8火の魔法
結婚式の会場は、親族、招待客、またやじ馬が溢れている。
控え室では・・・・・・
「あーーーーーーはっはっはっ全て燃やしてやる。」
ククはいきまいていた。
そりゃあもう龍のごとく、荒れ狂っていましたよ。
テヲは、控え室前でククの様子を見ていた。
花嫁衣裳に身を包み、頭には角隠しというかカツラっぽいかぶりもの。
そして式では、仮面で顔を隠す。
「おいクク。」
テヲはククに声をかけた。
「誰?」
ククは振り返り、周りを確かめた。
「こっちだ、クク。俺だ。テヲだ。」
「テヲ!!どこ言ってたのよ。その間にこんな事になちゃったじゃないの!!」
「いやぁ。代官の事を調べてたんだよ。何とか弱みを見つけて、手を打っておきたかったんだ。」
「で。どうだったの?」
「ああ。黒だ。真っ黒だ。」
「そこでだ。協力してほしいんだ。」
「当然よ!!あの代官ぶっ殺してやる!!」
「いや。それは駄目だ。あくまで裁きを受けさせるために、大衆の前で罪を明らかにするんだ。」
「ああん?そんな生っちょろい事で、わたしの気が済むと思って?」
「いや、お前を人殺しにしたくない。それに、代官を生かしておかないと、貴重な材料が手に入らないぞ。」
「貴重な材料って、代官は物のウトゥを引き出す術が使えるの?」
「うんにゃ。普通の人だ。ただ単にコレクターだったり転売屋なだけだ。」
「何を隠してるのかなんて判らないでしょ?見たの?」
「話に聞くところによると、悪どく貴重な品や、女を集めている。蔵は厳重だし、実際この家の地下には女たちが閉じ込められている。」
「何それ、許せない。絶対殺さなきゃ。」
「だから、殺すなよ。」
「そこで、クク。脱げ。」
一瞬。空気が凍った。
「あ?代官より先に殺すよ?」
「まあ、待て。俺とお前は背丈は似ている。それに花嫁衣裳は着てしまえば、誰だかわからない。」
「そうね、確かにパッと見判らないでしょうね。」
「それで、入れ替わって、代官をうまい事酔わせて逃げられないようにする。その隙に騒ぎを起こしてくれないか?魔法を使って騒ぎを起こすんだろ?」
「何で知ってるの?誰にも話してないのに。」
「お前、侍女に話しただろ?」
「ああ、あの侍女。どこに行ったのかしら?もしかして知り合い?」
「ちょっと、いろいろあって知り合ってな。それで、その騒ぎの隙に女たちを救出出来ないか?信頼できる男たちを連れて。」
「もちろん大丈夫よ。わたしの魔法は強力ですわ。どんな奴も肉片よ。」
「肉片にするなよ。あくまでかく乱でいいし、助けを呼ぶんだ。」
「別にいいのに。あ。痺れ薬あるよ。使う?」
「どんな用意してきたんだよ。」
「もちろん殺す用に毒。火起こし機。燃やしても毒殺にしても使えるリン。炭入りマスク、そして、ファイヤーボールとファイナルインパクト。」
「うーん。毒はわかるが、ファイヤーボールとファイナルインパクトってなんだ?」
「それは、見てのお楽しみ。」
「じゃあ。手はず通りに。くれぐれも、変なことするんじゃないぞ。」
「まかせて!」
一抹の不安どころか、信用ならないと思うが、一応ミミも居るので何とかするだろう。
テヲは、花嫁衣裳を身に着け、痺れ薬とナイフをしのばせ、会場に向かった。
会場は、人が溢れ、中央では男たちの舞が舞われていた。まあアフリカ特有の躍動感ある踊りだが。
「みなさま。よく集まってくださいました。本日はめでたい、代官様の8人目の妻を娶る、喜ばしい日でございます。」
「8人目なのかよ。ククも大変だな。」
テヲは、気の毒がったが、どの道失脚させる予定なので、落ち着いていた。
「なあ。クク。わしの妻に成れて嬉しかろう。ふぇっふぇっふぇっふぇっ。この白い肌あとでゆっくり拝ませてもらうぞ。」
ねちっこい言葉をかけながら、手やら肩やら腰やらをいやらしく撫で回した。
