなかったのは失敗ですわね。」

「さて、なぜ身を偽ってこの辺境までやってきたのでしょう?それ以上にあなたはなぜ、人の及ばない事を成し遂げられるのでしょう?」


「・・・・・・・」


「押し黙っているのもいいでしょう。しかしあなたの大事な人がどうなってもよいと言うなら・・・」

「まて、卑怯だぞ。だいたいシシュチルは関係ない。やるなら僕だけにしろ!!」

「拷問してもあなたが口を割らなければ、仕方なく最終的にやむ終えず望まない方法を執らざる終えないという可能性です。」


「・・・・・・」(狂ってやがる!でもどうせ、未来から来たといっても信じないだろうから、ある程度物語を作らなければ。)


「確かに僕は、おっしゃる通り、発明少年のヤゴロヲです。」

「よろしい。では尋問します。まず、なぜ偽名を用いるのですか?」


「両親が借金を作って、蒸発してしまい、今までのような生活が出来なくなったから。借金を帳消しするために発明の権利も手放さなければならなかった。」

「・・・そう、答えにくい事を答えてくれてありがとう。正直に言っているようね。では次の質問。あなたの知識はどこからくるのかしら。」

「別に、普通に本を読んで、たまにひらめいてどこからとも無く発明のアイデアが出てくるんです。(本当は未来の知識だけど)」

「それだけかしら。もっと何か具体的な何かがあるのではなくて?」

「いえ、本当に寝ているときに現実感のある夢を見るんです。そんな感覚ありませんか?」

「そんなオカルト信じると思って?」

「でもそうなんです。過去の記憶、未来の記憶が頭の中に浮かび上がってくるんです。

「まるで知恵の神ね。そんな加護を持っているのかしら?」


 しばらく沈黙が流れる。どうしたら真実を引き出せるか、荒唐無稽と思える真実を伝える伝えないかを、どう処置していくか。双方考えあぐんでいた。





「仮にその知恵の神が宿るとして、その知識はどこから来るか、仮説を立てましょう。先ほど未来もしくは過去の記憶と言いました。それは前世もしくは来世の記憶では無いでしょうか?」


 仮説の割りに鋭く切り込んできた。本当は知っているんじゃないか?


「生まれ代わりがあるのなら前世の記憶は過去からの伝播ですが、未来の記憶は未来からやってくるとなると、記憶は光の速度を超えピンポイントに脳の記憶形式で送られてくる事になります。」


 通常は時間は一方通行。しかしソレを逆行する理論はある。光を超える速度のタキオン粒子(値が虚数)、反物質(ファイマン図によれば粒子が時間を逆行して発生する。)


 理論上は想定されているが、実現可能なレベルではない。

 

 じゃあ僕が時間を逆行したということは、タキオン粒子が1万年の歳月を経て飛んできたか、この時代で発生した反物質が対消滅しないで1万年以上飛んでいるか、1万年の時間差があるワームホール通ってかつ、記憶を人間の脳で判別可能な形式のパルスを保っていたということになる。


 ありえん。


「その顔はなにか、気がついたのね!?どんなこと?」

「ありえないんですけど、光より早い粒子か反物質が、何らかの原因で消滅しないで、脳の記憶に送られている。」


「そんな事はありえないけど、あなたどうして最新理論を知っているの?本当にありえない。もしかして真実なの?」

「それは僕にもわかりません。ただ記憶があるだけです。」


「・・・・・・」


「もうぶちゃけましょう。どんなことを聞いても怒らないし、どんな妄想でも信じる。約束するわ。」

 すでにヤケになっていた。というより下手に理屈が通ってしまう。ほぼ確立がゼロなのだが。

 

「どんな荒唐無稽なことでも信じます?」

「信じるわ、約束ですもの。破ったら私に出来る事なら何でもするわ。」

 うーん、よくある言い分だが、いいの?エロい事しちゃうよ?後日国家から消されそうだが。


「じゃあ、本当に怒りませんね? 僕がどこから生まれ変わったのか教えましょう。」

「生まれ変わった?じゃあ過去の事なの?」

「いいえ、おそらく1万年後の未来。日本という海を渡った島国です。水没した北方領土の東にあるちっぽけな島です。」


 正直言ったがどうだろう?姫の顔をうががった。

 姫は(うわ~、本当に言うとは思わなかったみたいな顔していた。)


