12黄金の町
バンバ イフォラ川(タハト山より流れる)とニジェール川の合流地
現代のバンバはニジェール川を挟んで北側であるが、この時代は南の台地にあり、
便宜上バンバと表現しているが、別の町である。
ニジェール川は今より幅が広く、湖のように広がっている。川の北は湿地帯で、陸を歩くより水路を伝って移動するほうが便利な地域だった。
ニジェール川周辺は、アフリカ米のふるさとであり、乾期に種を蒔き、洪水というか水位が少しずつ上がっていき、大人の胸あたりまでになる。稲は水位上昇と共に伸び、穂は水面を草原に変える。水が流れているので農薬いらずであり、肥料もいらない。
クク様ご一行は、大河を上り、イフォラ川の上流で馬車を塩と交換し川を下ってきた。
川の合流点であり、北の塩、南の金の集積地となっていて、とても栄えていた。
「金はあるから、塩をなにに換えよう・・・・・・」
意外と交換するものが無い。通常、金に換えるのだが、金の細工物など加工によって付加価値をつけたものを、売り物として持っている。
だいたい塩と金は、交換物のツートップだ。スパイスがあれば、金と同じ重さで取引するのだか。
「ダイヤモンド、ほんとは価値あるのに・・・・・・」
ククの前世の記憶では、希少価値があるものでも、加工が出来ずしかも使いどころがない。市場に出たとしてもくず石扱いなので、唯の透明な石。
「はぁ・・・、まったく価値がわかってない・・・・・・」
「いいんじゃね。いいものを値打ちで換えるんだから。」
「そうはいってもねぇ・・・・・・」
とりあえず、日々の消耗品や、材料は手に入る。しかし、日用品は結構、入用である。
ククたちは、この大きな町で、チャド湖を渡る前の陸路を行く旅の準備を整えていた。
この町にひときわ大きい建物がある。その建物は、貴重品である金と塩を保管する大事な蔵であった
『コンだけの町、お宝がいっぱい。あの建物あからさまに怪しいし。』
ミミは、子供らしく遊んでいるのかと思えば、オツトメの物色であった。
『あの建物、丈夫そうだし、見張りもいっぱいいるから、あそこに金があるのね。どうやって入ろう。』
結構、不穏なことを考えている。そんなときにやはり、同じ様な怪しい影があった。
『何べんでも成功するまでやってやる。』
金品の強奪を主とする野党の一人が、算段を重ね、繰り返し押し入るが、そのたび失敗し、警備も厳しくなっていった。
「ねえ。どうやって入るの?」
「!!、てめえなんでわかった!?」
「だって、あからさまだもん。そんなの同業ならわかるよ。でどうやって入るの?」
「おめえみたいな子供に言うすじあいはねえ!!同業ってんなら、わかるだろ?邪魔すんな。」
「えー。私も興味あるんだっ。それに私役に立つよ。」
「だからおめえみてえな、子供が・・・・・・」
ミミはアームを展開前の状態で装着している。装甲と装甲をつなぐバンドは関節の運動を補助しているため、展開をしていなくても、力を出すことができる。
ミミは軽く、街路の壁の上にジャンプした。
「ほら。コレくらいの壁なら簡単。もっと高く跳べるよ。」
「おおおおおおおぉ!?どんなに身軽なんだよ、ウサギか?」
「まあね~。あの建物の壁って高いよね。大人の背丈の4倍くらい?2倍くらいだったら跳べるけど。手伝ってくれたら飛び越えられるかもね。」
「おう。おれっちの肩からとべるか?」
「うーん。ちょっと不安よね。もうちょっと高いといいんだけど。」
「俺たちの仲間を呼んで、お前が飛び越えられる高さまで、高くすればいいのか?」
「うん。いけると思う。でも飛び越えたら、敵のど真ん中なんていやよ?」
「大丈夫だ。見取り図もある。安全な場所に下ろしてやる。」
「じゃあ決まり!!いつ入る?」
「早いほうがいいな。今晩でもいいか?」
「いいよ。私もそんな何日もこの町にいないし。」
「よし。じゃあお前は今から俺たち”ゴールデンディザスター”の郎党だ。」
「ゴールデンって事は金専門なの?」
「あれだよ。金は効率がいいからな。」
ミミと野党は結託した。
ミミは夜中、こっそり宿を抜け出し、野党との集合場所に向かった。
「で、どう入るの?」
「まずお前が壁の内側に入るのに、大人が四人で足場を作る。その上から跳べ。」
「そんで、中に入ったらどうすればいい?」