テヲは黙って聞いていた。”ぞみぞみっ”テヲは、虫唾が走るというのは、こういうものだろうと感じた。
何とか、酒の器に痺れ薬を混入する隙を伺っていた。今がそのときとばかり、痺れ薬を入れた。
酒が杯に注がれ、代官は酒に手を付け、一気に飲み込んだ。
「さあ、お前も飲め。」
杯を返し、酒の器から酒を注いだ。
(やべえ。痺れ薬入りの酒はのめねえ。しかし)
杯を受け取らないわけにも行かず、手に取るが、仮面があるため飲食は仮面の下から行う。
(ええい。仕方ねえ。)
ククは、女たちの牢の前に居た。
「くっくっくっ。見張りは二人の様だな。大した事はない。消し炭にしてやるわ。」
なにやら不穏な。やっぱり何かを企んでいる。将来魔王になるに違いない。
そうしてなにやら投げつけると、見張りの前で炸裂した。
「ドドドドドーン」
見張りが牢の前で倒れている。また牢の檻も壊れて、中の女たちも数人倒れている。
「てへっ、ぺろ。やりすぎちゃった。」
地面が揺れなにやら大きな音がして、煙がもれ出ている。そもそも地下があるなんて、客は知る由も無し。
「なんだ?地震だ!!。神の怒りだ!!神がお怒りだ!!この結婚は神の意思に反するのか!!」
客が騒ぎ始める。
「ええい、静まれ!!おい、お前、何があったか報告せよ。」
代官は、配下に命令した。
「はっ!調べてまいります。」
側近の一人が煙の元へ急いだ。
地下では、ククは女たちの安否を確認していた。
「どう?立てる?けがはない?」
自分がやっておいて、言う言葉ではないが、一応首を縦に振るので、反応が返ってくるので、良しとした。
とりあえず、見張りは無視。血を流して倒れているが下手にかまわれたくないし、悪は討つと決めているので、さして気にしていなかった。
やはりこの女、悪魔ではないのか?
そうして、ククは、女たちをつれて地上に戻る途中、様子を見に来た男に出会った。
「女!!そこで何をしている。白いお前は、嫁ではないのか?じゃあ上にいるのはなんだ!?」
と言っている間に、ククは間をつめ、懐に入った。
「バァァン」なにかはじける音がした。
そして、男が苦しみ始めた。
「ん。なんじゃこりゃーーーーー!!」
男の腹が焦げていた。一瞬だった。
ククの手には、短銃のようなものが握られていた。基幹部は火起こし機。激鉄のついたライターである。その先端に炸裂弾が装填されている。
「コレが、火の魔法。ファイアートーチ」
トーチと言う割りに灯ってもいない。どちらかといえば空気砲。温まった空気が一気に炸裂した感じ。でも加熱した空気により火傷を負わせる。
「そしてコレが、ファイアーボール」
そういって、アタッチメントを変更し、再び男に向ける。
男は警戒し、様子を見守る。が、ククは、何の脅し文句も言わずぶっ放す。
「ファイアー!!」
今度は、打ち上げ花火のように発射された矢が男の腹に刺さる。そして炸裂。男は血を流しながら倒れた。
「我ながら、天晴れな威力。」
やっぱり、悪魔の類だろう、この女。そんなわけで、牢破りの証拠は隠滅した。
ミミは、この騒ぎに乗じて、蔵を破っていた。
「あの女。やってくれたようね。見張りも居なくなったわ。さてお仕事お仕事。」
テヲは、この騒ぎで混乱した会場を離れ、ククの元に急いだ。そうして地下室に入る入り口にたどり着くと、そこには、先ほどの側近と、監守が二人、血を流して倒れていた。
「どうしたんだコレは?」
「どお?すごいでしょ?わたしの魔法。」
「やりすぎだ!!バカ!!悪を行っているとはいえ、代官の命令に従っているだけなんだぞ!!」
「でも~、明らかに悪者でしょ?」
「でも~じゃない。早く応急処置をしろ!!」
「え~。悪人よ?」
「悪人でも、死んでしまえば、二度と話すことも、文句を言うことも出来なくなるんだぞ!!早くしろ!!」
