13鼠の穴
アゼリク(タケッダの前身と思われる)
銅の産地
銅は、古代と現代においてかなり重要な金属である。
青銅時代の前に銅(純銅)の時代があり、メソポタミアでも赤色の銅斧などが製作されていた。
現代の銅は、電線など電材で使われることが多い。銅はアルミニウム(AL2O3 サファイア、ルビー)、シリコン(SIO2 石英、水晶と同じ)と同じく、酸化皮膜を持つため非常に耐食性に優れる。(CUO、CUO2)
テルル銅、などは端子間で熱起電力小さい(純銅と酸化銅同士の起電力は最悪なので、ニッケルめっきや金メッキ、オーディオマニアだとロジウムめっきとかが施される。)ため、弱電で使われる。
ベリリウム銅は強度が銅合金では最も高い。自分の中のイメージだと、ダイヤル抵抗器や標準抵抗器がベリリウム銅の巻き線で、抵抗温度特性が優れていると思っていたのだが、一般には防爆工具、楽器などに使われている。
残念ながら純銅は強度に期待できず、重くて、融点が高い。(1098℃)
そのため、青銅器時代の人々は、スズと混ぜて青銅にしたため、融点が下がり、鉄に劣るが強度を増すことに成功した。
鉄は、そのままだと酸化皮膜を作らないため、あっという間に赤さびになる。(黒さびは、耐食性がある。酸化鉄Ⅱ、Ⅲの位相による。位相は結晶内で構造が変わると起こる。
新素材を作るにあたって実験室で、とりあえず混ぜて焼いて、測定して、一喜一憂する。うまくいったら、もっと調べて、モードがどうこうと言って、やっぱり良くわからないので、再び混ぜ始める。)
アゼリクでは、天然で銅が析出している部分があり、人々はそれを目当てに集まっていた。
この当時、金属は貴重な存在で、鉄、金についで、使用された。鉄は、『鉄の魔法』で得られ、金は精錬なしで天然で存在する。残念ながら銀の登場は、自然銀を除けば、化学特性の関係で後世になる。
クク様ご一行は、陸路でこの町にたどり着き、またしても材料集めを企んでいた。
「銅って、電気とか熱を通し易い点と、毒だから殺菌に使える点、金属に少量混ぜると性質が変わる点があるけど、やわらかくて重いのよね。」
「電気なんかないのに、どうして知ってるんだ?超文明の記憶か。」
ククの言葉とテヲの言葉は、周りの人々からしたらチンプンカンプンだろう。
「まあね。電気文明があったころの記憶があるから。電気があったら、楽なんだけどな~。って、電気知ってるの?」
「電気って、いいものなの?」
ミミが2人に疑問を投げかけると。
「そのアームだって電気で動いてるんだぞ。温度差発電で逐電してるんだ。」
テヲが解説を加えると、ククは驚きと、落胆を交え。
「そういうことは、初めに言いなさいよ。未知の動力で動いているものと思ったわ。」
「わるいな。話してもわかってくれないと思ったからな。」
「そうなんでしょうけど、どんな原理で動いてるのやら気になるでしょ?」
「わたしは気にならなかったよ。だって魔法があるんでしょ?」
ミミにはどうでもいい様だ。
「他に、電力で動くものとか、バッテリーとか持ってそうね。」
「ライトとか、ちょっとしたものはある。でもだいたいが野営用の道具でまかなえる。」
「そうね。結構信じられないアルミの焚き台とか、いすとか、あんたがいた国は、アルミ精錬に使う電力が有り余っているのかしら。」
「電気を使うのは、国のごく一部の人たちだけで、夜の明かりや煮炊きは薪だよ。」
「でも、チタンやアルミは精錬のとき電力を使うのよ。その道具はそうやって作られたものよ。」
「コレは、旅に出るとき餞別代りに失敬したのさ。」
「こんな貴重なもの。あなた死刑になるんじゃない?」
「それは、たぶん大丈夫。(王妃さまが実は渡してくれたし)」
「いや、絶対追われているわよ。ほらそこの影とか。」
そこにあった人影がさっと消えた。しかし、ククたちは気づかなかった。相手は訓練を受けている隠密の様で、静かに消えていった。
「とりあえず、銅を買い入れます。重いからあんまり買わないけど。」
