選択
キャラが崩れたような気がしないこともないです!
「おい、みんなみたか?なんだ、今の生き物は....。」
翼が生えていたぞ。飛んでいったぞ。記者たちが口々に言う。人の姿に白い翼が付いた生き物。そう、空想上の生き物天国にいるとされている天使によく似ているそれ。人々が見たこともない、見ることすら許されない領域に踏み入ってしまったのかと記者たちは思う。翼の少女に言われた言葉「来ない方がいい」、「これは忠告」この言葉の意味は記者達に理解されなかった。これから先の事を考えられるほど賢ければ怖い思いをせずに済んだことを。
「いい加減に死んで頂いてもよろしくて?」
「あらマリーナ、怖いのかしら?それとも、魔力切れが近いの?」
戦闘中の沙弥は昔も今も、まるで別人のようになる。沙弥であって、沙弥でない存在。いつもは心の奥で縛られて出てくるはずのない存在が戦闘の時にはなにか吹っ切れたように出てくる。もしかするとこれが本当の沙弥なのではないかと思ってしまうほど心配になる。亜美は、昔から沙弥と仲良くしていた。記憶を失てっていた時も、相手についてよく知らずとも仲良くしようと思えた。
「もう、これでけりをつけますわよ!」
「これで、終わり。過去の事とのケジメをつける!!」
己の魔力を半分以上つぎ込んだ強大な魔法。『極大魔法』の発動をしようとする二人。その前触れに大気中の魔力が乱れているのが分かる。
「我が名の元に命ず。眼前に立ちし敵の生に終焉を迎えたまえ。....極大魔法──不運の終焉ですわ!!」
「我が名の元に命ず。我が前にそびえたちし壁を破壊したまえ。....極大魔法──運命の破壊!!」
二つともレベルの高い極大魔法。この二つが衝突すれば山が吹き飛ぶ程では収まらない。恐らく、全人類を滅ぼす程度の力にはなるだろう。翼人種は元々住む世界が違うから滅んだりはしないが、人間界にくっつき平行に進んでいるため、そこそこ大きな影響が出るだろう。それに、人間界にくっつき平行に動いているのは、天界だけではない。その点においては大きな戦争が起こるだろう。他種族を全て敵に回してまで勝てるほど翼人種も強くない。故に、ここでとるべき最善の手は....
「我が名の元に命ず。世界の終焉を阻止し均衡を保ちたまえ。....超極大魔法──終焉の阻止
極大魔法をも上回る、現在存在する中で最大級の魔法。超極大魔法。超極大魔法は、極大魔法約三つ分。その分魔力の消費量も多い。この魔法を使用できるのは魔力蓄積量が高いものだけ。それが、亜美。亜美は今自分が打てる最善の手はこれしかないと判断し、残っている魔力全てをつぎ込みこの魔法を発動させた。今のこの魔法に、勝るものはない。
三人は魔力不足で雲の上から山の頂上へ落ちていった。物凄いスピードで。空を飛ぶのにも微量だが魔力が必要となるため、全ての魔力を使い切ってしまった三人にはただ落ちることしかできない。
──そんな時だ。
「第四レベル、風魔法、竜巻」
沙弥たちの体が少し浮き、落下スピードも落ちていく。
「っ....!!あはは、もうこの人まで出てくると笑えてきちゃうよ。ねぇ、亜美?」
「そうだね、沙弥。」
「「こんなところに何のご用で?天界位階序列第一位フィーベルト様。」」
「覚えていてくれましたか。嬉しいですよ、ミナージェ、キラリス。あぁ、そうそう。今日は二人にちょっとしたお話がありましてね。実は、天界の議員の方々を長きに渡り説得していましてね。いやぁ、二人がいなくなってから大変でしたよ。新しく二位と三位の座を埋めようとしても匹敵する者がいない。それに各地で議員達に対しての反発が起こり始めてね。その他にも、天界内での物資の流れ、環境問題とか色々とあって。その問題を解決するためには君たち二人が必要不可欠だという事で今こうして天界に連れ戻そうとしているんだけど.....だめかな?」
フィーベルトが淡々と話す中、沙弥と亜美は不安と疑問を抱いていた。今の話は全て噓ではないか。なぜ急に問題ごとが増えたのか。こんなことを伝えるためだけにどうしてフィーベルトが来る必要があったのか。そして、さっきからずっと感じている恐怖が何なのか。今は分からない事だらけ。だが今は、天界に戻るべきではないと、まだ、戻るときではないと二人の心がそう答えを出している。
「その申し出、ありがたいですが.....。」
「今はお断りしておきます。」
「どうして....と、聞いてもいいかな?」
二人は顔を見合わせ笑いながらこう告げる。
「「人間として生きてみたいと思うから。」」
「人間の子として人間界で...学校に行って。」
「勉強して、たくさん遊んで。」
「「今はそれが一番....楽しいから!」」
次で、第一章はラストだと思います(多分!)