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エッセイと言う名の妄想

生後11ヶ月のむすめが麻疹にかかった話

 並木家の長女・ぴか、生後10ヶ月と半。


 ヨシコ、長男次男誕生時には母乳があまり出ずにほぼ、粉ミルクで育てたのだが、長女の時にはなぜか母乳がよく出て、おかげであまりお金をかけずにここまで育てることができた。

 近頃では、順調に離乳も始め、普通の柔らかめのご飯も食べるようになり、フォローアップミルクや牛乳まで何でも来い! の健康なむすめに成長していた。

 

 誕生日まであと一ヶ月半という頃。

 六月はじめ、ヨシコはふと、ぴかの顔を見て、またマジマジとみつめた。

 左目のふちが少し赤くなっていた。

 気の早い蚊に刺されたのかも、とあまり気にせず、ヨシコは日々の雑事に戻っていた。


 そして二週間後の月曜日。


 ぴか、夕方より発熱。ぐったりしているので測ってみると、三十八度四分だった。 

 とりあえず、水分補給に気をつけながら寝かしつける。


 翌朝火曜日。起き出したぴかの熱は、三十七度に下がっていた。

 しかし、一日機嫌が悪く、グタグタしている。

 この日は三才半の長男も三十八度五分の熱があり、鼻水もあって風邪をひいた様子だった。ヨシコは、てっきり長男と同じ風邪をぴかも引いたのかと思っていた。


 翌日水曜日。

 ぴかの熱は午前十時頃より三十八度四分まであがってしまった。

 兄の熱もあまり下がらない。

 水分は取れて、食欲もほどほどなのと、かかりつけ医が休みなのでとりあえず、様子をみることに。


 翌日木曜日。

 

 ぴかの熱は三十七度三分にまで下がっていたが、長男の熱がやや高めだったので、念のためにふたり揃って市立総合病院に診ていただきに出かける。

 ぴかはそれなりに元気そうだったが、左目ふちの赤みが何となく拡がってきていたのがヨシコにはどうも気になっていた。

     

 診察をしてくれた医師からは、ふたりとものどが赤いので、夏カゼでは? と言われる。

 ぴかは、首の後ろに少しポツポツと発疹もあったのだが、あせもでしょう、とのことで、塗り薬を処方していただいた。


 夜半から、ぴかのおなかと背中にけし粒より小さい赤い発疹が少しみえてきた。

 熱は三十七度前半から三十八度台後半を行ったり来たり。

 長男がその頃には案外調子よくなってきていたので、ヨシコは夏カゼという診断を疑っていなかった。


 翌日金曜日。

 おなかと背中の発疹が増えてきた。

 目のふちも両方とも赤くなってきて、少し涙っぽい。

 そんなこんなでぴかは終始機嫌が悪く、とうとう昼までに熱は三十九度を超えてしまった。

 あまりにも変だろう、と近所のかかりつけに電話してとり急ぎ診てもらうことに。


 ぴかを診察した医師はすぐに、麻疹か風疹では、と。

 近所でも、麻疹や風疹が流行っているという話は聞いていなかったヨシコ、寝耳に水とはまさにこのことだった。

 昨日行ったばかりの総合病院宛てに紹介状を書いていただき、救急外来で受診することになる。


 総合病院に着いた時にはぴかの発疹は背中、お腹、頭皮の中、耳の中、首の後ろなどに拡がっていた。

 最初お腹に見えたのはこまかいケシ粒状の発疹だったが、その頃には発疹どうしがつながってきて、やや盛り上がっているようにも見えた。


 最初に見てくださった先生がすぐに点滴を指示する。

 その後Ⅹ線撮影と血液検査でぴかの入院が決まり、病室へ移動となった。

 小児科病棟の一番端の、もちろん個室だった。

 この時看護師から厳重に注意された。

「ご家族の方、特に他のお子さんは病室に連れてこないようにお願いします!」

 感染力が非常に高いそうだ。

 でも伝染っているならもう家族みんな伝染っていると思う……とヨシコは心の中でつぶやいた。

 何と言っても、月曜に発熱してからずっと家でゴロゴロしていたむすめ、テレビの前で二才半年長の長男と一歳半上の次男とずっと、くっつきあって過ごしていたのだから。

     

 予防接種も済んでいたが、長男の熱ももしかしたら麻疹? 無症状の次男も感染しているかも??

 心配事は尽きないヨシコである。


 入院初日の午後、ぴかは下痢に見舞われていた。

 そして鼻水、咳などの症状も出てきた。目やにもすごい。

              

 夜は顔と頭、背中とお腹全体に細かい発疹が拡がり、すでにお互いがくっつきあってものすごい見た目になっていた。

 下痢がひどく、ぴかは何も食べられない。

 機嫌は最悪で、ウトウトする程度だった。

 いつもゆびしゃぶりをしながら寝つく赤子だったので、鼻が詰まって指しゃぶりができないのが特に、辛いようだった。

 ヨシコはとにかく、一晩中横で頭をなでなでしているしかすることがなかった。


 翌日土曜日。

 朝食。離乳食ですか? と聞かれたのでおかゆに近いご飯をお願いしていた。

 ご飯だけはよく食べる、が下痢は相変わらずだった。

 亜鉛華単軟膏を塗っていただく。

 相変わらず鼻づまりがひどいらしく、大好きな指しゃぶりもできず、水モノもしっかり飲めないため、唇が乾いてしまう。それでよけいに機嫌悪く、たいがいぐずったり泣いたりしている。