鉱物を取り扱う市の前で、掘り出した原石を持ち寄る人と、加工した製品が並んでいる。
「銅山の中に、光る壁があるんだ。でも採ると調子が悪くなるんだ。なんとか調子悪くならないように、ならないのか・・・・・・」
とある鉱夫が仲間の鉱夫に、ぼやいていた。
「あれは何なんだろう?でも大地の神が人間のために置いたものだから、何かの役に立つんだろう。」
「光る石は、どんな感じなの?」
ククはその鉱夫にたずねた。
「お嬢チャンには関係ねえよ。これは鉱夫の話だ。そんな細腕、助けにならんよ。」
鉱夫は、犬や猫でもはらう様に、”シッシッ”手を掃った。
「ちょっ、聞いてやれよ。もしかすると、どんな物か判るかもよ。」
テヲは、ククのフォローを入れ、鉱夫に文句を言った。
「兄ちゃん。この嬢チャンに石の事が解るもんか。石の事は石に触れているモンが良くわかるってもんだ。」
「いったわね。じゃあその石見せてみなさいよ。」
ククは、鉱夫の言動に、カチンと来て、思わず口を挟んだ。
「嬢チャンには解らんよ。暗闇で光っている。タダそれだけなんだが、最近、だるいし、石を採った手は、腫れてしまって、のろわれているのか?」
「・・・・・・あんまり近づかないほうがいいわよ。その石放射線が出てるわ。採った石も捨てなさい。身の回りのものも全部捨てて、新しいものに換えて。」
「なんてことを言うんだ!!あんたに話した俺がおかしかったんだ。じゃあな。」
鉱夫は、怒って立ち去ってしまった。
「早く追うわよ。石を捨てさせないと、この町ごと滅ぶわ。」
ククは、テヲの裾を引っ張って、急いで鉱夫を追った。
「どうしたんだいクク。血相を変えて。」
「光る石は、放射能物質よ。体がだるくて、手がはれるなんて、相当放射線を浴びているわ。」
「光る石に力があるのか?そうは思えないけどな。」
ククはテヲがそんな認識なのかと面食らった。
「電気は、その光る石を使って作るの!!なんで知らないの?」
ククの言う電気は、超文明では原子力で作られている。火力や水力は範疇外だったのだが、テヲが知る由もない。ただ、彼の国では、副器に原発、主器に核融合炉を用いているので、まったくの無関係でもない。
かくして、かの鉱夫の家にたどり着いた。
「ここがあの鉱夫の家ね。」
「クク。いったい何があるってんだ。・・・・・・ピーピーピーピーピーピーピーピーピー]
テヲの胸で音がなる。
「何の音だ?」
「ピーピーピーピーピーピーピー」
彼の持つ総合端末に、メーターが映し出されている。メーターの針は赤色で示す危険域にあった。
「なにそれ、携帯端末?やっぱりなんか隠し持ってたわね。なんかわたしの持ってたのと似てるわ。」
端末をみて、ククはテヲからそれを奪い、確認してみると。
「コレ、ガイガーカウンターなの?けっこう危ない数値よ?」
「そうなのか?でも危険がありそうな音はしてるな。」
相当危ない数値のようだが、まだ鉱夫が生きているという事はまだ間に合いそうだ。
「どうしよう。除染の準備なんてしてないし。それに放射線避けに金属箔とかほしいけどないし・・・・・・」
そこを見ていた影は、またどこかに消えていった。
「とりあえず、おっさんに声をかけよう。」
テヲが家の中に入ろうとした。しかしククが止める。
「あぶないわ。防護服が必要よ。あなた持ってる?」
「防護服?鎧みたいなもんか?」
「いいえ、使い捨てで、フィルターのついた服。ガンマ線を防ぐために金属箔が張られたほうがいいわ。」
「たしかそんなのがあった気がするけど、中に金属なんてあったかな?」
「早く準備して。あと鉛の箱があるといいんだけど。」
「鉛の箱はないぞ。さすがに・・・・・・缶詰ならあったか?」
「早く持ってきなさいよ!!」
テヲはククに急かされて、宿に急いだ。
「どうしたモンかしら。あのおっさん言うこと聞かないし・・・・・・手っ取り早く有害と解らせる方法は・・・・・・」
テヲが宿に急ぐと、一人の男が近づいてきた。
「すみません。コレをもらってくれませんか?先ほど知らない白い人から渡されたのですが、気味が悪くて・・・・・・『肌が白い人がコレをほしがる人がいる。わたしと同じく白い人だ。』と言って。」
