11話 魔性少女ワカメ 12歳
暴走特急 ワカメ姫はそう呼ぶにふさわしい。
再会したあの日から、押し掛け女房のように毎日やってくる。
朝 登校を一緒にしたり。
昼 お茶しに来たり。
晩飯の手伝いに来たり。
チャンティコとも毎日鉢合わせして、毎日修羅場がやってくる。
ある朝。
「う~ん。むにゃむにゃ」
なんかあたる。
「おはようございますっ。」
微笑む少女がそこにいた。
あ、いったいなんだ?
「ヤゴロヲ様、あたります。」
えっ、何が?
「ヤゴロヲ様のモノが。」
僕の隣には、ワカメ姫が下着で寝ていた。
「ああああああああああああああああああああああああああ!!」
「なんんんんだー!!」
僕は、さっと距離をとり、部屋の端まで移動した。
「なんで下着なんだー!!」
「だって、服のまま寝るとしわになります。それに、一緒に寝るなら接触面を多くしないと。」
「意味が分からん。なんで僕のベッドで寝ているんだ!?」
「夫婦なら当然の事じゃないですか。」
「は?」
「だから夫婦。」
「誰が?」
「わたくしとあなた。」
「へ?なんで?」
「女王陛下とは結婚できません。しかしヤゴロヲ様は愛人関係となるわけですが、偽装工作が必要です。そしてわたくしは運よく女王陛下と鏡写しです。王位継承権はかなり下位です。臣下の者は早く嫁に行って欲しいはずです。条件はクリアーしています。」
「いや。違うだろ。」
つっこみ処満載の理屈で、ワカメ姫は求婚している。いやなんでいきなり夫婦?
「いくら、わたくしがモーションかけても、気づいてくれないので実力行使です。」
「ささ、この書類に署名を。」
婚姻届を脱いだ服のすきまから取り出した。
「まだ、姫は子供じゃないですか?役所も受け付けてくれませんよ。色んな意味で。」
「成人するまで弁護士に預かってもらって、成人と同時に提出してもらいます。それまでは内縁の妻状態ですごします。」
「どこからそんな知識を・・・・・・、でも、結婚前しかも子供と内縁なんて・・・・・・」
「ええ、ですから、今日からこの寮で暮らします。もう手続き済みです。」
「でも、引越しの動きなんて無かったけど・・・・・・」
「大丈夫です。この寮の裏に別宅を用意しています。来客など必要なときはそちらを使用します。」
「それって、寮に住んでないんじゃ?」
「そんな事はありません。」
「おにい~ちゃ~ん。朝ごはんだよ~」
外から妹の声がしたと思ったら、ドアを開けた。
「・・・・・・変態!!」
バタン!! ドアを勢いよく閉められた。
再びバタバタとドアの前に複数人の足音がして、女性陣3名が手に手に武器を持って集合した。
「この変態!!こんな子供連れ込んで!!女王様が手が届かないからって、子供に手を出すなんて!!」
「このゴミ!!やっぱりゴミね!!こんなゴミ早く焼却よ!!」
「だめよ!?あと4年待ってあげてね!?そしたら、何してもいいからね。」
「いや、ちがうん・・・・・・」
「しね!!変態!!」
「ゴミ!!消えろ!!」
容赦なくモノが飛んでくる。手にした武器でたたかれる。
朝っぱらからひどい目にあった。
ワカメ姫は服を着て、朝食をとっている。
僕は端っこで、反省させられている。
「ごめんなさいね。若い子は欲望に正直で。」
「あんな変態ほっとけばいいのよ。」
「あのゴミ、失恋したからって、こんな子供に手を出すなんて・・・・・・」
「いえいえ、わたくしは喜んで受け入れていますので、皆様の心配には及びませんわ。」
「そんな訳にはいかないよ。だってこんなに小さ・・・くない。わたしと同じ位。あれ?」
だいたい妹と同じ位。それにしても、幼児体系は直らんのか?
「ええ、ここ1年で背が伸びました。それに胸も・・・・・・」
「あたしより大きい・・・・・・」ウェルは自分の胸を見た。
「ヤゴロヲく~んおきてる?学校行く時間だよ~」
チャンティコが食堂に入ってきた。
「何があったの?」
チャンティコは、またか。という感じの表情をした。
「ヤゴロヲ君が、ワカメちゃんに手を出したの。」
カウィールさん。誤解です。修羅場にするの楽しまないでください。
チャンティコはこの姫何とかしないと、という雰囲気で険悪に姫をにらんでいた。
「そういえば急な話なんだけど・・・、ワカメ姫は今日から寮の一員となりました。」
寮母カウィールは唐突に言い出した。
「え?」
「えええええええええええええええええええええええええええええ!!?」
「猛獣の檻にウサギをほうり込むようなもんよ?」
「わたくしウサギというよりは、虎の方が好きですわ。」
確かに草食獣より肉食獣っぽい。
「・・・たしかに押しが強いし。ワカメ姫。」
「わたくし、ヤゴロヲ様とは夫婦ですので、皆様ご心配なさらず。暖かく見守ってください。」
「えええええええええええええええええええええええええええええ!!?」
「ヤゴロヲ!!もしかしてヤっちゃったの!?サイテー!!やっぱりこのゴミ始末しないと!!」
ウェルに足蹴にされる。
「や、やめ!!俺は無実だ!!」
「信用できないわ!!、このゴミ!!」
「ええ!?、王族と親戚になるの?セレブ?」
「そうねえ。でも大変よ付き合いとか。」
「いや、そうじゃねぇ。手も出してもないし、結婚もしてない。この子が勝手に言ってるだけで、事実はないぞ。」
「そうよね、身分違いだし、まだ子供が恋に恋しているだけだから、そのうち覚めるわよ。」
「たしかに、いきなりすぎるかしら。お姉さん感心しないな。真綿で首を絞めるようにしなきゃ。」
寮母カウィール、焚き付けるのはやめて欲しい。
とりあえず。ワカメ姫の暴走具合は、皆分かった様だが、僕の扱いはロリコンだった。
ヒルメ女王の残した成果は、研究分野毎に引き継がれ、ワカメ姫の下進められていった。
僕の前では暴走姫ではあったが、リーダーとして優秀だった。
その中で一番不明なもの、あの巨人とロボットの件がどうしても決まらない。
「ヤゴロヲ様。この機械の中にお姉さまの卵子があります。この機械は人工子宮を兼ねている様です。」
ワカメ姫は、極秘に知らせてきた。
ロボットの中の残留物に卵子があった。
遺伝子を調べてみると、ヒルメ女王のもので、もしかしてあのとき、本当に月のものをつかったのか?
卵子はいくつか複製されており、冷凍保存になっていた。
巨人たちは巨人サイズではなく、人間サイズで種を再生しようとしていたのだろうか?
低重力でしか生殖できないため、地球で生まれるための苦肉の策だろうか?
「じゃあ、子供が作れるのですか?」
「そうですね。でも子種がないと。あっ、わたくしに蒔いてもいいんですよ?」
「いや、いいです。」
「でも、この卵子は女王陛下のモノですので、うかつに使えません。女王陛下の命令であれば使わざるをえないのですが。」
「いや、許可しないだろう。そんな得たいの知れないもの。」
「そうですね。もっと研究してからの方がいいですね。でもたぶん使う、子種は・・・・・・」
「・・・・・・」
「僕は、コレを、このロボットを解析してみせる。いまは難しいかも知れないけれど、いつか必ず。」
「そうですわね。いつか・・・・・・」