12話 魔女の目覚め
ククの転生前のお話を投稿し忘れてました。
2年生になって、基本的にクラスが変わっている訳でなく、ただ単位制なので移動先に知り合いがいると自然と話をする。3年生にならないと進路分けされないので代わり映えがない。
妹やウェルも2年にあがって多少大人びてきて、お兄ちゃん心配です。
チコメは無事?卒業して王都へいった。まあ二人はセットなのでヒルメに連れて行かれた感がある。
オシホは相変わらずアニキ然としていて、自由度がファイマンぽい。
(自由な発想で有名な物理学者、量子力学はこの人がいないと解釈が難しい。観測状態じゃないと物質同士はすり抜ける、地面に立っていられるのは量子を接触によって観測しているので状態が固定される。)
ひとり問題児がいる。ワカメ姫だ。子供なのに妙に性的で、誰にでも好かれ、隙がありそうでのらりくらりとすり抜ける。
要領がいい。わかっている子供である。中身転生者じゃないのか?と疑いたくなる。
そんなワカメ姫にもお友達が出来たようで、たまに女の子が寮にやってくる。
「ワーカーメさーん。あそびにきたよー。」
「ククルカさんこんにちわ。お入りになって。」
元気な声が寮に響く。休日の平和な日常が久々に訪れそうだ。日々ベットにもぐりこまれて、妹たちに叱責され、チャンティコに引きづられるように登校し、休日もなぜか勢ぞろいで、両手に花状態でひっつかれ(気持ちいいけど、ずっとは嫌だ)、引っぺがされを繰り返し。
ワカメ姫もお友達が来ていれば、節操があり常識的なので、”にっこり”して離れていくが、皆が寝静まった夜になると理性が吹っ飛ぶほどの接触を求められてしまう。
さて、久々に休日を堪能したい。
「ヤゴロヲ君。なにしよっか。出かける?それともお家デート?それともあ・た・し?」
チャンティコさん。なに自然に部屋にいるんだ。日常と化している現実が怖い。すでに通い妻だというのか?いっそ住んだらどうだと思うが、ロリと同級生に出涸らしにされそう。前世の記憶的には女の子どうしでいちゃいちゃしたい。むしろ歓迎したい。だが今は男だ。体力の限界がある。天国でもあり地獄でもある。やっぱりだめだ。
「いや、今日は遅れている勉強をしようと、休日もなんだかんだで時間取れないし。」
「じゃあ、わたしがんばる。」
なにを?
「僕が、がんばるんだけど。」
「わたしが、おしえて、あ・げ・る。楽にしていいのよ。」
だからなにを。
わざわざ椅子の半分に割り込んで座らないでほしい。嫌じゃないけど真剣なときはやめてほしい。
「たしかに、成績はいいよね。さすが医療系。」
「そうよ。体の隅々まで知らないとね。」
だから、言い方が。
あ、胸があたる。というか当ててきている。頭を肩に寄せ、髪のいいにおいがする。顔が近い。
「ちょっと、ひっつきすぎて・・・・・」
「わたしは、ぜんぜん快適ですよ。」
ええ、そうでしょうよ。
「チャンティコ、ちょっとのどが渇きません?」
「じゃあわたしがリビングでお茶を淹れてきます。」
「一緒に行こう。それに席があるからそっちで勉強しよう。」
「では、ご一緒に。」
席を立つと、腕を組んできた。べったりだ。よくよく考えてみると、いつも腕を組まれてるな。だいたい片側はワカメ姫だが。
べったりと左腕から一体化され、リビングへ移動する。
「あら、仲良しね。」
カウィールは、いつものようにリビングで、家事をしている。管理人さんのおしごとのうちの一つだ。今日はお客さんが来ているため、お茶の準備がある。
「お茶なら、余分があるから。それにお茶菓子もあるわ。チャンティコちゃん。」
チャンティコは客じゃないのか?
「はい。カウィールさん。いつもどおり遠慮なくいただきます。」
本当に勝手知ったる人のキッチン、といった具合でささっと動く。
一旦、拘束が解かれ、自由の身になった。
「あ、ヤゴロヲ君。ワカメちゃんとお友達を呼んでもらえる?庭で遊んでると思うから。一緒にお茶にしましょう。それとも冷たい飲み物がいいかしら。ちょっと聞いてもらえる?」
カウィールさんは、リビングの外で遊んでいる子供たちに気をやり、手の空いた僕に声をかけたのだ。
「どれ、どの辺かな?」
リビングの開放された縁側から庭を覗く。そこには健康的にボール遊びをしている二人がいる。ワカメ姫は軽めの運動が出来る格好で、もう一人の娘はショートパンツ姿がまぶしい。
「ワカメちゃん、お茶にしよう。それとも冷たいジュースがいいか?」
「ヤゴロヲ様。春とはいえ、ちょっと暑いですね。冷たいものがほしいです。ククルカさんも、よろしいかしら。」
「うん。冷たいものがいい。炭酸ある?」
このククルカという娘。結構ハッキリした性格で、したい事はハッキリ言う。
しばしば遊びに来るのだが、柔軟なワカメ姫とは対照的だ。
「ねえ、あのかっこいいお兄さんは居ないの?」
ククルカちゃんは、僕というかっこいいお兄さんを目の前にして、誰を探しているんだか。
「お兄さんって、あの長髪のごつい人かい?」
「あんたがナヨナヨしているだけよ。あの人はどこ?」
ナヨナヨとは失礼な。普通なだけだよ。
