表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
2章 地上の楽園からの追放 1節 むかしむかしあるところに、いい男と魔法少女が出あいました。
23/77

3旅のものですが

 はるか昔、どこからともなく彼らはやってきた。

 彼らは、本来この時代にあるはずのないものを持っていた。鉄器のない時代、彼らの武器は強力だった。


 通常、アフリカ大陸なのでヨーロッパとアフリカの混血と思うのだが。しかしながら現在の地中海人のような、白人と黒人が混血した様な人々では無い様に思われる。







 彼は、馬車を操っていた。国を離れ、貿易街道を走っていた。

 そんな彼が大きな川に差し掛かったとき、人の営みの証拠ともいえる、生活廃棄物が多く流れていた。

(「この川の上流には人が暮らしているのだな。ちょっと上ってみよう」)

 彼は川上に馬車を走らせた。


 湿地帯で粘土質の川の岸には、桟橋があった。特に農地であるとは思われず、葦が川の岸を埋めていた。そんな中、異物を発見した。それは、リボン状の布がついていた。その下には金属の棒が二本、ぶら下がっていた。


「コレは、箸か? それにしても、(カネ)の箸があるとは。上流には人が居るのか?」


 箸があるため人がいて、しかも文化的に近い人が居るという事実があるため、人恋しさのあまり、この土地を探ることにした。



 周辺を探索していると、ガラの悪そうな男たちが、一回り小さな女を囲んでいた。

 


「はなして!!どこに連れて行くつもり?」

「おうおう、ねえちゃん。いいもん持ってるらしいじゃねえか。おれらの族長が話がしたいってよう。」


 何かしら、いちゃもんをつけて、連れ去ろうとしてた。

「なあ、ねえちゃん。ちょっとだけでいいんだ。うちの輪中まできてくれねえか?」

「いやよ!なんの用件かも伝えないで、どうして行かなきゃ行けないの」


 そんなやり取りがされているとも思わず、近づいていくと、こちらにも気づいた様で(馬車だから目立ったんだろうな)なんとなく、その場の雰囲気をごまかそうとしているようだった。





「どうしたんだい? 女の子でも誘っているのかい!? それにしては乱暴だな。」



 彼は馬車から、男たちに話しかけた。ただ何を言っているかわからないようだった。


”「あんた、その顔だと、山向こうからきたのかい? こりゃあ俺たち部族の問題だ。口出しは無用ですぜ。」”


”「はなして! どうか旅のお方、助けてくれませんか?」”


 彼らの話す言葉がよくわからない。でも彼女は助けを求めているようだ。


「女は嫌がっているじゃないか!。はなしてやれ!」

 少し強めの口調で彼は言った。


”「少し厄介だな。よそもんだし、一人みたいだから、やっちまうか。」”


 そう、一人の男が言った。そうすると、男たちは腰のナタや斧を取って、こちらに向かってきた。



 彼は馬車を走らせなかったため、走ってきた数人の男たちに囲まれてしまった。


 彼は、武器を馬車の中から弓矢を取り出し、男たちめがけて射た。

 矢によるけん制で、二人に当たり、包囲網が少し崩れる。


 彼は、馬車から飛び出し、背中に挿していた棒の先にすばやくナイフをつけた。

 棒は、「カシン」と音を立てて、伸びた。簡単に言えば、ボタン一つで伸びる高枝バサミみたいな感じで、あっという間に槍になった。


 男たちは、ナイフと斧で襲い掛かってきたが、さすがにリーチが違うため、圧倒的に彼のほうが有利だった。

 大きく槍を振り回し、幾分か武道の心得があるのか、槍捌きは様になっていた。



 男たちは、何か捨て台詞的な事を言って、一目散に逃げていった。


 彼は、彼女のところへ急ぎ、近寄った。


「大丈夫か!?」

 フードをかぶっているので、表情はわからないが、やっぱり何を言っているかわからない様子だった。


「アリガタキコト。」


 片言で彼女はお礼を言ったようだが、今では使われていない様な言葉遣いで、よくわからない。

「いま、しゃべったか?」

「キミ、ナ ハ」

「名前を聞いているのか?」

 自分を指して、彼女に確認した。

 彼女は、首を縦に振った様に見えた。


「俺は、テヲだ。君は?」

 まず、自分に指をさし、次に彼女に指を向けた。

「ワガ ナ ハ 、クク」

 彼女は片言でやはり答えた。ただ、彼女の中では困惑が渦巻いていた。


”「あれ、これって。ムーの言葉だよね!?結構変わってるけど通じてるみたいだし。どうして?」”


