11竜の谷
ウワダンの町
テヲの欲求不満解消の探索は続く・・・・・・
”『どこにもねえじゃんかよ・・・・・・娯楽施設が・・・・・・どうなってんだ?』”
そう、どれだけ探してもない。酒を飲むところはあるが、大人の遊び場がない。
ハッキリ言って、こんなことは世界中どこへ行ってもやっている。じゃあ何で無いのか?ということはすぐに分かった。
ちょっと物陰に入ると、男と女が淫蕩にふけっているのである。実はそこらじゅうで。ただしルールはあるようだが、テヲがそれを知る由も無い。
(事実ヨーロッパ進出前のアビシニア(エチオピア)では、祝いの席では当然のように行われていた。)
”『どうなってるんだ、この町は・・・・・・女の方から誘ってやがる。』”
こういうことは、ククもミミもご存知である。ただし婚姻時に処女性というものは重要視されるので、基本的には、非処女であり、合意のしるしを男性側が見つけて交渉するのである。
娘が歩いていると、ふといい男が目に入った。
”『ウホッ!いい男。』”
「なあ、やらないか。」
腰の布を目いっぱいに下げ、町を歩いている娘に、テヲは声をかけた。
「バカー!!」
ビタンと町娘から平手を食らい、娘は振り返りつつも顔を赤らめて去っていった。
”『おっかしいな~。周りはうまくいってるみたいなのに・・・・・・』”
そうしているうちに、また一人、男が女に声をかけふたりでどこかに消えていった。
そうこうしている内に、女性陣と合流する時間になってしまった。
”『なんてこったい。このまま宿に帰ったら、間違いが起こりそうだ。』”
テヲは結構あせっていた。国許に残したセセリの対面上浮気は出来ない。と、いうよりセセリがすごく怖い。まあ、ばれないだろうと思うが、旅の仲間を口説くとあとが厄介だ。
「テヲ~どうしたの?」
ミミはこの間から変だ。よく、ひっついてくる。小さな体をこすり付ける様にまるで猫だ。
「いや、なんでもないよ。旅の情報集めがうまく行かないだけだよ。」
「そう。でね~、アッチにいいお屋敷があって、なかなか出物がありそうよ?」
「いや、もう盗みはやめろよ。路銀だって十分だし。」
「旅の準備に越したことないと思うけど?」
「やめとけ!!お尋ね者になっちまう。」
「お尋ね者といえば、あんた、町娘に片っ端から、声かけてるらしいわね。」
ククは、じと~と汚らわしい物を見るかのようにテヲをにらんでいた。
「い、いや、そんなことはしてないぞ・・・・・・」
「うそ!そこらじゅうで、噂してるわ。異人のいい男が嫁入り前の娘にちょっかいかけてるって、若い娘ばかり・・・・・・あんたしかいないじゃない。」
ちょっと困った風なしぐさを見せ、瞳を潤ませつつにらんでいる。
”『え?やばいな、でも好みの女の子のほうが・・・・・・』”
「いや、この町で男が女に声をかけると裏に消えていくから、ためしにやってみようかと・・・・・・」
「や~らし~。あんたそんな奴だったのね。今まで間違いが無くてよかったわ。」
「え~。したいの?じゃあわたしが毎晩テヲと寝る!」
ミミがとんでもないことを言い出して、自分の女の部分を強調しだした。
「バカ言いなさいって!ミミは私と寝るのよ。」
「ええ~。テヲがいい。それに血の力が目覚める前だから生の力は生まれないよ。」
「もっとだめじゃないの!そんな生の力への冒涜だわ。」
テヲは何のことを言っているかよく分からなかったが、とにかくだめらしい。
テヲと女性陣は別部屋のまま、今晩の宿で休んでいた。
テヲがぐっすり寝ていると、人影が入って来たようだが、人の動きとも感じられない。
その姿は、翅のようなものを複数つけ、頭には、角があった。また尻尾もある。
その影は、テヲの顔を覗き、テヲの上へ覆いかぶさり、なにやら奇妙な動きをしていた。
”『クク、そんないやらしい格好しやがって・・・・・・』”
テヲはいやらしい夢を見ていた。ただし、姿は黒いククであったため、本人も夢だと自覚しているようだ。
”『ククの本性は、こんなにいやらしいんだな。なら思う存分・・・・・・』”
ククの姿を黒から白に染め直した瞬間、彼は目を覚ました。
目前には、怪しい影があり、黒い肌であったので、闇夜にまぎれて誰とも分からないが、なにやら儀式をテヲの上で行っているようだった。
「お、お、おまいはだえだ。」
テヲは寝ぼけていた。その隙に影は闇に消えていった。
「なんだ・・・・・・夢か・・・・・・」
そして再び、テヲは夢の中に帰っていった。
