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キャンドラの灯火  作者: 膣太郎
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第二章 神聖学院

 膣太郎たちが宿営地に戻ったのは、太陽が頭上にさしかかったころだった。昨夜のお月様は神秘的だったのに、今朝の日光は弱々しい。お空は薄灰に覆われたように蒼白だった。主門の近くまで到着したとき、通りの向こうから蹄の音が聞こえて、お馬に乗ったマルケスさんが近づいてきた。

「今までどこ行ってたんだよ? あ?」

 マルケスさんは舌を鳴らして、馬上から膣太郎を睨みつけた。

 頬は痩けてるし、お目めの下には隈ができてたね。

「お前のせいで散々な目に遭ったんだぞ。捜索で一睡もできねぇわ、ガーランドの奴に責任を追求されるわ……その上、ウラジに戻ったら審問会に出頭しろだと? ふざけんじゃねぇよ」

「口を慎みなさい」と、フリアちゃんが愚痴を諌めた。「元はといえば、あなたがチツタロ様の護衛を怠ったのが原因でしょう。司教には私から口添えしておきます。余計な不満を漏らさず、与えられた職務を果たしなさい」

 マルケスさんは不服そうに押し黙る。

 それから、諦念のこもった声で吐き捨てた。

「……承知しましたよ、メーベレフェン査問官」

 二人の関係はよくわからんけど、マルケスさんはフリアちゃんに逆らえないみたい。ひょっとしてホの字なのかな? もしそうなら膣太郎、恋のライバルじゃん。絶対に負けねぇべ。決意をこめて、お尻の肉をギュッと引き締めた。

「そんなことより、峡谷でバージェスを捕らえたぜ」

「ずいぶんと遠くまで逃しましたね」

追跡術(パラウル)に聖珠が引っかからなかったんだよ」

「首にかけていなかったのですか?」フリアちゃんが眉をひそめた。

「どっかに落としやがったらしい。おかげで苦労したぜ」

 それ、膣太郎が引きちぎったネックレスのことね。紐はなくしちゃったけど、膣太郎、手のひらにピカピカ光る石を握りしめてたわけ。咄嗟に腕を背中に回して、お尻の割れ目に隠したよ。こんなの持ってるのがバレたら、怒られちゃうべ。

 膣太郎がモゾモゾやってると、フリアちゃんがこっちに向き直った。

「チツタロ様、これより近くの都市ヘルマンへと転移いたします」

「え? 転移ってなに? 癌?」

 フリアちゃんは「転移術(クルトナ)です」と説明した。「御石の恩寵によって、単数ないし複数の人物を空間転移せしめる秘術です。瞬間移動とでもお考えください」

「へぇ……便利じゃん」

 膣太郎、超能力とか魔法とか信じてなかったわけ。でも、フリアちゃんが不思議な技を使うのを見てきたから、驚かんかったね。

「マルケス!」

「なんだよ」

「私は司教を礼拝堂へお呼びします。チツタロ様のお召し物を手伝いなさい」

 いつの間にか、フリアちゃんのお手てにオムツが握られてた。

「げっ、俺が履かせるのか?」マルケスさんは心底イヤそうに反論した。

「お前がやりゃいいだろ。なんでオッサンの着替えなんか……」

「司教への口添えは必要ないのですか?」

 それだけ言うと、会話を打ち切ってフリアちゃんは去っていった。

 マルケスさんは嫌悪感をむき出しにして、膣太郎のオムツを履かせてくれたよ。

 途中で何度も「いっそ元の世界に帰ってくれ」言ってた。

 そのあと、マルケスさんに従って礼拝堂へと向かったわけ。

 堂に入ると大勢の人たちが説教台の周りに集まってた。修道士さんに紛れてフリアちゃんの姿も見かけたよ。ガーランドさんは、緋色の巻き布を身につけたおじさんと熱心に話しこんでた。「執政官のコクトって男だ」とマルケスさんが言った。

「遠征がはじまる前、中央から派遣されたのさ。いけ好かない野郎だぜ」

 膣太郎たちに目をとめたフリアちゃんが、内陣のほうに手招きした。

 誘導されて修道士さんの輪に入る。取り囲む十数人の男たちは、お手てに聖石をのせてたね。球体は光を放ち、互いに共鳴してるみたいだったよ。

「それでは、これより術式を執り行います」

 宣言を合図に、修道士さんたちが呪言を唱えはじめた。

願わくは、(デリカ・センテ)我ら大地の信徒を、・ロ・ドスト・レチルン神の恩寵において・リエアン・フォ・メリア……」

 呪言が紡がれると同時に、伽藍を照らしていた鉱石の明度が低下していく。堂に冷気が漂い、足元から闇が這い寄った。赤と緑が交錯する薔薇園に、銀の蛾の群れが舞いはじめる。寒いべ。寒いべ。小刻みにプルプル震えだした膣太郎の肩に、フリアちゃんがお手てを置いた。暗闇が視界を浸食し、一切の輪郭がぼやけていく。足元がぐらついた。膣太郎がそこにいることを、地面が拒絶してるみたい。震えが最高潮に達した瞬間、心臓を引き裂かれるような衝撃が走った。思わずその場にしゃがみ込む。呪文の合唱はピタリとやんで、誰かが「着いたか」と囁く声が聞こえた。そして、緩やかに視界が晴れていったわけ。

 お顔をあげると、そこは知らないお部屋だった。

「なんだべ今の。なんだべ今の」

 戸惑う膣太郎の肩からお手てを離して、フリアちゃんが微笑みかける。

「ご安心ください。ヘルマンの修道院に到着しました」

 膣太郎はゆっくり立ちあがると、あたりを見渡した。建物の造りが新しい。背後にはガーランドさんと執政官のコクトさんがいたわけ。二人は何事もなかったように、お部屋を出ていったよ。憮然とする膣太郎に、フリアちゃんが教えてくれた。「ここは転移室です。移動に支障をきたさぬよう、不要な物は置かれていません。後続の修道士たちが現れる前に、我々も退室しましょう」


 真っ白な扉をくぐると、建物に挟まれた中庭に出たわけ。四方を囲む回廊の柱には、両目のないおじいさんやネズミさんの彫像が飾られてる。膣太郎はフリアちゃんに案内されて、南東の建物に向かったよ。尖塔が突きだした円柱形の二階は、修道士さんたちの食堂だった。

「チツタロ様は昨日から何も口にされていませんね」

「オフコース! お腹がグーグー、鳴ってんべ」

「あちらに食事の準備が整っていますよ」

 フリアちゃんが指した先には、ガーランドさんとコクトさんの姿があった。パンと豆類、お魚さんや野菜が盛りつけられた真鍮製のお皿が机に並んでる。ワオワオ腰を振りながら椅子に座ると、対面のコクトさんがちょっぴりお顔をしかめた。

