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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
第2節 いい男と魔法少女が旅にでました。
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20少女の再会

「あの~。日が明けましたけど、連れが待っているので、帰りたいんですが。」


 ミミの事件もテヲの尋問も知らぬまま、ククの軟禁が続く。


「荷物も心配ですし、一度外に出たいのですが。」


 メイドさんに尋ねても答えは返ってこない。

 ククは途方に暮れていると、何事も無い様に朝食が運ばれてきた。


(「ずっとここなのかしら・・・・・・きのうの姫の話を飲まないと出られないのでは?」)

 そんな事を考えても、腹は減るので、朝食はとる。


 朝食を終え、給仕が食器を片付けて部屋を出る扉の隙間から、人の声が騒がしい。外で何か起こっている様だ。


「なにかあったんですか?」

 ククは、給仕に聞いてみると。


「昨晩、かどわかしの一味が捕らえられまして、今朝早く処刑が行われました。」


「また物騒な話ですけど、一味が捕まってよかったですね。」


「それはもう、捕らえられた娘たちが帰ってきたんですが、血まみれで何があったのかと、みんな疑問に思う事がありまして。」


「へえー。よかったですね。血まみれという事は、娘さんたちが反乱を起こして自力で帰ってきたと。」


「いえ、どうやらミョウチクリンな格好をした旅の子供がやったらしいです。」


「!! どんな格好の?詳しく聞かせて!」


「人づてなんで、ハッキリしてないですけど、ひらひらだったり妙にぴったりしたモノだったり、なんか珍しい格好らしいです。」


「色は?」


「ああ、白にピンクの縁取りやらひらひらが付いているそうだ。」


(「ああ・・・・・・なんかアームっぽいな。あの子がじっとしているとは思わなかったけど」)


「それで、どうなったの?」


「それが、ただいまこの壁の外の町で、兵士と闘っているようです。」


「はあー!?」


「それで、それを鎮圧する準備をしている所です。」


「鎮圧ってだれを?」


「無論、ピンクのほうです。とてつもない運動力を持っているらしく、とても一般兵ではかなわないので、強化外骨格(パワーローダー)部隊が対処に向かいます。」


「なにをやってるのよ!! わたしの連れよ!! 特に危険は無いから。それにわたしも連れてって。」


「それは許可を頂かないと・・・・・・」

 無論。許可などもらえないが。


「ああ。どうなってんのよ。あの子もテヲも。」




「なーんか。大事になってる。」

 ミミは、アームを展開したまま、残党のおっさんを担いで町に戻ると、宿の周りが騒がしい。


 そこには、現地の兵士とキサメ、ウムメ姉妹がにらみあっていた。


 キサメ、ウムメは、テヲの装備を回収する目的があった。そこにやはり装備を没収するために兵士がやって来たため、鉢合わせになったのだ。


 両者にらみ合いが続く中、ミミがアームを展開してしかも、大人の男を軽々持ち上げているのである。異常事態と捉えられてもおかしくない。


「おい。あの娘を見ろ。」

「どうなってんだ。あんな小娘が出来ることじゃない。」

「やはり危険だったか。」

「あれをどうにかしなければ、応援を呼べ。」


 兵士達から斥候が壁の向こうへ連絡を送る。





 そして、壁の中では、3mに及ぶ強化外骨格(パワーローダー)を装着する兵士達が出撃を待っていた。アームが体の補助に使われるのに対し、パワーローダーは装甲はないが、人が中に入るロボットの様である。


「やはり、奴は先兵としてやってきたか。」

 カズチは、強化外骨格のハンガーで、待機している。

 そこに5mほどあるかという、機械巨人(ランダー)のハンガーで出撃の準備をするヒルメがいた。


「女王陛下!! 此れは如何に。まさか御出でなさる御つもりですか!?」


 ヒルメは、カズチの方へツカツカと出向いて。


「そうよ。如何なるテクノロジーのモノか見極めるのよ。」

「危険です。ナイルの怪物を屠ったモノです。我々にお任せください。」

「いえ。ちょっと、ちょっとだけでいいのです。見覚えがあるものと判れば早々に引きます。」

「しかし、女王陛下自ら出陣しなくとも・・・・・・」

「大丈夫。機械巨人(ランダー)は楽園とあの塔を行き来するものですから、丈夫です。」






 ランダーとは本来、月や火星、小惑星など探査するため着陸するための船である。

 が、船外活動を行うため、宇宙飛行士は宇宙服を着て作業する。船外に出るということは、宇宙線や、飛行体(秒速 何万km/sとか)に曝される。

 楽園の主は、その危険がない様に単独で行動できるよう、マニピュレーターを備えた機械を用いていた。






 カズチはしぶしぶヒルメのわがままを受け入れ、出撃の準備をしていた。

 カズチは2mほどの身長があるため、一般兵の強化外骨格(パワーローダー)では大きさがあわない。そのため、4mを超えて、ヒルメの機械巨人(ランダー)に迫る大きさになっている。アームと違い、自由度は低いが、大きな力が出せる。