「そ、そう、ふーん。それで、どんな国なの?」

「春があり、夏があり、秋があり、冬がある。水が豊富にあり生水が飲める。作物がある程度とれ、海の魚を生で食べる文化がある。」

「生で水をのむ?、魚を生で食べるなんてありえないわ。やっぱり嘘ね。」

「信じるっていったじゃないですか!!乳もむぞ!!」




「えっ・・・嫌。」


 姫は嫌な顔してこちらをにらんだ。


「あっ、聞いてあげるからつづけて・・・」

 約束を守るって言ったじゃないか。

 姫は小学生並みにちっちゃい割りに、おっぱいでかくて揉み甲斐がありそう。

 くそう、やっぱり乳揉んでやる。


「生で食べる条件があって、冷凍設備が整っていて新鮮に保存できる。殺菌作用のある薬味のワサビやしょうがをつけて、しょうゆと一緒に食べる。」

「冷凍機はいくらでもあるけど、生では食べないわ。しょうがは判るけどワサビは?しょうゆって何?」

「ワサビは日本原産で湧き水のあるところで育つ。つんとした風味の根っこをおろして食べる。しょうゆはひしおの一種で大豆から作る。生で食べるのは比較的近代からですが、漁師は昔から知っていたようです。」

「生で食べるのは抵抗がありますが、一度食べてみてもいいかも知れません。」

「かつおのたたきなんてどうでしょう?かつおの表面を火であぶって、生姜とネギ、しょうゆ、しょうゆは魚醤で代替しましょう。」

「火を通すのね。それならよさそうだわ・・・」


「箸を作ったのも、ワサビ醤油で刺身や寿司が食べたいと思っていて、それには箸がはずせない。どうしても譲れなかった。いつか日本に渡って食材を手に入れたいがため、海を渡りたかった。」

「そんな理由で箸が生まれたのね。考古学だとフィールドワークがあるから海を渡れると。」

「まあそんな所です。醤油、味噌の麹菌、鰹節の麹、昆布、わかめ、ワサビ。日本にしかないものです。」

「そんなにおいしい物なの?」

「生活の一部になっていて、欠かせない。うまみ成分を凝縮した出汁は、世界に通用する立派な文化です。」

「世界といいましたが、どんな世界なのですか?この国はどのようになっていますか?」

「世界は今のように氷河に覆われておらず、すべての大陸に人類が文明を持ち込んでいます。一部の大国が経済的に世界を牛耳っています。残念ながらこの国は海の底です。」

「そうでしょうね。この国は海に沈むのでしょう。この国のことはどう伝えられているのかしら?」

「残念ながら、正史ではなく伝説とも言いがたいオカルトとして伝えられています。そしてムーは、火山活動によって一晩で沈んだと言われています。」

「何も残っていないというのですか?」

「はい。」

「ラ・ムーという王がいて太陽信仰をしていたというぐらいしか知られていません。ただ子孫は太平洋の島やその先の陸地で、たとえば日本などにたどり着いたとされています。」

「じゃああなたは、ムーの子孫ということになるのね。話が真実とするなら。」

「それは判らないのですが、言葉は似ている単語があります。」


 姫は少し考えていた。


「文化の違いがあるのはわかりました。ではその世界の技術はどう違うの?」


「あまり大差ない様に感じますが、このムーは電化社会ですね。資源のおかげで電池や磁石が強力です。電気自動車でなく内燃機関の車が走っています。」


「あっ、このムーに無いものに武器のミサイル、ロケットという宇宙に行く乗り物があります。両方とも燃料を勢いよく噴射して高速で飛ばします。」


「宇宙に飛び出すなんて・・・でも、使えるわね。」

「?」


「ロケットとかミサイルは、一回のみ使用で使い捨てなのにピカピカの部品を使っている。飛行機は同じアルミでもあんまり変わらないかなあ。カーボンファイバー使うのが違うかな。」