「わぁ、これはなに? ミルーク?」

 料理の横に置かれた杯を手にとると、つんと甘酸っぱい匂いがした。

「赤き果実より造られた聖飲水です。異界の修道院ではワインを醸造するそうですが、我々の世界では酢酸発酵させた果実酒が尊ばれています」

 要するにお酢じゃん。

「こんなのイヤだべ。膣太郎、粉ミルークが飲みてぇべ」

「ミルーク? ああ、家畜の乳(ミルク)ですね」

「膣太郎はお家にいたとき、毎日哺乳瓶で粉ミルークを飲んでたわけ。お母さんに作ってもらうの。ベッドに寝転んでチューチュー吸うと、お口の中にじんわり甘みが広がって、とっても幸せな気持ちになるんだべ」

 斜め向かいに座ってたガーランドさんが、怪訝なお顔をした。

「異界百科大全によれば、哺乳瓶とは赤子の授乳に用いる器具のことですね。貴殿は三十過ぎの成人男性。なぜ、赤子のまね事などするのです?」

「まねっこじゃないよ。膣太郎は、赤ちゃんなんだよ」

「ん……? 意味がわかりませんな」

「申し訳ありません。修道会では乳を飲むことが禁じられているのです」

 フリアちゃんに謝られて、膣太郎、絶望的な気持ちになった。

 哺乳瓶もミルークもないとか、どうやって生きていけばいいんだべ。

異界人(メトリウス)は哲学者気質ですな」

 それまで傍観してたコクトさんが、はじめてお口を開いた。

「いやはや、壮齢にして嬰児とは。一種のエイロネイアですか。解消しがたい矛盾のうちに否定の無限性が内在しているのだ、と仰りたいのですね」

 仰りたいわけないじゃん。バカじゃないの。

 コクトさんは一人納得するように、机の上で両手を重ねた。

「そうした智恵を、ぜひとも生徒たちにご教授願いたいものです」

「生徒たちって誰だべ」と問い返す膣太郎に、

「申しあげていませんでしたね」フリアちゃんが釈明した。「チツタロ様には、明日よりシンクレール神聖学院(ギリウム)へ入学していただきます」

「わぁ、膣太郎は学校に通うの? なんで?」

「現界での生活に馴染んでいただき、こちらの社会常識や学問、神秘術についての基礎知識を会得するのが目的です。といっても一ヶ月ほどですが」

「でも膣太郎、三十一歳だべ。絶対虐められるじゃん」

 それを聞いたコクトさんが、おヒゲを揺らして笑った。

「生徒たちは修道会の信徒です。虐めなどあり得ませんな」

「なにがおかしいわけ? こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際なんだべ」

「よいですか」コクトさんは念を押した。「異界人を学院へと編入させることは、教王省によって厳格に定められた律法なのです。悪法もまた法なり、と異界の言葉にもあるでしょう。我々の慣習を重んじる心構えを持っていただきたい」

 ガーランドさんもしきりに頷いてる。膣太郎の過去を知ってるフリアちゃんだけが複雑な表情で俯いてたよ。それから入学手続きや契約について説明されたけど、よくわからんからほとんど聞いちょらんかった。渡された書類に「ちつたろ」ってバッキリ署名すると、昼食はお開きになったわけ。

 こうして、膣太郎は三十一歳の学生になった。


   *


 けたたましい鶏啼に叩き起こされて、朝を迎えた。いつの間に寝ちゃったのか、気がつくと居室に陽光がさし込んでたよ。廊下から闊達な足音が聞こえる。膣太郎が身体を起こすと同時に、修道士さんがドアを開けた。

「おはようございます。朝食をお持ちしました」

 お礼を言って、差しだされたお盆を受けとる。修道士さんは「それと司教より、こちらの荷物をお渡しするよう承っております」と、廊下から台車を運びこんだ。

 そこにはフクロウの柄が刺繍された赤褐色のローブや、羊毛で作られた緑の角帽、教材や筆記用具を詰めこんだ青いリックサックがのせてあったわけ。きっと、これが学生服なんだね。シャツとズボンも支給されたけど、膣太郎、一人じゃ着られんから修道院に置いていくことにしたよ。

「食事を終えたら表通りまでお越しください。迎えの馬車が来ております」

 急いでパンを平らげて、オムツの上にローブを羽織った。建物の表門に向かうと、修道士さんが言ってたとおり馬車が待機してたよ。

 座席に乗りこんだとき、フリアちゃんが小走りに現れた。

「チツタロ様! 休暇にはお戻りください!」

 その瞳はいつになく真剣だった。

「学院では御石をどの程度操ることができるか、適性測定が行われます。必ずや、結果をご報告ください。私はチツタロ様が救世主であると信じております!」

 膣太郎がコクリと頷くと、馬車が街路を駆けはじめた。

 舗装された道路を揺れ、レンガ造りの家屋を次々と通りすぎる。入り組んだ町並みは童話の挿絵みたいに幻想的で、ところどころに花を売る人や、新聞を配る人の姿が見えたよ。雲一つない青空から、パラパラと小雨が降りはじめた。雨粒は静かに幌を打ち、街路樹を震わせ、街そのものを幻惑の湖に沈めていくみたい。

 やがて膣太郎を乗せた馬車は、大通りを抜けて広場に出たわけ。

 正門を越えた先に、ドーム型の屋根を持つレンガ造りの校舎が見えた。その両翼には外壁を苔で覆われた学生寮が並んでる。聞いた話だと、一万人の生徒が寮生活を送ってるらしい。膣太郎も、今日からここで暮らすんだべ。

 馬車は広場を横切り、校舎のそばで停車した。

「おお! よくぞ来られました!」

 膣太郎の到着を待ち構えてたように、知らないおじさんが駆け寄ってきた。立派なマントと羽根のついた帽子を身につけて、恰幅のいいお腹を揺らしてる。年齢は六十代中盤くらいかな? おじさんは理知と寛容さを感じさせる声で「ドーモ」と頭をさげた。「どうもべ」膣太郎もペコリとお辞儀したよ。

「今度の異界人(メトリウス)はニフォン国からお越しと聞きましてな」と言ってお顔をあげる。「私はシンクレールの学長、オリヴァー・ケルディンと申します」

「新入生の膣太郎だよ。ご丁寧にありがとござますべ」

「お招きできて光栄ですぞ。実のところ、私は大の異界びいきでして……」

 オリヴァーさんは歓迎の証とばかりに膣太郎のお手てを取った。 

「よい体つきをしておられる! 噂に聞くサムラァイというやつですか」

「違うよ。膣太郎、ただの筋肉質な無職だよ」

 バッキリ否定したけど、ちっとも信じてない様子だったね。

「ええ。そうでしょうとも。武士たる者、むやみに身分を明かしませんからな」

「じゃあ、もうサムラァイでいいよ」

 オリヴァーさんは満面の笑みを浮かべて、

「では、早速校内をご覧いただきましょう」と歩きはじめた。

 正門から校舎まで一直線に伸びる石畳を進み、アーチ状の扉をくぐる。エントランスホールには、色とりどりのローブを着た子供たちがひしめいてた。大半は中学生くらいのお年ごろで、叫び声をあげながら身体を突いたり、クスクスお話したり、無邪気な瞳を輝かせてじゃれ合ってたわけ。

「どうしました? 顔色が優れないようですが」

「……膣太郎、もっと年上が通う学校だと思ってたべ」

「我々の世界では五歳から十歳までの子供は修道養育院へと進学し、十六歳までを神聖学院もしくは修道学院(テレウム)で過ごすのです。ここは異界の()()()()()()ですな」

