17現代物理の悪魔たち
「ミミちゃん。おじさんといい所行こう。お兄さんにも頼まれていたんだ。同年の子達がいる所に連れてってくれって。」
宿の親父が、テヲが頼んだ子供の面倒を見てくれる人を紹介してくれるのか。
「ふーん。なんで?」
いまさら、同年代の友達なんて子供じゃあるまいし、ミミは疑問しかなかった。特に惰性でここまで付いて来たとはいえ、さびしい事なんてなかった。
「おじさんは理由を聞いてないけど、きっと退屈すると思ったんだとおもうよ。今晩は晩餐会で帰れないだろうし。」
「別にわたしは、一人の楽しみ方とか? アンニュイな午後の過ごし方とか? 心得てるので、退屈なんかしないわ。」
背伸びしたい年頃なんだろうか?
「まあ、わたしはぁ(上向き口調で)そんなさびしいとか思わないけど?そんなに言うんなら別に行ってもかまわないけど。」
「じゃあ、おじさん案内してあげるから、準備はいつ出来る?」
「うーん。じゃあ、あと昼の2割くらいあとに。」
「おじさんその間、他の人にお仕事を頼んでくるから。」
託児所なのか、単に子供が集まる場所なのか。時間までミミは若干楽しみにしていた。
建物の影に2~3人の人影があった。
「どうだい、器量は。」
「なかなかきれいな肌だし、まあまあかわいい。」
「だんな。どっから手に入れたんだい?」
「いやあ。棚からぼた餅さ。今朝出かけた二人。門ひと悶着あったみたいで、戻ってこないだろう。身内もないしいい稼ぎになりそうだ。」
どこかから聞き耳立てる気配がある。
「・・・・・・」
気配がスッゥと消える。
「ミミちゃんいくよ。」
「はーい。」
二人は、町を歩く。少し遠回りをして、行く道が覚える事が難しい。
ぐねぐねと道をたどり、町のはずれにやってきた。
その場所には、森に隣接して小屋がいくつかあり、大半が倉庫のような建物だった。
どうみても、子供がうろつく場所ではない。
「ねえ、どこに行くの?」
ミミがたずねると。
「あとちょっとだよ。ほらあそこの小屋に入ろう。」
おじさんは、ミミの後ろに付き、小屋の扉を開けた。
「なに・・・・・・これ?」
暗がりの中には人影らしきものが動いていた。
おじさんは、ミミを小屋の中に突き飛ばした。
「ひゃん!!」
ミミはうつぶせに倒れこむ。そのままおじさんは中に入り扉を閉める。
「ミミちゃん。これからお友達と一緒だよ。おじさんも遊びたいから一緒に楽しもうね。」
「!!なにを言って・・・・・・」
ミミは周り見た。すえたにおいがする。男のにおい。
裸の女たち。ミミと同年代、幼女から結婚前の少女がうつろな目で、あるいは光をなくした目をして横たわったり、壁にもたれたり、生きる気力が失われているようだった。
「あんた!!なにしたの!!」
ミミはおじさんに怒声を向けた。
「おじさんね。小さい子が好きなんだよ。おじさんと同じで、小さい子が好きな仲間と一緒にこの”遊び場”を運営してるんだ。」
「なにが”遊び場”よ!!こんな事して。わたしはあんたなんかに負けないわ!!それに連れがすぐに気づくわ。」
ミミは、おじさんに向かってこぶしを作る。
「おっと。知らないんだね。あのお兄さんお姉さんは捕まったよ。今は塀の中であのお姉さんどんな目にあってるやら・・・・・・じゅるっ。あっ。想像したらよだれが・・・・・・」
「そんなの嘘!!絶対あの二人に限って、おとなしくしてないし・・・・・・」
ミミは、信じていたが、疑いは晴れない。
「だって、そうじゃなきゃミミちゃんを”遊び場”に案内しないさ。」
確かにすぐ足が付くような事は、しないだろう。
「この子かい?上玉って。」
もう一人男が入ってくる。女たちはおびえる。
建物の屋根裏には一人の間者が張り付いていた。彼らの様子をじっと見守っている。
「ほう?なかなかきれいな格好をしてる。いいとこの子かい?」
「旅のよそ者で、今朝連れが壁の向こう側に連れて行かれたから、今日から身寄りなしさ。」
ミミは元から身寄りなしだ!!と心の中で言いながら、二人の話に聞き耳を立てる。
「お連れさんはなにかやったのかい?」
「わかんねえけど、無理に入ろうとしたんじゃないか?」
「そんなハズはない!!だって晩餐会への招待をうけってるって・・・・・・」
ミミはとっさに反論してしまった。
「はっはっ。なんで代官でもないのに、よそから入れるのさ。冗談もたいがいにしないとな。おじょうちゃんっ。」
確かに招待状を受けているし、紋章だってもっているのになんで?と
「おじょうちゃん、しばらく待っててね。おじさんたち準備するから。ああ~楽しみだな。こんなかわいい子。」
