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古事新記(ふるごとあらたにしるす)  作者: 五十鈴飛鳥
2章 地上の楽園からの追放 1節 むかしむかしあるところに、いい男と魔法少女が出あいました。
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2泥集め

「ここの土はよくないわ。ミルラが少なくて運ぶ量が多くなっちゃう。仕方ないから器を作るしかないわね。」



 深々とフードをかぶった人影があった。

 彼女シュガ・ククは湿地帯の土を漁っていた。通常は陶芸を営んでいるが、錬金術、鍛冶職もかねていた。


 農耕、牧畜、狩猟は男の仕事で、ミルラ・ケムという職は女性が家内で行う。

 基本的にこの職業は世襲で、彼女の母親もおばあさんも、ずっとかまどを使ってこの魔法とも呼べる科学を駆使していた。


 サハラの大地は平らであった。そして乾燥と湿潤を繰り返し、ミネラルを多く含む粘土ができた。


 砂金や砂鉄のように鉱山でなくても沖積平野で堆積している。


 鉱山の鉱石も元は、マントルより下のマグマから地下水脈をたどって根を張るように地上の出ている訳で、化合物の塊になっている。それが地表がまっ平らになるくらい侵食されれば、地表のどこにでもある。

 海に金やリチウムが大量に含まれるのと同じである。

 ただ、分散しすぎて集めずらい。やはりそこは水の力で集まったものを見つけるのが手っ取り早い。




「ふうっ! 一人で運ぶには苦しくなってきたわ。誰か男手を雇おうかしら。(カネ)が出来る様な土をもっと集めないと。」



 金属は古代において稀少物資である。少量でもかなりのもので、物々交換が一般的な世界において、食料を手に入れ、給料として支払えるくらい蓄積財とする事が出来れば、生活に余裕がでる。

 人を雇うにしても、対価が必要になり、それは食料が主体だった。




 そんな彼女の目下の悩みは髪である。

 スタイルはとても良いのだが、曲毛でヘアスタイルがまとまらない。本来、アフリカは黒人の大陸であるはずだが、彼女は白かった。というより色素がなかった。アルビノである。


 彼女は目も大きく、鼻筋が通り、むしろかっこいい美人。ただ髪型が融通きかない。

 それでもふわふわとウェーブしているその髪をまとめるため、髪飾りやかんざしを自作しているくらいだ。


 その髪飾りは金属で作ることが多く、うわさを聞きつけた女性に髪飾りの製作を依頼され、それは彼女の収入源になっていた。


 彼女は日々、泥から抽出したファンデーションを愛用している。皮膚組織が弱く、紫外線に弱いためだ。

 そして、泥の色は彼女の白い肌が、周りから目立たないようにする効果があった。


 彼女の土集めには、美容の点も含まれており、本来、器を作る、または鉄分を抽出し鍛冶をするはずの工房は、あたかも雑貨屋の趣を漂わせていた。



 現代アフリカでは、アルビノは生死に関わる。病気の妙薬、レイプすればエイズが治るなど、迷信が広がり、誘拐されたり、手足や性器をもがれたりして、30歳まで生きられない。


 この古代においても、珍しいもので、不吉もしくは吉兆の証として、祭り上げられたり、魔女狩りにあったりするので、あまり目立つ事は避けるようにしていた。





 彼女は泥の採取所から、途中、舟など利用しながら、広大な大河を渡り、周りの居住区から離れ川下にある住居兼工房に帰ってきた。


 彼女は泥を種類別に分け、保管していた。

「この赤茶けた泥は天日で乾かして、こっちの粘土は寝かして・・・・・・」

 彼女の母親が子供たちや嫁、家族と共に整理していた。


 基本的に家族制度は女系で、家の家長は年長の女性である。そして伝統の伝承や子供の教育、しきたりなど口伝で伝えている。


「天の神からのントゥにより、凍れる力を解き放て。」

 リズムよく諳んじられる。あらゆる力は人の持つ英知によって、解き放たれる。そう信じられていた。その方法が言葉であった。

 言葉に論理性があって、詩の中に生活の知恵や、祖先の伝統、もちろん治金の方法も含まれている。

 もしかすると、現在意味がよく解っていない呪文は、こんな中から生まれてきたのかもしれない。












「あれ?ない!火ばさみがない!」


 彼女は自らの工房に帰る途中、生成物をつかむ商売道具の鉄製の火ばさみを落としていた。

 彼女の火ばさみは、彼女の特製で、菜箸のような形状で、彼女しか使えない。


 彼女は、はるか昔の超文明の記憶を持って生まれてきた。その世界では、食事の箸を使う習慣が彼女が子供のときに発明された。箸は食事のみならず、モノをつかむにも有用であった。




 しかし突然の災害があり彼女の命は途絶えた。

 そうして、幾度かの生まれ変わりがあったかも知れないが、ただいま西アフリカの地で、過去の記憶を持って生まれ変わった。

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