 三十一歳が子供といっしょにお勉強とか、虐めの伏線じゃん。

 ふと、廊下の隅っこに膣太郎と同世代の男性がいることに気がついた。

「わぁ、あの人は先生かな?」

「留年生ですよ。彼は十四留しています」

「アオォ……」

 留年の世界記録かよって感じ。

「当校は試験に通らなければ永久に卒業させませんからな」

 膣太郎、あの人がどんな気持ちで学校に通ってるのか考えた。

 他人事なのに死にたくなったね。


 中央ホールから東棟に移動する途中で、一人の少年とぶつかった。

 ひどく脅えた様子で、両手いっぱいに教科書を抱えてる。ヨロヨロと尻餅をつく膣太郎に頭をさげて、男の子は走り去っていった。そのとき、めくれたローブの隙間から、傷だらけの腕がのぞいてるのに気がついた。何カ所も内出血を起こして、真っ青に腫れあがってたよ。

(……きっと不良にやられたんだべ)

 膣太郎、小さな背中を見てるうちに、昔の記憶が蘇って泣いちゃった。

 校舎を見てまわる間、オリヴァー学長は喋りつづけてた。

「異界では網炎上(ネット・ファイアー)が社会問題だと聞いておりますぞ。それに即席蝿(インスタバエ)という昆虫についても意見を伺いたいですな。私は南米から拡散したと見ておりますが……」

 先生のお話は意味不明だったけど、案内された校舎は荘厳だったね。

 赤レンガを基調とした華やかな内装に、照明の役目を果たす無数の鉱石。東棟の一階は、歴史を感じさせる大食堂になってたわけ。併設されたチャペルからは、途切れることのない聖歌の合唱が聞こえてきた。二階から六階は授業に使われる講義室。廊下の窓から見おろす校庭には、芝生に寝転んで読書にふける生徒たちの姿があったよ。裏手の建物は大図書館で、蔵書量は五百万冊を超えるんだって。

 六階の一角、東端に位置するドアの前で学長先生が立ちどまった。

「ここが、貴方の所属するティルティウス寮の談話室です」

 入口のプレートには、奇妙な文字で『TERTIUS』って書かれてた。

 二羽のフクロウさんを模したレリーフが、両開きの扉を飾ってる。

「膣太郎、寮の一年生にまじって生活するわけ?」

「いえいえ」オリヴァーさんは首を振った。「この世界の教育機関では、生徒を学年ごとに区分していません。在籍年数に関わらず、年一回の卒業試験に合格した者から順に卒業できるのです。優秀な生徒は一刻も早く巣立たせるべきですからな」

 扉を押し開けると、内側から暖かい空気が流れだした。

 中は浅緑の灯光に照らされて、床に異国情緒にあふれた真緋のカーペットが敷かれてたよ。天井からは装飾的な腕木に支えられた鉱石がいくつも吊るされ、自然に回転し、両側の壁へと万華鏡の光芒を投げかけてた。本棚や椅子、テッブールなんかの家具はすべて石造りで、ぼんやりと青白い輝きを放ってる。奥の壁には暖炉が見えたけど、炎の代わりに深紅の鉱石が設置してあった。室内では金髪の少年から栗毛のナオンまで、ざっと三十人ほどの子供たちが散らばってたね。

「静粛に! 静粛に!」

 オリヴァー学長がお手てを叩いた。

 ガヤガヤと騒がしかったお部屋が静まりかえって、一同の視線が突き刺さった。年端もいかない子供たちの好奇に満ちた沈黙。突然現れた見知らぬ大人を、誰もが不思議そうに見つめてる。お部屋の隅には、さっき一階でぶつかった男の子の姿があったよ。でも、膣太郎とお目めがあった途端、お顔を逸らしちゃった。

 年長グループらしい生徒たちが、ヒソヒソと囁きあった。

「……新しい先生かな?」丸眼鏡の少年が言う。

「いや、僕たちと同じローブを着てるぜ」赤毛の少年が答えた。

「緊張してるのかしら。小声でなにか言ってるわ」とブロンドの少女。

「だべ? だべってなんだい? 呪文かな?」

「どうしてニヤニヤしてるんだろう。気持ち悪いなぁ」

「あのおじさん、ちょっと臭いよ。便器みたいな匂いがする」

「まさか生徒じゃないわよね。いっしょに過ごすなんて絶対イヤよ」

「そんなわけないだろ? 僕のパパと同い年くらいだぜ!」

 子供たちはそれを聞いて、ドッと笑い声をあげた。

「だべ……だべ……」

 全部聞こえてる。全部聞こえてるよ。

 ほら、思ったとおり虐めの温床じゃん。膣太郎、まだ自己紹介も済んでないのに早くもハブられそうじゃん。臭いとか言われてるし、第一印象最悪だべ。

 学長先生はそんな膣太郎の不満に気づかない様子で、

「今日からティルティウス寮の一員になるチツタロさんです」と声を張りあげた。「現界に来られたばかりの異界人で、なにかと不慣れなこともあるでしょう。君たちも友人として彼を手助けするように。わかりましたね?」

 誰も返事をしなかった。

 膣太郎、ワオワオ腰を振りながら自己紹介したよ。

「日本から来た膣太郎だべ! 大学八年通って中退したけど、また学校に通うことになっちゃった。ハハ。お仕事はしてないよ。まだ親にお小遣いもらってる。趣味はロックとセンズリね。みんな仲良くしてくれると嬉しいな」

 やっぱり、誰も返事をしなかった。

「ムルージュ!」と学長先生に呼ばれて、背の高い少年が一歩前にでた。抜けるような薄黄の髪に、ガラス玉の碧眼。中性的な顔立ちはひどく繊細で、触れただけで壊れてしまいそうだったね。一方で、しなやかに伸びた優形の身体には幼さと大人らしさが共存し、育ち盛りの筋肉が自信に満ちた態度を際立たせてる。

 男の子は膣太郎をちらりと見て「なんですか?」と言った。

「私は業務に戻ります。君がチツタロさんの世話係を務めなさい」

「わかりました。責任を持って義務を果たします」

 オリヴァー学長は満足そうに頷き、談話室を出ていったわけ。

 知らない場所に一人ぼっちで取り残されたことを実感して、心細くなった。

 男の子は膣太郎に向き直ると、

「はじめまして、ティルティウス寮長のテルレス・ムルージュです」と微笑んだ。「わからないことがあればなんでも僕に聞いてください」

「わぁ、よろしくブラザー!」

 膣太郎は嬉しくなって、またワオワオ腰を振りはじめた。非の打ちどころがない美少年じゃん。膣太郎がナオンなら惚れてたね。テルレス君は静かに微笑を浮かべたまま、生徒たちの輪に戻ろうとした。

