5太陽再び
片やまっ平ら、片やでこぼこ。それがアフリカ。
西サハラは、平原だが、中央アフリカは盆地あり、断崖あり、崖や高低差の激しい高地。
基本的に大陸横断は難しい。縦方向はナイル川を使って大地溝帯沿いに南アフリカまで。
横断はサハラ平原が出来るくらいで、コンゴ盆地は、海から川をさかのぼった方がよいくらいで、ケニヤからコンゴに行くには、山を登って高低差のある滝にダイブして生き残ればいける。そうでなければ、ナイル川を下って、サハラ平原を横断し、ニジェール川を下って、海沿いに船か徒歩で移動し、ザイール川をさかのぼるとたどり着ける。くらいの場所である。
赤道直下の大地溝帯にある、場違いなモノ。それは、はるか昔から存在していた。
この地に住む皆、そのはるか天上まで続く、塔はまるで天ノ御柱であり、神の国へと続く神聖なものと思っていた。
そんな中、住民とは異なる白い肌の人々が居た。
古い伝承では、肌や髪、目までも白い人が現れ、自然の中から力を引き出す方法を伝えた。白い人はすぐに居なくなってしまったが、塔から忘れたころに降りてきては、また消えていった。
今回の白い人は、肌は白いというか黄色人種で、黒髪、黒目であった。黒人に比べれば白い。
もともと白い人信仰があったため、彼女らはすんなり地域住民に受け入れられた。
彼女たちは、農耕を伝え、鉱業を興し、産業を発達させた。
今回の白い人はすぐには消えず、現れてから3000年は経過していた。
そんな中女王である彼女は、途中年老いるが、少女に戻ってずっと女王として君臨していた。まるで不死鳥のように。
彼女たちは、現地の人とさして体格的に変わらなかった。
今までの白い人は巨人と小人だったが、彼らとは違う目的があるようだ。
彼女たちは、何かを探していた。3600年ごとに繰り返す脅威を覆すため、過去に用意したモノを探すため。
少ない人口でかつてのテクノロジーを取り戻すことは難しく、3000年たったあとでも、中世の水準にとどまっていた。
「レヴィアタンの心臓はどこにあるのかしら?」
彼女は、臣下の物、周辺部族の長、地の果てまで散らばった、代官にいたるまで、その痕跡を調査させていた。
「識別信号が途絶えていますが、レヴィアタンのチタン合金の船体がそうやすやすと朽ちるとは思えませんし、分子マシンの自己修復もあるので、コアは生きていると思われるのですが・・・・・・」
彼女の側近が答えた。
「んー、あせらないでのんびりとさがそーよ。」
「もう3000年もたっているのですよ!? あと600年しかないのですよ!!」
「宇宙エレベータは今のテクノロジーでは、堅牢で破壊も難しい。このままでは、再びこの塔をたどって、帰還計画を実行されてしまう。壊すことが出来なければ、太刀打ちするしかないのです。」
明らかに彼女たちは、3000年前の記憶を持っているようであった。ひとりかなり能天気ではあったのだが、彼女たちは聡明であった。
人工子宮を用い、自らの脳を複製し、生体コンピュータとして機能させ、何世代も記憶を自らに受け継がせていた。
厳密には、本人ではない。生まれ変わりにもならないが、一貫した記憶が彼女を彼女足らしめる。
かつて、宇宙戦闘用に建造した宇宙船があった。
3機の別々の用途で作られた、試作機を元に建造中だった。
それは未完成であり、今では海の底にあると考えられる。
ただし、試作機の1機である大型分子マシンプラント、<ベヒモス>によって守られていると考えられている。
直径1kmにも及ぶドーム状のプラントで、整備ドックと、補修部品製造プラントに別れている。動力は核融合炉なのでメンテナンスがされていれば、半永久的に動いているはずだ。
いざとなれば、ホバークラフトの様に、核パルスジェットを使って移動も出来るが、いかんせん、でか過ぎて、安全圏に移動したとは言い難く、信号も移動していないので、海の底だろうと考えられている。
もう1機の試作機、高耐圧装甲、隔離空間試験用潜水艦<レヴィアタン>は、王族の脱出に使われ、海のもくずか、運よくどこかに漂着しているか、なんにしても無事ではないと考えられる。
全長500mにも及ぶ巨体に、核融合炉を搭載し、半永久的にもぐっていられる性能を持つ。
ベヒモスほどではないが、分子マシンプラントとメンテナンス機能を持っているため、エネルギーが供給される限り、船体を保っているはずだが、通信がないため消息不明だった。
最後に、核パルスジェット宇宙往還機<ジズ>は、宇宙エレベータの静止衛星軌道にある、中間地点に停泊している。
もともと、不時着した、宇宙船を元に製作された機体であるが、自力で宇宙に行けるよう、ジェットエンジン以外にも、核パルスジェット、外部ブースターを装備する事が可能である。
また、宇宙に出ることを放棄し、大気圏活動をするときは、耐熱装甲をパージして可変翼が展開する。
3機の試作機は、今となっては、貴重な戦力であり、資源でもある。なんとしても探し出したい。
1機は宇宙エレベータの電池と化しているので、なかなか取り外せなくなっている。
宇宙エレベーターは登るだけで丸三日かかって、降りるときは、摩擦熱で燃え尽きないように降りなくてはならない。
大気圏突入リスクを考えると、ジズは降ろせない、最後の手段として取っておきたい。
「女王陛下。われらが土地に、怪しげなントゥを使う白い女が居ます。」
とある男が言った。
ントゥを使うものはいくらでも居るが、白い女というのは、気になるところであった。
「その白い女とは、どのような者なのですか?」
女王は、疑い深く聞いてみた。
「最近、錆びない鉄やら、硬い鉄やら、今までにないものをつくりだしたり、粘土板に意味がわからない、細々とした絵をかいたりして、それを引っ張りだしてきては、言葉も出さないでントゥを使うのです。」
「なかなか珍しい。(口述でなく、記録を録っているし、何かあるのかしら?)」
「最近、山向こうから来た、浅黒い男と一緒になって、何かあやしいことをやっているみたいで。」
「浅黒い男とは、どんな者なのでしょう?」
「はい。なにやら不思議な道具を持っていて、灰色のナイフと、伸びるくすんだ白色棒を持っていて、それが硬くて。それに、粘土板に書いてある絵と同じものを描くんです。」
「それも珍しい。(灰色のナイフはチタンかしら?棒もアルミ合金かも。それに粘土板の絵は文字かもしれない)」
女王は、その男と女にある予想を立てた。
「では、その男女について調査をお願いしたい。出来れば直に話がしたい。わが宮殿へ招くための招待状をあなたに託します。よい知らせを待っています。」
「ははっ。必ずやご期待に答えます。」
男は招待状が何なのか、通常呼び出しに使われる玉か何かと思い、かしこまり、一礼した。
そうして、久しぶりに人に宛てて手紙を書いた。手紙を招待状に同封し、男に持たせた。
男はナイル川を下り、サハラ平原を横断し、西サハラ湿原まで戻っていった。




