21別れ道
時を遡って、地下牢では。
「将軍、不審者が現れました!!」
地下牢で尋問(という名の拷問)が行われていた。
殴るける、空気椅子、つめを剥ぐ、熱したコテで皮膚を焼く。
膝ドリルとか、聞いただけで耐えられない苦しめる事で証言を引き出す目的の近代、現代の拷問まで行かない。しかし古代の拷問は、目をえぐる、手足をもぐなど直接的で、生かす気がない。
「如何なる事態だ。説明せよ。」
カズチが、斥候に対し状況説明を求める。
「早朝において、重要証拠の回収に向かった部隊が敵の回収班に遭遇。そのすぐ後に未確認のユニットが出現。戦闘用装備を纏った幼女が人質をとっている模様。増援要請ありました。」
「なにぃ?人質とは卑怯な。」
カズチは、尋問の手を緩め看守へ引継ぎする。
「逃亡する気力があるやも知れん。しっかり見張っておけ。」
カズチが牢を出て行くと、看守はかんぬきを架けた。地下牢は近代的な建物であったが、鍵は原始的であった。一応オートロックが出来そうなコンソールが付いているが、機能させていない。
廊下は慌しく兵士が往来している。
看守に一人の女性兵士が近づく。
「少しでも戦力を用意するため、男性兵士は集合するように命令が発令されました。私は交代要員としてここに来るよう命令を受けました。」
ちなみに、クク付けのメイドさんも女性兵士である。
「それは、ご苦労。では、ここを頼む。くれぐれも気をつけろ。」
看守は、足早に牢を去る。
「さて、周りをよく見て、誰もいませんね。」
女性兵士は、かんぬきを上げ、牢に入りテヲの様子を確認する。
「しゃべることはできますか?意識はありますか?」
女性兵士はテヲに声を掛け、状態確認する。
「うぅぅ、あぅぅ。あ。」
意識はあるようだが、言葉にならない。
「応急処置をしますので、我慢ください。」
女性兵士は、テヲの火傷、傷に軟膏を塗り、包帯の代わりに布を巻き、痛み止めを飲ませる。
「ナムチ殿。ここを脱出します。ルートは仲間が確保しています。」
そう言うと、テヲをひょいっと抱きかかえ牢を出て行く。そして疾風のごとく駆けていった。
壁の中に進入した、彼らは、別の目的もあった。
「ここを脱出する前に、土産を持って帰らねばならん。情報のみならず、あの人型兵器を無傷で手に入れたいものだ。」
ハンガーには、強化外骨格が鎮座している。動かし方はほとんどアームの操作と変わらない、違いはマニピュレターを介して体を動かす(イメージ的には日本企業が1000万円くらいで販売している製品にあたる。)
また、ヒルメのランダーもあるのだが、未確認のモノで、特にランダーはどうやって動いているのか、さっぱりなのである。
本命はランダーなのだが、動かないのでは意味がない。抱えていくには大きすぎる。
ハンガーは慌しくスクランブルの準備をしている。
この喧騒の中、機体を奪うことなど造作もないと思われたが、サイズが小さい。基本はピグミーサイズ。あくまで機動隊が持つもので、一般兵にはあてがわれる事はない。
例外として、カズチのような将軍の立場にあるものに指揮官機が当てられるが、物理限界のサイズを超えるため、機動性は著しく損なわれる。
「あれ?おまえ、牢の番じゃなかったのか?」
「え?スクランブルじゃないの?」
例の看守がハンガーに着いた時、同僚から意外な言葉を聞いたのであった。
「相手は、3人だから、本来1小隊で対応できる位だぞ。今回中隊が出ることになったが、総動員する程でもない。」
「え?でも、女性兵士が看守を変わるって連絡受けたけど。」
「そんな連絡受けていないし、必要もない。」
「あ・・・・・・あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