「そのロケットの製造方法は?」


「機密文書なので、最新は解らないです。公開可能な情報は展示はあるので、燃料にヒドラジンを使っているとか断片的にしか知らない。たぶん現状技術でも実現可能だろうと考えます。」


 姫は確信したようだ。

「あなたの言うことを信じましょう。ご無礼を承知でお願いします。私の手助けをしてくれませんか?」

「はあ? 僕は普通の人間ですよ?チョット違うことを知っているだけで、天才ではないですよ。」


 現在絶賛拘束中なので、素直に受け入れられない。

「いえ、あなたは非凡な才能を持っています。未来の記憶とソレを結びつける発想。実際この世界でソレを実現しました。」

「ヤゴロヲ様には、何かを感じます。もしかするとこの国をなやますものの正体をご存知かもしれません。」

「最近、この国の上を未確認飛行物体が飛んでいるのが確認されています。飛来理由はまだわかりませんが警戒をしています。」


「まさかあれが来たのか?レーザー砲門は?巨大コロニーは見えるのか?」

「やつらは・・・!!」

 忘れていた。殺された痛みを。

「まさか知っているのですか?、月よりもはるか向こうにある物体のことですか?」

「あれはなんだ?殺された後、この世界に転生した。空に浮かんでいたから重力を遮断している、ヒッグス場をさえぎるシールドの影響で、空間に穴が開いていたのか?」

「・・・・・・・ヒッグス場?」

 姫は初めて聞いた言葉に疑問を抱いた。


 僕はにわかに復讐心が沸いてきた。やつらを殺すために転生したのかもしれない。



「あの・・・、おっぱい揉んでもかまいませんので・・・」

 突然、姫がとんでもないことを口走った。

 うっ、決心が揺らぐ。美少女のおっぱい揉める機会はめったにない。でも今の仕打ちは許せない。

 不意に拘束がとかれ、後ろから抱きつかれた。


「すみません。許してもらえるとは思いません。わたくしを自由にしても構いません。どうかお力をお貸しください。」

「あなたは、あれに心当たりがあって少なからず怨みもあるのでしょう。ならあなたの望みを出来る限り叶えましょう。」


「一国の姫がそんな約束していいのですか?もしかするととんでもない事を要求するかも知れませんよ?」

「はい。しかしそれは多分、この国に必要な事です。一国の姫の運命より重要です。」


「ではたった今、恒星間宇宙船と大出力レーザー砲、レールガン、核ミサイル、核融合炉、レーザー核融合ジェット、対消滅炉が用意できますか?」


「今すぐは用意できませんが努力しましょう。技術的な協力をお願いする事になりますし、わたくしでよければ実現までの間のお相手をいたします。」







「冗談ですよ。どうせ本侵攻は1万年後。でもしょうゆとか味噌とかは切実に欲しいです。」



「ふふっ、そうですね。某地を調査しましょう。でも、あなたの意外とかわいいですし、お相手はしてもよろしいですよ。」

「まっじっで、じゃあおっぱい揉まして下さい。」


「・・・やっぱり今はいや。」









「話はついたのか?わりいな、縛ったりして。」

 オシホはばつが悪そうにしていた。

「今何時?」

「15時ごろ、もう夕方か。昼飯時も過ぎたなあ。」


「今日のお詫びとして、夕食ご馳走いたします、寮の皆様もご招待したいのですが・・・」

「姉ちゃん話し方がおかしいぜ。」

「わたくしはあなたの姉ではありません。それに先生に失礼です。」

「だれが?」

「ヤゴロヲ様です。」

「いえいえ、そんな偉い人間では無いですよ。」

「ああ?なにがあった?姉ちゃんたらしこんだか?」

「人聞きの悪い事を、この方の正体をご存知で?かの箸の発明者ですよ。」

「コイツがか?なんでこんなところに居るんだよ?」

「うん、違うから。別人だから。」

「今更、秘密にしていても,いずればれるから、嘘はだめです。」


そんなこんなで、場違いな面々が並びつつ高級レストランの別室で晩飯は晩餐会に招かれた。




 僕は、姫付きになり、どこの研究室にも属さない秘密の研究室の所属となった。

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