女神の身の上話と謝罪とこれからの俺
いきなり太陽神である美しい女神に土下座されて俺はパニクってる。目が合うなり深々と土下座の姿勢で動かないので非常に困るんだけど。
「えっと・・・とりあえず顔を上げてもらえないですか?何がなんだか分からないんで」
ソルテ様は涙でグシャグシャの顔を上げると俺に衝撃の事実を告げる。
「ごめんなさい!貴方を元の世界に返してあげることが出来ません!ごめんなさい!ごめんなさい!うえぇぇぇぇん!」
泣き出しちゃったよ、でも本当に不思議なことにあんまり動揺してないんだよな。正直な話、帰れないという事実よりも女神様の取り乱しぶりのほうが衝撃なんだけど。
「とりあえず怒らないからちゃんと事情を説明して下さい、ほら泣かないで」
「ぐすん、ぐすっ本当に怒らない?本当に本当?」
美人の女神様が子供みたいに泣きじゃくる姿見てたら怒る気になんてなれないよ、呆れて物が言えない俺はコクコクと頷いた。
「えっと、えっと結論から言うと今の私の力では貴方を元の世界に戻すことは出来ないんですぅ・・・ヤッパリ怒ってますよね」
涙目で震えている女神様、だんだん気の毒になってきたよ色々な意味で。
「とりあえず状況が知りたいから落ち着いて話そうね、怖くない怖くない怖くないよ」
こちらの顔色を伺ったり要領を得なかったり時々泣き出したりで、なかなか話が進まなかったが要約するとこんな感じだ。
この世界パンゲルアは約5千年前に創造神である女神ヘメラニュクス様によって生み出された。
混沌から秩序と世界の礎を取り出し様々な自然環境、物資、生き物を創り出し様々な力を外界から取り混んでパンゲルアの大地が出来た時、生命に力を与えて世界に光を灯す太陽神ソルテを自らの身体から生み出した。
ヘメラニュクス様は新たな世界の創造を成した事により「真なる神」となり遥か高位の次元へと旅立って行った。
「お母様は旅立ちの時に私におっしゃりました、この世界が成長していけば生き物達が知恵を付け、文明を築いて素晴らしい世界となっていくでしょう。ソルテ、あなたはそれを見守り導いていくのです、世界が素晴らしいものになればいずれは神として高位の存在になる事が出来るでしょう」
そしてソルテ様はヘメラニュクス様が残した記憶や外界の知識を取り入れ世界を発展させた。国が生まれ技術が進み文化が発展し世界が活気付いた。
自分を信仰する宗教と神殿が出来た時は涙が出るほど嬉しかったという。(たぶん本当に号泣してたと思う)
しかし世界が発展する事によって闇も生じる、小さな欲望、嫉妬、恨み、不公平から始まり差別、戦争、犯罪に発展していく。
心ある人々は法律を作り、話し合い、助け合いなどで絆を広げていくが心無き者、利己的な者、支配欲の強い者も後を絶たない。
混沌や外の世界から力や知恵を得て世界を発展させたので精霊の力や魔力、法力などの力、様々な文化や知識など叡智を得ると共に
悪魔や邪神、呪われた知識など良く無いモノも入り込んでしまった。
ソルテ様が加護を与えた王達や神殿関係者が協力してそれに対処し世界の均衡は保たれていたが今回邪悪な魔導師と魔族の手により存続の危機に陥ることになる。
第1王女アリエイルの洗礼の儀式を狙いすまして襲撃し、神の力を封じ、ソルテ様に近い存在の聖女シルフィーと1番強い加護を持つアリエイル王女を生贄にして邪悪な儀式を行い世界を支配しようとしたのだ。その企みは宝玉を封じられ神の力が及ばなくなった時点で半ば成功していた。
宝玉の力を封じられ法力が使えないシルフィーは少しだが神の力の残る紋章の部屋でひたすら祈り助けを求めたがソルテ様の力も残り少ない。
ソルテ様は絶望しかけたが一筋の希望を見出だす、聖女シルフィーの助けを求める声を聞いた者が異世界にいたのだ。
ソルテ様は声を聞いた俺のことをすぐにサーチした。すると「陽神装甲ソルテラス」の全話が情報として現れる。もちろん俺が役者でソルテラスがフィクションだという事も理解していた。しかし彼女は俺とソルテラスに全てを賭けた。残された力を全て使い召喚を試みたが力と時間が足りず俺だけが召喚された。
後は俺が宝玉を解放するとソルテ様が残りの力「ソルコマンダー」を召喚して俺がソルテラスに変身してデーモンをやっつけたことで万事解決ってわけだ。
ソルテ様は全てが終わった後気付いてしまった。世界を救うことに必死で無我夢中だったことに。後先考えず俺を召喚したことに。
「ごめんなさい、今回の召喚の成功は偶然と幸運が・・・貴方にとっては不幸がいくつも重なって出来たものなんです」
まず聖女と俺のチャンネルが繋がった事により世界を行き来する道が出来たこと、俺達のいた世界が高次元であり、そこの神様達が協力的であったこと、俺自身に適正があったこと等が挙げられるが本来ならばソルテ様の神位では不可能に近く、正直に言うとマグレだったらしい。
呼ぶ時はシルフィーと俺を繋ぐ糸を引っ張る要領でよかったし他の神様からの助力もあった、高位の世界から呼ぶから落とすだけなので比較的力は少なくても良いらしい。しかしあっちの世界に今の俺と繋がっているものは無い、それに下から上の世界に押し上げるにはソルテ様は力不足、こちらの世界からだと他の神様からの助力も届かない。つまり現状では元の世界には帰れないのだ。
