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陽神装甲ソルテラス 〜特撮ヒーロー異世界で神話となる〜  作者: ソメヂメス
若手アクション俳優の初主演作が人生の転機過ぎた
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突然の別世界!王女の危機と聖女の祈り!陽着!ソルテクター!(前編)

 ここはどこだ?意識が戻ったばかりで頭がぼやけていて何が何だか分からない。


 石造りの十畳くらいの薄暗い部屋で天井が高く、部屋の中央には何かの紋章が描かれていて俺はそこに倒れていた。


 部屋の奥には女神像があり、それと床にある紋章が青い光を放っている。女神像の反対側の壁には観音開きの扉があって開け放たれている。


 えーと、なんで俺ここにいるんだろう?

 酔っ払ってセットで寝てたのかな?

 そもそもこんな場面あったっけ?

 妙にリアルだし、本物の石だよなこれ。

 何で光ってんだ?LED?蛍光灯?

 それと俺、何してたんだっけ?


 ちょっと落ち着こう、俺は深呼吸を繰り返しながら頭を働かせる。「ココハドコ?ワタシハダレ?」の状態なので自分が誰なのかの確認だ、アホみたいだが落ち着くためには必要な過程だ。


 俺は、加賀美 大地25歳。日本アクションプロダクション(NAP)所属の若手アクション俳優でありスタントマンだ。


 親父が好きだった香港のアクションスターに憧れ中学在学中からNAPの養成所に通い殺陣やスタント技術、演技を学びアクション俳優を目指していた。


 高校は有名な芸能科のある学校に入れさせてもらい、養成所での訓練と月に何回かスタントの仕事(主に学園ドラマの殴られ役や高いところから落ちる役)と学園ドラマなどのモブ、エキストラをこなしながら過ごしていた。


 人気アイドルや子役上がりと同級生だったが接点は無かったな。俺はドラマや映画出ても顔ほとんど出ないし。


 卒業後は本格的に芸能活動を開始!とは言っても高いところから落ちたり、車に轢かれたり、火達磨になったり、殴られたりだが。


 だけど挫けずに演技の勉強、殺陣の向上の為の武術訓練、パルクールやアクロバットなど身に付けた結果、時代劇やバイオレンス映画などに呼ばれるようになり、チョイ役だが名前のある役を貰えるようになった。


 そして去年大きなオファーがあったんだ。日曜朝の人気特撮ヒーロー番組に対抗するべく、ライバル局が土曜夕方のアニメをやってる枠で新しい特撮ヒーロー番組を作るって話だ。(流石に裏番組でぶつける根性はなかったらしい)


 俺が演じる、時代劇での忍者役や高所でのアクション、バイオレンスの殺陣などを気に入ったチーフプロデューサーが主人公兼スーツアクターに俺を抜擢してくれたんだ。


「陽神装甲ソルテラス」


 地球の先住民族の末裔を名乗るズールフ教団。彼らは時代の陰で暗躍し様々な影響を与えて来た。そして遂に彼らの神アザトーデウスを復活させ地球の支配者となるべく活動を開始した。ズールフ教団と太古から対立していたアトランティスの末裔、森脇教授はアトランティスの失われた技術と自らが発見した新元素ソーラニウムを使い最強の強化装甲服「ソルテクター」を開発。アトランティスの太陽王の直系の血筋である日向 明が装着する事によって「陽神装甲ソルテラス」となり無敵の力を発揮するのだ!

 戦え!ソルテラス!ズールフ教団の野望を打ち砕け!


 という特撮ヒーローアクションだ。スタッフもキャストも気合が入りまくりでとても良い現場だった。少ない予算は熱意と演技でカバーする勢いで充実した1年だった。敵幹部役を演じた名脇役の雨野 英夫さんとも知り合いになれて、ものすごく勉強になった。


 人気も上々で視聴率こそ日曜日に僅かに負けたがキャラクター商品の売り上げでは上回った。プロデューサーがコストパフォーマンスで考えたら圧勝だよ、スポンサーも大喜び

 だったって笑ってたな。



 あっ!そうだ思い出した!最終回の敵本拠地での最終決戦のシーンの撮影で、取り壊しの決まった倉庫を改造したセットで撮影をしてたんだ。


 最終回の他のシーンは出演者のスケジュールの都合で前に撮ったから最後の撮影だったんで、プロデューサーが現場にケータリングしてスタッフのみんなと打ち上げパーティーをしていたら「お願いします!どうか私達を救って下さい!」と若い女の声が聞こえて来たんだ。