 足の駆動系は、立っている状態では不安定なので、地面にひざを点いた状態で車輪があるので、普段の移動は車輪で移動する。もともとが農作業を行うためのトラクターであったため、自然と重機のような形態になる。




 そのころ、テヲはほったらかしにされていた。

(「隙だらけじゃね。でも扉は開きそうにない。誰か開けてくれると良いけど誰もいない。」


 最小限に見張りが居るが、やる気がなさそうにあくびをしている。









「ねえ。冗談はよそうよ。なんでわたしを囲むの? 悪人も捕まえてきたのに。」


「ええい。そのような出で立ちでしかも、大の大人を軽々持ち上げるだと!?如何なる妖怪だ。」


「ええー。かわいいのに、どうしてそんなひどい事言うの?」


「如何に化かそうともとも、我等はだまされぬぞ。この妖怪め!!」


 妖怪なのか、美少女戦士なのかどっちでもいい言い合いが続く。

 いつの間にかキサメ、ウムメは消えていた。この騒動で見事に装備を回収した様である。



 しばらく、言い合いとけん制が続いたが、応援部隊の音が壁の方から近づいてくる。


 ダカダカダカと車輪の音が響き、喧騒の少し手前で止まる。


「そこの娘さんあなたは、そこで何をしているの?」


 女性の声で、今までとは違う穏やかな問いかけがあった。


「わたしはーーーー、悪者をやっつけたのーーーー、それでーーーー、悪者をもってきたのーーーー。」


 ミミは声を大きく響かせた。


「その悪者は、どのような悪事を働いたのですか?」


「コイツは、ロリコンなのーーーー。わたしもいろんな所さわられたのーーーー。」


「それは許せないわ。局部を切除する刑に処しましょう。」


 想像だけで痛いです、やめて。


「それは、他の悪者にはしたのでーーーー、もういいでーーーす。」


「まあ、勇ましい。他にいろいろ、もぐもぐしてもいいかしら?」


「他にってーーーーなにを?」


「もぐもぐ」


 なにか手をもぐもぐしている女性がいる。やめてください何もかも無くなってしまいます。


「さて、娘さん。その装着している、外骨格を外してもらえませんか?」


「えーーーー。コレとると裸だから今はいや。お風呂とか入るんなら別だけど。」


「じゃあ、お風呂を用意しましょう。広い温泉ですよ。」


「どこにあるの?」


「壁の中に入れば用意があります。」


「ククとテヲが居るところ? ククとテヲはどうなったの?あのあと連れ去られたって・・・・・・」


「クク殿とテヲ殿はわれわれの保護下にあります。危害は加えていません。」


「どうなったの?何かあったの?ねえねえ?」


「まずは、その武装を解除してもらえれば、面会を許しましょう。」


「でもでも。この変身衣装かわいいでしょ?あんまりこれを着られる機会がなくて、それにテヲみたいにうまく使えないし、戦闘って、ひらひらを生かした感じがあんまりでないから好きじゃないし。」


