状況を理解した。それはともかくセクハラは許さん
あれから門の脇にある詰所まで連れて行かれると、そこに居たのは顔に古傷の入った髭のある男だった。
「隊長、怪しい風貌の女性を見つけました。どうやら身分証の発行を求めているようです」
衛兵はその男にそう言った。隊長と呼ばれたその男はジロリとこちらを下から上まで見まわす。
っていうか本人いるのに怪しいとか言うのもどうなの?それ相手に警戒されるじゃん?
「・・・身分証か、発行してやっでいいが・・・」
そう言って私を見る男。
うわっ、なんかゾクっとした。視線がもうアレだわ。
「頼むならそれなりの態度がなぁ・・・なぁ?」
衛兵と見合わせてゲヘヘと笑う隊長
・・・これは、もしやセクハラなのでは?セクハラには股間激烈翔拳の刑がよろしいのでは?いやもしかしたら私の気のせいかもしれない。
「つまり何が言いたい?」
「つまりだな・・・体で支払えって事だよ!」
言うと同時に私を押し倒そうと男が襲い掛かり、後ろから同時に羽交い締めにしようと衛兵も襲い掛かる。
期せずして調子を確かめられるチャンスだ、まだ確定したわけでは無いが私の予想が正しいなら差異がある筈。
なので腰を低く構えて一気に踏み込み目の前の男の懐に飛び込む。男はそれに反応したがもう遅い。
隙だらけの男の顎に向けて下から突き上げるようにアッパー、そこから振り向く事なく後ろから来る衛兵の股間を踵で潰す。
「○*☆%×+÷!?」
声にならない叫びで股間を押さえ蹲る衛兵フィニッシュに回し蹴りを側頭部に当てて終わりだ。
倒れた男を足で踏んで動きを抑えて完了。
「ひ、ひぃ・・・!」
さっきまでの余裕はなく、顔に恐怖が浮かぶ男。
ふむ、動きの感覚はおかしくはない。むしろいつもより動きの精度が良い程だ。むしろ気になるのはこの衛兵達だ、彼らの表情や言動はいつも見るNPC達とは全く違う。
特定の事しか喋らないNPCと違いまるで人間のようだ。
「いくつか聞きたい、答えるよね?」
「は、はいぃ・・・!」
あからさまに強面な男が恐怖に怯える姿は何か違和感があるけどそういうものなんだろうか?
私は少し前からある予想をしていた、正直外れて欲しいものではあるが。それはここはVRゲームの世界ではなく、リアル。つまり現実世界なのではないか、という予想だ。
優れたVRゲームでもまだここまでリアルに再現はできない。だから聞きたい。
「サード、という名前に心当たりは?」
「な、ないです・・・!」
その顔は必死だ、嘘をついているようには見えない。
「では今は西暦何年だ?」
「今は2350年だ!何が知りたいんだ!」
「ではこの街の名前は?」
「ビ、ビーゲンだ」
相手からすれば何を当たり前なことを、という質問だろう。だがこれで確信した。
こいつが言ってる事が嘘ではないのであれば、私がプレイしていた時より300年は過ぎている。
そしてNPCであるなら当然答えられるはずの『サード』について答えられなかった。
そして私の知る街の名前と私の知らない街の名前が一緒。
どうやら・・・私は異世界に飛ばされたらしい。
戦闘描写が拙いですがどうぞお目溢しください・・・