「はぁい。」
ククはしぶしぶ。懐から止血油(ファンデーションの元)を取り出し、布は地下を出て近場のものを拝借し包帯代わりにした。助けた女たちもなんだかわからないが治療した。
テヲは心配は逆の意味で、現実のものになってしまったと、ククに任せたことを後悔した。
テヲは、今度は、代官を拘束しようと思い、表に出ると。ミミが例の暴漢たちに囲まれていた。
「おい。嬢ちゃん。蔵を破るなんて悪い娘だね。お兄さんが、大人の遊びをしてあげよう。」
「あんたなんかに捕まるもんですか!!」
「ああん?俺たちは4人だぜ。お前なんか簡単にひん剥けるんだぞ!!」
ミミちゃんピンチ。
「あんたたちなんて一ひねりよ。」といってポージングしだした。
「キューティ ミミ メタモルフォーゼ!!」
背中のユニットが周りに風を伴って展開する。アームが伸び、腕、腰、脛に装甲が装着される。
そして背中のユニットから、バンドが装甲まで伸びる(美少女戦士の変身バンクを参考)
そうして、最後にバンドが締まり装着完了。とまではよかった。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
ミミの絹を裂くような声。
そう。先ほどの風により着ている布が吹っ飛んで、ほとんど裸なのであった。かろうじて下着があるだけで、一応装甲で隠れているが胸ははだけている。
「こんなの聞いてないわよ!!テヲ出てきなさいよ!!」
「わりぃ。言い忘れてた。それ展開するのに、ぴったりしたインナー着るんだ。それ着ないと、すれて結構痛いぞ。」
「だから、大事なこと言ってないじゃない!!このクズ!!」
ミミは、周りに散らかった布で大事なところは隠した。それでも結構恥ずかしい。
男たちも面食らっていたが、ニヤニヤしていた。
「剥く手間が省けたぜ。そんな格好になって、ますます都合がいいぜ。」
「まったく。男はしょうもないわ。ところでテヲ。本当にすごい力が出るの?」
「ああ。これで勝てる。ためしに男を片手で挙げてみろ。」
「本当に?あっ!!ほんまや。」
男が軽々持ち上がる。
「あ?あ?なんだ?」
と、言ってる間に、強かに壁に叩きつけられる。
とりあえず、唖然と見ている代官を捕まえよう。テヲは代官に近づいた、そのとき。
「くたばれ!!ファイナル~インパクト!!!!」
ククが、最大ユニットを取り付け代官に向けていた。
「おい!!やめろ!!」
テヲが、止めるのも聞かず、ククはぶっ放した。グレネードのような弾が発射され、炸裂する。火竜のブレスのように火炎が飛ぶ。
とっさに代官を抱え飛び。間一髪助かった。
代官ももう、ちびってしまって、気を失っている。
暴漢たちも、ミミに制圧されてしまい、ほとんど彼女たちだけで、この活劇が終わってしまった。
とらわれていた女たち、蔵の珍しいものが世にさらされ、代官は無事失脚した。
しかし、ククとミミはやりすぎた。
ククは、極悪非道の魔女。
ミミは、女盗賊改め、小悪魔。
として、名を馳せるようになってしまった。
「さすがに、有名になりすぎて、この村でオツトメできないわね。」
「そうね~。もっと大きな世界を知りたいわね。新しい材料もほしいし。」
「勝手なこと言ってんじゃねーよ。やりすぎなんだよ」
「あんたら、女王様の招待があるんだから、とっとと行きなさい!!」
ククの母は、いまさらながら当初の目的を知らせてくれた。
「う、うん。そうね。女王様のところ行かなきゃ。」
「そうだよ。とりあえず行こうぜ。向こうは何か俺たちのこと知ってるみたいだしな。」
「その旅、わたしも混ぜてくんない?どうせ村に居られないし。」
「ああ、そうだな。一緒に来るのがいい。旅は道ずれだしな。」
こうして、半ば強引に旅が始まるのであった。




