ツーフィンガー
『次の競技は五年生によります借り物競争です』
賑わう大運動会
六年生の僕は次の競技の準備に走る
「ねーねークサキ!運動会終わったら転校生来るらしいばい!」
仲良しの久咲正治と共にテント横の道具置き場へ走る
借り物競走に使う道具を取りグランドへ急ぐと慌てたクサキはつまづき転んで玉入れの玉を派手にぶちまけた。
「なんばしよっとかやん!もう借り物競走はじまって!」
「ごめんて!」
涙目で手伝ってと訴えるクサキにマシンガンの様に怒りの言葉をぶつける僕
すると来賓席に座っていた見慣れない少年が近寄ってきて
「大丈夫?俺が片付けておくから君達は準備に行って」
「あ‥ありがとうございます」
僕もクサキも極度の人見知りで知らない人と会話を出来るような神経は持ち合わせていなかったのでただただお礼を言うと早速さとグランドへ走った。
これが僕と隼人との最初の出会い
中学に入りクラス分けでクサキとは隣のクラスになりしばらくは一緒に遊んで無かった。
そんなある日いつもの様に家に帰ってスーファミをしていると
「なおちゃーん、正治君よ」
随分珍しく家に遊びに来たクサキ
母が勝手に部屋に案内すると見慣れない少年を連れて来た
「あれ?確か‥」
「山崎も知っとろ?九重ばい、去年転校してきた」
「初めまして、でも運動会で会ったね」
人見知り全開の僕は運動会での出来事はすっかり忘れていたし彼の事も存在くらいしかしらなかった。
「そうだね、今日はどうしたと?」
そもそもクサキが人を連れてくる事自体が珍しい出来事で
「実はね、この間九重に誘われて行ってきたとよ」
と指をカニの様にして口の前でサインをしている
なるほど、煙草か
「あね、九重もいける口ったい」
共通の嗜好により一気に打ち解ける僕
早速着替えてチャリで颯爽と近所の山の上の公園へ向かった
クサキはポケットから煙草を取り出すと
「イエイエ社長!」
と、九重の口に加えさせ火をつける
「いやいやいやいや‥お父さんもどうぞどうぞ」
と、九重もお返しに
その様子をポカンと眺めつつも僕も自分の煙草に火をつけた。
「いや〜美味いね、この為に生きとるよね」
「いや、まだあんた中1ばってん」
二人のコントを見て笑いながら九重と仲良くなれそうな気がした僕だった。
「これからも一緒に吸いにこようばい!」
九重は嬉しそうに言う
「九重君が良いならよかばい」
まだまだ人見知り全開の僕はなんだかよそよそしい
そんな僕にはお構いなしで九重は言う
「合言葉はツーフィンガーにしよう!何故なら指二本使って吸うから!よかろ?」
ポカンとしながら僕は
『こいつ結構アホだ‥でもこういうノリ好きだな』
「OK!3人の合言葉だね!」
僕らは毎日至る所で煙草を吸う為の場所を探した
公園
橋の下
障害者トイレ
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『ふはは‥ホント青春ってやつだったのかねあれは』
僕は貰い煙草を消すと飲み物を買いにコンビニへ歩いた。
『あんたとの中学校生活はホント飽きなかったなぁ』
「待ってよ〜」
向こうの路地を二人組の少年達が自転車で走っている
「早く来いよ、お前こぐの遅いんだよ」
そんな少年達を見て大喧嘩を思いだす