翌朝、テヲはなんだかだるいが、気分がよかった。あれほどの性欲が消えているのである。パンツも汚れていない。
「おっはよ~。ムラムラしてない?私が手伝ってあげるよ?」
ミミは朝からサカリがついていた。
「バカ言ってないで、出かける準備するわよ!」
ククが、ミミをしかるのは、もう見慣れたものである。
「なあクク、昨日の晩、俺の部屋に来なかったか?」
「はぁ?なんで?ミミをあんたんとこ行かせない様に気を使ってたくらいよ?そんな事しないわ。」
じゃあ、やっぱり夢か。でも結構リアルに感じたけど。
「じゃあさ、翅とか、角とかあるか?」
「ああん?あんた私を化け物かなんかと思ってるわけ?」
「いや、そうじゃないんだ、きのう夢で、翅と角と尻尾がある奴が俺の上でなんかやってたみたいなんだ。」
「・・・・・・あんた。疲れてるのよ。ゆっくり休んだ方がいいわ。今日の遠征はあんたを置いてくわ。」
ククはテヲに哀れみの目をむけ、でも心配そうに言った。
「でも・・・・・・、今日行く竜の谷には、守護者がいて、竜の姿を模しているらしいわ、もしかしてそいつが現れたのかしら・・・・・・」
「え、なにそれ怖い。」
「なんでも、近づくものには呪いをかけるって噂よ。」
「やべえ、呪われたかも・・・・・・」
「そんな訳ないでしょ。呪いなんて非科学的な。」
「お前は魔法使うじゃん。」
「あれは、ミルラケムであって、オカルトではないわ。」
「オカルトではないにしても、どうして危なさそうな所へ行くの?
ミミがククに尋ねた。
「竜の谷では、竜石というものが取れるらしいわ。どんなものか確かめておきたいのよ。」
「竜石って、何の効果があるの?」
「幸運のお守りだとか、とても硬い石だとかで、重宝されるらしいわ。」
「結局よく分からないじゃん。」
「とりあえず、行ってみようぜ、そんときに守護者が出たら感謝しないと・・・・・・」
テヲが意味の分からないことを言っている。
「は?あんた、やっぱり調子悪くない?」
「いや、悪くないよ、かえって調子いい位。」
「じゃあ、行くわよ。調子が悪くなったら言ってね。」
こうして、テヲ一行は、谷を目指す。といってもそんなに離れてはいない。
ただし、周りが高台になっていて、クレータ状のくぼ地に100mの山谷が同心円状に連続する。
「なーんも無いわね~」
「ほんと何も無いよ。」
「竜の守護者は?」
それぞれ、いいたい放題であった。
「こんなところのために呪いをかける必要があるのか?」
「そういわないで、ここの石普通の石英質の石だわ。透明度は高いけど。少し離れれば青く見えそう。」
「もうちょっと中に行くか?」
「この山、谷を越えるのが厄介よね。戻ってこれるかしら。」
そうやって、2、3の山を越える頃には疲れ果てていた。たぶんコレが呪いというか、行くもんじゃないという、戒めだと思われる。
「なんか、中心ぽい所がある。でも水があるから行けないよね。」
今でこそ、砂漠の真ん中だが、当時は湿潤であり、雨水もたまれば、川だって流れ込む、唯大河はこの高台の隣の平原を流れていて、谷をまるまる飲み込む様な川ではなかった。
そのとき、物陰から何者かが投石をしてきた。かなり殺す気満々で頭をねらっている。
ミミはすばやく反応し、アームの手甲で、投石を防いだ。しかし、続々と投石が続き、テヲたちは、投石から逃げるため、バラバラに散っていった。
テヲは、槍と投擲短剣を用意し、荷物の中から折りたたみ盾を展開した。
ミミはアームを展開し準備する。
「どお?今回はかわいいし、機能的よ。」
確かにお前は、日朝の少女戦士かっ!!といいたくなるくらい色鮮やかだ。
ククは、攻撃手段の魔法がネタ切れらしく、おとなしく岩陰に隠れていた。
幸い、一方向からしか、攻撃が無いので、単独で攻撃を仕掛けていると思われる。
投石が止んだその時、テヲの側面から鋭い角を生やし、背中に翅のような装飾、尻尾を模った、飾りをつけた、人型が手にガラス質の槍先付けた槍を持って襲い掛かってきた。
ミミもククもテヲから十分に離れており、加勢も間に合わない。単独撃破が目的のようだ。
しかしながら、テヲの武器は、ガラス石の磨製石器などモノともしない。チタン製の矛先が敵の槍を砕く。
敵は、武器を失い、手元の石を投げつける。コレもガラス質の鋭い破断面を持っており、殺傷能力は高い。
テヲは、さっとフードを闘牛士のマントのように扱い盾代わりに防ぐ。テヲのフードは強化繊維製であるため、防御性に優れていた。
ガラスの刃も防がれ、敵は動揺していたが、果敢にもテヲに襲い掛かってくる。
