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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第3節 いい男と魔法少女は、黒ノ国主と白の魔法使いにクラスチェンジしました。
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28酒場で修羅場

 港には、様々なものがある。船荷はもちろんの事、いろいろな人が集まる。

 港の広場には、荷揚げされた物資が並び、各地の産物が集まり、再び拡散していく。


「今年のワインは出来がいい。」

 ジョシア王 ラフム・チェフが持ち込んだ、有力な特産品だ。

 現在、栽培されているワイン用葡萄の原産地は、ブルガリア周辺といわれている。

 ワインとビールはメソポタミア文明のころから、存在が確認されている。


 ビールは、ビール用にパンを作りそこから発酵したものだった。ワインのほうがビールより古いらしい。











「皆、積荷を降ろして、引渡し手続きを済ましたら、繁華街にくりだそうぞ。」



「おじさま。わたしはどうすればいいの?」

 金髪碧眼、髪さらさらのストレート。白い布を優雅に体に巻きつけ、ビーナスと表現しても差しさわりのない少女が、座り込んでいた。

 遊びたい盛りで大人の話はつまらない。


 ニーナは、王妃との謁見のあと、王について街を回っていた。

 集められた子女は、必要最低限の教育を施すため、宿舎兼王族の娯楽場、つまりハーレム(決して女子だけではありません)に入居するのだが、まだ1ヶ月ある。それに有力な取引材料がある国には、宿舎について優遇される、持ち込みもある程度許される。



「お前には、男に気に入られる術を覚えてもらわなくてはならない。街に行けばそういう事が覚えられる場所がある。」


「うーん。お酒の飲めるところ?お酒のんでもらえばいいの?」


「それも一つだが、もっと悦ばせる方法がある。」


 荷物を運んで来た船乗りや、荒くれが港についてやることは、だいたい察しがつく。

 現代では年端が行かなくとも、当時は結婚適齢期なので、たとえ未熟でも関係ない。むしろ教えないと命に関わる。



「ねえ。楽しいところ?」


「ああ。楽しいさ。ニーナもその内わかるようになるさ。ヒトツキすれば。」


「あと一月だもんね。楽しいこといっぱい覚えたら、王子様も喜んでくれる?」


「ああ。きっと悦んでくれるよ。ニーナはかわいいから、きっと気に入られるよ。」


「うん。楽しいことがんばる。」


 微妙に話しが噛み合っていないが、納得したようだ。









 繁華街には、安宿が並ぶ。街角で客を取った女も安宿を使う。

 貧乏部族の出身 トトリと父アヌは、麦を持ち安宿を探していた。


 宝石、金属、酒。に比べ穀物の評価は低い。エジプトの麦やサハラ湿原の米で食料が足りているので、物々交換の換金率?は低い。




「安宿ですまない。こんなところしかなくて。」

 宿のそばでは、客をとった女、その日暮らしの男、ギャンブルで何もかも失った者。様々な人たちが彷徨っていた。


「おとうさん。わたし気にしないよ。だって、みんなが一生懸命用意してくれたんだもん。」


 麦の袋。動物の皮。それらをみて、トトリは微笑む。

 この子いい子でよかった。





「テヲ殿。荷物の手配も終わったし、あとは積み込みだ。それは部下に任せて親睦を深めようぞ。」

「ギビル殿。ありがとう。船と軍勢も貸して頂き、かたじけない。しかし、我々は本当に遊びに行っていいのかい?」

「それなら問題ない。もともと近衛兵は親族で固めてある。信頼に足るものだ。」


「自信ありだな。」


 テヲとギビルは、黄昏ゆく街の灯りに消えていった。






 繁華街では、揉め事が起こっていた。それはいつもの事だ。



「さあ帰った帰った。酒も頼まず、子供連れで子供の食べられるものなんて、この街にはないよ。下町にでもいきなよ。」



「すみません。この時間で子供をつれて遠くまで出歩くのはむずかしいので、何とかなりませんか?」

 アヌとトトリの親子だった。繁華街には飲み屋街しかない。子供の来るところではない。




「まあまあ、いいじゃないですか。私も子供連れですし。」

 ジョシア王 ラフムとニーナだ。

「居酒屋に子供は・・・・・・。これはこれは、団体さんで。」

 主人はジョシア王一行を見て呼び込みをはじめる。


「どうぞ、お入りください。いい料理と酒を用意しますよ。」


「では、この子の食べられるものを、それとそこの方にも同じものを」


「は・・・はい。では、席の準備を・・・って、そちらのお客人にもかい?」


「そうだ。そういってるだろ?子供の飯なんかすぐにできるだろ?」


「まあ・・・・・・出来ますけど・・・・・・」


「じゃあ、そこの人、一緒に飯を食おう。」


(事業主はよく飲み歩く。父親に連れられ、小学生の時からスナックとか居酒屋で晩飯たべてましたが、多少は無理が利くもんで、本人曰く常識を高めよ。常識が狭いから出来ないって言うんだ、父親は当たり前だと言うし、周りも当たり前だと思っている。社会にでても、ソ連で飲み比べして仕事を認めてもらうという豪快な人に付いてしまったので、そんなもんだと思うが、自分がやるのは別。)