「あと何人くる予定だ?」
「太陽が沈む前にあと6人来るはずだよ。よかったねミミちゃん、8人に遊んでもらえるよ。」
男たちはの腰巻から股間が確認できる。
ミミはぞっとした。でもすぐに逃げてやる。こんな親父ども、すぐに始末できるが、まとめてやってやる。と、算段していた。
男たちが小屋を去ると、ミミは男の体液のすえたにおいに耐えながら、周りを確認すると、人影が上から降りてきた。
「だれ!?」
「しー。静かに。」
その声は女性で、顔を隠しているが、目の周りは肌色で、テヲを薄くした感じでククの病的な白さよりは和らいでいた。
「テヲ様は大丈夫です。われわれの仲間が潜入しているので、命まではとられないでしょう。」
「命までって?大丈夫じゃないじゃない。」
ミミの言い分はごもっともで。
「ええ、テヲ様も多少の危険は覚悟の上です。そうでなければ謀はうまくいきません。」
ミミはこの人は何を言っているんだと考えた。
「・・・・・・テヲは、あんたたちの仲間で・・・・・・拷問にも耐えて口を割らない様な奴で・・・・・・!!」
「そういう事です。彼も訓練を受けています。このミッションを成し遂げるでしょう。」
「じゃあククは!!ククは普通の女の子でしょ?」
「クク殿は、たぶん大丈夫です。連れて行かれたところも、御所ですし。」
「えっ?どうなったか分ってるの?」
「ですから、仲間が連絡をするので。」
そのころククは。
「快適すぎる・・・・・・」
着替えたかわいい服に身を包み、お菓子がテーブルにあり、ソファーもある。
メイドさんがいて、身の回りの世話を焼いてくれる。
トイレやお風呂も部屋に設置されており、高級スイートルームに宿泊しているようだ。
「あの・・・・・・連れのものは・・・・・・」
メイドさんに話しかける。
「・・・・・・」
メイドさんは答えない。
「トイレに・・・・・」
「はい。かしこまりました。こちらへ。」
メイドさんは、必要なことにだけ答える。
「ヒルメ姫様はいったい・・・・・・」
メイドさんの目つきが変わり。手持ちの武器に手を掛ける。
「女王陛下に恐れ多い!!そなた不敬であるぞ!!」
「ひっ!!ごめんなさい!!不敬でした!!」
「分ればよろしい。女王陛下からは後にご配慮あると思え。」
なんだか解らず。ヒルメ様次第との解釈となった。
そうこうしているうちに、昼になり、あわただしく食事の準備が始まる。
昼食なんて珍しい。だいたい朝少し働いて遅い朝食を食べ、夕方まで働き夕飯を食べるのが普通だ。だが昼食の準備をしている。
しかし、テーブルが元から大きいとは思ったが、どう考えても一人分ではない。
でも、いすは二つで、間が空いている。
準備も終わり。ククがソファーにチョコンと座っていると、ドンッドンッと太鼓の音が近づく。それが扉の前で止まると、扉が厳かに開き、護衛と共にヒルメ姫が入ってくる。
「ようこそ御出で下さいましたクク殿。さあ語らいましょう。」
姫は高らかに宣言した。
「・・・・・・」
ククは、あっけにとられ、また動揺もしていた。
「あの女王陛下?コレはどういう・・・・・・」
ヒルメは、ちょっと困り顔であったが、理解はしている。
「約束どおり、お話がしたかったのです。予定通りとは行きませんでしたが・・・・・・」
「・・・・・・あの、連れのものは・・・・・・」
「・・・・・・ごめんなさいね。それは秘密なの。あなたなら解るでしょう?なんで見覚えのあるものを持っているのか。」
「・・・・・・あの・・・・・・お聞きしてよろしいでしょうか?いったいあの災害から何年経っているのでしょうか?」
ああそうか。と、ヒルメは予備的な知識の穴埋めが必要だと思った。
「そうですね。見ていないから解らないですよね。」
ヒルメはテーブルに向かい、席に着いた。
「まず落ち着いて話しましょう。あなたも席について。」
「はい。」
ククは自分の席に誘導され、丁寧に着席させられる。
「でー、君は、いったい誰なんだね?」
そのころテヲは、とある、殺風景な部屋で、尋問官、見張りの兵がテヲの取調べをしていた。
「だから、ククの護衛をかねて招待を受けたんですよ。」
テヲは先ほどから同じ事を繰り返していた。
「んー。みんなそういうんだよね。俺は悪くないって。でもね自分に正直になってみて話してみてよ。」
「だから、別に悪いことしに来た訳じゃないんですよ。」
「で、いったい目的は?」
「だから、ククの護衛をかねて招待を受けたんですよ。」
延々と繰り返す。
その様子を大柄な男が見ていた。
今朝、テヲに声を掛けた屈強な男だ。