「まあ、確かにかわいいけど、そんな力が出せる時点で、脅威ですが。」


「確かにそうね。とりあえず展開を解除。」


 花のように広がったアームを閉じ、インナー姿になった。これは、ヒルメのパイロットスーツ姿によく似ている。


「ちょっと恥ずかしいから、布を頂戴!!」


 ミミは布をもらうとくるくると体に巻き、すぐに町娘の姿に変わった。


「器用なものね。」

 ミミが早変わりをしてみせると、周囲も落ち着きを取り戻した。

 ミミの周りの兵士が引き、一筋の道ができる。

 その先には、機械巨人がいた。その操縦席から女性の姿が見える。


「あなたが、ミミさんですか?」

 先ほどの女性の声だ。


「あなたはだれーーー」

 ミミが聞き返すと。


「わたくしは、ヒルメ。この国の女王をしております。」


「あー。あの女王様?ククがよばれた。」


「恐れ多いぞ小娘、頭が高い。」

 カズチが、時代劇によくある言葉を言う。


「カズチ控えなさい。怯えてしまうではないですか。」


「しかし、陛下。それでは、臣下に示しがつきませぬ。」


「子供の前では、そのような大人の事情は分からぬ事です。大目に見てやってください。」


「はっ!!」


 カズチの兵は、ミミを警戒しつつも連絡通路へ案内した。




「ミミさん。」


「はい。」


「テヲさんは、道中どうでしたか?」


「テヲ?テヲは、途中いやらしかったり、しょうもないことばっかりしてたけど、やさしいし、いざとなったら助けてくれるよ。ククと違って怒らないし、折檻もしないし。」


「あら、ククさんそんな人なの?」


「そうそう、ククはうるさいの。あれはいけない、これはいけないって。」


「あらあら、ククさん怖いのね。」


 連絡通路を行く途中、ヒルメとミミは雑談をしていた。ヒルメは情報を引き出そうと質問を投げかける。ミミは自分のいいたい事を言っている。

 もちろん経路を悟られない様、密室車両での移動である。




 ククは、何事が起こっているのか、部屋の中をウロウロしていた。

(「あの子、何をしでかしたのかしら。いつも言ってるじゃないの。余計な事をするなって。」)


 ククの心配なんて気にしないミミは、気ままに猫みたい。



 ククの部屋の扉が不意に開き、そこには、ヒルメとミミがいた。


「へえー。広いね。それに明るいし。太陽も入らないのにどうやって光ってるの?」


「あんた!!無事だったの!?何をしでかしたの?白状しなさい!!」

 説教モードに入る前に、ヒルメが口を挟む。


「まあまあ。ククさん。怒らないで。」


「しかし姫様、この子は人の言いつけを守らない子で、キッチリ叱らないと。」


「とりあえず、この子をお風呂に入れてやってほしいのです。それに着替えを用意します。この子に打ってつけの衣装もありますので。」


「え?お風呂?着替え?って、この子も幽閉するんですか?」


「人聞きの悪い。皆さんわたくしの客人ですよ。おもてなしするのは当然です。」


「では、部屋の外へ出る自由が欲しいのですが。」


「それは追々考えましょう。ひとまずは、確認が必要です。宿からあなたの荷物も回収したので、少々調査させて頂きます。」


「ええーーーー。ちょっと。勝手にいじらないでよ。ちゃんと整理してあるんだから。」


「性格的に、ちゃんと分類してると思います。でも粘土板の解析は骨が折れそう。だって分子構造の絵って、なんだか六角形とか何面体とか、舟虫なのかサソリなのか、ヤギに魚が生えてるようなものとか、お花みたいだったり、線香花火だったり、化学の本を見るだけで眠たくなってしまって、よっぽど数式があった方が救いがあるわ。」


「なんかひどい言い様ですね。」


「いえ、溶融塩増殖炉に使うトリウムやウランのフッ化物塩化学式は、どうしても理解しなくてはいけないと思うのですが、どうしても馴染めないんです。」

「だから、化学を専攻する人間がどうしても必要で、でも養成する機関がある訳でもなく、書物はあっても、使う人が居ないのでは、無用の長物です。」


「わたしの荷物いじって良いので、その本見せてもらえませんか?」


「良いですよ。ただし電子書籍ですから、端末が必要になります。それからその大半は、ジズのメインフレームに格納されていますから、あの塔のターミナルから衛星軌道上に行かなくてはなりませんが、協力いただけるなら読んで頂くのもヤブサカでもありません。」


「そうきましたか。」


「ええ。協力いただけるまで、説得しようと思っています。」


「コレは軟禁というのでは?」


「いえ、あくまで、おもてなしです。」


「ああーー、どうしたらいいの? そう、そういえばテヲは? ミミは分かったからテヲは? テヲはどこなの?どうしてるの?」


「彼は、別室で男同士の付き合いの最中です。」


「えっ!?男と男がつき合うの?」


「本来なら男女の区別なく行うのですが、今回は男性です。」


「今回は?何をしているの?いったい?」


「あなたと同じく、彼が何者なのかの調査です。あいにく難航しているようです。」


「ああ。そう。まあ、あいつは不思議ですからね。まるでムー文明をそのまま持って来たみたいな。」


「そこです。彼が我々と同じなのか、どの様に生き残って、どの程度の水準なのか。」


「考えてみれば、あいつはとても怪しい。」



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