「ブラザー! 膣太郎はこれからなにをすればいいんだべ?」

 するとテルレス君は「え?」と言って、振り向いた。

「そんなの知りませんよ。わからないことは聞けって言いましたけど、答えるとは言ってません。ご自分で考える努力をしてくださいね、大人なんだから」

「ワオ……」

 談話室中の生徒たちが、こらえられずに噴きだした。

 彫刻のように鼻筋の通ったテルレス君のお顔から、優しさが消える。子供って、そうだったね。お友達になれたと思ったら、次の瞬間には笑顔で殴りつけてくる。学生時代にいっぱい裏切られたこと、膣太郎、すっかり忘れてたべ。

 いたたまれなくなってお部屋を出ようとしたとき、誰かのお手てが膣太郎の制服を引っ張った。バランスを崩して転倒する。首元のボタンが弾け飛んで、ローブがすっかり脱げちゃったわけ。シャツもズボンも身につけてない膣太郎のオムツ姿を見て、ブロンドのナオンが悲鳴をあげた。それを皮切りに、室内は混沌と化した。楽しそうに囃し立てる男子に、怖がって泣きはじめるナオン。膣太郎は床に寝転んだままエビみたいに丸まって、恐怖でプルプル震えてたよ。ジワァ……と、オムツの中に生暖かいオシッコの感触が広がっていく。なにもかも、昔と同じだった。


   *


 誰もいない談話室に、膣太郎は一人でうずくまってた。

 チャイムが鳴ると同時に、生徒たちはぞろぞろと教室に移動していった。でも、膣太郎は立ちあがる気力もなくて、親指をチューチュー吸いながら床の上に倒れてたよ。オムツ履いてるのがいきなりバレて、みんなに嫌われて、どうしたらいいかわからんかった。ただ、お母さんに会いたかった。

 そのとき、誰かが談話室に入ってきたわけ。

 なにをするわけでもなく、お部屋を行ったり来たりしてる。二三分経ったころ、その人は困ったようにため息をついて、おずおずと膣太郎に近づいてきた。

「あ、あの……平気?」

 声をかけられて視線をあげると、小学生くらいの子供が膣太郎のお顔を覗きこんでたよ。一階でぶつかった、腕に痣がある少年だった。テルレス君の端麗な顔立ちとは正反対に、小動物の愛らしさを思わせる容姿。丸みを帯びた黒髪は耳の上で揃えられて、コバルトブルーの瞳が不安げに揺れてたね。まだ骨格が成長してない小柄な身体は、透けてしまいそうなほど弱々しかった。

「平気じゃないよね……ごめんなさい」

 男の子は膣太郎のお顔がヨダレと涙で濡れてるのを見て、なぜか謝りはじめた。

 三十一歳の男が、こんな子供に心配かけるなんて情けないね?

「大丈夫だべ」と言って、ヨロヨロと起きあがる。

 男の子は「ダルハン先生が呼んできなさいって言うんだ」と、弁解じみた口調で話した。膣太郎のことが怖いのか、ちょっぴり息が荒い。

「ブラザーは膣太郎を迎えに来てくれたわけ?」

「うん。僕、トビックって言うんだ」男の子はお目めを伏せて腕を押さえた。「チツタロさんの世話係をテルレス君に押しつけられちゃって」

 押しつけられたって、なによ。まるで膣太郎がお荷物みたいじゃん。

 脱げたローブをキョロキョロ探してると、

「ここにあったよ」トビック君がボロ布をつまみ上げた。誰かに踏みつけられて、生地はグチャグチャになってたね。「急がなきゃ。また先生に怒鳴られちゃう」

 膣太郎は肩を貸してもらいながら、談話室を出て教室に向かった。

 目的地の教室は、校舎五階の西側にあったわけ。ドアにはめ込まれた石板には、光る文字で『異界学概論 本日の講義:異界探求史』と書かれてた。小窓から中を覗くと、深紅のローブを着た男の人が教壇に立ってたね。年齢は膣太郎より少し上くらい? コウモリを思わせる小さなお顔に、アンバランスな眼鏡をかけてるの。膣太郎を嫌ってた小学校の担任にクリソツだった。

 先生はすでに講義をはじめてるらしい。

 それは、こんなお話だった。

「――さぁ教科書を開いて。前回の続きからいきますよ。遡ること一五〇六年前、西方の自然哲学者クシュラプナが観照によって天体の神秘を解明し、並行的位相世界の可能性を記した、と……ここですね。さて、それ以降、我々は《神の仮寓(メ・トリアム)》の探求を続けてきました。七聖帝の時世にはガロン学派の興隆に伴い、分離実体論の実戦的研究が全盛を迎えたのです」

 先生はコツコツと教室の中を歩き回って、

「アミス・ナニエル。分離実体論とはなんですか?」とたずねた。

 名指しされた生徒が、椅子から立ちあがって答える。膣太郎を見て悲鳴をあげたブロンドのナオンだったよ。「えっと……事象はおのずから為るのでなく、異界における形相の生成変化に付随するという考え方です……教科書によると」

「よろしい」先生が講義を続ける。

「しかし、変位相世界の観察手法は高度化する一方、実体接触には至りませんでした。やがて七聖帝が治めるオスタニアは北方の地トラムンドより侵略を受け、車輪戦争が勃発します。国は三百年の苦難に見舞われ、最後の聖帝ウルフが斬首されるまで戦が終息することはありませんでした……では、ゴーマ・ダジュロ」

「あ? なんッスか?」

 名前を呼ばれた茶髪の男子は、座ったまま返事した。

「蛮族たちはオスタニアを分割統治し、大陸の北方にトラヴリアを建国しました。その結果、何が起きたのかを説明してください」

「教科書なくしたから知らねッス」横柄な声で答える。

 ゴーマと呼ばれた生徒の周りで、さざ波のように笑いが起こった。

 一瞬、先生は般若みたいな表情を見せたけど、怒鳴ったりはせんかった。

「いいでしょう……では代わりに、ムルージュ!」

「はい」凜とした声でテルレス君は答えた。「聖帝権威を補強する役目を負っていたガロン学派は淘汰され、反-神聖学の観点から異界研究が引き継がれました」

「素晴らしい!」と叫んで、先生は小さく拍手した。

 そのとき、窓の近くに座ってた男子生徒が膣太郎に気づいた。

「キモタロだ! キモタロが来たぞ!」

 生徒たちが授業そっちのけで囃し立てる。キモタロっていうのは、どうやら膣太郎のあだ名らしい。膣太郎、元の世界でも学生時代は「キモ太郎」って呼ばれてたからね。子供の考えることはどこもいっしょだな、って思った。

 タイミングを見計らってたトビック君が、観念したようにドアを開ける。

「おやおや」先生は講義を中断し、意地悪な笑みを浮かべた。「遅かったですね、トビック・バインズ。お友達を談話室まで呼びにいくのに、十五分かかりました」

「ごめんなさい……あの、僕……」

「言い訳はいりません。授業をサボって遊戯札(ペルッツ)で遊んでいたのかな?」

 トビック君はなにも言えずに、涙ぐんで席に座った。先生はその様子を見て鼻を鳴らし、今度は教室の入り口にボーッと突っ立ってる膣太郎を睨みつけた。

「ちょっと君。そこの、クネクネした人」

「クネクネした人じゃないよ。新入生の膣太郎だよ」

 先生は膣太郎のほうに歩み寄って、不快そうに眉をひそめた。

「一回目の授業から遅刻するとは……ずいぶんと余裕がありますね」

 わぁ、余裕があるだって。膣太郎、褒められちゃった。

「オフコース! 膣太郎はロックだからね」

「それは結構」と先生は低く唸るように言った。「しかし、異界びいきの学長には気に入られても、このホルジュ・ダルハンにまで特別待遇を求めないように」

 膣太郎、先生に指示されて一番後ろの席に座ったよ。右隣はトビック君の、前はアミスってナオンの席だった。黒曜石みたいな机の天板にお顔が反射してる。教室の前には、ホワイトボードの代わりに黒い石板が設けられてたわけ。チョークともペンとも異なる質感で、異界の文字が書かれてるの。ダルハン先生が石板の表面にお手てで触れると、文字はぐにゃりと歪んで消えちゃった。