 かなり大きい声だったが他のスタッフ達には聞こえていないようだった。気になるので外に出てみると月と星が大きくはっきりと見えていた。夜空が青く妙に明るい。


 すると別の落ち着いた女性の声が聞こえてきて光の粒子が俺に集まって来た。


「戦士よ、聖女が救いを求める声が届いたのですね。私の造りし世界は大変不安定です。私の力が及ばぬばかりに多くの人々が理不尽に苦しんでいます。救いを求める者の声が聞こえたならお願い!助けてあげて下さい!多くの人々の想いが創りし光の戦士よ」


 異様な光景にスタッフ達がざわめく中、光の粒子はどんどん数を増やし俺を包み込んでいく。ちょっと!カメラマンの伊藤さん!録ってないで助けて!


 そして俺の意識は光の中に消えた。


 さっぱり分からんが撮影が続いてるわけじゃ無いよな?着てる服は上下揃いのブランド物のジャージで靴もスニーカーだから打ち上げの時の格好のままだ。ジャージなのは今日はソルテラスのスーツ着て撮影だったからだ。


 とりあえず部屋の外に出るかな・・・扉を出るとそこは血まみれだった。鎧と兜を身に付けた西洋風の騎士や兵士が倒れている、息が無い全滅だ。


 状況が全く分からないけど相当ヤバそうだよな、とにかく外に出よう。石造りの廊下を忍び足で歩く、さっきの騎士達を殺した奴に出くわしたら命は無いだろう。


 慎重に進んで行くと下りの階段だ、階段を降りた先が明るくなっている。五感を研ぎ澄ませて先を進むと広い空間に出た。


 教会の礼拝所のような場所だった、さっきまでの石壁むき出しの通路と違い綺麗に壁紙を貼られた壁、清潔そうなフローリング、ステンドグラス、散らかった机、割れた陶器、荒らされた形跡があるがついさっきまで何か行事をしていたようだ。さっきまでいた石壁の通路と部屋はどうやら隠し部屋だったようだ、隠していたタペストリーが引きちぎられている。


 今は人の気配が無いようだが油断は出来ない、何体か兵士の死体が転がっているが大規模な襲撃でもあったのだろうか?慎重に歩を進めていると物音がした、壁沿いにあるクローゼットからだ。


 警戒しながらクローゼットを開くと中には涙目でこちらを睨み両手に握りしめた刃が大きめのナイフをこちらに向けて震えている女の子がいた。相当怯えているけど話しを聞けるかな?日本人じゃないみたいだけど言葉は通じるだろうか?


「えーと、俺は敵じゃないよ、君に危害は加えるつもりはない、状況が分からないから教えてもらえるとありがたいんだけど、場合によっては君の助けになるし」


「・・・・ここを襲った人達の仲間じゃ無いんですか?」


 良かった言葉が通じる!


「信じられないと思うけど、俺はここがどこか知らないし、なんでいるのかも分からないんだ」


「それじゃあどこから来たんですか?」


「気がついたらそこの隠し部屋にある光る紋章の上で倒れていたんだ、それまでの記憶は曖昧でよく思い出せない」


 そう言っておいた方が無難だろうな、分からないことが多すぎる。


「その奥の紋章の部屋は太陽神ソルテ様の神託を得るために祈る場所で、修行を積んだ高位の神官しか入れないはずですよ」


「え!俺、立ち入り禁止の場所に入っていたの?知らなかったとはいえゴメン!」


「あ!そういった意味では無くて紋章の部屋に入るには強い法力が必要なんです、なければ紋章とソルテ様の像の放つ光に弾かれてしまいます」


 俺は何であの中に入れたんだろう?法力ってやつを持ってるのかな?そもそも法力って何だ?


