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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
2章 地上の楽園からの追放 1節 むかしむかしあるところに、いい男と魔法少女が出あいました。
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7陽炎おミミ

「あのじじい!!肉片にしてやるわ」

 ククの狂声が響き渡る。

 なにやらおかしげなモノを作っている。

 ククの禍々しい姿からは想像できないような、かわいらしいモノである。


 テヲはあの晩から姿が見えない。実は近場に居るのだが、見つかると呪術の生贄にされそうなので、そっと見守っている。

 姿を見せない理由は他にもある。代官の屋敷や、周辺を洗っていた。

 そもそも、外国人なので、目立ってしまうため、変装するか、隠密を雇う必要があった。

 当初、女装しようと思っていたが、身長に無理がある。

 そこでククに化けようと思ったが、当事者がうろつくのもよくない。




「ごめんよ。」

 一人の小柄な人がテヲにぶつかってきた。さっと懐を探り何かをかすめ取っていった。

「おい。ちょっとまちな。」

 テヲはすぐに、手をつかんで、ひねり背中側に付いた。

「いたたたたた。だんな、この手を離してくだせえ。」

「いんや、その懐のものを返してくれねえか?」

 懐には、ナイフがあった。チタン製の珍しすぎてたぶん価値が付かない。

「へへ、ブツは返したんで、これで・・・・・・」

 その小柄な人は、サッサと逃げようとしていたので、捕まえようとしたのだが、すぐに姿が見えなくなってしまった。




「まったく。ついてねえな。」

 小柄の人は、街の影で今日の稼ぎの少なさを嘆いていた。

「あの男のせいで、今日は商売が出来なかったなぁ。やっぱり大きなオツトメしなきゃだめかぁ。でも一人ではなぁ。」





 ここ数日テヲは、屋敷周りでうわさを聞きつつ、どんな人が出入りしているとか、どんな取引をしているか。

 屋敷の前で張ってみると、あの暴漢たちが出入りしている様だ。

 また、きな臭いうわさもある。汚い手を使って穀物、鉄などの貴重な物資、また娘や妻を奪われた人も居るようだ。


 ふと、周りを見渡せば、怪しい奴がもう一人うろついていた。


 テヲは気づかれない様に近づき、捕獲した。

「むにっ」

 やわらかい感覚が手に伝わる。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ちょっ!!、だっ!!、静かにしろ!!」

 テヲは咄嗟に、相手の口をふさいで、きょろきょろ人が居ないか確認し、目立たない場所まで移動した。はた目では、婦女子を襲っている様にしか見えないが。


 そいつの顔を確認すると、年は12~13歳くらいの女の子。

 三つ編み(この地域の女性はだいたい編みこんでいるんだが、ちなみにククは三つ編みにして、後ろで束ねて白い髪を隠している)に髪を編みこんで、150cmくらいの身長。ちょっと小悪魔のような見かけ。

 皮のフードをかぶっているが、中の服は一般的な一枚布なので、胸から下にぐるっとふた巻きして胸の前でリボンのように結んでいる。それに加え、待ち行く女性はケープをかぶる習慣だが、この女の子はしていない。