「みなさん、教科書を閉じてください」

 ダルハン先生が言った。

「せっかくニフォン国から転校生が来てくれたのです。今日は異国の歴史について教えていただきましょうか。いいですね、チツタロ君」

 そんなこと言われても、膣太郎、社会のお勉強はちょっぴり苦手。学校のテストはいつも〇点だったし、新聞とか読まないから、日本の大統領が誰かも知らん。

 黙りこむ膣太郎を無視して、先生は指先で教壇を叩いた。

「ニフォン国では江戸幕府という体制が二半世紀ほど続いたそうですが……」

「ハハ。どんな質問かと思ったら、江戸時代のこと?」

 膣太郎、もっと難しいこと訊かれるのかと思ったべ。よく考えたら、異世界の人が膣太郎より日本史に詳しいわけないよね。心配して損しちゃった。

「おや、では初代征夷大将軍の名前はご存じですか?」

 当たり前だべな。バカにすんなって感じ。

「徳……? 徳光さんだべ」

 教室の子供たちが、ゲラゲラと一斉に笑った。

 端っこに座ったテルレス君は、じっと膣太郎のほうを睨んでる。

「なんでだべ。なんでだべ。徳光さん、よくテレビに出てるじゃん」

「初代将軍は徳川家康公よ!」アミスちゃんに注意された。

 ダルハン先生は勝ち誇ったように「おや、チツタロ君は歴史が苦手のようだ」と、お手てで額を押さえる素振りを見せた。「では、算術はどうでしょう?」

 先生は教壇の下から麻の袋を取りだして、二枚の硬貨を机に置いた。

 膣太郎、それ見てピンときたね。あ、これ簡単だな……って。

 十枚組の硬貨が十セットで合計何枚になるとか、そういうのでしょ?

 そういう問題なら大得意。頑張って数えたら解決じゃん。

 ダルハン先生は人差し指を立てて、問題を出した。

「オスタニア諸国では通貨単位が『ニール』に統一されています。硬貨には複数の種類が存在し、中でも鉄貨が六ニール、銅貨が七ニールの価値を有しているのです。さて、そこでチツタロ君に問いたい。この国では鉄貨と銅貨だけで支払うことのできない値段が、全部で何種類あるでしょうか?」

 ――そんなの、わかるわけねぇべ。

 教室中の子供たちが、なにかを期待するように沈黙する。

 膣太郎は前を向くことができなくて、座ったまま俯いてプルプル震えてた。登校初日から晒しあげられて……バカにされて……なんでこんな目に遭わなくちゃいけないのかな? 膣太郎、涙がポロポロ、出てきたよ。

「どうしたんです? 足し算と九九で解ける問題ですよ」

「膣太郎……九九なんか知らないもん……」

「えっ」トビック君が息をのんだ。

「二の段から先が……難しくって……覚えちょらんもん……」

 机に突っ伏してワオワオ泣きはじめた膣太郎を、みんなドン引きしながら見つめてる。ダルハン先生も、それ以上なにも言わんかったね。チャイムが鳴って授業が終わったあとも、膣太郎は大声で泣き続けてた。


「よう、チビックじゃねぇか」

 膣太郎たちが談話室に戻る途中、人気のない廊下で男子が待ち構えてた。

 さっき教科書をなくしたとか言って、先生を冷やかしてた生徒。たしかゴーマ君って名前だったね。短く刈りこんだ茶髪と、触手みたいに飛びだした前髪。粗雑さを感じさせる容姿は、他の子より少し大人びて見えたよ。

 ゴーマ君は慣れた動きでトビック君の行く手を塞ぎ、猫なで声で言った。

「悪いけど、学食でパン買ってきてくれねぇか?」

「僕、これからテルレスの宿題を手伝わなくちゃいけないんだ」

「寮長様なんだから、自分でやらせりゃいいだろ」

「でも、約束しちゃったから。ごめんね……」

「お前さ」ゴーマ君は険しいお顔で一歩進み、トビック君に身体を押し当てた。「あんまし調子こいてるとブッ殺すぞ?」

 やっぱり、どこの世界でも子供の考えることはいっしょだった。

 脅える少年の姿が昔の自分と重なって、どうしようもない息苦しさに襲われる。

 身体中の血液が沸騰して、こめかみがピクピクと痙攣したね。

 ロックじゃねぇべ。こんなの、全然ロックじゃねぇべ。

「暴力はやめんべぇぇ!!」

 膣太郎、ずかずかと二人の間に割って入った。

 ゴーマ君は腹立たしげに膣太郎の身体を押しのける。

「あ? なんだオッサン。すっこんでろ」

 威嚇された途端、両膝がガクガク震えはじめた。だけど膣太郎、怯まんかった。子供が怖がってるのに知らんぷりする奴、ロックンローラー名乗る資格ねぇべ。

「そうはいかないよ。膣太郎、トビック君のお友達だもん」

「友達?」ゴーマ君が唇の端をつり上げた。「おいチビック! お前、この気持ち悪いオッサンの友達なのか? 俺よりこいつのほうが大切だってのか?」

「ち……ちが……僕……」

 胸ぐらをつかまれて、トビック君は苦しそうにゲホゲホと咳こんだ。

「暴力はダメだべ! お母さんが悲しむべ!」

「うるせぇよ。メグドは黙ってろ」

 ゴーマ君が高々と拳を振りあげた。反射的に歯を食いしばり、お手てをギュッと握りしめる。膣太郎は突差にお目めをつぶって、衝撃に備えたわけ。

 だけど、いくら待っても拳が飛んでくることはなかった。

「お前ら! そこでなにしてるんだ!」

 廊下の向こうから叫び声がして薄目を開ける。血相を変えたテルレス君が駆けてくるのが見えた。異様な雰囲気を感じ取ったのか、金髪を振り乱して、ひどく息を切らしてたよ。助けが現れたことで張りつめた空気が弛緩する。ゴーマ君は「覚えとけよ」と言い捨てて、膣太郎から手を離した。あと一歩のところで獲物を逃した獣の眼――この子、本気で殴るつもりだったべ。ゴーマ君が談話室に消えるまで、膣太郎は身じろぎ一つできんかった。

「こんな場所でなんの騒ぎだ」

 高ぶった感情を抑えこむような足取りで、テルレス君が近づいてくる。膣太郎が説明しようとしたとき、その両手がトビック君の肩を揺さぶった。

「聞いてるのか? トビック・バインズ」

「ご、ごめんなさい……僕……」

「休み時間は僕の宿題を手伝えって言っただろ!!」

 吐きだされたテレルス君の言葉に、膣太郎はお耳を疑った。

(こいつ、なに言ってんだべ?)

