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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第2節 いい男と魔法少女が旅にでました。
42/77

22脳筋王と頭脳妃

海原の根の堅洲国(アマノネノカタスクニ)


 かつて大陸の北、ジブラルタル海峡の西にその国は存在した。

 強力な軍事力を誇ったが、一晩のうちに滅んだという。




 宇宙エレベーターのある高原から、生還した特殊部隊は所定の手続きを経て、被害の報告と成果の報告をした。




「こんなからくり人形なら作ることが出来る。手足はテコの原理で動いている。しかし何だ。電気で動いている部分は、解からんな。」


 制御系のアビオニクスは、理解不能の域に達していた。


「電気は解からんな。相変わらず。リレースイッチなら解かるんだけどな。」


 この国では、電気文明は廃れていた。動力源である原発はメンテナンスも、燃料の供給も断たれて久しい。

 しかしながら動力を発生する方法には、水車や牛など軸を回転させる方法があればよい。

 タービンを回せばいいので、ダムを作って水力発電したり、蒸気を発生させることが出来れば、電気を発生する事も出来る。

 少しばかりの電化はされているが、電子回路は役立たず。あったとしても古代のオーバーテクノロジーを発掘利用している。


「電力の供給がないとこいつはガラクタだ。仕様も解からん。」

 パワーローダーを見た技術者はお手上げだった。機械的な構造なら何とかするが、電子回路は専門外だ。


「電気は発電機をつけたらどうだ?エンジンを積んで発電する。ボイラーを後ろに連結して、いっそ蒸気タービンから給電する。」

 もう一人の技術者は言う。どんな暴走機関車だよ。


「お。いいねえ。でもどんな電圧を供給したらいい?」

 仕様も不明なので、適当にぶち込むと壊れるのは目に見えている。


「おいおい調べていけばいいんじゃね?」


 発電機をつけて電気で動かす。最近のハイブリット自動車にもこの構造はある。

 ロータリーエンジンは小型で、バルブがないので構造も簡単、一定回転している限りは燃費はいい。そのため発電用に搭載するというドローンも発表されている。

(ロータリーは燃費が悪い。搭載車の燃費は4km/lというのは有名なお話。)


 古くは第二次世界大戦のポルシェ博士の異常な愛情の結果生まれた戦車、ポルシェティーガーがある。ちなみに失敗兵器。後にエレファントなどに改造された。

 ポルシェ博士はあのポルシェのポルシェである。ちなみに当初から電気自動車にご執心で、エンジンで発電して、電力で走る。という車を作っていた。

 今思うととても不効率だが、モーターはトルクが大きいため、低回転でもエンジンよりパワーが出る。でもガソリンがもったいないと思うのである。




 この文明は、電気が使えなくなった代わりに機械工学が発達していた。

 大型潜水艦がこの地に漂着した時から、リアクターは主器の核融合炉は使用不能、燃料のトリチウム(三重水素)を、副器のトリウム原発から取り出すのだが、長期運転するため燃料増殖を優先したため、発生したトリチウムも副器にもどしている。


 トリチウムは半減期が12年、β-崩壊して、陽子が一つ増えヘリウム3に変わる。

 ヘリウム3を衝突させるには、水素より陽子の数が斥力が大きくなっているため、トリチウムよりエネルギーが必要になる。

 副器もろくにメンテナンスされないため、分子マシンの自己修復も満足に行かず、やっと維持する分のパワー供給しかしていない。



 もともと、潜水艦乗りは軍人であり、詳しい技術を知るものも少なく廃れていったのだ。


 変わりに、整備する人の持つ機械知識が、電子技術より尊ばれる事となった。

 ただ、石油を用いた機関は燃料が発見されていない、そのため潜水艦で使われた石油を用いない技術が残っている。



 機械屋さんがいろいろいじっていると、王が様子を見に来た。


「おう。やってるか?面白いものが手に入ったらしいじゃないか?」


 この国の王、スーサ王は歴戦の勇者である。この国で貴重品となったアームをまとい諸国を制圧している。


 アームをはじめ、整備がままならない。ほとんど共食い整備で、使えるものが減っていく。容量を削って体裁を整えたり、機能を抑えて使用するものがほとんど。

 潜水艦の分子マシンプラントに放り込めば直るものは直る。直らないものは直らない。

 そんな一か八かの勝負をしている。

 新しい略奪品があれば飛びつく。そんなことも制圧する背景がある。


「スーサ王。これはこれは。コイツはおもちゃですぜ。あんまり使い道がないっス。」

 技術者はさも、当然のようにスーサ王を迎える。


「なんだ。図体だけか?でも苦戦したんだろ?」


「そうらしいですね。駆動系はアームと変わらないが質量があるんで力押しされたのと。どうやら装備品が好いモノらしい。この黒い剣、硬くて重い。アーム装着でやっと持てるか持てないか。あと、電気容量が大きいので電気を使った装備が使える。コイツにはついてないですが伝説のビームライフルとか。」