「あの様子では、口を割らないだろう。処置室の使用許可を陛下に頂かなければならないな。」
男は、不穏な言葉を残し去っていった。
「それでね、あの男はわたしの胸をもむと言い出したの。」
「へー、それでもませたんですか?」
「そのときはだめでしたけど、そのうち。あー、いいかなーって。なんか幸せな気分になれたし。」
昼食会は、女子会の様相となっていた。
和やかに会話を進めるが、核心には届かないような内容で、ただの雑談。
「それで、生まれ変わりを信じるんですね。」
「そうねぇ。過去転生よりかは、通常ループだと思いますし、お話を聞けば、教養課程の時分で、あまり実用的な知識を持たずに、よくここまで再現しましたね。」
「それは、もう、見て、試すしかないですよ。教科書通りとは行きませんね。」
「それにしても、その人はよく覚えていたものですね。」
ヒルメはちょっと嫌な顔をして。
「古いことをネチネチ覚えていて、あの時ああやった、ああ言ったと、過去を事ある毎に言うんです。それはもう詳細に。しかも資料を保管していて、証拠を示すという徹底ぷり。」
ヒルメは続けて。
「あれは、覚えてますわ。いきなり別世界の数式を書き出して、解決しだすの。それはもう鬼畜のよう。だいたいの解き方もそうですし、地理歴史が頭に入っていて、どこに何が採れる。特産物とか、戦争が起こるとか、でも歴史は量子の揺らぎにより起こるとは限らないと言っていました。」
「えーやだなー喧嘩のたびそんなの。」
「でも、その知識や解決法が、他にはないモノなので頼りになるんです。本人は『”ラプラスの魔”でもあるまいし、全部は解らない。ただどうして転生できたかが謎で、|サイコメトリック フォース フィールド《精神力場》があるとして、他の人が気に止めない不確定の状態にあった粒子に、マクスウェルの魔のごとく都合のいい観測結果を選択した結果、反粒子を尺取状態で情報を受け渡して、過去に情報を送ったのでないか?』といって・・・・・・」
ククは途中から何を言っているのか解らなかった。
「あ。ごめんなさい。素粒子物理学が難しいですよね。」
「その人は、それでどうなったんですか?」
「いえ、そば付に任命する前に滅んでしまったので。でもあれだけの人間、わたくしの妹も一緒についているはずなので、脱出もできたでしょうし、わたくしの様に記憶をつなぐ方法を用いていてもおかしくないと思っているんですが、あっさり死んでいるかも。」
「でも、その人が生きていて欲しいんですね。」
「そうね。別れのとき贈った鏡にカメラと通信機をつけたのですが、地球の裏側で通信も届かない。あの時までは繋がっていたし、今でも時計修正に衛星にリンクがあるから鏡自体は生きているので、鏡の機能を理解していると思うんですけど。」
「子孫が生きているのかも知れませんよ。」
「そうね。あの人工子宮を通ると、分子マシンが体内に入って、数百年はノーメンテナンスで生きる事が解っているので、もしやとも思いますが・・・・・・」
「そんな年齢なんですか?」
「女性の歳は秘密です。まあわたくしは何世代目かの体ですが、3000年経ちましたし、歳を気にするレベルではありませんね。」
「でも3000年は長いです。」
「そうねぇ。死のうと思えば死ねるんですが、どうしてもやらないといけない事があるので、それまでは。」
「女王陛下冗談が過ぎます。」
お付のものが苦言を呈す。
「そうですね。でもあと少しです。あと少しで、手に入ります。」
ヒルメは、遠く北東を見た。
「ククさん。あなたにも協力をしてもらわねば。あのテヲ殿の国を知らねばなりません。」
「はい?確かに何も知らないですが、私に何が出来ますか?」
psychometric force field(精神力場)
・仮想の物理理論、重力と同じくヒッグス粒子のように、時空に埋まった粒子により”ハントゥ”(時間と空間)に干渉する。
・物質を構築する素粒子を測定し、その存在を最低限で確定する。
・素粒子としては虚数の値をとる。
自分の体験として、子供のころ、家族の場所が離れていても行動が見えた。たまに一瞬だけ映像が見えて、それが現実に起こる。夢を見ても現実に起こる事を見る。
それを説明するために考え続けていたが、たまたまこの物語の中で思いついた事もあって、物語のベース仮説として論じていこうと思う。
ラプラスの魔
・宇宙のすべての粒子をすべて計算し予測することが出来る悪魔。
マクスウェルの魔
・熱力学におけるエントロピーに逆らい、熱の受け渡しをコントロールする。
粒子の選択を行い、二つの容器の熱を片側に集めたり、拡散したりできる。




