15母なる水源
スッド 魔なる領域
湿潤地帯 母なる湿地
西洋的思考と現地での認識は異なる。
「どんだけ入り組んでたらこんな水路になるの?」
当然の回答だろう。ハッキリ言ってどうやって川上に行けるというのだろう。
無数の分岐があり、それが白ナイルの上流であると、どう判別可能なのか?
「それにしても、便利よね、その端末。ロックかけないでよ。」
ククは不満そうだ。いつもなら強引にでもこじ開けようとするのだが、コンピューター関係は詳しくないので、下手に触るとどうなるか。
「俺だって中身をよく知らないんだ。基本的に戦場で生き残るための機械だろうから、色んなものが入っているんだろうけど、解んないんだなこれが。」
「困ったもんね。調べれば今出来ない事が出来るようになると思うけど。」
ククはいじくっても、テヲ以外は何も反応を示さない板を恨めしく思った。
水路は船頭の案内によって、上流へと進んでいる。
「さすがに飽きてきたわね。水、草、魚。見渡す限りじっとり。」
地元の人でなければ迷うところだ。
「たまに、ワニがいるけど、退治できるから、そうも危険でもない。」
いや、危険だと思うんですが。テヲにとってはそうでは無いらしい。
「そんなこと言ってる間に、また来たわよ。ワニ。」
「おっし。一丁追っ払って・・・・・・!?」
それは、ワニと言うには大きい。いや大きすぎた。
「・・・・・・これ、どうやって・・・・・・、」
「お客さん!!引き返します!!すぐに陸に上がって!!」
船頭は、すばやく切り返しワニから逃げ出した。しかしワニはすごい速度で近づいてくる。
「このままじゃ、追いつかれるぞ!!」
テヲは、槍を手にし何か策が無いか模索していた。
「仕方ない。」
テヲは胸の内ポケットに手を伸ばし、カチリと音を立てるモノを取り出した。
「パンッ、パンッ」
テヲの手には拳銃が握られていた。
「そっ、それは火砲!! でも何かおとなしい。あっ、やじりを飛ばしてるの?」
ククは、理解した。コレが火砲の使い方だと。ククの知識では銃はレーザー銃だったからだ。
「だから見せたくなかったんだ。お前ならすぐ模倣するからな。」
テヲは、銃を撃ちながら、話しかけた。
ワニは銃の弾など気にも留めず、さらに距離を縮める。大きさも通常の5mを超える。
「あと、もうちょっとなんだ!!どうにか足止めしてくれ!!」
船頭は、陸へ船を寄せようとしていた。
「何か投げるもんない?」
ミミはアームを展開して準備していた。
「お前は逃げる準備をしろ!!下手に相手に目をつけられるとお前が危ない!!それより陸に飛んで、船を引っ張れ!!」
テヲは、ミミに指図した瞬間、ワニが船に噛み付く。
「おあああああああ!!」
「ミミ、船頭さんとククを抱えて飛べ!!」
「でもテヲは!?」
「大丈夫だ!!早く!!」
テヲは銃を構えワニの目をねらう。目には当たらなかったが、ワニは船から離れた。
「じゃあ、いくよ!!」
ミミは二人を抱え陸へ飛んだ。
「これで、俺とお前だけだな。」
テヲはワニを睨んで、相手の様子を探る。そいつは10mをゆうに超える。まさに怪物。
テヲはアームを展開する。ミミに渡したものと違って、特殊部隊用だ。
「じゃあいくぜ!!」
テヲは天高く飛ぶ。ワニの後ろへ回り込む。
ワニは、テヲを追う様にえびぞりになりジャンプした。
「あぶねえ!!」
テヲにワニの大きく開かれた口が襲い掛かる。槍をワニの口先に突き立て間一髪逃れる。
ワニは、水面に背中から落ち、大波が立つ。
テヲは水面に到達した瞬間。大きく水面を蹴り上げた。
「スパパパパパパパパ・・・・・・・」
テヲは水面を走る。アームの本当の使い方はコレだと云うように。実際には一歩目は水草の上を選んでいる。
仰向けになったワニの足へ槍の先を向ける。一瞬ワニの上をテヲが通り過ぎた。
「ズバァー」
「ウボゥボゥボー!!!」
ワニは叫び声をあげる。ワニの足は根元が切れ左前足が不自由となった。
「よし、もう一本もらうか。」
テヲが襲い掛かるとワニは、察知しすばやく泳ぎだし、背中側にひっくり返った。
テヲは、ワニが逃げるものと思い、陸に向かって水面を蹴る。
「ふう。コレで一安心だな。」
「テヲ!!後ろ、まだ来るわ!!」
ククが火砲を手に叫ぶ。
後ろには大鰐が勢いに任せ陸にスライディングしてきた。
「おわわわ・・・・・・」
先に陸に上がった3人とテヲは一気に四散した。
「まだやるってのかい?」
テヲは、再び槍を握り締める。
大鰐は、後ろ足をやられていた為、陸にあがったのはいいが、動きがぎこちない。
ククは爆弾をミミに渡し、ミミはワニに投げつける。
「どかーん」
大鰐の左前足が吹っ飛び動きが止まる。
「今だ!!もう一本」
今度は、左後ろ足。
「もう一発いっくよー」
後ろ足が爆弾により吹っ飛ぶ。効率よくパーツを引っぺがしていく。
あとは、一本ずつ始末していくだけだ。
「ウボゥォォォォォォ!!!」
大鰐は最後の抵抗とばかり、残った足と胴体をうねらせタックルしてくる。
テヲは、大鰐の足の無くなった側面に周り、切り付ける。そうすると大鰐は振り向く。
切り替えして、再び足をねらい、足を吹っ飛ばす。
こうして大鰐は、蛇のようになり身動きとれず、大量の血を流し果てた。
「はあ・・・・・・やっと終わった・・・・・・」
「たすかった~。コイツはたぶんヌシですわ。何人も居なくなってるんで、コイツにやられてたんだ。」
船頭は、さらっと危険な情報をいまさら言った。
「・・・・・・いまさら?まあ危険は付き物だけど・・・・・・」
ククは、釈然としないまま飲み込んだ。
「あーあ。刃がボロボロだ。」
テヲは槍先にしている、チタンのナイフを見て落胆していた。
「チタンの刃なんて研ぎなおせないぞ。」
「鉄なら何とかできるけど、チタンはねえ・・・・・・しょうがないから鉄のナイフで我慢しなさい。」
ククもチタンは加工ができない。そもそもチタンは工具や武器に使う様なものでない。
「鉄ならもっといい物、打ち直してあげるから。」
「でもなあ。一応借りもんだし・・・・・・」
「しょうがないじゃない。物はいつか壊れるの。」
そんなこともありつつ、大湿原に別れを告げ、高低差のある滝をこえ、セムリキ湖の湖畔にある、天の御柱の存在が大きく見える。
「あれはなんなの?」
「俺に聞くな。」
かくして、王都のあるシーバ地方にクク達は到着した。
この地は、365日のうち360日雨が降る、湿潤地帯。
宇宙エレベータは、現在の地球では、アフリカ寄りのインド洋、太平洋のど真ん中に建てるが、この当時、いやもっと以前は、この地が適していたのだろう。
この未知のテクノロジーを支配している女王。天の根の国。クク達に何が待っているのだろう。




