異世界さん、こんにちは。でもまずは状況確認から
目を開けたら空が見えた
・・・いやいや、俺の頭がおかしくなったとかじゃないから安心してほしい。
人は訳わからなくなると混乱すると聞くが、目が覚めたら見晴らしのいい草原にいたのは誰でも混乱すると思うんだ。
いや待て、まずは俺は何をしてたのか思い出せ。
確か今学校で流行ってたVRゲーム『サード』をしていたはず。何時ものようにログアウトして寝ようと・・・あれ?記憶があやふやで分からなくなってきた。
まあ多分普通にしてたはず。
そして目が覚めてこの状況になったと・・・
「どういうことやねん・・・」
混乱のあまり関西弁になりながら打ちひしがれる。
その時、自分の手が目に入る。
(あれ?こんなに自分の手って小さかったか?)
改めて自身の体を見れば大人にしては小さい手、腰に届きそうな長い銀髪に黒で統一されたスーツ。そしていつもより高い声・・・
すぐに理解した、これは俺がやっているゲーム『サード』のアバターだ。自分の理想を詰め込んだキャラだからすぐわかる、いやー相変わらず可愛いなぁ。
しかし・・・キャラということはここはゲーム?寝落ちしてたかな、一定時間操作せず放置してると自動ログアウトするはずなんだけど、バグか?
だとするなら今いるこの草原は…初期町『ビーゲン』近くか?こんなところにいた覚えないけどそれもバグ?
(なんだこのバグまみれは、さっさとログアウトしよう・・・っていうか今の時間大丈夫か?朝まで寝落ちしてたとかやめてくれよ?)
そう思いながらいつもの如く頭の中でウィンドウを開くように念じればヴゥンと、ブラウン管テレビのような音と共に目の前にウィンドウが出てきた。
しかし、そこでおかしな事に気づく
ログアウトボタンを押しても反応がない、一度閉じてみたりしてもダメだ。試しにフレンドに聞いてみようと思いフレンド欄を見れば表示されることがない。
なんでだ?ログアウトできないとか致命的すぎる。
この後楽しみにしてたアニメとかあるんだけど見れないの?
「それにしても・・・」
どうもゲームにしてはリアルすぎる気がする
いかにVRゲームがリアルであろうと、頬に伝わる風の流れ、匂いなどまだ分からない筈だ。
しかし今はそれらを感じ取れる、自分の足が土を踏む感触までリアルだ。
そこでチラリとよぎった予想をすぐに振り払う
そんなわけがないのだ。
ならば街に行こう。
そこにはプレイヤーがいる筈、そこで話を聞けば解決する筈だ。
そこでようやく移動した
道中には見覚えのない風景ばかりが広がり、ますます何か違うと感じた。
それから数十分ほど歩いた、ようやく街が見えてきた。
「なんだあの街・・・いつもと違うぞ」
俺の知る街はもっと質素であり村同士が合わさったような見た目をしていたはず
それがどうだ、今は白い石が積まれた城壁がはっきりと確認できる。まるで違う街。城壁の上に立った旗には見たこともないマークが描かれていた。
とりあえず、街に入ろう。あの街で何か分かることもあるはずだ。
目の前に見える門には荷車を引く馬を連れた人達が並んでいた、あそこが入り口のようだ。
並びの最後尾に俺・・・いや、一々一人称がバラバラなのも面倒だ。私に統一しよう。私も並ぶ
どうやら見たところ商人が多いようだ、荷車の中に大きな箱やらが積まれている。
っと、前にいる商人の人に変な目で見られた。
この服装か?まあスーツなんてまず普通じゃないかもしれない。でもカッコいいしこれはやめる気はない。
それから待つ事数分、遂に私の番が回ってきたようだ。
「身分証を出してもらおう」
衛兵にそう言われた。しかし私にそんな物があるわけがない・・・そんな物聞いたこともないし。
「すまんが身分証がないんだ、ここで発行はしてもらえないだろうか?」
そんな風に言えば私を上から下までジロリと見て「ふむ」と呟き、後ろにいる仲間に何やら聞こえないように何かを話している。
(それがなきゃ入れないとか勘弁してくれよ・・・?)
「いいだろう、詰所に来い」
そう言ってスタスタと歩き始めた。ついてこいと言うことだろう。
良かった、特に何もなさそうだ。
ここで怪しい奴め!って感じになられても困る。