「おお!!この剣、なかなか良いではないか。でも大きいな。背丈ほどある。それに柄がデカイ。長さはいいが柄の部分はどうにかならんか。」

 スーサ王は、持つ気満々だ。


「コレを使う気ですか?人間の扱うものではないですよ。柄の部分は取れるみたいですけど、無茶ってもんですよ。」

 重機で持てるもんを扱えるもんかと。


「いいや。出来る。使いこなせる。」

 この脳筋オヤジ。オ○ラバトラーがもってそうな剣で何したいんだ。



 基本、脳筋国家のこの国は、礼節に重きを置いていないのか、脳筋オヤジが悪いのか。





 一方、王妃イナンダとセセリは、テヲの変わり果てた姿を見て、悲嘆にくれていた。


「どうして!?無事に帰ってこなかったの?」

 セセリは、王妃を攻め立てる。


「ごめんなさい。まさかこのような事態になるとは想定していませんでした。」

 大嘘である。ある程度予想もしていたし、捨て駒にする覚悟もしていた。


「ああーーーーーー。テヲなぜこのような姿に、生きて帰ってくると思っていたのに。」


「いえ。まだ息があります。」

 キサメとウムメがセセリに申し上げる。


「あんたたちがちゃんと見てないから、こうなったんでしょう!!責任取りなさい!!」

 セセリの怒声が響く。


「大丈夫です。テヲ様の脳に異常ありません。骨や肉が焼かれても回復可能です。」


 結構重症でないかと思うんですが。


「だって、こんなに火傷が!!それに腕も足も変な方向に曲がってるし・・・・・・」


「大丈夫です。先祖伝来の薬もあります。アームの補助もあれば手足がなくなったって大丈夫です。」

 古代より抗生剤が伝えられ、軍人らしくこういう治療の技術も伝えられている。


「いや・・・・・・そういう事じゃなくて・・・・・・」

 治る治らないより、姿が見るに耐えられない。


「ご安心なされませ。必ず生き返らせてみせます。」

 いや、死んでません。まだ。








 一方、技術を奪われた天の根の堅洲国(アマノネノカタスクニ)


「かの国の所在、何処に。」

 ヒルメがカズチに答えを問う。


「はっ!!女王陛下。かの国は、ナイルを下り、西へ地中海の海峡を超えた海に面した場所。あの娘の故郷の北になります。」


「そうですか。して、かの国のあの男は如何様になった。」


「かの国に回収されました。生死に関しては不明です。」


「あの男から、何か聞きだせましたか?」


「いいえ。口を割らず、終止、”冒険をしにきた”、とうそぶいていました。」


「どうでしょうね。本当に冒険だったかも知れませんが、怪しいことに変わりはなかったですが。」





「あのアームという道具、どのような素性か判明しましたか?」

 ヒルメは、別の話題にうつる。


「アームという道具、当方のパワーローダーと同じく、手足と同調して力を倍増させている機械でした。しかし、思想が異なります。」


「あれは、たぶん初期にデットコピーしたものをブラッシュアップしたものと考えられます。」


「! あれをご存知なのですか?」


「はい。あれと初めて戦ったのはわたくしですから。ずいぶんとサイズは違いますが。」


「では、あれが如何様なものかもご存知と。」


「しかしながら、同じ技術なのでしょうか?解析が必要です。こちらも1機奪われましたので、対策が必要になるでしょう。ますますかの国を調べなくてはなりません。」


「では、斥候をしのばせ様子を探りましょう。」


「それも重要なのですが、相手に友好の意思を確認しなくてはならないでしょう。」


「陛下、恐れながら申し上げます。今回の事変、わが方にも損害が発生しており、情報漏えいもあり、とても友好の意があるとも思いませぬ。」


「いいえ、決して相手側も敵対ばかりが占めていると思えないのです。武力で攻めるのは簡単です。相手にも決して損はないとおもいます。」






 まずい事になった。イナンダ王妃は思っていた。


 とりあえず、偵察目的であり、いざこざは起こしたくなかった。

 しかしながら起こってしまったものは仕方ない。

 使者を送るにしても、テヲがその役だったから今となっては悪手である。


 スーサ王が脳筋であるのに対し、イナンダ王妃は策略をめぐらせる。

 何とか謝罪して、技術の提供を受けたい。年々軍事的優位が失われており、今までは武力により制圧していた地域が、反乱の気配を漂わせている。

 どうしても、神機の復活、装備の充実が必要なのだ。


「あの娘は誤算だった。まさか各地で大事を起こし続けるとは。」

 イナンダ王妃の思案は続く。

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