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ーバルトリーニ黒博物館よりー

「コピーロボットってあるんですかね?」

重松は新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。

机には最新の論文やデータを撮影し記録した実験ノートがいっぱいで、簡単な断捨離では追っつかないくらいだ。

「工学の世界にはまだ可能性があるからね、うちの医療科学現場じゃタブーだらけで途轍もなく息苦しいよ」

安田は頻繁に送られるメールやLINEをちびちび見て、インターネットの情報に入り込んでいる。

医療科学の世界では、「人を壊す技術」という禁じ手があるために、医療科学の受け手である患者には見せられない側面があるのだ。


そこで、一度、振り返ってほしい話がある。


時は1985年。

アメリカ、マサチューセッツ大学の理学部での話である。

時間工学の学生である、サブテリア・マシューが提唱した「時間ヒモと3次元恒存論の宥和論」の論文が世界の科学界に震撼を齎した。

しかし、その直後、その論文はアメリカ国内中を驚愕させ騒動になってしまったが、1年後、TIME誌にこの論文は捏造であるということが判明し、大きな夢は夢の中、という結論になった。


当時の発行された論文や著書、画像データが未来の機器で作られた、偽物の話だったのである。

一番ひどいのは画像データや前文で、現在21世紀では当たり前な「photoshop」というソフトを使ったり、未来のインターネットからコピーアンドペーストを使って偽造したものということが、CIAの調査によって明らかになったのである。

さすがにこの事態には世界最大の秘密結社「エージェントメイデン」が動き出し、「死神の13番」バルトリーニも出向くことになった裏社会でも最大級の事件である。


「でも、なんで未来の機器なんてのがあるんですかね?」

「簡単さ、集合無意識の総意から自分が見たい情報を集めて、記憶でない部分を選んで気に入った情報を「未来」と認識してるのさ。それがたまたま3次元を超えただけだよ」

「物が未来から過去に戻る、ってありなのか?」

「実はそれ自体は難しくはない。細切れになった空間の境界線と記憶を保持する自我の境界線を擦り合わせて、不思議の国のアリスの如く前へ前へ走れば、別の世界線に持っていくことはできる。だがしかし…」

「しかし?」

「ただこの現象は一人ぼっちだからできることで、大抵は周りの人間との共同幻想におさまるんだが、これが精神医学のタブーである洗脳と合わせ技になるとかなり厄介でな」

「洗脳のヤバさはうちもわかるよ。どの学会でも会議の寄り合いにこの手の怪しいやつがいて、此奴が入ると空気がおかしくなって自分の考えがわからなくなる時があるときがあって家に帰ると疲れてくるんだよなあ」

「まあ、大抵は無視するだけでいいんだが、今抱えている案件がそれ系でねぇ」

安田はコーヒーを飲んでいる。

「で、プログラマである君の力が欲しいんだ。なにせ精神と工学が繋がってくれるとかなりやっかいでさ」

「ああ、でもよく考えればコピーロボット自体は複製可能だな。部品の調達やデータ管理に気をつければ問題ないもんな。でも精神かあ、参ったなあ」

「一番問題なのは、ロボットに精神が付いたさいに「魂」が作った話にでね。まあ、これが一体だけなら人形のある文化では問題ないんだが、いわゆる「時計の針を進める」勢力が絡みだすとマズイ話になる、なにせ」

「何せ?時計の針を進める?」

「魔女が現れたときにに出てくるギルドの神のコピーを作ろうとしたらしいんだ、しかもまだ小さな子供の創造主ってやつを狙って、先手を打って精神ごと貰うための言い訳である「捏造の論文」を創り出してまでやってる、これが厄介なんだ」

「ああわかるさ、俺も集団を魅了するタイプの能無しの女王蜂なやつは何人か知ってはいるからな。しかし、創造主ってどうやって探すんだろうな」

「あれじゃないかな。オセロのひっくり返しの境界を集中どころか執着の域まで見つめて、そこを狙ってきてるのかな。しかし、そこまで見つめてどうするんだろうな?」

「そうだよな、真の創造者はそんなつまんない子供ではなくて俺たち唯の人間なのに。アホだよなあ」

有本は今日もテレビを聞き見ながら、書類を作りながら呟いた。


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