新しいスタイルを生み出した
あれから私はひたすらに様々な武器を使いながらバルキリーに稽古をしてもらっていた。しかし剣ってのはあくまで武器だよね?斬撃を飛ばしたり衝撃波を生み出したり地面を割ったりはしないよね?途中で何度も意識を失ったりしたんだけどヤバくない?
「主人は武器を振るうことに集中してしまい体の動きが単調になりますね。それではむしろ枷にしかなりませんよ?」
と、バルキリーは言う。素手での動きはゲームで培った経験から来る物で慣れたものだが、こうして武器を使うのは初めてと言っていい。それでもこうして相手の攻撃を防いで攻撃に繋がるように出来るのはその経験があったからだろう。しかしこれでは戦闘において使い物にならない。
「何かいい方法知らない?」
「そうですね・・・主人は体を使った変則的な動きを得意としてますよね。型に嵌らないトリッキーさと言いますか」
そりゃ私は武術とか習ってないし、ただの独学だよ。やれるかな?と思った事をやってるだけで特に何かあるわけでは無い。
「武器でもその動きができればいいのでは?今まで使った武器で扱いやすかったのは何です?」
定番の剣からマイナーな武器まで色々試したけど、私の中で使いやすかったのは六角に角切りされた棒。これは棍と呼ぶのかな。これが扱いやすかったんだ。武器の中じゃ軽いし丈夫だ。鉄になると重くて。地面に散らばる武器は全部アイテムボックスに入れて・・・ん?アイテムボックス?
「いい事思いついた」
「何をです?」
「ちょっと試してみる。付き合って」
「分かりました」
バルキリーは剣を構える。私はまず棍をアイテムボックスにしまって素手でバルキリーに突撃。籠手を展開して殴りかかるが剣でいなされ弾かれた。
「こんな単調な攻撃では私は・・・!?」
次の瞬間には片方の手に棍が握られておりバルキリーの下から掬い上げるように棍の先端で突く。ギリギリで反応したバルキリーが首を捻り回避。だがそれでは終わらない。次の瞬間には棍は消え、フリーになった拳を振りかぶりフルスイング。剣の腹で辛うじてガードしたがバルキリーは吹き飛ばされる。
「どーよ、変則って言ったらこんな感じかと思ってさ」
「・・・主人、今のは?」
「アイテムボックスを使った」
武器を使う事に囚われて体の動きが単純になるなら、武器を手放せばいい。そして使える時に武器を取り出して使う。アイテムボックスに入れておけば存在しないも同然なのだから間合いも読めるわけがない。素手と武器を両立させたスタイルだ。
「なるほど、確かに読めなかったです」
棍の長さを予め理解しておけば取り出す瞬間を自分の体で隠して出所を探らせない事も可能だ。まだ私が慣れてないからそんなことはできんが。
「これなら使えそうだ。体に覚えさせたいから、今日一日頼むよ」
「了解しました、今日はあの方々はナツミとワルキューレに任せましたので安心してやりましょう」
山賊達の目が助けてと言ってたし・・・まあこうしてやらないと死にそうだし、睡眠時間すらあげてないからねバルキリーさん。今は私と稽古できるのが嬉しいのかテンションが見るからに上がってる。
その分力の入り具合も違うので私が危ない気がするんだけど・・・大丈夫だよね?
最近忙しくなってきて毎日の更新が難しくなってきました、出来るだけ更新はしますが時間が空くのはご了承下さい。