 怖がってる子供に言うことが、よりによって宿題?

 怒鳴りつけられたトビック君は、気の毒なほど脅えてた。お顔から血の気が引いて、ひたすら「ごめんなさい……ごめんなさい……」と謝罪を繰り返してたわけ。長いこと暴力に晒され続けたせいで、反抗する気力さえ失ったように見える。

 やがてテルレス君は落着きを取り戻して、膣太郎を一瞥した。

「どうせ新入生がゴーマに絡まれたんだろ? お前は関係ないじゃないか」

「違うよ、チツタロさんは僕を助けてくれたんだ」

「こいつが?」テルレス君が小馬鹿にするように笑った。

「僕が悪かったんだ……みんな僕のせいなんだ……」

 トビック君は、なんにも悪くないんだべ。

 本当に悪い人なんて、誰もいないんだべ。

 声をかけてあげたかったけど、トビック君にはなにも聞こえてない様子だった。お目めに涙をいっぱい溜めて、悔しそうに俯いてたよ。それから引きとめる間もなく、廊下の反対側へと走っていっちゃったの。唖然とするテルレス君と膣太郎だけが、いつまでも通路の向こうを見つめてた。


   *


 結局、休み時間が終わってもトビック君は戻ってこなかった。談話室の生徒たちは、トビック君が消えたことに気づいてすらいない様子だったね。子供たちが教室移動をはじめると、膣太郎も教科書を持って周囲に従った。赤褐色のローブを着たティルティウス寮の集団に、濃紫やオリーブ色のローブを羽織った生徒たちが合流する。どうやら、次の授業は三寮合同で行われるらしい。子供たちは二階の東端、廊下の突き当たりにある大講義室へと吸いこまれていったよ。大きな扉に掲示された石板には『実戦秘術 本日の講義:基礎呪文(Ⅴ)』と記してあった。

 異界学の教室には整然と机が並んでたけど、このお部屋は体育館みたいにガランとしてた。机や椅子は一つもなくて、前方に大きな石棚が置いてあるだけ。広い空間を覆い尽くすように、床いっぱいに分厚い絨毯が敷かれてる。膣太郎、トビック君がいるんじゃないかと室内を見渡したけど、どこにも見つけられんかった。

 チャイムが鳴ると同時に、四十歳くらいの男性が教室に現れた。

 枯れ木のような痩躯に深碧のローブを巻きつけ、窪んだ眼孔が骸骨を思わせる。膣太郎が通ってた予備校の講師にクリソツだった。

「おや、バインズとダジュロは欠席かな?」と言って、その人は膣太郎を見た。「君がオリヴァーの言ってたサムラァイだね。職員室でも話題になってるよ」

「わぁ、膣太郎のことが噂されてるわけ?」

 先生はそれを聞いて、愉快そうにクスクスと笑った。

「授業中に号泣したんだって? 皮肉屋のダルハン先生が珍しく落ちこんでたね。少しからかうつもりが、やりすぎたって。ああ見えて、彼は気が弱いんだね」

 膣太郎が泣いたこと、もう学校中に広まってた。

 限界集落の情報ネットワークかよって感じ。

「おっと、自己紹介がまだだったね」先生は嬉しそうに膣太郎のお手てをとった。「僕は秘術学を担当するペリオ・ポーティだ。よろしく」

「扶養家族の膣太郎だべ! 趣味はチン毛屋さんごっこね」

 腰を振って答えると、生徒たちの輪から失笑が漏れた。

 誰かが「つまんねぇんだよ」とヤジを飛ばす。ペリオ先生は咳払いした。

「はいはい。みんなはいつもどおり、寮ごとに組を作って。教科書の十五ページ、先週やった『凍結術(クロコッサ)』の復習をしてください。怪我しないようにね」

 指示を受けて、子供たちがいくつものグループに分かれる。褐赤色の集団はティルティウス寮、濃紫の集団はグルムバッハ寮、それからオリーブ色の集団はオルズランド寮って名前らしい。ペリオ先生にいろいろ説明してもらったけど、膣太郎はこういう横文字を覚えるのが苦手だから、適当に頷いて聞き流してた。

「で、今日はチツタロ君に聖珠との相性を調べてもらうんだけど」

 それは知ってる? とたずねられて、コクリと頷いた。

 修道院を発つ前、フリアちゃんが言ってた適正測定とかいうやつだべ。はじめて宿営地を訪れた日、『聖珠を導きし者』って言葉を聞いたことを思い出した。

 膣太郎、腕を組みながら仁王立ちして、バッキリ宣言したね。

「たかが石ころ一つ、 膣太郎が使いこなしてやんべ」

「うーん。それはどうかな」ペリオ先生は苦笑して、少し言いづらそうに続けた。「一応検査はするけど、適性がなくても落ちこまないでね。それが普通だから」

「普通ってどういうことだべ」

「体質的な問題なのかな。この石は現界の人間にしか使えないの」

「なんで? そういう差別はよくないと思うべ」

「差別じゃなくてね……」先生が説明する。「キャンドラ鉱石――僕たちが聖石と呼んでる鉱物は、いわばエネルギーの媒介装置なんだ。術者の生体に流れる微弱な電流が、鉱石中の粒子を人為的に操作することで、自然界の摂理を変容させるんだよ。だけど、その生体電流は異界人の身体には備わってない機能でね。一説によると環境的相違、とりわけ月の波動差が要因とも言われてるね。つまり異界の月光を浴びて育った人間には、聖石は使えないってことだね」

「意味わからん。やっぱり差別じゃん」

 フリアちゃんは膣太郎が聖珠を操れるって信じてるんだべ。ナオンの期待を裏切る奴、ロックじゃないよ。それに、膣太郎が世界を救うって約束したんだもん。

 簡単に諦めるわけには、いかねぇべ。

 納得できない様子の膣太郎をなだめるように「まぁ、仮説だけどね」と言って、ペリオ先生は石棚に近づいた。それから小さな球体を一つ選んで、膣太郎に渡したわけ。透明な固体の中心に、微かな灯りが見える。手のひらにのせるとじんわり温かくて、不思議な感じがしたよ。

「うん、じゃあ簡単な術を試してみようか」

 先生はローブの下から装飾の施された聖珠を取りだすと、大きな声で唱えた。

炎を従属させよ!(セント・ウル・エルモ)

 光明に輝く聖石が赤みを帯び、火花を飛ばし、焔を帯びてパチパチと燃えはじめる。先生はちっとも熱くなさそうに、手のひらの炎を増幅させたり収縮させたり、自由自在に操ったよ。ちょっとした手品を見てる気分。