看守はすぐさま牢へ引き返していった。
「あっ!!カラだ!!どうしよう。どこに行ったんだ。」
手がかりになりそうな物が残されていないか、看守は周りを見回した。
めぼしいものは残されていない様だ。
ふと、足元を見ると、床にすさまじい勢いで叩き付けた様な跡がある。それがやはり人の足幅とは思えない距離で付いている。
「とりあえずコレを追っていけば・・・・・・」
看守は発覚を恐れ自己解決しようと動き出した。
ヒルメとカズチがミミと対峙しているころ、装備品輸送に紛れテヲは壁の外へ逃れていた。
当然、カズチはテヲの尋問に戻ったがもぬけのカラ。看守もいない。
「コレは、如何なる事か。ただちに捜索に当たれ。この喧騒を利用してすでに表へ逃れたかも知れぬ。調査隊を組織せよ。」
カズチは、ただちに追っ手を放った。
「ここまでこれば、安心かと思われます。先行部隊のキャンプから迎えが来るまでの辛抱です。」
女兵士は、テヲを抱え湿原にたどり着く。キャンプはマーチソン滝の川下にある。
そこに、1機の機械がいた。例の看守である。
騒動にまぎれて、外にまで追ってきたのである。
「いたいた。意外と早く見つかった。ばれない内に戻さないと。」
すでに時すでに遅しだが、諦めたらゲームは終わりという言葉もあるので・・・・・・。
強化外骨格は、おもむろにテヲ達に襲い掛かる。
ガサガサ!!バギュン!!
パワーローダーが上空から降ってくる。
「うああああ!!、なんだこれは!?」
女兵士は叫びをあげる。
パワーローダーは、女兵士を掴もうと腕を伸ばすも、すばやく飛び去る。
「追手か!!」
女兵士が、逃走しようと駆けるが、長時間走っていたため、速度が上がらない。
「仕方ない。ナムチ殿。しばしお待ちを。」
女兵士は木陰にテヲを寝かせ、戦闘に挑む。
女兵士は、小刀を抜く、形態としてはドスの様なもので、炭素複合材なので女性でも取り扱いしやすい。
パワーローダーは、女兵士を殴り倒そうと腕を振り回した。
女兵士は、ひらりとさけ、攻撃の機会をうかがっている。
パワーローダーとアームの格闘戦は、足回りの戦いとなった。
パワーローダーは、リーチはあるが、すばやく転回できない。
アームは、攻撃手段が貧弱であるが、機動性能が高い。
双方とも、決め手に欠ける戦いが続く。動力元は基本的に人力を倍増させているため、装者の気力があれば、力は落ちるが動き続ける事が出来る。
ただ、双方に都合の悪いことに、2時間もあれば、増援がやってくる。それは双方同じ状況である。
方や、回収部隊、方や捜索部隊。
捜索隊は、行方のわからない兵士とパワーローダーの反応を見逃していなかった。
パワーローダーが1機だけ孤立して、識別信号を発していれば、怪しまれて当然である。
後続部隊がスクランブルを継続して向かっている。
そんなことは、露知らず二人はグルグルと輪舞を踊っていた。
そうして、先に着いたのは、海原の国の陣営だった。
合流場所についてみれば、大型機械と格闘している女兵士の姿があった。
すぐさま、応援に入り、銃火器を用い制圧したのであった。
そもそも装甲はあるが、操縦者が油断していたせいで無防備で簡単だった。
体よく、機械を鹵獲でき、いい土産ができた。小柄な女性が乗り込むと意外とすんなり動く。
奇しくも、双方同じ技術の派生である。かつて巨人が纏っていた強化外骨格の方向性の違いにより、装着型と搭乗型へと分かれたが、人の力をアシストする事に変わりはない。
鹵獲した機械とテヲを回収し、立ち去ろうとする矢先。
森の奥から、ヒュンと音を立て、矢が飛んできた。そして後方の木々を木っ端微塵に砕いていった。
その矢は金属製のパイルで、途方もなく重い。なぜこんなものが飛んでくるのか?
