葬儀
「続いてはお天気です。今年はまた最高気温を更新しました。」
8月某日
「お前は本当に何においても迷惑な奴だったな、まったく...。」
この熱い日に礼服を着る者の気になれ!
そんな事を今のお前に言った所で当人は冷たいドライアイスに囲まれて涼やかな寝顔なんだからまったくお構い無しだ。
会場入りした彼は広い部屋に置かれた棺桶の前に立つ。
辺りでは忙しく葬儀の準備が行なわれている。
「今日はお前の大好きな主役になれる日だ。約束通り感動の悼辞を読み上げてやるから楽しみにしてろよ」
彼は棺桶に背を向け会場の外へと歩き出す。
「御無沙汰してます。」
喫煙所へ向かうと暑い中大勢の人が小さな灰皿を囲み語り合っている。
その中で見知った顔に声をかけられた。
「あぁおつかれ、久しぶりだね。」
「しかしびっくりしましたよ。まさかこんなに早く逝くなんて。」
幾ばくか悲しげな表情で呟く青年
「そうだね、世界が滅んでも生き残りそうな男だったからねハハハ。良かったら一本くれんかね?」
そういうと驚いて
「煙草やめられたんじゃないんですか?」
「あぁ、親父が死んだ年に辞めてまったく吸ってないんだけどね、今日は線香がわりにあいつと吸いたいんだ。」
そういうと青年は彼にタバコを渡しライターで火をつけ何かを感じ取った青年は
「ではまた後程」
そう言って受付の方へと消えていく
「相変わらず察しのいい奴だな」
彼は久しぶりの煙草に少しむせ返りながら
「ホント、よくこんな物ずっと吸ってたもんだねぇ」
煙に涙を滲ませながらよく晴れた空を見上げた
「初めて一緒に煙草吸ったのいつだったっけ」