テヲが、胸元をつかむと、
「ばーん」と胸がはだける。とてもいい形だ。
「女!?」
なんだか体に見覚えがある。夢の中の女か。でもククじゃなかったっけ?テヲはとっさに離してしまった。
「くうぅ。ちょこざいな。この地に近づくものは、この地のことを忘れてもらわねばならん。もしくは死だ。神妙にいたせい。」
女は、体制を建て直し、テヲを威嚇している。
「ちょっとまてよ。俺たちは竜の谷を見物しに来ただけだ。(竜石調べだけど)」
「そんな事が信用できるか!!この谷の秘密を探りに来たのだろう!!」
「秘密といったって、何も無かったぞ」
「お前のいう事が信用できるとでも思うか?」
もっともだ。侵入者の、しかもよそ者が信用できるわけあるまい。
「それに、お前の人質も捕った。」
テヲは周りを見回すと、ミミはこちらに走ってくる最中で、ククは、火砲を手に警戒しながら歩いてくる。別に捕まってはいない。
「俺の仲間は無事だが?」
「お前の子は私の腹にいる。お前の子は私のものだ。お前の力をいつでも奪う事が出来る」
「えっ!?なんと?いつやった?」
「昨日だ。」
「えっ!?昨日のは夢じゃないのか?」
「お前に祟るため、お前の子を使ってお前を殺させるのだ。そうやって私たちは、この地を守ってきた。」
「そんなでたらめな。お前だって自分の子供にそんな事させたくないだろう?」
「コレは使命だ。私もそうやって生まれてきた。」
そんなバカな。テヲは、暗殺対象だが、子供に殺させるために、子供を身ごもるなんて考えも因らない。
「それで本当に秘密が守られるのか?そんな事して意味あるのか?」
「われわれは、そうやって守ってきた。ここに来た男たちはみな貢物を持参して、秘密を守っている。女が来ることはめったに無い。女が来たときは、村に留め置く。」
「そりゃ、男は喜んで秘密を守るだろう。女は来られるとまずいから、祟られるとでもいうだろう。」
「なんだと、どういうことだ。」
「まあ、そういうことだよ。遊郭が無いわけだ。」
ミミが追いついてきた頃、テヲは、
「ミミ!!そこで止まれ!!コイツは俺が何とかする。他にコイツの仲間が居ないか探ってくれ。」
「テヲ!!ほんと大丈夫?でもでも、だいぶ追い詰めてるみたいね。じゃあ探してくる。」
うまいこと離れてくれた。
「さて、竜の守護者。お前の仲間は居るのか?」
「ああ、居る。たくさん居る。女のみだ。」
「不思議だ。ここは、女しか生まれない力でもあるのか?もしくは・・・・・・」
「私たちは、貢物で暮らしている。何の不自由も無い。」
「でも・・・・・・判った。秘密にしよう。本当にそれでいいのか?」
「ああ。問題ない。」
たぶん、女系文化のある民族で、男性を排除しているのだろうか?真相は不明だが、コレはコレで生き残るための知恵なのだろうか?
「じゃあ、俺は、ここを去る。くれぐれも気をつけてな。危なくなったら逃げるんだぞ。」
「何を言う。なぜ逃げる必要があるんだ。」
「でも何か変なことが無いか、聞き耳を立てておいても損は無いだろう?」
「ああ、そうだな、気をつけておく。」
「じゃあな。そうそう、すまねえが、俺の一撃でやられた振りをしてくれねえか?」
「なぜだ、奴らまだ、秘密を知らないからな、そのまま返すには俺が勝たないと・・・・・・」
「わかった。それにしても、お前はいいにおいがする。お前とはずっとしたいものだ・・・・・・」
テヲは、竜の守護者に一撃を与えた。竜の守護者はよろめき、その場に倒れた。
「ミミー!!周りに敵の姿は?」
「テヲー!!無いよー」
「じゃあ撤退だ!!とっととずらかるぞ!!」
「あいよー」
「テヲ、ミミ。もういいの?」
「もういいぞ!逃げろ!!」
一目散に逃げ出し、ウワダンの町にもどった。
「なーんもなかったわね。まったく飛んだ災難よ。」
ククは目当ての材料も手に入れられず、残念がっている。
「まあ、命あってのモノだねだし、無事かえってこられてよかった。」
「ふーん、で、あいつと何を話していたの?」
「まあ、相手の出方を探っていたのさ。」
「ふーん。相手も女だから、襲う隙をねらってたんじゃないの?」
「えっ?そんな事無いよ!」
「えーほんと?ヤラシイ目だったわよ。」
「そんな事無いって。」
テヲ原産のパフュームが、この町でよく売れたことはテヲには秘密である。
娘さんが振り向くのも、香水と同じにおいをさせて、盛っているのだから、本当は入れ食いだったのであるが、コレも秘密である。