「いいんですか?ご一緒で。」

 アヌは、遠慮気味にたずねる。


「気にすることあるかい?どうせこんなにいるうちの一人や二人増えてもかわらないよ。」


「そうですね。じゃあご一緒させてください。うちの子もよろしくお願いします。」

 アヌが一礼し、ジョシア王一行と食事を共にする事になった。

 それにしても、一国の王がこんな居酒屋に来るとは思うまい。



「ニーナ。この子と一緒に仲良く食べなさい。」


「うん。いいよ。さあこっちこっち。私 ニーナ。あなたは?」

 ニーナはお姉さん気取りでトトリに席を勧める。


「うん。わたしはトトリ。ダマスカスのトトリ。金色の髪なんてどこの人?お姉ちゃんはどこから来たの。」


「わたしは、ジョシアから来たの。この国の王妃様と同じ。」


「この国の王妃さまは金色なの?」


「そうよ。わたしは遠い親戚なんだって。」


 子供同士のお話は、居酒屋の喧騒のなかかき消され、他の人たちには届かない。結構重要な国の話だが、聞こえないものは意味を持たない。



「結構繁盛しているな。」

「そりゃそうさ、この店は結構上等なワイン置いてるしな。」


 テヲとギビルが偶然この店に入ってくる。


「ざわざわ」


 これから婚約する、逆玉と東の大国の王子が一緒にやってきたのだ。

 テヲは、ちょくちょく見かけるので、街の人は慣れっこだが、連れが宝石の国人らしく、装飾品がそろっている、体格もよくその姿は異様なものだ。


「だんな、嫁さんほっぽいといていいのかい?」

 主人がテヲにちょっかいをかける。


「ああ、今日は客人がいるから。それにまだ嫁さんじゃないよ。まだ1ヶ月は遊ばないと。」


「だんなも、これから気軽に来れなくなるんだなぁ。それまでは気楽に来てくださいよ。」




「おい、あれに見えるはテヲ殿下ではないか?」


 ラフムは連れてきた部下に尋ねる。


「たしかに、昼間も港でエージアの王子と何かしら積み込んでいたとか、じゃあ隣はエージア王子ですかね。」


 臨席したアヌは、初めて見るためそうなのかと観察した。

「あのお方々が、テヲ殿下とエージアの王子さま。こんなところでお目にかかれるとは。」


「お忍びなのか、無防備なのか、こんなに連れてきた私が用心深いのか。」

 ラフムは、まさか重要人物がやってくるとは思わず、ここで騒ぎが起きたら大変なことになると思った。


「すまないが、数名見張りにだせ。気づかれないようにな。」

「はい。でもせっかくの酒がもったいねえ。」

「あとで埋め合わせはしてやる。早く行け」


 アヌは、横目でその姿を見て、この人も一方ならぬ人物であると悟った。




 子供たちはご飯も平らげ、すでに遊びだしていた。

 いすに座って、おしゃべり、手を使ってのゲーム、いすやテーブルを使った遊び、ただ遊び道具がないのでだんだん、エスカレートしていく。そうしてかくれんぼや追いかけっこになってしまう。


