6楽園からの招待状
鉄製品を加工し、食料や衣服など生活に必要な物資を手に入れる。
村の人たちも同様に、農作物や魚、肉や動物の皮、綿花など、自分たちの労働の対価を支払っている。
まだ、貨幣という概念はないようだ。
月一で周辺の村では川上にある、水の害が出にくい土地に、市場が出来る。
村で店を開いても、包丁やナタなど必要不可欠なものが売れるだけで、珍しい加工品を見つけるためだけに客が来るわけでもないので、鉄製品を、物々交換するには打って付けである。
「あんたは!何度いったらわかるの?」
「だってよう。覚えられねえよ。これは何と交換できるとか。交渉とか、値打ちのつけようがねえ。」
フードをかぶった二人組みが、なにやらもめていた。背格好は同じで、真っ黒ではなく、ファンデーションで黒っぽくした肌をしていて、声以外で判別が出来ない。
二人とも175cm前後、サハラ湿原の女性の平均160cm、男性は170cm。男性はともかく女性はでかい。
二人の正体はテヲとククなのだが、二人とも目立つので、変装している。
テヲの困惑も当然であって、貨幣経済が発達していない分、物価が曖昧なのである。
一応、値段表は作ってあるのだが、ハッキリいって、交換の基準がわからない。
「よく、お金がなくて商売ができるな!!」
テヲは、あきらめ口調で言い放った。
「そりゃあねえ、金貨、銀貨があるくらいになれば、とても楽にはなるだろうけど、どこが保障するのよ。国らしい国がないのに。」
「でも代官がいるんだろ?おふれとか、お告げとかあって、なんか神が居るらしいじゃん。」
その輪中には、代官所があった。
遠くの国の女神が代官を派遣して、この地の地検やら、産物の調査やら行っており、納税などは行っていないので、厳密には神官とも代官とも言い難い。
「代官って言っても、なにやってるのかしらね?」
「さあね?でも代官ってのは、昔からろくな事しないって相場が決まってるけどな。」
まるで時代劇のお約束でもあるかのような言い分であった。
さて、二人が市場に広げているものは、普段から作っている器もあるが、鉄のナイフ、ナタ、針、釣り針など実用品。
さらに細工物である、髪飾りやベルト止め、天然ガラスを加工した首飾り。
また植物油から抽出したワセリンのようなもの(コレはファンデーションを作るため、ククには必需品である)、など、珍しいものを置いていた。
「なんか、珍しいものをおいてるわねえ。」
娘盛りの若い女が、声を掛けた。
「なにかお気に召すものがございましたか?」
「ええ、この首飾りはきれいね。木の実のビーズや、動物の角のじゃないのはあまり見ないもの」
「このビーズは、実は北の砂漠に落ちていて、表面を少し溶かして丸くしています。」
ククは簡単な説明をした。
「北の砂漠なんて危険でしょう?そんなところまで取りにいくの?」
「大丈夫ですよ。護衛も居ますし。」
と、となりのフードを指した。
「でも、北の砂漠みたいな外れは野盗が居るんじゃなくて?女が行く場所じゃないわ。」
当然、どの時代にもならず者というのは居る。
村が襲われては、略奪され、男は殺され、女は連れ去られる。
村が3つやられるころにやっと周辺の村が集まって自警団が編成されて、一時は治まるが、再びどこからともなく新たな野盗が現れる。この間の暴漢も似たようなものだ。
「その代わり、いい材料が手に入るので。それにわたしそこら辺の男より強いので。それに、わたし魔法が使えるので。」
たしかにでかい。現代でも大女だ。でも男と女では筋力の数値だけでも1.5~2.5倍ある。鍛えていない男でもである。いくら鍛えても上限は一般男性ほどしかない。
そして、魔法??物理で行くやつか?最近の魔法少女はメルヘンな魔法使わないから。
「???まあとりあえず、この首飾りもらいたいのだけども、どれくらい?」
「米なら袋5個、麦でも袋5個。布なら人ふた巻き(一枚布を服としてまとうため)、鳥なら2羽というところでしょうか?」
「高いわ。もう少し安くならないの?」
「じゃあ、穀物4袋相当では?」
「ちょっと、庶民には手が出ないわね。」
「じゃあこちらの首飾り。ひもは一般的な素材ですが、真ん中の石はきれいでしょ?」
「こちらは、穀物一袋相当でいけます。(ちなみに一袋で1ヶ月くらい食べられる)」
「うーん。高いけど、我慢すれば・・・・・・。えいっ!!きめた!!買うわ。」
「まいどあり~」
と、売れはしたが、アクセサリー類は高いので売れ行きはよくない。
やはり主力は日常品。しかし、ごく一部裕福な人々が、買って行く。
この地の代官もその一人であり、自ら用いる以外にも、ククの作る品は、貿易にもってこいなので、なるべく囲いたい。しかしながら、幾度となく誘いを(一部強引なものもある)断られている。
白い肌、すらっと伸びた手足、そして、大きな目、きれいな顔立ち。貿易を差し置いて、出来れば妻にしたいと考えていた。
今回、女王の招待状(表書きも読めない上に、意味をわかっていない)があるため、コレをダシに何とかできないかと悪巧みしていた。
そこに、見覚えのある男たち。例の暴漢たちだった。
「お前たち、わたしの留守の間に、あの娘を捕らえていなかったのか!?」
「へい、あの、いつもあの男がついていて、なかなか隙がなくって・・・・・・」