「すごいべ! 魔法使いみたいだべ!」

「同じようにやってごらん」先生に促されて、教室の中央に立った。

 生徒たちは演習をやめて、興味深そうに膣太郎を見つめてたね。精神を集中させて、手のひらに聖珠を握りしめる。大きく息を吸いこんで呪文を唱えた。

金玉が震えている(センベ・ウルル・エロ)!」

 ビックリするくらいなにも起こらんかった。

「うん、呪文が違ったね。もう一回やってみようか」

 膣太郎は気を取り直して、右手を天に掲げた。

金玉が膨らんでいる(ヘンベ・ウルル・エロ)!」

「うん、いいね。でも一回金玉から離れようね」

 膣太郎はおバカさんだから、呪文がどうしても覚えられんかったわけ。先生は丁寧に教えてくれたけど、百回くらい練習しても正確に唱えることができんかった。焦れば焦るほど、噛んだり言い間違えたりして、時間だけがすぎていくわけ。

金玉が固まっている(チンベ・ウルル・エロ)!」

 ありったけの声を絞りだし、キュッとお尻の筋肉を引き締める。お尻の割れ目がじんわりと熱くなった。身体がブルッと震えて、足元に冷気を感じたよ。今度こそ決まったな、って思ったね。

 だけど、お手てにのせた聖珠は微動だにせんかった。

「今のは惜しかったべな。ハハ」

 笑いながら振り返ると、ペリオ先生が何人かの生徒と深刻な表情で話してた。「急いでタッショさんを呼んで……あ、気がついたね!」膣太郎の視線を受けて、足早に駆け寄ってくる。なにがどうなってるのか、さっぱりわからん。

「また膣太郎、なにかやっちゃいましたべ?」

「うん、立ったまま気絶してたね」

 いつの間にか生徒たちは群がって、膣太郎のほうを凝視してた。どのお顔にも、脅えたような表情が張りついてる。ただごとじゃない雰囲気だったよ。

「無理に聖石を使おうとしたから、負担がかかったのかもしれない」そうは言ったものの、先生にも原因がわからんみたいだった。「念のため、身体に異常がないか調べてもらったほうがいいね。ティルティウスの医務委員は誰かな?」

「私です」アミスちゃんが手を挙げた。

「うん、ナニエルか。彼を医務棟に案内してあげなさい」

 アミスちゃんは不愉快そうな表情で、おそるおそる膣太郎の腕をとった。オムツから漂う匂いに気分が悪くなったのか、しきりに鼻を鳴らしてる。アミスちゃんは膣太郎のほうを見もしなかったし、教室を出るときもずっと無言だったよ。人気のない廊下を進み、エントランスホールへと続く階段をおりた。

 一階に到着すると、小さなドアからお外に出た。そこは正方形の中庭になってて、石畳で区切られた芝生には大きな花壇がいくつも設けられてたね。

「あそこが医務棟よ」アミスちゃんはそう言って、向かいの建物を指さした。白く塗られたレンガ造りの二階建てで、棟っていうよりオモチャのお家みたい。周囲は柵で区切られ、そばには薬草園や野菜畑が見えたね。

 アミスちゃんに先導されて中庭を横切ったとき、奇妙な物音が耳に届いた。

 生徒たちの喧騒とも聖歌の合唱とも違う、人間が発する甲高い声。膣太郎はなにかに引っ張られるように、声のする方向へとフラフラ歩きはじめた。

 苛立ちを露わにしたアミスちゃんが、膣太郎のあとを追いかけてくる。

「ちょっと、なにしてるのよ」

「こっちのほうから、誰かの声が聞こえんべ」

 膣太郎は校舎のそばにある茂みを覗きこんで、悲鳴をあげた。

 血痕の飛び散った芝生に、トビック君がうつ伏せの状態で倒れてたわけ。壊れた人形みたいに手足はグニャグニャと折れ曲がり、大きくお目めを見開いてる。顔面から血を流して、赤褐色のローブに黒いまだら模様を作ってたね。強く頭を打ったのか、唇からヒューヒューと息を漏らし、ときおり甲高いうめき声をあげてるの。お鼻の骨が折れて、意識もほとんどない様子だった。

「落ちたのよ! 校舎の窓から落ちたのよ!」

 アミスちゃんが取り乱して、その場にしゃがみ込んだ。悲鳴をお耳にした生徒たちが、窓から身をのりだして騒いでる。医務棟から小柄なおじさんが飛びだして、こっちに向かってきたよ。

「ああ、タッショさん!」アミスちゃんがすがりつくように叫んだ。

 おじさんはトビック君を抱きかかえると、大慌てで建物の中に消えていった。

 なにもかもが一瞬の出来事で。膣太郎、見てることしかできんかった。

 ふと、誰かの視線を感じて校舎を見あげる。窓から突きだした無数のお顔の中に、見知った笑顔があったわけ。短く刈りこんだ茶髪の少年――ゴーマ君。


 怒りに突き動かされて、無我夢中で駆けだした。いろんな人にぶつかったけど、振り向きもせんかった。ギュッと噛みしめた唇に血が滲む。心臓は猛烈に脈打ち、耳が鳴った。それでも立ちどまることなく、一気に階段を駆けあがったよ。激しく地面を蹴りつけるたび、お胸がズキズキ痛んだ。トビック君のうめき声が、頭の奥に反響してる。血に濡れた芝生を思い出すと、腸が煮えくり返った。

 三階の通路を全力疾走して、中庭に面した教室のドアを開ける。

「なんだオッサン? 血相変えてどうしたんだよ」

 窓際に腰かけてたゴーマ君が立ちあがった。

「トビック君にひどいことしたの、絶対に許さんべ……」

 今にも泣きだしそうな膣太郎を見て、ゴーマ君が白い歯をむき出しにした。

「俺がなにしたってんだよ。ちょっとからかっただけだろ?」

「よく聞くんだべ……」膣太郎は深呼吸して、おバカな子供に言い聞かせるように吐きだした。「トビック君は、ずっと謝ってたんだよ。いっぱい血を流しながら、小さな声で何度も、()()()()()()ってうめいてたんだよ」

 きっと、ゴーマ君には意味がわからんと思うね。

 一人ぼっちで我慢することの辛さも。誰にも頼ることができない苦しさも。

 膣太郎は拳を握りしめて、ボロボロ泣きながら叫んだ。

「お前はトビック君の足元にも及ばない、おバカさんだべ!!」

 大声をかき消すように、ゴーマ君が近くの椅子を蹴り飛ばした。巨大な石の弾丸は膣太郎のそばをかすめて、勢いよく壁に激突し、破片をパラパラと四散させる。もし直撃してたら、怪我するどころじゃ済まんかったね。

「黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって」

 長く垂れた前髪が、瞳の上で不気味に揺れた。憤怒に燃える獣の眼。

「あのガキがどうしたってんだ? テメェにゃ関係ねぇだろ」

 そう言って、ゴーマ君は首からさげた聖石を乱暴に取り外した。教室の様子をうかがってた生徒たちの間にどよめきが起こる。あとを追ってきたアミスちゃんが、ケンカをとめようと必死になにかを叫んでたね。でも、尻尾を巻いて逃げるなんてできないよ。ロックンローラーには、引き下がれないときがあるんだべ。

