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百年杉

亜美の部屋に入った私は自分の目を疑いました。疑う他なかった、といった方が正しいのでしょうか。部屋の中は一面が鳥の羽根のようなもので埋め尽くされていてとても汚く、亜美は自分のベッドの上に座って何事もないかのように何処か遠くを見ているようで私が部屋に入ったこともまるで気づいていないようでした。私は亜美のお母さんに聞きました。

「どうして亜美はこちらに気づかないのですか?」

と。すると亜美のお母さんは少しうつ向いてとても悲しむような声で言いました。

「この前、交通事故にあってしまい怪我はなかったものの事故のショックで記憶がなくなってしまったの。」

私は絶望に飲まれそうになってしまいました。まさか、自分の友達が記憶喪失になっているなんて誰が思うでしょうか。そして、何故先生もそれを知っているはずなのに言わなかったのか。私は今日まで友達の状態に気づかずに過ごしてきたことが腹立たしくてしかたありません。私は自分の家に帰り、冷静に考えました。自分に腹をたてていても何も変わらないと私は思い、自分にできることは何かそれを考えました。

そして、その答えがでたのはもう次の日の朝でした。私はその日から学校が終わると直ぐに亜美の家へ向かいました。亜美の様子を見に行くためです。毎日あっていればいつか思い出すはずだこれが、私の答えでした。ですが何かを思い出すということはありませんでした。そんなある日亜美のお母さんにこんな提案をされました。

「今までやってきたことの話をしたり、今まで行った思いでの場所等につれていってほしいの。」

これが、亜美のお母さんの提案です。私はその提案に賛成し毎週休みの日は一日中亜美のそばにいて、思いでの場所に連れていったり、今まであったことの話をしたりしました。

こんなことを始めて、一ヶ月がたったある日私は、亜美との一番の思い出の場所につれていきました。そこは、学校の裏山の少し険しい山道を登り頂上に生える百年杉の所です。ここは中学校に入ってお互いに不安だった私たちが今年の目標をこの、百年杉の幹に刻み込んだ場所です。その文字を亜美に見せながら話をしていると、亜美は突然、涙を流し始めました。私は、その涙の意味を瞬時に理解することができました。そう、あの涙は少しでも記憶を取り戻しその衝動で泣いているのだと。私はとても嬉しい気持ちになりました。亜美を家に送り届けたときに、私は亜美のお母さんに今日あったことを話すと亜美のお母さんも少し嬉しそうな顔をしました。私と亜美のお母さんは亜美の記憶を取り戻す切っ掛けが少しでも出来たことに二人で喜びました。

あの日を境に、亜美は段々と記憶を取り戻していくかのように言葉を話し始めました。まだ私のことなどは思い出せていないようだけども、自分の両親は分かるようになったようです。

そんな中事件は起こりました。

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