「それに、あいつ結構強くて、長い柄なのに軽々と振り回して、とんでもない速さで打ち込んでくるんです。」
「相手は一人だろう!?お前たち何人でかかって、その様なんだ!!」
「4人です。」
「素直に答えんでいい。まあなんにしろ、このお墨付きがあればあの娘をわしのものに出来る。」
手元にある木箱には、招待状在中と書いてあり、中には招待状と手紙が入っている。
「お前たち、直ちに娘の家に向かい、婚礼の準備をせよと伝えよ。そして娘をつれてくるのだ。」
「はっ!!わかりました。」
そうして、男たちはククの家に向かった。
そんなことを知らないククは、本日の宿に戻る準備をしていた。
「あんまり売れなかったな。」
「そうね。今日は上客も来なかったし、市場の期間が終わったら、帰りに常連さんのとこに寄って、捌きましょう。」
数日して、家に帰るころ、ククの両親は困惑してククたちを迎えた。
「大変だよ!!あんたを嫁にするって、代官がやってきたよ。」
「いつも、断ってるじゃない!?なんでいまさら・・・・・・」
母親の手には木箱があった。
「天の神の神託で、あんたを神の前で娶らなければならなくなったそうな。」
「そんな事ってあるの?その木箱はそんな意味あるの?」
ククは木箱を見た。招待状在中と書いてある。”招待状?って文字書いてあるし。”
文字が書いてある時点で、何かしらあやしい。とりあえず木箱を手に取り、箱を開ける。
中には、招待状と手紙があった。紙で。
【女王陛下におかれましては、優れた技能と失われた文明の英知を持つ、白い肌の御方々をお迎えして、来る日に、宮殿にて晩餐会を催されますので、ご来臨下さいます様ご案内申し上げます。】
とある。別に結婚式の招待状ではない。次に手紙が付いていたので読んでみる。
【ご機嫌いかがでしょうか?突然のお手紙失礼いたします。
私は、ティカル・タフ・ヒルメと申します。
かねがね、お二人の御うわさをお聞きし、昔馴染みではないか?と思い筆を取ったしだいであります。
この手紙が読めていると言う事は、わたくしと同じ出自であると思われます。
かつての輝きを失い、危機的状況も迫っているため、早急に打開しなければいけないのですが、資源、人材ともに乏しく、また、過去の遺産を生かすことも出来ず苦しい状況であります。
そこで、お二人の知恵を頂きたい、そのため情報交換する会を開きたいと考えております。
お二人の住まう西サハラからシーバまでは、馬車と船を乗り継いでも3ヶ月はかかる遠方です。
失礼を申しますが、シーバまで御出でいただけないでしょうか?
天の常世の根の国、シーバの女王 ティカル・タフ・ヒルメ
追伸
ヤゴロヲがどこに行ったかを知りませんか?箸を発明した男です。あの男浮気性でどんな女に色目を使っているか・・・・・・とにかく捕まえたいので、心あたりあればご一報ください。】
同封して、金の延べ板が入っていた。超びっくり。
「え?生きてるの?女王?いや、別人でしょ。」
一応、生まれ変わる前の世界の知識では、彼女は女王だった。
最後の一文はどうかと思うのだが、信憑性はさておき、気になるところである。
「これ、結婚の招待状じゃないわよ。それに神託でもない。あの代官何様のつもり?」
ククは、母親に代官からの手紙の内容を伝えた。
「なんだい?そのぴらぴらのものは何だってんだい?」
まず、紙の存在を教えなくてはならなかったり、文字の存在も教えるのはおっくうだった。
「とにかく、代官には文句を言わなきゃ!!だいたいなんで、あんなおじいちゃんにわたしが嫁にいかなきゃなんないの。」
「まあまあ落ち着けって。」
テヲがククをなだめようと声をかけた。
「あんたはだまってなさい!!」
ククが怖い顔してにらんだ。
「あのスケベじじい!!。前からちょっかいかけてきて、気に食わないのよ。この前だって、男たちをよこして、連れて行かれそうになったし。」
「あれは、そういう事だったのか?」
テヲが追い払った暴漢は、代官の手のものだったか。と、テヲはある意味納得した。
背格好だけでは男かも知れない、フードの人を女と言っていたのに合点がいった。
「さて、でも代官の周りにはあの男たちがいるから、そう簡単に屋敷に入れさせてくれるとは思わないけどね。路銀になる金もあるし、さっさと招待受けたほうがいいと思うぞ。」
テヲのいう事はもっともである。
しかし、ククは黒いオーラを放ち、ぶつぶつ「あの毒で・・・、針を・・・」と何かしら不穏な事を考えている様で、いう事を聞く感じではなくなっていた。
「しょうがねえな!!俺が話を付けに行ってやるよ。」
「でも、あんたがいくら強くても、殺されかれないわよ。」
「まあ、手はあるって。手土産に酒でも持って行ってくらぁ。」
「ククには、用意してもらいたい物がある。まず脱げ。」
「あ?あんた先に殺されたい?」
ククは、テヲをコレでもかと言わんばかりに蔑んだ目をして言った。
「いっ!!、いや!!決してやましい事でもなくて、いい匂いだなとか、汚れはないかなとか、そんなこと決してしないから・・・・・・ あ・・・・・・」
「あんた。ここで死になさい。」
ククはハンマーを手にテヲに襲い掛かったが、テヲは一目散に逃げ、一晩帰ってこなかった。