「とりあえず、壁の向こうに行けるように縄をかけて建物の柱にでもくくってくれ。」
「りょーかーい。じゃ、気づかれない様に自然にしなきゃね。」
「夜中だぜ。だいたい怪しいだろ?」
「そりゃそうだ。あはは。」
黄金と塩の守護者、シシオ。
彼は、蔵の守備を任された戦士だ。
「今晩も、異常なし。賊たちも最近はおとなしい。」
ミミ達は、警備の手薄なところへ行き、さりげなくすばやく、組体操で、下に3人、上に一人のり、台を作った。
ミミは、人の台をよじ登り高さを確認した。
「ちょっと足らないよ。いっぺん降りるね。」
ミミが降りる前に。
「じゃあ俺がもう一段上に行くよ。」
下段のうち、小柄な一人が、組体操の1段目から抜けると、急激にバランスを崩し、台は崩壊し、ミミは地面に強かに打ちつけられた。
「ミミ!!だいじょうぶか?」
テヲが物陰から飛び出した。
「ててて、一番下のやつが抜けるんじゃねえよ。まったく。」
「嬢ちゃんだいじょうぶか?」
「てめえら、いったいミミに、何させようとしてんだ!!」
テヲは野党にむかって怒鳴り声をあげた。
「おめえは何もんだ?嬢ちゃんの知り合いか?でも見られたってんなら生かしちゃおけねえ。てめえらやっちまえ!!」
「くう!お前たちの相手はしてらんねえんだ、早くミミを手当てしないと・・・・・・」
ミミはピクリとも動こうとしない。とても心配だ。
野党どもはテヲを取り囲み、一斉に襲い掛かる。テヲは一人目をさっとよけ後ろから槍で撃ちつける。一人倒れ、もう一人が正面から切りかかる。それを槍で受けながし、手刀でいなす。
野党どもは警戒し、テヲに攻めかかれないでいた。
「そこで何をしている!!曲者どもだ!!であえであえ!!」
警備の人間が、人間の塔が崩れた音を聞きつけ、やってきた。
「やべえ!!逃げろ!!」
そこに一人の男が立ちはだかる。
「そこまでだ!!神妙にいたせい!!」
”黄金と塩の守護者”シシオだ。
「野郎!!シシオだ!!」
「どうする?殺るか?」
「俺たち、勝ったことねえじゃん。逃げるぞ!!」
野党は逃げた。しかしシシオに回り込まれた。
「お前たちの悪事もここまでだ!!」
手に持つ槍であっという間に、野党を制圧してしまった。
「お前は何をしている。野党の仲間か?」
シシオは次にテヲに目をやった。テヲシシオが制圧している間に、ミミの介抱をしていた。
「まて、俺は怪しいものじゃない。それにこの子を何とかしないと。」
「こんな時間に、武器を持ってうろついているヤツが、怪しくないと申すか?」
返事を待たぬまま、シシオはテヲへ槍先を向ける。するとスーと流れるようにテヲを槍先が襲った。
テヲは、捌く事ができず、必死によけた。まったくこの男、大層な手だれである。
「まってくれ。俺はあいつらの仲間じゃない。ここに何があるってんだ。」
「しらばっくれおって、ここが金と塩の貯蔵庫だと知らぬと?」
「そうか、そういうことか。この子があいつらにたぶらかされたんだな。」
「その娘、ひどい怪我をしているようだが、野党どもに襲われたのか。かわいそうに。」
「早く手当てをしないといけないんだ。そこをどいてくれ!!」
「その様子では、助からないのではないのか?町の占い師に見てもらって、運命を定めてもらわなければ判らないが。」
「そんなんじゃねえ!!適度に治療を施せば助かるんだ!!」
「わからぬ。原野ノ神に相談なしには出来ぬのでないのか?」
「そんなことより、町の宿にククっていう俺のツレがいる。そいつにミミの命が危ないと伝えて、薬を用意して持ってきてくれ、と伝えてくれないか?」
「そうか、でもお前の疑いが晴れた訳ではない。あとでゆっくりと聞かせてもらう。先ずは中に入れ。」
ミミをなるべく動かさない様に寝かせ、意識があるか確認する。
「ミミ、ミミ、聞こえるか?」
「だい・・・じょ・・・きこ・・・る。」
「目は見えるか?体は動くか?」
「みえるよ・・・、いっ・・・つ、せなか痛い。わたし、へまをしちゃった・・・・・・」
一応、アームで保護されていたので、骨折とはならなかった様だが、打撲がひどい。
「テヲ?こんな夜中にいったい何があったの?」
「クク!!ミミが高所から落ちた。急いで打撲と切り傷に効く薬を・・・」
「ミミ!!いったい何をやったのよ?頭は打ってない?」
