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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
2章 地上の楽園からの追放 1節 むかしむかしあるところに、いい男と魔法少女が出あいました。
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4鉄の魔法

 テヲはククの元で働き始めた。


 赤茶けた土を運び、乾燥させ、火にかける。

 石灰石を(化石が転がっている)拾って粉にしたり、焼いたり。

 木を拾っては、乾燥させ、木炭を作ったり。

 いろいろ珍しそうな鉱物らしきものを拾ったり。

 ずっとそれの繰り返し。





 一応、住む場所と飯は与えられる。


 はじめ、家族に反対された。外国人であり、言葉が違う、ククよりは色があるが、肌の色が白い(黒人と比べればだが)、だいたい何者か得体が知れない。


 一応、助けてもらった恩があるため、客として迎えられたが、あまり気に入られているようではないようだ。



 この前の暴漢は現れない。彼らが何の目的で、ククを連れ去ろうとしていたのか不明のまま。時はすぎていた。



 テヲが働き始めて、一月が経とうとしていた。

 そのころには、テヲとククは言葉もある程度わかるようになった。(現地語はまだまだだが)


 そして、日々の作業に飽きていた。

「クク、つまんねえ。もっと、パーと楽しいことはないのか?」

「文句言ってないで、働け!!あんたはいっつもそうじゃない。もうちょっと我慢しなさい!!」

「俺は、こんなところで終わるような男じゃない。」

「そんなこと言ってるから、家を追い出されるんでしょうが!!キリキリ働きなさい!!」



 彼は、勘当された身だった。どんな理由で勘当されたのか、どんな身の上だったのか不明だったが、なんとなく彼の素性がわかる。




 彼の持ち物は、到底信じられないようなものがある。たとえばチタン製のナイフ。

 チタンは、大量に採掘されるが、精製には電気分解を行う。アルミの電気分解より電力を食うので、半端な発電能力では、精製できない。が、それが存在している。

 またマグネシウム-アルミ合金の伸びる棒はコレもまた、同様の理由で説明がつかない。



 これらは軽くて丈夫だ。しかし鉄の硬さやしなやかさに及ばない。チタンは硬いが割れやすい。または、マグネシウム-アルミ合金は鉄の硬さに及ばない。

 あくまで、ダイビングや、アウトドア用品で、重量を気にしたり、腐食しないものを使わなくてはいけない場合に用いられる素材である。



 鉄はベースメタルとして優秀なのである。鋼鉄、超硬合金、ステンレス、など鉄をベースに炭素、クロム、バナジウム、タングステン、ニッケル、モリブデン、銅、などを混ぜて、オーステナイトやらマルテンサイトなど、位相の違いによりさまざまな性質を持たせることが出来る不思議な金属である。







 ククの母は、そろそろ準備する頃合だとばかりにリズムに乗せて歌い始める。

「炉を直す時期がきた。土をもて、火を放て、土の持つ金の(ントゥ)を呼び覚ませ。」


 そうして、普段使う、土器用の炉でなく、少し窪んだ場所にある、少し大き目の炉へ土を盛り始める。


「土を盛れ。穴をあけよ。大きな穴は無くていい。風の(ントゥ)を吹き込む。」


 粘土を盛り、小さな穴を開けるため、丸木に剥離剤をぬり突き刺す。その穴にふいごを入れるためだ。

 盛った土の炉を乾かし、火をかけることで硬くする。


 そうして出来上がった炉を使って、儀式を行う。鉄を土より取り出すのだ。


「ワラを敷け。もみ殻を撒け。薪を高く積み上げろ。そこに土を同じ分だけつみあげろ。」


 伝統的な鉄作りは、ここでおしまいだが、この家では、石灰を投入する。石灰は、アルミナなどの不純物を取り、融解温度下げる効果がある。

 また火力を上げるため木炭を使う。そのため、この家の鉄は精錬を丹念に行えば、純度を高くすることができる。


 この家の鉄作りを変えたのはククだった。彼女の知識は今で言えば高校化学くらいの知識だが、それでも十分に効果がある。


 化学大好きっこだった前世の彼女は、化学者か薬剤師を目指していた。だが突然の終わりが襲い、生まれ変わるとアフリカの大地。


 あまりに何も無いと思っていたのだか、祖母が土から生み出す様々なモノ。

 そして以外にも、米、麦、綿花などの農業生産物が支える文化的な生活。


 衣食住が充実してるため、生活に余裕があるため、研究に使う時間があった。

 生まれ変わって15年、日本でいえば、奈良時代くらいの水準になっていた。





 鉄作りが始まり、酸素を鉄の元に届かないように火力を上げる。

 酸化鉄から酸素を奪う。一般に酸化物に電子を与えることを還元というのだが、この場合石灰や炭が酸素を奪うことで、鉄を取り出す。




 現代なら、コークスとかガスを投入するのだが、そんなものは無いので、高温にならず溶ける事無く、中途半端に不純物が残っている海綿鉄ができる。


 この海綿鉄を熱を加えながらたたく。

 なぜ熱を加えながらたたくかというと、金属には析出硬化という特徴があり、不純物が浮いてくるため、たたくことでそれを除いている。



 析出の例としてたとえばアルミ。純アルミは柔らかい。しかし合金にする事でジュラルミンが出来る。ジュラルミンは現代では、2000系のアルミ合金になる。しかしそのままでは柔らかい。

 2024-Oを溶けない様な温度で熱処理(溶体化処理)すると、一時的にさらに柔らかい状態になり、常温で時間を置くことで硬くなっていく。このとき、アルミの不純物が表面に浮いてきて、硬化層をつくる。

 日本が発明してゼロ戦にも使われ、現代でも飛行機に使われている、7075-Oは、自然に硬くならないので、やっぱり溶けない微妙な温度で人工時効する事により硬化する。




 さて、彼女たちの仕事は、海綿鉄を作るまでで、精錬は男たちの仕事。このときは、農耕や漁の仕事はお休み。

 

 テヲも金槌を振るい、鉄の元を叩いていた。


 そうして粗鋼ができあがり、加工することで、ナイフや斧、ナタを作り出す。

 中でもナタは非常に重要で、降雨量が多く、暖かいと草がすぐ生えてしまう地域では、草刈は死活問題である。そのため、ナタは非常に重要なのである。



 大まかな鉄の精錬と成形は男たちの仕事であるが、細工や研ぎは女たちの仕事である。

 熱間成形によりある程度変形させ、焼きいれにより硬くする。実用的な道具であっても装飾を施したほうが、より、所有欲を沸き立たせる。そのため、よりセンスある装飾を行う理由があった。


 ククは装飾術や、実用的な道具の製作に長けていた。

 それは、鉄の特殊性を見極め、ある程度不純物をのこして、さびにくくしたり、硬くしたり出来たためだ。

 そのため、彼女のつくる道具を求め各地から、人々が集まるのであった。


 彼女が、アルビノでさえなければ、問題は起こらないはずだった。

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