 点滴がついているので、ヨシコは抱くのにもおっかなびっくりだった。

 昼食と夕食はほとんど口にしなかったが、夕方にプリンだけは食べることができた。

 夜は時折ギャーと泣き転がり、なかなか寝てくれなかったが、夜中からは少し鼻が通ったようで、急にぐーすかと眠り出した。

 

 翌日日曜日。


 朝は普通に目覚める。朝食は三割ほどようやく食べる。

 看護士さんに初めて愛想よく笑いかける。いつもあまり手のかからない子どもだったが、ようやく本来の姿に戻ってきたのか? とヨシコはやや安堵した。

 元気が少し出てきたようで、いたずらして遊びたくなったようすだが、点滴のため右手がうまく使えず、イライラしてまた泣きだした。

 昼ごはんはパンだったが、食べようとしない。夕方はにんじんゼリーだけよく食べた。

 便は水っぽい。

 夜、また少し熱が出る。それでも三十七度台だった。


 発症一週間後、月曜日。

 目覚めよし。久々に機嫌がよい。

 朝食もご飯だけは食べる。

 ヨシコは奮発してキーボードのおもちゃを買ってきて与えるが、手がうまく使えないので、ぴかはしまいにはキーキー言って怒りだした。

 昼食、夕食もわずかに食べる程度だった。


 火曜日。

 お医者さまから明日退院してよい、と許可がおりる。

 子どもの脇で昼寝していたヨシコ、つい寝返りをうって、その拍子に、ぴかの点滴チューブを引っかけていた。

 ヨシコが気づいた時には、針のもとの所が抜けてしまっていたでは。

 針の付近に血がにじんで痛々しいが、本人はケロッとしている。

 すぐに看護師を呼んだら、ついでだというので途中だったが点滴も外してもらい、ようやくシャワーを浴びせることができる。


 ご飯はあいかわらず食べない。が、うちからこっそり持ち込んだすりつぶし野菜のコンソメゼリーは喜んで食べるので、単に口の中がまだ不快なだけかも、もしくは病院のご飯がま(以下略)。

 もともとテレビをあまり見ない子どもなので、ちょっと病室の外に出ようとしてテレビをつけておいても、ヨシコが病室から出入りするのをベッドの柵ごしに不安げに見守っている。

 そのため、家族の交代要員が来るまでは手洗いに行くのもやっとのヨシコであった。


 水曜日。


 朝まで母子とも久々の熟睡。

 朝食はぴか、相変わらずあまり食べず。

 昼に退院となる。

 目のふちの皮もいったんむけて、あとはきれいになる。

 家に帰ると、ぴかの食欲は不思議とふだんと同じに戻っていた。


 ヨシコ、何かと後から何かと考えたのだが、まず、普通の風邪とあえて違うところをあげるとすると

・目や耳の近くから始まる皮膚の赤み(ただ赤くみえるだけで盛り上がらないことも)

・細かい発疹があっと言う間に増える

・目やに

 かな、と。

 個人差が大きいらしいので、一歳未満で麻疹の予防接種を済ませていない場合(通常は一歳過ぎてからなので特に注意)、しつこい熱や変な皮膚の発疹などがあったら、一応麻疹や風疹をも疑うべきかとしみじみ思ったのであった。

 あと、口の中も炎症があるようで、とにかく食べ物を受付けなくなるのが案外たいへんだった。水分補給を忘れずに、口当たりのよいものをとにかく与えるとよいかと後あと気づいたヨシコだった。

 ぴかは、元々丈夫だったせいもあって入院中はほとんど食べられていなかったのだが、水分補給はそれなりに気をつけていたのがよかったのか、退院後もそれほど支障はなかった。


 麻疹はとにかく感染力が強く、死者もでるほどの伝染病である。

 できれば予防はぬかりなく、そして万が一かかってしまったらとにかく拡げない、水分補給をじゅうぶんに、安静に過ごす、そこ大切、とヨシコは改めて思ったのであった。


 ぴかは完治して、無事に一歳のお誕生日を迎えることができた。

 めでたしめでたし。 


2019年現在では一歳から就学前まで二回の接種が決められているようです。

生後1年未満でも、地域で大流行している場合は生後6ヶ月からの接種も可能なようですので、心配な方は各種情報をチェックしてみてください。


ヨシコより一言。

「おかげさまで、今ではそのむすめもJKです……じょうぶがトリエです」

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― 新着の感想 ―
[良い点]  子どもの病気は本当に大変です。ご苦労様でした。克明な記録に頭が下がります。 [一言]  ウチの上の子も保育園で七ヶ月で麻疹をもらって、赤ん坊も親もヒーヒーしていました。
[一言]  自分も赤子の時に同じ境遇に。粘性の鼻水で呼吸できなくなり母はそれを吸って命を救うことになったそうです。
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