頭には、傷は無いようだ。うまいことアームが受身の態勢をとってくれたおかげだ。
「この布と炭で水を濾したあと、沸かした水を持ってきて。ボサッとしてないではやく!!」
ククが蔵の役人に命令をした。役人たちは、ククのテキパキとした手際に圧倒された。
ククは打ち身に効く軟膏と薬草の葉、血止めの油と化膿止めを用意し、ミミの背中を沸かして冷ました水と蒸留酒で浸した綿で消毒し、薬を塗って、葉で湿布した。
「まあ、命に別状ない。数日すれば、痛みはひくはず。」
「で。いったい何なの?」
「ミミが、どうやら盗賊にだまされたみたいなんだ。」
「まったくこの子は、悪い癖が抜けないようね。どうやっておしおきしようか。」
「貴様ら。何を話しているんだ?俺にもわかる様に説明してくれぬか?」
シシオが、彼らの会話を聞くに、いぶかしめな内容が含まれている。まだ疑いが晴れてはいないのだ。
「ちょっと話は長くなるんだが、いいか?」
テヲは、この旅に出るいきさつをシシオに語った。
「なるほど、でも盗みはいけない。今回は被害が無かったが、心に穢れがあっては再び間違いを犯す。穢れを清めていきなさい。けがが癒えたら、川と大地に生贄を捧げ清めていきなさい。」
「穢れを清めるより、この子をセッカンしたほうが効きましてよ。いっそこのまま治療をやめて、痛みを残してもいいくらい。」
ククは、日ごろ言うことを聴かないミミに、ここぞとばかり報復していた。
「せっかく、治せるというのにそれは可哀想ではないのか?」
「いいんです。いい薬です。」
テヲはシシオに目配せして、話半分できいてやってくれと伝えた。
「して。先ほど、女王陛下の元へ参ると申しておったが、それにしては準備が少なすぎると思うが、路銀は船いっぱいの穀物でも足るまい」
「それは、この金を渡されたから。でも大半はククの彫金で腕輪とか指輪とかに変わっている。まだ、コレとは別に用意したもので足りているから、使ってはいないけど。」
テヲは解説すると。
「まだあまってるわよ。2枚の延べ板のうち、1枚を溶かしていろいろ作ったけど。」
「それを拝見させてもらえないか?」
シシオは、何かしら思うところがあるのか、延べ板の確認を所望した。
「はい。いいですけど、盗らないでね。」
「そんなことは断じてない。」
守護者に対して失礼な事を言いつつ、延べ板を見せた。
「これは、この地より、女王陛下に献上した金だ。この鋳型の紋章は王家に収める際に使うものだ。真に女王陛下に謁見するのだな。」
「へー。そういうもんか?」
「そういうもんよ。あんたは、よそから来てるから知らないだけよ。」
ククはさも得意げに言うが、紋章についてはよく知らない。
「この紋章に王家代行の印がある。これを示せば、誰しもが従うだろう。女王陛下からのお墨付きだ。」
「へ?そうなの?」
「すごい便利なものもらってんだな?」
知らなかったらしい。
「コレで、お前たちの嫌疑は晴れた。しかしながら、清めは行ってもらう。」
とりあえず、許してもらえる様だが、血なまぐさそうな清めの儀式は嫌だとククとテヲは思った。
「ちょっと!やめてよ!いやよ!」
ミミの傷も癒え、清めの儀式を行うため、川のほとりにやってきて、鶏を生贄にし、大地と川に流し、ミミを川に放り込む。
ミミが川からあがろうとするので、ククは足蹴にして、頭から沈める。
「あばばばばば・・・・・・やめ・・・・・・ゆる・・・、ぷはぁ・・・・・・」
軽い拷問である。
川が血に染まるがしばらくすると、ワニがやってくるのでそこそこに引き上げる。
「死ぬかと思った・・・・・・人をなんだと・・・・・・」
「コレに懲りたら、二度と悪事をしようと思わないことね。」
「まあ、まあ、それくらいで許してやれよ。」
「約束通り清めてきました。」
蔵の守護者、シシオの元に再び三人が出頭した。
「穢れを清め、正常に整えられた。ではこの地を離れるのだな。」
「そうですね。さすがに留まりすぎました。先を急がないと。」
「そう急くものでもない。ちょうど祭りの時期だ。近く湖で魚を捕る。魚を食べ放題になる。」
「へぇー。でも先を急がないと。」
「そうか。仕方あるまい。一生に一度しかであえないものもあるからな。王都からの帰りにでも寄っていくがよい。」
「はい。そうさせてもらいます。」
こうして、クク様ご一行はバンバを出発した。