「ごめんなさい!ごめんなさい!私は自分の世界を守るために貴方の人生を奪ってしまった、こんな縁も所縁も無い世界のために人の運命を狂わすなんて・・・うあぁぁぁぁん」
また泣き出したよ・・・・でもソルテ様は心の優しい良い神様だな、それに今の話を聞いていると希望が無いわけではない。
「ソルテ様、この世界には何人くらいの人が暮らしているんだ?」
「うえぇ・・ぐすん・・・貴方の世界の人間と同じように知恵や感情、文化を持った種族全部で3千万人くらいです・・ひっく」
「もしも俺が来なけれその人達はどうなっていたんだ?」
「魔族に支配されて地獄の様な世界になってしまうか、世界そのものが滅びてしまうかのどちらかだと思います」
「それなら俺1人の運命で3千万人の運命が助かったんなら安いもんじゃないかな。それに俺は生きているからどうにかなるし」
「大地様・・・・神様みたいです」
本物の女神様に神様みたいって言われるのもおかしな話だな。ソルテ様が泣きやんだ事だしこれからの話だ。
「この世界がより良い世界になればソルテ様の力が増していくんだよな?」
「はい、人々が希望を持ち絆を深め文化を発展させれば力が増すとお母様はおっしゃいました、しかし発展するとそれに伴い邪悪や悪い感情も生まれます、それによって不幸な事が場合によっては今回のような世界の破滅もあります・・・・それを考えたら・・・・」
「だったらソルテ様や王様達が頑張って世界を発展させればいい!悪い奴は悪魔や邪神であっても俺がやっつけてやる!」
「大地様・・・ありがとうこざいます!」
ソルテ様の目からダバダバと大量の涙が溢れている。嬉し涙だからまあいいか。
「そしてソルテ様が高位の神様になったら俺を元の世界に帰してくれ、いつになってもいいから約束だ」
「はい!約束です!」
後いくつか聞きたいことがあるから聞いておこうかな、気になることがあるし。
「聞きたいんだけど、何で俺はソルテラスになれるんだ?あれは想像の産物であって現実じゃ無いんだけど、後俺達の世界を高位だって言うけど何で?」
「まずは大地様のいた世界の事から、アースともテラとも言いますが大地様の国の言葉で地球と呼びましょう」
地球はいくつもの創造神が同じ世界に混在する珍しい世界だと言う。キリスト教の天地創造、日本の国産み、ギリシャ神話の神統記などは全て事実でありそれを一つに統合すると球体の世界になった。
さらに宇宙と様々な天体も統合された世界を裏付ける為に創造されて、それを存在させる理としてビッグバンや物理法則など科学的なモノが生まれた。つまり偉い学者達が世界を安定させるために後付けの設定をせっせと作ってるわけだ。
「そうして完成した地球はとても活力のある世界になっていったのです、だって邪神の引き起こした戦争や世界の危機を独裁者の愚行やテロ行為だとか言って人の力だけで解決出来るんですから。天変地異や災害だって知恵と団結で乗り切りますし神の試練もなんのその、異なる創造過程で生まれた文化民族が破綻もせず存在出来る超高次元の世界です」
争いや問題があっても破滅せずギリギリのラインで発展し続けることは奇跡に近いらしい。様々な神の力と人の知恵と想像力に満たされた高次元の世界というわけだ。
「そして貴方がソルテラスの力を使える理由ですが1つ目が多くの人達の思い、知恵、技術を駆使して作られた「人による創造」の産物であり、見る人達や携わった人達の心を動かし、運命に関わった力のある存在だからです。」
高次元の世界で作られた力をもった虚像はこちらの世界では演者である俺を媒体に実体化する事が出来るらしい。そして俺の身体能力と感覚の向上は地球の持つパワーが強いのでそこでら生まれ育った俺の能力がこの世界では強くなっているといことだ。
「もう1つは地球の太陽神様が貴方をこの世界に召喚する手助けをして下さった時に授けられた加護によるものです、それによって貴方は「人による創造」で作られた光の戦士になることが出来るのです」
「地球の太陽神?」
「アマテラス様とおっしゃっていました、同じ太陽の女神ということで御力を貸していただけました」
日本の主神様でした、ソルテラスの名前の一部に使わせてもらっている事や番組制作が決定した時にスタッフ、出演者一同で伊勢神宮の参拝と祈祷を受けたことが縁になったのかもしれない。
「ソルテラスは天照大神とソルテ様2体の太陽神の名を連ねている、その名に恥じぬようにがんばるよ・・・あ!俺神様にタメ口きいてる!」
「いいですよ大地様、私は未熟で力の弱い神ですから力でいえば貴方のほうが強いくらいです、もしよければ対等な関係がいいです」
「わかったよソルテ様、対等なら様付けはやめて欲しいな、神様だから俺はソルテ様って呼ぶけど」
「はい大地さん、これから仲良くして下さいね、ここに来て力を注いでくれればいつでも会えますので」
にっこりと微笑むとソルテ様が像に戻ったので紋章の部屋を出たらシルフィーがいた。
「天界にお帰りなったのでは無かったのですか?」
天界って・・・・まあいいや。とりあえずこの世界で生活の基盤を作らなきゃいけないから神殿長とシルフィーに相談しよう。
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