「はなしやがれ!!この強姦魔。」

「俺は、強姦魔じゃねえ!!」

「ん、この声はこの前のスリ!!てめえ、この前は逃げやがって、どうしてくれよう?」

「やっぱり、ヤル気なの?だれかーーーーーーこの人わたしをレイプしようとしています!!たすけてーーーーーーーーーー!!」


「この野郎!!いや女郎だまれ!!ここには誰も来やしねえよ。おとなしく神妙にしやがれ。」

 しっかり悪役のセリフだ。


「何もしやしねぇって。いや、そういうことはしないって意味で・・・・・・」

「やっぱり、何かするんだ。どぉ。わたしの体で見逃してもらえる?」

 テヲは少し考えた。

「やっぱり。わたしみたいなのでも、ヤリたいんだ。」


「いや。そうでなくて、大きくなくても具合はどうかな・・・・・・、あ」


 女の子は、軽蔑の目を向けつつ、拘束されているため声さえも小刻みに震えもしていた。


「いやいや!!別にやましい事を思っていた訳ではないんだ!!信じてくれないか?」

「だったら、離してよ。」


 離すわけにはいかないので、後ろ手に縛って、縄の結びの割れ目に長い棒をぶっさしたので、立つにも、寝るにも、逃げるにも棒が邪魔になる。


「で。いったい代官の屋敷前で何をしていたんだい?」

「ふんっ!なんでてめえに・・・・・・」

「さもないと・・・・・・いたずらしちゃうぞ?」

 と、ワキワキ指を動かしながら、脇へ指をなぞらせる。

「ひっ!!気持ち悪い!!言うからやめて!!」


「最近、稼ぎが悪いもんで、いっちょう、溜め込んでるとこから、恵んでもらおうと思ってね。下調べしてたんだ。」

「そいつは奇遇だな。俺もあの屋敷の中が知りたくてな。調べてたんだ。」

 女の子は、ははーん。という感じで顔をほころばさせ。

「あんた、同業かい?なら話は早い。一緒にあの屋敷でオツトメしねえか?」

「ああいいぜ。早速あの屋敷に入る算段をつけよう。いつ集まれる。」

「今晩でもいいぜ。どこでおち合う?」

「ちょっと下流になるが、食器工房の集まる輪中にこれるか?」

「ああ。いいぜ。でもなんでそんなところなんだ?今から出ないと間に合わないぞ。」


 テヲの今のねぐらは、工房近くでキャンプしている。代官屋敷からは遠い。


「じゃあ一緒にいくか?馬車があるから準備してくる。」

「馬車があるのかい?珍しいな。ついていくよ。(いざとなったらそれを頂いて・・・・・・)」

「じゃあ、ついて来い。・・・・・・どう呼べばいい?」

「わたしは、ミミ。」

「ミミ、しばらくよろしくな。」


 こうして、盗賊ミミが仲間になった。




 そのころククの家では、婚礼の準備をしていた。

「花嫁には、牛、羊、米、麦を持たせよ。」

「花婿には、それらの運命を定めよ。」


 花嫁道具と言うより、捧げもの。嫁自身も所有物になるような詩だ。

 ククでなくても、あんまりよく思わない詩だと思うが、コレが夫によっては、幸福になることもある様で、財産の管理権を嫁に譲渡するなんて事もある。

 今回の代官に関しては、悪い方向だと思うが、婚礼準備は着々と進んでいる。


「そんなことやらなくていいのよ、代官はぶっ殺すから。」

 ククは、血気盛んに母親に訴えるのだが、母は強かった。

「あんたは、いい年頃なんだから、さっさと嫁にいけ!!代官様だったら、余裕があって将来安泰でしょ?」

「あの招待状は、結婚の知らせじゃないって言ってるでしょ?だからこんなのご破算よ!!」

「嫁に行って、その招待も受ければいいじゃない。代官婦人の方が都合いいんじゃない?」

「いやよ。なんでじじいと結婚しないといけないの?」


 そんなやり取りは聞き飽きた、と思うくらい繰り返されていて、さらにテヲも戻らないので、ククに味方がいない。ククはふてくされていた。





「ついたぞ。ここが今晩の宿だ。」

 木々の間にローブが渡され、その中にテントが建っていた。


「こんなところなの?今晩の宿?」

「あのテントだ。ほれ、わらも敷いてあるし。」

「もしかして、あんたと寝るの?」

「テントは一つだしな。」


 ミミは、血の気が引くような気がした。


「まだ11歳だからね。いろいろダメなんだからね!!」

「その、”いろいろダメ”って何だよ。」

「いろいろだめなの。血のントゥが降りてきてないから。」

「大丈夫。何もしないって。」

「そんなこと言うやつが信用できないのよ・・・・・・」

「じゃあ、俺は馬車で寝るから、好きに使ってくれ。」

「本当に・・・・・・本当に襲わない?」

「何だよ、何かあったのかよ?」

「・・・・・・・なんでもない。」

 ミミは口をつぐんだ。


「さて、代官屋敷への進入路を決めるか。」


「代官屋敷の構造は?中に何人居るとかわかるの?」

「しらねえ。用心棒は4人いるみてえだが、嫁さんとか使用人の数まではわからねえ。」

「使えないわね。どれくらい見張ってたの?」

「ここ3日くらいだが。」

「まだまだわからない事ばっかりじゃない。」

「中に入ってないからな。出入りの職人になろうにも俺は目立つ。変わりにお前いけないか?」

「わたし?」

「中に使用人として入り込めねえか?結構募集しているみたいだし。そのかわり使用人が辞めて出て行ないらしいがな。」

「無茶苦茶あやしいじゃないの。わたしどうなるのよ?」

「とりあえず、俺のアームを貸してやるから、いざとなったら展開しろ。」

「アーム?」

「背中の外骨格は服の下に身につけて居ろよ。ほれ!!」

 テヲ荷物の中から袋がミミに放り投げられた。

 ミミが受け取ると。

「硬いものが当たる。なにこれ?」

 ミミは袋を開けてみると、板状のものが4枚、背骨のような形の部品が小さくまとまっていた。

「コンコン。硬いけど軽い。音は金属みたいだけど。こっちは見たことないベルトがついてるし、どう使うの?」

「CFRPとアルミリチウムフレームだから軽いだろう。背中に装着して展開するとき呪文を唱えるんだ。俺は”転身”と言っているが、呪文を変える事も出来る。展開するときフレームが出るから気をつけて。」


