大流血
痛っ!
なんとも随分と久しぶりに歩いたせいか足の爪が刺さって血が滲んでいる
「たったこれくらいの距離でまったく...歳はとりたくないもんだね」
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「ねぇねぇ聞いた?」
いつものようにツーフィンガー(きつえんタイム)で山の公園のてっぺんにいる
「なんば?」
相変わらず彼の会話には主語がない
「勝座中との喧嘩の話、なんか代表出し合ってひょうたん池でやりあうらしいばい」
僕は「ふ~ん」と興味なさげに煙草をふかす
「いかんとや?」
「九重。俺が喧嘩をすると思うかい?」
「ですな」
それでも興味はあるので三人ともギャラリーとして見に行くことにした
とある日の放課後
僕は着替えて九重の家へ自転車を走らせる
「いこうぜ」
この場所はドラえもんでいう所の裏山みたいな場所で変質者も出ると噂なのであまり人は近寄らない
だからこそ僕らもここで煙草をふかすのだが
いろいろと情報を仕入れてみるとどうやら3年生たちが仲が悪く後輩の僕らで勝負しようという事になったらしい
まったく迷惑な話である
でも格闘技好きの九重は
「なんか燃えるよね、こういうの」
といった具合である
僕も久咲もちょっぴりわくわくはしているもののここまではない
ひょうたん池の上の段のちょっとした崖の上から見下ろす
状況的に申し上げればタイマンをはってるんだね
九重と久咲はその様子を見て実況を始めた
「さて始まりました、解説の久咲さん本日は宜しくお願いします」
「宜しくお願いします。早速決まったようですね右ストレート」
この時の二人は本当に楽しそうである
二人の実況を聞いていると時折ゲストとして登場させられる
そんな状況を楽しんでいると突然
-なんばしよっとかお前どんはっ!-
その場にいた全員がびくっとなり一瞬動きが止まる
〝まずい!″
犬を連れたおやじが喧嘩を察知し怒鳴り込んできた
手には大型犬を連れている
興奮している様子の犬、離されると厄介だ
喧嘩しているみんなは散り散りに逃げ出し観客の僕らも一目散に逃げようとする
-お前どんも降りてこんかい!-
僕達は下はまずいと思い一目散に上に逃げた
犬の吠えにびっくりした久咲は木に登り隠れようとする
「クサっ君!はよ逃げるばい!」
そう声をかけると僕と九重は走り出す
「んぎゃ!」
後ろから声が聞こえた、正治だ。
しりもちをつき足をかけている
ねん挫したのか
「なんばしよっとね、はよ逃げるばい」
僕は走り出そうとすると
「待て山崎、おかしいばい」
九重がいう
行動の遅い彼らに心の中ではイライラしながらも僕は正治の方を振り返ると
んぐっ...ぐっ...
冷や汗をかきながら声が出ていない彼の足の裏を見ると噴水のように血が噴き出している
!?
僕は声にならなかった
血を見た僕は足がすくみ身動きが取れないでいると九重が肩を貸し
「とりあえず離れるぞ!」
僕は恐怖で手を貸せなかった
周りを警戒して三人でその場を離れる
公園の水道へたどり着くとその場に正治を座らせ靴を脱がせる
足の裏を洗わせよく見るとぽっかり穴が開いている
意味が解らなかった
いったい何が起こったのか
「お前なんがあったとや?」
九重が正治に問いただすと
「木から飛び降りたったいね、そしたら根っこが上に飛び出ててそこに...」
刺さったようだ
「病院いくぞ」
九重はいう
でもなんか怖い
色々ばれそうで怖かった
「クサキ怪我しとっとぜ、死んだらどげんすっとか!」
キレながら叫ぶ彼に僕は...