「膣太郎が勝ったら、トビック君に土下座して謝ってもらうよ」

「秘術も使えねぇメグドの分際で、粋がってんじゃねぇぞ」

「呪文なら練習したもん。お前なんかに負けるもんか」

 ゴーマ君は片手で聖石を投げたりつかんだりして、余裕の態度だった。

 野卑な笑みを貼りつけたまま、一歩、また一歩とこっちに近づいてくる。

「ほざくな。聖珠すら持ってないくせに」

「それはどうかな?」

 オムツにお手てを突っこんで、お尻の割れ目に挟んであった聖珠を取りだした。宿営地を発つ前に隠しておいた、バージェスさんの首飾り。修道院ではお風呂に入らんかったし、ウンコもしなかったから、すっかり忘れてたわけ。膣太郎が握りしめた聖珠を見た瞬間、ゴーマ君の顔色が変わった。明らかに動揺して、投げた石をつかみ損ねる。勝負を仕掛けるなら、今しかねぇべ。

 膣太郎は手のひらに聖珠をのせて、精一杯叫んだ。 

金玉が恋をしている(チンポ・ウルル・エロ)!!」

 時間が静止するような感覚。肌寒い空気が漂って、全身の毛が逆立った。

 誰もが呼吸を忘れて、勝負の行方を見守ってる。

 だけど……やっぱりなにも起こらんかった。

 膣太郎、また失敗しちゃったんだね。気がついたときには、我に返ったゴーマ君が聖石を拾いあげるところだった。「逃げろ!」と生徒たちが叫んでる。膣太郎はぼんやり立ったまま、ゴーマ君が呪文を唱えるのを眺めてた。

青き棘に刺されよ(ピレタ・ウル・ニルト)!」

 詠唱を終えると同時に、幾本もの針が聖石から飛びだした。鋭利な先端は弧を描き、あらゆる角度から猛スピードで襲いかかる。膣太郎、ヒィヒィ言いながらかがみ込んだよ。五寸釘ほどの棘が虚空をすり抜け、頬やお耳に傷をつけた。四つん這いで逃げだした膣太郎を追撃するように、外れた棘は転回し、地上すれすれの高度を飛来する。壁際に追いつめられ、頭を守りながら地面に伏せた。ヒュンヒュンと風を切る音が大きくなり、やがて一本の棘がチンポコに突き刺さった。

「痛いべぇぇ!!」

 白目をむいて悶える膣太郎の身体に、次々と棘が食いこんだ。

 十本、二十本、三十本と打ちこまれる狂気の雨。ローブはズタボロに引き裂かれ、薄汚れた布くずに成り果てた。じわじわと串刺しはつづく。露出したお肌がえぐられるたびに、意識が遠のきそうになる。生徒たちは凄惨な光景に恐怖し、誰も言葉を発さなかった。膣太郎は頭を地面にこすりつけて、一心不乱に土下座してた。

「ごめんなさいべ……許してくださいべ……」

「許すわけねぇだろ。二度と踊れねぇ身体にしてやる」ゴーマ君は聖石を掲げて、再び呪文を詠唱しはじめる。「深き裂傷に(パドス・ウル)――」

 そのとき、一瞬にして世界が凍りついた。

 教室が底なしの暗闇に沈み、憎悪が空気を震わせた。本能が警鐘を鳴らしてる。今まで感じたことがない恐怖に、脳髄が激しく痙攣した。()()()()()()。膣太郎は身をよじり、脅威から逃れようとしたわけ。だけど、ミミズみたいにのたくるのが精いっぱいで、身体が思いどおりに動かんかった。とても静かで、おぞましい。

 その場にいた全員が、二人に近づいてくる人影を見た。

「ああ、そこにいたのか。ダジュロ」

 テルレス君の口調は穏やかだった。あまりにも自然体だから、最初は誰も気がつかなかったんだと思う。膣太郎、その瞳を見てようやく理解したね。あの禍々しい憎悪は、テルレス君が発してるんだって。ゴーマ君も異様な雰囲気を察したのか、詠唱を中断したまま硬直してる。

「頼むから石を捨ててくれないか?」テルレス君は眉一つ動かさずに、ゴーマ君と向かい合った。「でないと、お前を殺してしまいそうだ」

「なんだよ……テメェ。なんでそんなキレてんだよ」

 突っかかるゴーマ君は、無理やり虚勢を張ってるみたいだった。

「お前は一線を越えたからだよ。もう見過ごせない」

「偉そうに指図しやがって」ゴーマ君がツバを吐いた。「お前はいつもそうだよ、ムルージュ。俺を殺すだァ? 生意気な口きいてんじゃねぇぞ!」

 まとわりつく恐怖を薙ぎ払うように、ゴーマ君が聖珠を構えた。廊下は茫漠とした騒音で満たされる。テルレス君は無表情のまま、逃げる素振りすら見せない。膣太郎は最後の力を振り絞って、力のかぎり叫んだよ。

「もうやめんべぇぇぇぇ!」

深き裂傷に悶えろ(パドス・ウル・スカム)!」

 聖珠の放つ煌きが、三日月形に凝固していく。アッと思う間もなく、光は巨大な鎌となって空を裂いた。一直線にテルレス君の心臓目がけて飛んでいく。見えない死神が命を刈り取ろうと、鎌を大きく振りあげた。

「――逆流に呑まれよ(ケレス・メ・テリオ)

 テレルス君の唇が動いた途端、茫漠とした銀の盾が現れ、光の刃をはね返した。膣太郎のお顔に生温かい液体が降りそそぐ。全身を切り裂かれたゴーマ君は両膝をついて、大量の血を噴きだしながら倒れこんだ。それで、すべてが終わったわけ。

 あっけないほど一瞬だった。

 観衆の間からドッと歓声が沸き起こる。英雄の誕生を祝福するように、凱歌があがった。騒ぎを聞きつけた先生たちが、廊下を駆けてきたよ。うつ伏せに横たわるゴーマ君を見ながら、膣太郎は意識が薄れていくのを感じてた。

「テルレス!」ひどく泣き腫らしたお顔のアミスちゃんが駆け寄って、勝者の身体を抱きしめる。「私、あなたが殺されるかと思ったのよ。聖石を持ちだすなんて、正気じゃないもの。キモタロも傷だらけで動かないし……」

「キモタロ?」惚けた声でテルレス君が聞き返した。

「心配しなくても彼なら無事よ」

 四つん這いになって泣きじゃくる膣太郎を、アミスちゃんが指さした。

「安心して泣いてるみたい。よっぽど怖かったのね」

 ……違うよ。そんなんじゃないもん。

 膣太郎はね、テルレス君たちがケンカしたから泣いてるんだよ。

 本当は、ゴーマ君をちょっぴり反省させようと思っただけなんだべ。

 トビック君に「ごめんなさい」って、謝ってほしかったんだべ。

 それなのに、どうしてこんなことになっちゃったのかな?

 暴力で悪者をやっつけて、それで終わりなんて悲しすぎるよ。

 膣太郎、みんなニコニコ、平和がいいべ。

 誰かが傷つくのは、もうイヤだべ。

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― 新着の感想 ―
[一言] チツタロくんの心が綺麗で優しくて泣きました。ロックですね!チツタロくんの色々スレスレな所の表現が凄いです。キャラもみんな魅力的で素敵です。3話楽しみにしております!
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