「オシホのことかい?あの人だったら、妹と買い物に出かけているよ。」
「なに?居ないの?それに妹ってどんな関係?」
なんか食いついてくるな。妹とは何にも関係ないだろう。だいたい一回りくらい歳も違うぞ。
「オシホは大人だぞ。子供の相手なんかするもんか。妹は中2だけど、ワカメちゃんのほうが大人っぽい。」
「ふーん。そう。・・・・・・」
にやっと一瞬したかと思うと、後ろを向いて口に手をあて、少しかがんで結った髪が揺れている。
(「じゃあ。わたしでも大丈夫なのね。」)
「ヤゴロヲ様。少し汗をかきました。ふう。」
ワカメの薄手の服が汗ばんで透けている。うちの妹より育っちゃって。目のやり場に困ってしまう。
「冷たい飲み物だね。ククルカちゃんと同じ炭酸でいい?」
「はい。わたくしも同じもので。」
冷蔵庫に買い置きがないので、近場の商店へ買いに行こう。
「カウィールさん。ちょっと外に出てきます。」
「はーい。気をつけて。」
ちょっとそこのお店へ冷えた炭酸飲料を買いに出かけると、駄菓子が置いてあって、懐かしいなあと思い、ついつい買ってしまう。買いすぎたかな。
寮に戻ると、縁側に座ってお姫様と庶民の娘がかしましくお話しています。身分ってなんだろう。
「お姉さんは、あの人の恋人なの?」
「そうよ。」
「違います。」
チャンティコとワカメ姫は、ククルカの言葉にまるっきり反対の返答を返す。
「私はヤゴロヲ君とは同級生で、誰にはばかる事無く付き合えますわ。姫様とはつりあいませんわ。」
「いえいえ。わたくしの継承権なんて無いも同じですので、一般人とさして変わりません。」
「血は薄くはなりませんから、やはり高貴な身分には変わりありませんわ。」
「大丈夫です。ヤゴロヲ様は、血では現せない高尚なものがあります。」
チャンティコとワカメ姫の言葉の応酬が続く。
「好きなの?あれが。」
ククルカは帰ってきた僕を指差した。あれ扱いですか。
「ええ。」
「そうよ。」
今度は一致した。
まあ、あれだけ迫っていれば当たり前だ。
「わたくしは、遺伝子がそう思わせるのでしょうか?」
ワカメとヒルメはとてもよく似ている。でも好みまで同じ、好きになるプロセスまで似ているとも思えませんが、なにがそうさせるのでしょう。
「ヤゴロヲ君って、年齢より落ち着いているのよ。それにしてほしいなと思う事してくれるの。」
女心はまあ前世が女なので。
「うーん。こんなのが?」
ククルカちゃん、失礼だな。
「ワカメちゃんは、だめよ。私の友達だもんっ。」
ククルカは、ワカメの腕をつかみ、抱き寄せた。
「あっ。ヤゴロヲさまっ!!」
ワカメは掴まれながら、片手を僕のほうへのばして助けを求める。
すかさず、チャンティコが縁側から飛び出し、ヤゴロヲに抱きつく。
「お姉さん。気が合うね。」
「そうね。」
「ククルカさん。大丈夫です。お友達の縁は切れません。ヤゴロヲ様との絆も距離ではありません。」
チャンティコの抱きつく圧力が上がる。
「ぐぬぬ。この姫何とかしないと・・・・・」
「お姉さん。がんばって。」
ククルカちゃん。僕には心に決めた人がいるんですが。
「あのー。飲み物あったまっちゃうんですが。」
「あっ!!頂戴!!」
ククルカはサンダルをはいて、飛び出す。ククルカちゃん。まだ花より団子だね。
「どれどれ、どんなの買ってきたの?」
ごそごそ袋をあさる。
「なーにーよー。駄菓子ばっかりじゃない。なにやってたのよ。」
と、お菓子をいくつかとって、飲料の缶と一緒に飛び去っていく。結局食うんかい。
「コレとコレを混ぜると、味が変わるの?」
早速、袋をあけ食べ始める。
「あーほんとだ。ふっしぎー。」
「なっつかしー。色が変わるやつだ。」
チャンティコも袋の中身を物色している。
一人、取り残されたワカメは、駄菓子を見て不思議そうだ。
「袋詰めのお菓子ですか?」
「食べてみると面白いよ。」
一般人代表ククルカがワカメに駄菓子の食べ方を伝授している。
「なんで色がかわるのかしら。」
「それは、化学反応よ、キャベツに柑橘系の汁をかけると色が変わる、アントシアニンにクエン酸が反応するのと同じで。」
チャンティコはさすが医療系。化学には多少の見識がある。
「へー。おもしろーい。もっと面白いのあるの。」
「身の回りには、化学を応用したものはいっぱいあるの。でもみんな知らないだけ。料理って、化学よ。」
「ねえ、化学をやると魔法が使えるの?」
「魔法じゃないけど、びっくりすることができるかもね。」
「へー。お姉ちゃんは、化学をやってるの?」
「化学だけじゃないけど、知ってないと薬とか処方できないから。」
「薬を作ってるの?」
「薬を使って、人を治すの。」
「お医者さん?」
「まだ分からないけど、薬剤師とかも良いかも。
「私も、薬剤師になろうかな。」
「化粧品とかも化学だし、機械だって化学がないと動かないから、そんな限定しなくても良いかも。」
「どうやったら、お姉ちゃんみたいになるの?」
「学校で勉強をして、よく実験をして身に着けるの。」
「えー。勉強やだ。」
「大丈夫。好きなら、知りたいと思ったらそんな苦にならないから。」
「うーん・・・・・・」