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腹黒女帝と忠義の騎士  作者: 斉藤鉄線
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序2

「死んでくれよ。」

と渡邊は俺に対して言った。その物言いは単刀直入で少し傲慢だった。しかし、俺は

「わかりました。何をすればいいんですか?」

と言ってしまった。半ば自棄になったのか、彼の野心に当てられたのかは自分でもわからなかった。


渡邊はニカッと笑い、すぐに神妙な顔になり、

「ありがとう。」

とまず謝辞を述べた。続けて、

「俺は海の浅い所を潜行し、一番沖にある砲台を乗っ取るつもりだ。お前にはその陽動を頼みたい。海側の敵と派手にやりあってくれ。」

と言った。なるほど、しかし、

「自分の装備は一般のビームマシンガンと格闘用のスピアしかありません。装備が貧弱すぎて一瞬でやられてしまいますよ。それでも良いならやりますが。」

と答えた。臆したわけではなく、率直な感想だった。つまり、

「良い装備してりゃ、もうちょい頑張れるわけか。カートリッジの数は?」

「二個です。」

「俺の分もやる。二個持っていけ。あと先輩の謹製装備をやるよ。ロングレンジビームライフルだ。距離を稼いでこいつでドンパチやれば簡単にはやられないだろう。出し惜しみするなよ。あと、代わりにお前のマシンガンを寄越せ。」

そこまで言って渡邊は再度笑った。俺も笑い返してやった。


十河は香国の陣地、中央やや後方から戦局を俯瞰していた。砂浜方面は膠着し、お互いの兵力が均等に目減りしているのが見て取れた。

「潮かな。」

と呟き、算段を開始した。序盤の電磁砲の照射で相手の軍に一定の打撃を与えることが出来た。その後の白兵戦は五分。つまりこのまま白兵戦を打ち切り、電磁砲を撃ち込みつつ後退すれば、差し引きの兵力差、戦果をあまり期待しない前哨戦であることを鑑みても我が軍の勝利ということになるのではないか。そこまで考えていると、通信が入った。

「海側から敵軍の狙撃があります。かなり的確に味方兵が撃たれており、戦線が徐々に後退しています。」

ふむ、その対処は易いが、契機とすべきか。十河は決断した。

「全軍に撤退の指示。電磁砲起動させ、撤退兵への支援。」

これを下知し、自身も装甲車を転身させるべきか、交戦解除開始を待つかと逡巡していたところ、さらなる通信が入った。

「緊急!海側最北の電磁砲が占拠され、指揮官の車両が射程に入っています!」


利兵衛は確信を持ちつつあった。もともと訓練の頃から、射撃の得点は高かったし、いざ実践となっても、空中での高速起動を続けながらも、敵兵を面白いように打ち落すことが出来ていた。カートリッジも余裕があるため、まだまだ戦える。


そう、自分には戦いの才能があるのだ。


敵兵が少しずつ後退を始め、まだまだ小粒ながら件の電磁砲も視界の端に捉えることができてきた。そんな折、渡邊から通信が入った。

「まだ生きているようだな。ここいらはみんなお前に釘付けだ。俺も5秒後に浮上するから、お前ももっと派手に踊ってくれ。」

「了解。」

間も無く、彼が砲台の真後ろに浮上したのが見えた。マシンガンを所構わず乱射しそのまま砲台に取り付いてしまった。利兵衛はその手際に感心しつつも砲台を奪還しようとする者を撃ち抜き続けた。


渡邊のマシンガンは面白いように敵兵に吸い込まれていった。的には困らず、また虚を上手く突けたおかげか反撃も渡邊を殺しきれる程ではなかった。砲台の砲手らしき人間はあらかた撃ち墜とし、渡邊は制御プログラムに取り付いた。操作は簡単だった。撃つつもりだったのか、途中まで起動されており、即座の発射が可能な状態のようだった。渡邊はこれを何処に撃つべきか、口角を上げつつ、口から血を零しつつ、即断した。そこまで綿密な計算はなく、どこに撃つのが一番


面白いのか。


それだけであった。砲塔は敵陣中央、やや後方。そこには動きを止めた装甲車の群れがあった。


やや、間を置いて


青白い光が装甲車の群れを一掃した。


利兵衛は初陣で40もの機甲兵を撃ち墜とし、生還を果たした。渡邊何某は、還らなかった。

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