「で。いったい何なの?」

 ミミはどうでもいいから、何なんだと言いたげだった。

「コレは、すごい力が出るようになるんだ。エネルギーを消費しなくても、ベルトの伸縮で動きも軽くなる。」


「へー。」

 ミミはあんまり興味なく聞いていた。外見がかわいくないので、飾りが欲しいな、とりあえず呪文はかわいいのにしようと思ったが、コレがミミにとって大惨事につながるのだった。


「俺は、表から見張っている。夜になったら、情報交換だ。何かあったら、笛で合図しろよ。」

 と言って、笛を手渡した。




 実は婚礼まで、あと4日しかなかった。その間着々とククは悪巧みの準備をしていた。

「うふふー。近づいてきたら、こいつで・・・・・・。逃げたら、こいつで・・・・・・。」

 なにやら不穏である。冒頭から何も変わっていない。



 テヲとミミの内偵は進んで、結婚式の準備が進んでいることもわかった。

「どうするよテヲ、コレはチャンスだと思うんだ。結婚式の隙にお宝を頂いちまおう。」

「ああ。いい案だ。(結婚だと?お宝の前に無茶苦茶にしないといけないんだが?)」

「それに、中に牢があって、女たちが捕らえられている。こっちは結婚式のあとに、どこか遠い部族に嫁に行くらしい。」

「そっちも何とかしないとな。(悪評を広めて、代官を失脚させないとな)」

 テヲとミミの思惑が異なるため、なんとも不安だが、結婚式の日はやってくる。





 ククと両親、親戚が乗った船がやってくる。飾り立てられたククの花嫁姿。

 しかしながら、ククは、久しぶりに白い肌を表にさらしつつ、暗黒面をさらしていた。

(「さあ。カーニバルの始まりだよ。」)

 ククは、あらかじめ用意した”危険物”を隠し持ち、花嫁行列の中、悪役面をしていたのである。




 行列が代官屋敷に入り、代官が出迎える。

「よく、来た花嫁よ。まずは中に入られよ。さ、侍女たちよ、案内せい。」


「はい。」

 ミミは、ククを部屋に案内した。その際。

「花嫁さん。どう思います。あの代官。」

「気に入らない。もともと結婚なんて筋違いなのに。目の前に来たら速攻で殺す。」

「へぇー。でも女一人じゃどうにも出来ないんじゃない?」

「そんなことはないわ。わたしには魔法があるから。」

「へぇーどんな魔法?」

「それは見てのお楽しみよ。式なんてぶっ潰してあげるわ。」

 ミミは予定を変更して、その騒ぎの隙にお宝を頂く事にした。そしたら、テヲにも陽動を頼まないと。


「わたし、ちょっと外していいですか?」

「ええいいけど。(準備を見られたくなかったから好都合)」


「では、失礼いたします。」



 代官屋敷庭の端。テヲも祝いの客に紛れ込んで居るはずだ。

「テヲーーーーー。いる?」小声で

「どうした。」

「花嫁がなんか起こす気みたいよ。騒ぎのうちにお宝頂いちまおうぜ。」

「そうだな。でもどんなことだろうな?」

「さあ。でも魔法がどうとか言ってたわよ。あ、そうだ、わたしも展開を魔法の呪文にしよー。」

「とりあえず、船を隠しているから、そこに積み込み出来るように準備しとくか。どこか火でも出してそっちに目を向けさせるか?」

「そうね。わたしはわたしで、騒ぎを起こしますか。」



 テヲは、ククがどうせ大したこと出来ないのに、何をするのかと冷や冷やだが、なんにしても式はつぶさないといけないので、不確定だが乗っかろうとしていた。



CFRP(carbon fiber reinforced plastic)炭素複合材

カーボンを含むプラスチックを主体にした、樹脂。古くからガラスの繊維を織り込んだグラスファイバーなどあるが、CFRPは炭素繊維を含む材料(見た目ゴムシートで伸びないただの化学繊維を織ったシートを重ねる)を真空中で蒸し焼きにして硬貨させたもの。とても硬い。用途は電車の先頭部分とか、飛行機の胴体(787)、翼、など。CFRPを使用することにより飛行機が飛躍的軽量化された。国内では、C-1ベースのSTOL飛鳥から試験データを得て、現在のF-2、T-4、C-2、P-1で実用化されている。


アルミリチウム合金

アルミの合金。従来の合金にリチウムを2~3%混合することで、7000系を上回る硬度向上と軽量化が見込まれる。(その他合金の8000系に分類)主に航空材料として、用いる様研究されている。

ただしリチウムを含むことで、リサイクルが難しくなる。

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