 彼は気にしないで、次々質問していったが、よくわからない言葉があり、彼女は返答に困っていた。

 そんな中、彼女は、自分が落とした火箸を彼が腰に挿しているのを見つけた。


”「その火箸返して!?」”

 彼に飛び掛るように、火箸を取ろうと手を伸ばした。

「お。これか? これはさっき桟橋近くで拾ったんだが。コレに興味があるのか?」


 彼は、すぐさま火箸を手に取り、彼女の目の前にかざした。


 彼女は、目の前にぶら下げられた箸の所有権が、自分にあることを示すように手振り身振り、早口で彼にはよくわからない言葉を発していた。


「これ、もしかしてお前のか?」

 彼女は、うん、うん とでも言うように首を縦に振った。


「じゃあ、これをどう使うか教えてくれ。」

 彼は、箸の持ち方をしながら、指をさして、使って見せた。


 彼女は言っている意味がよくわからなかった。


 彼は箸の使い方をしていたので、彼はこれが箸だとわかっているようで、わたしが使えるか確かめたいようだ。


 彼女は、ジェスチャーを交えて箸を渡してほしいと頼んだが、受け入れられなかった。

 そこで、彼女は粘土板を使って絵を書きながら説明しようと、普段使っている粘土と左官のコテとコテ板で器用に粘土板を作り、葦でできたペンで何かを書き始めた。


 ちなみに、サハラ湿原では文字はない。口語伝承である。だから技術や風習は(うた)で伝えられる。しかし彼女は、聞いた話を粘土板に残していた。


 粘土板に図と文字が書き込まれ、解説書が作られていく。


 彼は、その粘土板に書かれた文字に見覚えがあった。それは彼の国の文字だからだ。

 言葉といい、文字といい、この少女のはいったい何者なのだろうか?


 そんな事を考えている間に、解説書が作られ、彼女のプレゼンが始まった。


 やっぱり、言葉はよくわからないが、この箸は、食べ物をつかむ用途ではなく、釜から熱くなったモノを取り出すための箸らしい。


「はあ、はあ」「わかって頂けたかしら・・・・・・・」

 彼女は解説で疲労していた。



 彼は彼女ににらまれた様な気がしたが、フードをふかぶか被っているので表情はよくわからなかった。


 どうやら本当に彼女のものらしい。

 なんとなく納得して、箸を差し出した。


 彼女は、すぐさま箸を奪い取って袋にしまいこんだ。


 やっぱり、彼女ににらまれている様な気がしたが、さっきの状況はいったい何だったのか、彼女に聞いてみた。


 やっぱり、ジェスチャー交じりだったが、今度は粘土板が追加された。


 今度は、彼が粘土板に文字を書き加えて、同時に言葉を発した。


 彼女は驚いていた。文字の伝達が可能なのだ。もうとっくに滅びたはずの文字がわかる人がいる。


 とにかく、二人は粘土板を通じ、先ほどの誘拐未遂のこと。なぜ族長が彼女に用があるかわからないこと。彼が国から離れ旅をしていること。いろいろ話し合った。


 粘土板には言葉と文字の対比表が付け加えられていった。


 彼は、今晩の宿を求めているが、物々交換するものがない。同時に職がない。用心棒くらいなら出来るが、他に出来ることが雑用くらいしかない。


 これは好都合と、彼女は粘土運びなどの雑用を求めていて、さっきの暴漢がいつ現れるかわからないので、用心棒として雇おうと思っていた。


 まったくの謎であるが、言葉や文字に共通の認識があり、肌の色が黒くない(フードをふかぶか被り、泥のファンデーションで隠しているので彼女しか知らないが)ため、彼らは親近感を持ち始めていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