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陽神装甲ソルテラス 〜特撮ヒーロー異世界で神話となる〜  作者: ソメヂメス
若手アクション俳優の初主演作が人生の転機過ぎた
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閑話:二次会は女子会 ケーちゃんとサッちゃん

 居酒屋マンボウでの飲み会兼、加賀美 大地の生存報告会が解散になり駅に向かう女子の面々に杉内Dが声をかける。


「私のマンション、この近くなんだけど良かったら女子会しない?そのまま泊まってもいいわよ」


 女子6人中5人が参加する、1人はADで明日の早朝から仕事があるので不参加だ。駅の近くの築年数の浅い分譲マンション、結構いいところに住んでいる。2LDKで設備や家電も最新だ。


「やっぱりキー局のディレクターって給料いいんだ、私の給料だと一生住めないや」


 羨ましそうに言ったのは音響スタッフの清水 由美だ。音響の仕事に憧れて専門学校時代からアシスタントとして大手番組制作会社で経験を重ね、去年晴れて正社員として採用された。27歳にしてサブチーフはこの業界ではスピード出世だ。


「由美ちゃんは正社員なんだからまだいいじゃん私らみんなフリーだよ」


 特殊メイクアーティストの菊池 香織は美大を卒業後、ハリウッドの特殊メイクスタジオで修行して、アメリカのドラマを中心に活動していた。柿本Pのオファーを受けソルテラスに参加する。敵幹部や傷メイク、変身途中の怪人などの特殊メイクを一人で引き受けている。


 KARAKOと恵子もフリーだ。


 KARAKOはガールズロックバンド「ティーカップノイジー」のギターと作詞作曲を担当していた。5年前にメジャーでブレイクしてすぐにボーカルのAKANEが覚醒剤で逮捕されバンドは解散。ライブハウスのバイトや他のバンドのヘルプをしていたところ柿本Pに声をかけられ、OP、EDテーマと挿入歌、劇中BGMを依頼された。


「香織さんは売れっ子だからいいけど私なんか柿本さんが声かけてくれなかったらほぼフリーターだったからね」


 コンビニで買ってきた缶チューハイやビールソフトドリンク、おつまみを並べながら杉内Dがみんなに言う。


「今からは女同士気を使わずにぶっちゃけていきましょう、名前も下の名前でいくわよ私のことは初美でよろしく」


「私もKARAKOじゃなくて本名の幸子でいいよ」


「へー、幸と辛いの漢字が似てるからKARAKOにしたんだ、もしかして学生時代のアダ名とか?」


「バンド組む時にメンバーで話し合って決めたんですよ。それ以外はケーちゃんが呼ぶみたいにサッちゃんかな」


「じゃあ私たちもサッちゃん、ケーちゃんて呼んでいい?」


 初美の提案を2人とも快く了承して並んでソファに腰掛ける、全員が飲み物を手にすると幸子が恵子に優しく声をかける。


「大地が生きていて、繋がりが出来て本当に良かったねケーちゃん」


 ここにいる全員は知っている。恵子が大学卒業後に就職した大手CGスタジオで執拗なセクハラとパワハラを受けていた上、長過ぎる勤務時間で心を病んでいたことを。退職してほとんど引きこもっていた恵子に柿本Pがオファーを出し、悩みぬいた末にソルテラスの制作に参加したことを。


「加賀美君が消えた時、本当に彼よりあなたのことを心配したのよ。だって初めて会った時と同じような顔をしていたから」


 初美の発言に一同が頷き、香織が少し感情的になって言う。


「あのソルテってgoddessチョットは空気読めよ!せっかく私達がケーコの為にお膳立てして色々用意してた日にいきなり大地を攫いやがって!」


 打ち上げパーティーの前日、香織と幸子は普段ほぼスッピンの恵子にナチュラルメイクの指導をしていた。初音は評判の良い美容師を紹介して由美は一緒に服を選んでくれた。


「確かにタイミングは悪かったけど、あの女神様だって切羽詰まっていたんだし仕方ないよ。それよりも大地君が私の顔を見て凄く嬉しそうにしてくれた事が嬉しい」


 あの夜、恵子は大地に告白して交際を申し込むつもりだった。いきなりそんなの・・と

 抵抗感を示す恵子に気合いの問題だと際どい勝負下着をプレゼントしたのは香織だった。


 チーフディレクターである初音が恵子と幸子と顔を合わせた時、正直言って2人共病んでいるように見えた。恵子がハラスメントと過労で潰れた事も、幸子がバンドメンバーの不祥事で夢破れた事も知っていたがプロデューサーの柿本の眼力を信頼していた初音は企画会議の段階から2人を参加させた。


 メインスタッフの平均年齢は31歳と若く(柿本と杉内の2人で上げているというのは禁句だ)女性も多い事もあり2人は割と早い段階から番組スタッフに打ち解けていき本来の明るさを取り戻していった。


 そして撮影が始まる。スタッフもキャストも実力があるが一線に出ていない人間を柿本Pが掻き集めたせいか一体感があり強い仲間意識が生まれ活気ある現場になった。


 その中で恵子と幸子はお互いに心に傷を持ち共に立ち直った事から仲良くなり何でも話せる親友となった。


 そして恵子は大地と出会う。恵子はセクハラにあってた経験から自分の女性の部分を意識しない意識させないよう振舞っていて、なるべく素の自分を出すようにしていた。女性が苦手な大地はそんな恵子に親しみを持ち、よく話すようになりオフや撮影が早く終わる時は歳の近いスタッフやキャストと共に遊びに行くようになった。