見ると、白い不織布のツナギの様なもので、おあつらい向きにテヲと同じサイズだ。
「ちょうどいい。もらっておこう。(王妃のさしがねか?それにしても監視付とはな)」
テヲは、ツナギ、手袋、マスク、ブロアー、袋、採取用箱を受け取った。そうして、再び鉱夫の家へ舞い戻る。
そのころ。
「おじさん!!最近調子悪くない?吐き気とか、髪が抜けたりとかー」
ククは鉱夫に話しかけ、最近の状況を聞きだそうとしていた。
「なんだ!!さっきの嬢チャンか!!石のことかと思えば、俺の事が気になんのか?たしかに調子は悪いが、お嬢チャンの心配するこったねえ!!」
「それが大ありなのー。その石、おじさんの命を奪うわー。おじさんだけじゃない。この家、この村、その石があるところは、ずっと何世代もそうなるわ。早く死の村になる前に石を捨ててー。」
「この石がそんなに悪いモンなのか、証拠を出してみろ!!」
「じゃあおじさん、その石採ったところ、生き物がいたー?」
「もともと、鉱山には生き物なんていねえよ。中でネズミが死んでたな。」
「それは、その石が毒なのよ。大地の鉱物はだいたい毒だけど、それは特別ー。」
そんなやり取りの最中、テヲが戻ってくる。
「こんなのでいいのか?」
ククに見せると・・・・・・
「こんなものがあるなんて・・・・・・もっと簡単なものかと・・・・・・どこにしまう場所が・・・・・・」
「そんなことより、おっさん。助けるんだろ?」
「そうね、ただいま説得中よ。」
「でー、嬢チャン。この石本当にやばいのかい?」
「やばいなんてモンじゃないわ。持ってるだけで、地獄行き。しかも悪くなったら治療ができない。」
「解ったよ。確かに調子悪いし。石は捨てるよ。」
「それだけではだめなの!!触れたものすべて除染しないと。」
「それはどうするんだ?」
「触れたものをとりあえず洗って!!、洗えないものは袋の中で掃って、この測定器で音が鳴らない様にして。」
テヲが防護服を着込み、準備万端で待機していた。
「クク。準備できたぞ。」
「じゃあ、おじさんに準備してもらうわ。」
「おじさん!!いまから、一人向かわせるから、石とそれに触れたものが解るように準備して!!」
「お、おう。」
鉱夫は返事をした。
「じゃあ行って。」
ククはテヲに合図すると、テヲは鉱夫の家に入っていった。
テヲは、汚染されたと思われる物を袋に入れ、石は採集箱に入れておじさんと共に家をでた。家の前でもう一つ袋を広げおじさんをハンドブロワーで吹いて、放射性物質を掃った。
こうして、ひとまず放射線物質を隔離した。放射能汚染の危機は脱した。
「お嬢チャン。なんで、光る石のことを知ってるんだ?」
当然の疑問であるが、自分が過去の文明人であることなど信じてもらえるわけがない。
「過去に似たような事があって、ずいぶんひどい事が起こったのよ。」
過去の原発事故。と言っても何千年も前だが。
「そうかい。それで・・・・・・どのくらい亡くなったんだい?」
「うまく封じ込めたから、たくさんではないけど、犠牲者がでたわ。」
「俺はもう少しで死ぬところだったのかい?」
「放射能の量から大丈夫だと思うけど、口に入れたりしなければ。」
「そいつはしてないな。いくらなんでも。」
「なら、しばらく安静にして、水をたくさん飲んでね。体の中に入ってないとは思うけど、念のため。」
「お嬢チャン。病気の世話をするまじない師かい?」
「いいえ。鍛冶の仕事もするミルラケムよ。」
「お嬢チャン鍛冶師かい。それは石にもくわしいかろう。」
「そうでもないですけど・・・・・・ところであの石はどこで採れたんですか?」
「いつも銅を掘るより北に行ったところにある穴さ。」
後日、その穴周辺に行くと、ガイガーカウンターが大きく反応する。
さっそく入り口をコンクリートで固め、ふさいだ。
現在、アルリット鉱山ではウランが掘られている。この鉱床が見つかったのは、20世紀になってからである。




