18彼女達の思惑
「おそらくは、彼の国はこの大陸の北にある。あなたの故郷からそう離れてはいないはず。」
ヒルメは、確信するかのように言った。
「テヲの事は確かに謎ですけど、そう悪い人間ではないと思いますが。」
「なぜ、この大陸に黒人でなく黄色人種がいるのか考えたことがありますか?」
改めて言われると、疑問しかない。
「たぶん北の方は白い肌の人がいるのでは無いのですか?」
ククは聞き返す。
「確かに白い肌の人が住んでいます。しかし、ムー人とは異なる顔立ち、白い肌、グレーの髪、グレーに近い瞳。まるで、黒から色素が抜けたよう。たとえばあなたのような。」
ヒルメはククを見つめながら推論を展開していく。
「私は奇跡が起こって、白い肌、白い髪、赤い目になりました。そんな漂白みたいに白くなってないです。」
「そう。あなたは突然変異。しかし長年数万年かけて黒い人たちが、この大地と違い日差しが弱い、また寒冷に耐え得る身体を手に入れたと考えます。」
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アイスランド、スカンジナビアからスラブにいたる地域の人々は、本来黒人であったと考えられており、ストーンヘンジを作った人々は彼らであろうと推察される。
長年の寒冷、曇りがちな天候、短い日照によって、色素が必要なくなったため、別の部分へエネルギーをまわす。当初の白人は低い身長で、がっちりしていた。
海底に沈んだ、スンダ列島の大陸棚から戻ってきた人たち、他の土着の人類など混ざりあって現在に至る。
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「奇跡は各地で起こっているのですか?」
「いえ、突然変異自体は常に起こっています。あるものは残り、あるものは淘汰される。”進化”と彼は言っていました。」
「私も淘汰されるのですか?」
「環境に適応できなければ、そうなるでしょう。この大地で太陽をさえぎるものが無ければ死に直結します。まるで太陽を浴びると死ぬ、不死身の吸血鬼のように。」
「私は牛の血は飲みますが、太陽で灰にはなりません。それに不死身なのに死ぬんですか?」
「あ、いや吸血鬼というのは”彼”が話した物語の生き物で、他意はないのです。」
ヒルメの話は、あまりに唐突で、あまりに荒唐無稽で、何を元にしているかといえば、”彼”の話ばかりである。
「あの、私が力をお貸しするのに、なぜ”彼”のお話ばかりなのでしょう?」
ククは早く主題を知りたがったが、ヒルメは続ける。
「かの国は、ムー人と同じ人たちです。進化の過程に割り込んでこの地に住んでいます。あなたが生まれ変わりなら、テヲ殿はどこから来たと思いますか?」
「それは、陸地を渡ってたどり着いたのでは?」
「それでは、途中の道筋に同様な集落、文化が存在するはずです。たぶん漂流した結果たどり着いたのでしょう。わたくし達と同じように。」
「???それじゃあ、旅の途中で休憩もしないで、一気にたどり着いたと?」
ヒルメは、若干考え込んで。
ヒルメは、今まで現地語で話してたが、ムーの言葉で話し出した。
「たとえばわたくし達は、あの塔から降りて来ました。あの塔の上は”宇宙”があります。あの大災厄から逃れるため、わたくし達は、空の上、空を超え天の入り口まで飛びました。」
「そんな荒唐無稽な。」
「いえ、確かに天へ昇りました。”彼”が語った様に、彼の知識で作った乗り物で、天に。」
「天に昇って天国をめざしたのですか?」
「天国ではありません。だって天は何も無い、人が生きるには地獄そのもの。特別に防御しなければ、死に至ります。あなたが太陽を浴びるのと同じように、色素があっても宇宙で太陽を浴びるのは危険です。」