 明るく裏表が無くストイックな大地に恵子は好意を持っていった。何でも話せる友人として接するうちに大地が女性が苦手な理由を教えてくれた。大地は父親を幼い時に亡くしており美容院を経営する母親と4人の姉に育てられた、末っ子長男である。


 母親の経営する美容院は県内に5店舗の支店を出す有名店でわりと裕福だったので生活は楽だったのだが、幼い時から女性の裏表を見て育った為女性に対して不信感を持つようになった。裏表が無く自分を隠さない恵子は家族以外で気楽に話せるはじめての女性だと言う。


 恵子は好意を持ちながらこのまま友達でも良いと思っていたが、周りの女性陣が気づいていた。香織に言わせると「分からない方がおかしいくらいのスキスキビーム」を出しているらしい。


 幸子の見立てでは大地は女性に対する苦手意識で気付いていないが、恵子に友達以上の好意を持っていてキッカケさえあればすぐに恋愛感情に発展する見込みだった。


 そこで仲の良い女性陣で2人の仲を取り持とうとい話になったのだ。ここにいる以外の女性スタッフも殆ど協力者だ。男共にも気付いている者が多く静かに恵子を応援しているし2人きりになる機会を作っている。


「もともと異世界に召喚されなかったら海外放浪する予定だったから出発前に気持ち伝えるように背中押したんだけどね」


 初音は小さく溜息をついて続ける。


「万場さんの話じゃ加賀美君、旅から帰ってからすぐのオファーがあるみたいで忙しくなる予定だったのよ」


「2年後のオファーなんて今から来てるんですか?」


 オファーがあったのは国営放送で毎年やる時代ドラマだ。大物俳優や売れっ子を使うので主要なキャストには企画段階でオファーが出される。大地に来た役は主人公の武将の部下で名前だけなら誰もが知る人物だ。中盤に見せ場もある。


「ひえぇぇ!そんなの出ちゃったらもう気楽に話せないよー」


 由美が驚いて素っ頓狂な声をだす。


「だから急いだのよ大地君、スタントだけで無く演技も本格的だから結構オファーあるみたいなのよ。だからNAPとの正式文書での契約で2年間は充電期間にしているわ」


「つまり2年以内に戻って来れたら予定通りに仕事が出来るってことだよね」


「本人はあまり意味が分かってないみたいだけどね。帰ってからも仕事があるくらいにしか思ってない」


「大地君らしいや」


 一同から自然と笑いが出る。大地は役者バカであるがお人好しで善良な青年だ、魑魅魍魎の住まう芸能界で騙されたりしないか心配だったが以外と勘が鋭く素のままでやっていけそうな気がする。


「そう言えば由美さんは?けっこうヤノケンといい感じみたいだけど」


 恵子が由美に尋ねる、ヤノケンとは美術スタッフの矢野 健太のことだ。


「アイツとは趣味のオンラインゲームで話が合うだけ、年下で男性としてはキモオタだし話にならないわよ。それよりケーちゃん、もっと亜人の画像とかないの?」


 恵子はノートPCでロクジョウの町の様子とジュリーの画像を見せる。


「イヤッホォォー!夢にまで見たリアルファンタジー!町の雰囲気最高だわ!えっ!?ジュリーさんありえない!ホワイトタイガーでマッチョでオネエだなんてツボ過ぎる!!」


 異常に興奮している由美は放置して初音は香織に尋ねる。


「日本に着いて来た彼はどうしてるの?あなたの実家に入り浸ってるて言ってたけど」


 香織の恋人であるアントニオは海外ドラマのファンであれば誰もが知っている有名脚本家だ。日本贔屓であり香織が特撮ドラマの特殊メイクの仕事で日本に行くといったら脚本なら日本に居ても書けると言って着いて来てしまった。


「何だかわかんないけど両親に気に入られて完全に居候ですよ。脚本の仕事の合間に両親とドライブ行ったり秋葉原で買い物したりして日本をエンジョイしています」


 アントニオは「陽神装甲ソルテラス」のファンでもある。最終回を見るまでは制作の話は聞きたくない、スタッフとも会わないと頑なだ。(放送終了後は会って色々と議論したいらしい)


「サッちゃん、私の心配ばかりしてるけどサッちゃんこそ大丈夫?前を向いて曲つくれそう?5年ぶりの音楽の仕事で嫌な事思い出したりしてない?」


「ケーちゃん質問責めだね、なんかこの仕事して吹っ切れたよ。誹謗中傷も、もうなんとも思わないしアニソンや楽曲提供のオファーけっこう来てるんだ。また音楽で食べていけそうだよ」


「良かった!私もCMやバラエティー番組のCGのお仕事増えてフリーでやっていけそうなんだ」


 初音は缶チューハイを飲み干して微笑む。


「ソルテラスって私たちにとって人生の転機になってるわね、もちろん良い意味で。柿本さんは流石だわ人を見る目はたぶん業界No.1だと思う」


「人生の転機かぁ・・・まあ大地君ほどじゃあ無いけどね」


 恵子の言葉にみんなが大爆笑し、女達の夜は更けていく。




次回から第2部スタートです。ダイチの冒険者生活がスタートします。

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