「とりあえず今の状況を知りたいんだけど、俺は加賀美 大地だ君は?」


 彼女は俺に向けたナイフを下ろし、警戒を解いた。中学生になるかならないかくらいかな?金髪で青い瞳の北欧系美少女だ。


「私はオーミ王国の第1王女アリエイル=ソム=オーミと申します、カガミが名前でなのでしょうか?苗字があるのならば他国の貴族なのかしら?」


 あ!西洋式か、苗字は偉い人しかもたない文化なんだな。お姫様にタメ口聞いちゃったけど大丈夫かな?今さらもういいや!


「性が加賀美で名が大地、この国風ではダイチ=カガミだなダイチでいいよ、お姫様」


「ではダイチ、説明します。ここは最高神である太陽神ソルテ様を祭るエンリーク神殿です。私は12歳になったので洗礼を受けるために来ました」


 なんでも他の貴族は王都や領内の神殿で平民は団体で町や村で洗礼を受けるらしいが、継承権がある王族はエンリーク神殿で洗礼を1人で受けるのが慣わしらしい。そして洗礼の儀式の最中に賊が襲ってきたそうだ。


「襲って来たのは数年前に禁呪に手を出して王都を追われた元宮廷魔導師です弟子らしき魔法使いを6人連れていました、あとは手練れの戦士1人がいて大量のスケルトン兵と魔法との連携で護衛の騎士と兵士が手も足も出ませんでした」


 それがあの死体の山か、敵は全部で8人と大量のスケルトン兵って言ってたけど透明なのかな?それとも骸骨?洗礼の儀式は中断し、パニック状態の中で騎士にクローゼットに押し込まれたので、どうなったのかは分からないそうだ。騒ぎが収まって静かになったと思った時、俺がクローゼットを開けたらしい。


 とりあえずここから脱出だな、姫に外までの経路を聞いて先に偵察に出た。


 神殿は小高い丘の上にあり周りは高い塀に囲まれている。俺は神殿の屋根に登って周囲を見渡す。塀の外は森に囲まれ、森の外に旗を掲げた騎士の一団がいる。おそらく救出部隊だろう、出来ればあれに合流したいな。


 神殿の塀の内外には沢山の武装した骸骨が練り歩いている、あれがスケルトン兵か、骸骨の方だったな。よく見ると塀の外側に大きな岩が連なってあって森の中を続き騎士の一団の近くまで続いている。


 偵察をしながら身体を動かしているとこの世界に来てから身体能力がかなり向上している事が分かった。これなら行けるかな?


 考えていると姫の悲鳴が聞こえた!ヤバイ見つかったか!すぐに礼拝所に戻ると、姫が鎧を着たおっさんに追われていた。


「姫っ!こっちだ!」


 姫がこっちに走ってくるとおっさんが抜刀して向かって来る。多分こいつが手練れの戦士だろう。たしかに鋭い剣さばきだが今の俺の動体視力と身体能力なら対処は可能だ。


 おっさんが繰り出す横薙ぎの鋭い一撃を最小限の動きで躱して、上体の動きで体勢を崩し、足払いで転倒させる。


 よし!今だ!俺は姫を抱き上げ全力疾走で逃げる。こういった時は直感と思い切りだ!

 さっき考えた脱出ルートに向かって、姫を文字通りお姫様抱っこして走る。途中にスケルトン兵が行方を遮るが動きが鈍いのでお姫様抱っこしたまま躱せた。


  神殿の高い位置にダッシュで駆け上がり、外周を囲む塀に飛び乗ってその上を全力で走って逃げる、塀の幅は20センチほどだが問題なく走れる。


「ひぃぃぇぇぇぇえ!!」


「口閉じて!舌噛むぞ!」


 高さ5メートル程の塀を全力で走り端まで来たらジャンプで岩に移る、岩の上を飛び移り森を突っ切って木の枝を上手く使って勢いを殺し、騎士団の目の前に着地した。あっ!姫、気絶してるよ無理もないか。


「なんだ!お前は!どこから・・・アリエイル様!」


 騎士が駆け寄って来た、曲者だと思われないように先に言っておこう。


「姫を神殿から救出した!緊急事態のため荒っぽい逃走をしたので気絶したが無事だ!」


 とりあえず一息つけそうかな?後のことは姫が目覚めるのを待つしかないな。


読んで下さった方ありがとうございます。

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