その飛んできた方向には、鹵獲した機械と同型が3機ほど控えており、ひときわ大きな機体がこぶしを前に腕を構えていた。
「外したか。標的が人では難しいか。」
カズチのパワーローダーは大型である。ここまでキャリアに乗せては来たが、機動性は期待できないので、足はすでにキャタピラーで固定されている。しかしコンデンサー容量が大きいため、質量投射装置が搭載されている。
カズチは次々とパイルを投射した。両腕で2発同時に放つが、連射は難しい。
連射可能なドリーム砲台だったら、ひとたまりもない。
「おまえは、早くこの機体とナムチ殿を安全な場所へ!!」
「はい。」
目的のものを後方へ逃すため、人の壁を作り応戦する。
ここに海と天の戦いが切って下ろされた。
先ほどの接近戦での戦闘ではなく、飛び道具の戦いとなった。
銃火器、火薬と鉛玉による実体弾。
電磁砲、レーザーによる電磁兵器。
パワーローダーの電力は王都の反応炉から得られた燃料電池(現実に高温原発は電力でなく水素を作る研究がされている)を搭載し供給される。
あたかも未来の戦争を見ている様相である。
爆発や、痕跡が残る実体弾、質量や熱量でごり押しする電磁兵器。
どちらも長所と短所があり、被害としては、電磁兵器は連射によって、人への損害は大きいが装備に対しては被害が少ない。逆に実体弾は、的が大きいという事もあって、確実にダメージを与えている。
このままでは埒があかないと、カズチは決断する。
「各々方、抜剣!!」
各パワーローダーは、剣を抜いた。
大きさも然ることながら、素材は超硬金属である。
ちなみに現実の超硬金属は重い。鉄の2倍である。たとえ刀を造ったとして、人が扱えない。とある番組で刃だけ超硬の刀を紹介していたが、鉄板を両断する切れ味を持つ。
カズチは巨大質量を直接ぶつけるパワープレーにでた。
海陣営は、ばらばらと散らばり、ヒットアンドアウェイを繰り返す。天陣営は足を変形させ高速移動形態へ移行し剣でなぎ払う。
パワーローダーの動きに対応できなかった、海側の兵士は剣に押しつぶされた。
アームのすばやい動きに翻弄され、1機のパワーローダーの背後に爆薬が仕掛けられ、操縦席にまで爆発が及び、大破する。
戦いは一進一退。
しかし十分に時間は稼いだ。
「撤収ーーーーーーー!!直ちに離脱せよ。森の中を進め!!」
海陣営の隊長が叫ぶ。
生き残りは、装備を回収し立て直しを図る。残りの武装の確認もあるが、敵側に技術の流出をなるべく防ぐためだ。
次々と森の影に人が消えていく。大型の機械では、追うことが出来ない。
天陣営はとっさにパワーローダーから降り追うが、速度がまったく違う。また装備も対応が難しいため、そのまま見逃すしかなかった。
「ちくしょうめ!!こんなことなら馬を用意すればよかった。」
カズチはひとしきり悔しがると、状況確認した。
被害は大破1、中破1、軽微2、人的被害1名死亡、1名重症。
敵側の損害、4人死亡、1名意識不明。荷馬車が1台。ただし装備は持ち去られている。
破損したアーム、銃器を押収。
「取り逃がしたか。あの小僧。よっぽど大事とみえる。この失態いつか晴らしてやる。」
カズチは報復を誓うのであった。
「ククさん、ミミさん。残念なお話があります。」
ヒルメから、テヲの逃走。
スパイ容疑の話を聞いたククとミミは困惑した。
「なにやってんのよ!!あいつ!!途中にそんなそぶりを見せなかったのに。」
「でもさー、テヲって不思議だったよね。どこにそんな荷物あったのって思うことあったもん。」
ヒルメは申し訳なさそうに。
「あなた方には、係わりのない事ですが、一応調べさせていただきます。簡単な質問です。痛いことは致しませんので。」
「いえ、当然とは思うのですが、私たちはどうなるのでしょうか?」
「身体検査と、精神鑑定、カウンセリングにより、判断することになるでしょう。しばらくは、この部屋から出ることは出来ないでしょう。」
現状とあまり変わりはない。が、スパイを疑われているので気分はよくない。
こうして少年少女は、それぞれの道を歩みだす。
二つの国は少年少女の道と同じく、それぞれの道を歩むことになる。