「そんな所でどうやって生きて、どうやって降りてきたんですか?」
「そこにあったのです。”楽園”が。」
「”楽園”?さっき地獄とおっしゃったではないですか!?」
「そう、地獄。しかしそれは我々の認識をあざ笑うかのように置かれてあった。
コロニーはご存知?」
「はい。でも地獄にコロニーなんて、得にならない場所どうして楽園なんです?」
「そのコロニーは、人が十分住める環境が整っていました。しかも自動的に。わたし達の宇宙船が収容できるくらい大きく、農場まであった。そうして、巨大な塔がありました。」
「その塔があれなんですか?」
「そうです。しかし一筋縄では行きませんでした。使い方がまったく不明だからです。」
「じゃあ、どうやって?」
「それは、わたくしが塔のコンピュータと同期したのです。」
「え?」
「その技術の解説はあとにして、使い方が解ってもいろいろ整備が必要でしたから、すぐとは行かなかったですが、この大地に降りてくることが出来ました。」
「・・・・・・ふぅ。」
ククの頭の中には、疑問がいっぱい。ほとんど妄言としか思えない。しかしあの塔は現実にある。そして、3000年前の人が目の前で、力を貸してほしいと言う。姫はどうかしている。いや、自分もどうかしていると思ってしまう。
「そのように、彼の国は海を往ったのでしょう。たぶん波を避け海中を。」
「海中を?」
「わたくし達は空でしたが、彼の国は海の底を行く船を持っていると確信しています。」
「海の底なんてどうやって・・・・・・」
「潜水艦というものを造りました。一度潜れば何年も浮上しなくても良いように設計しています。」
「はぁ・・・・・・」
やっぱりついて行けない。入ってはいけない領域に入ってしまったようだ。
「その潜水艦で逃れた人たちが、テヲ殿の先祖だと考えています。」
ヒルメは続けて。
「その潜水艦は、発信信号が途切れており大破しているか、通信を切っているか、動力が切れていると考えられます。」
「じゃあ、あるとはまだ分からない。まだ予測の段階なんですか?」
「残念ながらそうです。しかしテヲ殿を一目見るだけで同族だと判りました。あとはテヲ殿から事情を”聞き”、大使として”説得”しなくてはなりません。」
「それで、テヲを説得するため協力して欲しいという事ですか?」
「少し事情が異なります。”説得”はプロに任せています。」
気になる”説得”のプロ。どう考えても穏便に済ますとは思えない。
「テオに乱暴したりとかしてませんか?」
「今のところする予定は無いですが、彼の目的によっては必要かもしれません。」
姫の言う”目的”にはいろいろ含まれる。一言で言えば敵対行為である。
「テヲは無事に帰して!!悪い人でないし、結構やさしいところもあるし。」
「もちろん無用な手を掛ける気はありません。」
「・・・・・・」
「それで、力を貸して頂きたい事は、あなた自身しかできない事。過去の知識と今の発想力。”彼”がそうで在ったかの様に。」
地下では、いまだ進展が無い。
テヲ自身の目的は、このもう一つの同胞の国を探す事で特別な他意が無い。だから国を攻めるとか、友好を結ぶとかは、国に報告した後の話で、特に他の目的が無かった。
「君もしつこいね~。早くゲロしてくれないとおじさん困るんだ。」
「いや、俺の目的は冒険で、伝説の”月の山”を探しにきたんだ。」
王妃から教わった、あながち間違いでもない言い訳でも、相手は納得しない。
そこへ大柄な男が現れる。ほとんどピグミー(150cm前後のルワンダなどに住む人たち)なのだが、この男だけ2mに迫る身長。ほとんど別人種だがケニヤ高原周辺に高身長の人たちが住んでいる。
「まだ口を割らないのか。」
「はい。カズチ様、この男見かけによらず強情で。」
この男、カズチは屈強な身体、そして意思の強そうな面構え。