「ほらほら、捕まえちゃうぞ。」


「トトリつかまらないもん。かけっことくいだもん。」

 年上のニーナがトトリの面倒を見る形になっているが、ニーナな追いかける方が好きなので、鬼をかってでた。


 バタバタバタ。バタバタバタ。

 ほとんどが、ジョシアの人たちなので、他の客に迷惑がかかっているかといえばそうでもない。


「なんか子供がいるぞ。」

「こんなところに子供を連れてくるなんて、どこのどいつだ。」

 ギブルは珍しそうにテヲに言う。


「あそこに身なりのいい男がいるが、あれは誰だ?」


「ああ、あれは黒海の向こうがわのジョシアの王じゃないか?」

 ギブルはテヲの質問を返した。しかし、王がいるというまったく非常識な回答に疑問を持った。

「まさか。」


「いや。まさかでもない。それにあの子供金髪だぞ。」


「ほんとだ。そういえば周りは灰髪だらけだ。」


「こりゃ、とんでもないところにとんでもない面子がそろったもんだ。」


「どうする。すぐ出るか。」


「いや、それは怪しまれる。自然に振舞うんだ。」


「しかし、子供が駆け回ってるから、いつかぶつかるんじゃないか?」


「まあ、そのときは運が悪いと思って、大人の対応をとるんだ。」


 と言ってるまに。


「まてまて~。」


「いやー。つかまらないよー。」


 どかっ。テヲの席にトトリがぶつかってしまった。


「おーっととぉ。」

 トトリは肩からいすにぶつかった


「いたーぁい。びええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」


 トトリは泣き出してしまった。それはずっと泣き止まないくらい。


「トトリ、大丈夫か!?」

 急いで、アヌは飛び出す。

「トトリ!!」

 ニーナも駆け寄る。


 すかさずテヲは、トトリに手を差し出し。


「いたいね。でもお兄ちゃんがなでれば痛くなくなるよ。ほら痛くない。痛くない。」

 テヲはトトリの肩から胸をなでた。


「いたいよーーーーーーーーびええええええええええ・・・・・・いたい。いたい。」


 トトリは泣き止み、痛いけどそれほど痛くないことに気づき落ち着いたようだ。


「おにいちゃん。いたいけど、いたくなくなったよ。」


「それはよかった。」


「うん。おにいちゃんありがとう。」

 若干頬を赤らめ幼いながら上目遣いでテヲを眺める。


「大丈夫かい?」


「うん。ごめんなさい。ぶつかっちゃって。」


「いいよ。それより、君はけがはないかい?」


「うん。傷は無いみたい。」


 服をめくってテヲに見せる。


「申し訳ありません。テヲ殿。私の娘が無礼を働きました。」

 アヌが一部始終を確認して、様子を確認しつつテヲに謝罪をする。


「いえ。私は何も。なぜ私の名前を。それより娘さんが心配です。」


「私もテヲ様と知らず、娘も無礼を働き、どのように償えばよいのか。」


「私に被害はありません。気になさらずに。」


「でも。」


「おにいちゃんごめんね。いたくなかった?」


「ああ。大丈夫だよ。痛いのなおったかい?」


「うん。」

 トトリは元気よく答える。


「トトリ、ごめんね。お兄さんに迷惑かけてごめんさない。」

 ニーナが、申し訳なさそうに、テヲにあやまる。


「大丈夫だよ。子供は遊ぶもんさ。それにこんなかわいい娘たちにぶつかられるんなら、誰でも歓迎だよ。」

 周りも賛同する。確かに美少女二人、体重もないのでぶつかられた所で痛くも痒くも無い。むしろウエルカム。


「お兄さんありがとう。許してくれる?」


「ああ。」


「お兄さん。私が楽しいことしたら許してくれる?」


「ああ?」


「男の人は、女の子が楽しいことすると喜んでくれるって聞いたし。」


「じゃあトトリもおにいちゃんにたのしいことする。」


「おい。ちょっとまて。どういうことだ。」


「だって、おじ様が。」


 テヲはジョシア王に振り返る。ジョシア王は口笛を吹くようにごまかそうとしている。

 ごまかしが利かないとは思っているので、テヲに話しかける。

「お初にお目にかかる。我はジョシアの王ラフム・チェフ。テオ殿、どうかニーナの無礼をお許しください。」


「ジョシア王、お初にお目にかかる。この子に無礼はありません。そもそも子供のする事ではありませんか。」


「しかしながら無礼を働いた事には変わりありません。いかなる賠償をいたしましょう。」


「いえいえ。それより、楽しませるとはなんと言う意味でしょう。」


「わたし、テヲ殿下の后になるの。」

「トトリもテヲってひとのおよめさんになるの。」

 ニーナとトトリが答える。


「ええ--------」

 各国から、後宮の側室候補が集まっているとはテヲ自身知らなかった。


「我が妹、サラスワティ(サーラ)もそうだ。」

 ギビルも口を挟む。


「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ。」


 コレは、テヲも驚いた。あんな清純そうな女の子を自分の側室に出来るとは思わなかった。


「おにいちゃんがわたしのおむこさんなの?」

「お兄さん、私お詫びに喜んでもらいます。」

「うちの妹が先だ。満足出来るだろう。旅の間ずっと自由にしていい。」


「いや、まて。これはどういう事だ。」



 こうして、テヲの女難の日々が始まるのだった。

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