反してテヲは、筋肉はあるがこの男程ではない、顔立ちも優男である。
「まあよい。私が変わろう。」
「それは恐れ多い、カズチ様がそのような雑用なさらずとも。」
「いや、これは一大事だ。将軍自ら解決に動かなければならん。」
その男、カズチは天の根の国の将軍は、尋問官を押しのけテヲの前に立った。
「して、おぬし何者だ。女神と同じ肌と髪を持ち、ナイルの魔物を屠り、奇跡を起こす。おぬしも神なのか?」
テヲは神妙に聞いてはいるが、なんのこっちゃと思った。
「神ではないですが、女神は俺と似ているんですか?」
「似てなどいない!!。なんと恐れ多い。無礼者めそこに直れ!!」
カズチは槍をテヲの首にかける。
「いーやいやいや!!ご無礼を申しました。だからその槍除けてくれませんか。」
テヲが顔面蒼白で弁明する。
「いや。本当の事を吐くまではこのままだ。」
「ひー!?雄戯れを。」
「おぬしがしゃべればよいのだ。さあ、早く吐け。」
そのころ、ミミは作戦を練っていた。
「あの連中どうやって殺してやろう。」
物騒な物言いである。
「殺すのは我等の仕事。隠密にお任せくだされ。」
天井から降りてきた”忍者”はミミを制す。
そこに男達の声が聞こえる。忍者はさっと天井に消える。
「まだ時間がある。メインディシュに行く前につまみ食いだ。」
男達は、別の小屋から数人の少女を連れ出し、一つだけ整った小屋に消えた。
「ああ・・・・・・なんてこと。どうしてこんなひどいこと・・・・・・」
ミミが言葉をあげると、闇の中から声がする。
「あなたも災難ね。男には逆らえない。わたしのようになるのよ・・・・・・」
その声の主は、やはりミミと同じく年端の行かぬ少女であり、目に力なく声にも張りが無い。
「このままでいいの?私はあいつらと戦う。」
「大人の男にかないっこないわ。あなたもあいつらに犯される。もう私達にはどうにも出来ない。」
「それは、私が何とかする。だから・・・・・・」
「無理よ。もう私達は・・・・・・」
そこへ”忍者”が降りてくる。
「無理ではないな。策はある。”行為”中、油断しているところを切る。」
「でも、素っ裸で刃物なんて無いし。」
ミミは、道具なんて無い小屋を見回していた。
「大丈夫、歯がある。」
「は?歯で噛み付くの?」
「噛み付くというよりは、食いちぎるという方が正しい。」
「どういうこと?」
「それは、男のブツをブツッと・・・・・・」
ミミは赤面して口を覆った。
「く・・・口でするの?」
「ああそうだ。」
一人の少女が近づき話しかけてきた。
「詳しく聞かせて。どうせあの娘一人でなくて人数分連れて行かれるから、それにはじめに勃たせられるから、みんなでそういう流れに持っていく。」
「そうだな、先ずは油断させるために、口で・・・・・・」
「!口なんて嫌!!」
ミミは嫌悪感マシマシである。まだ処女の身ではつらいところである。
「まだ口なんて穢れたうちに入らないわ。」
周りの少女達の言葉はごもっともである。
「ミミ殿は、アームを身に着けているのであろう。すぐには剥きはせんだろう。ならばブツッといったあと存分に暴れれば良い。」
「だから、ブツッて嫌なのよ!!みんなもそうでしょう?」
「大丈夫。殺したいほど憎いから。」
少女達の目には精気が宿っていた。
「あー!奇跡でも起きないもんかな!?すべて吹っ飛ばすような。」
「アームには人の心に呼応する機能がある。ただしそれを引き出した者はおらん。引き出せれば奇跡も興せよう。」
「なーんでこの期に及んでそんな曖昧な!いまさらそんな設定出されても、何も出来ないじゃないの!!」
ミミは、余計な情報を与えやがってと怒って良いのか、喜んで良いのか、いろいろ入り混じった感情を”忍者”にぶつけた。
少女達は、夕方に向け準備を始めた。




