旅のはじまりなのです!
毎回読んでいただき、ありがとうございます。
ブックマークしてくれた方、ありがとうごさいます。
もし、作中に気になることがあれば、何でも質問してください。
ネタバレにならない程度でお答えします。
感想、レビューお待ちしてます。
俺達は、西に伸びる街道を歩いている。
今のところ、何の問題も無く進んでいる。
つい先日、騎士団による定期的なモンスターの討伐があったと、キーリカさんが言っていたな。
なるほど、だから草原にはモンスターがいなかったのか。もし、討伐前に転生されてたらヤバかったな。
「モンスターが、まったくいないのです。楽勝なのです」
そんなことを言いながら、ディベルが俺の前をヒョコヒョコと跳ねるように歩いてる。
楽でいいじゃないか、だいたい昨日まで普通の生活送ってた俺が、まともに戦えるとは思えん。
腰にぶら下げたダガーを抜いてみる。ズシリと重みがあるが振れないことはない。
「そんなモノ振り回したら危ないのです。サクジロウは危険なのです」
俺を、ヤバイ人みたく言うな。
そう言いながら、先程拾った枝を切る。刃が樹皮に刺さる感じがした瞬間なんの抵抗もなく枝が切れた。なかなかの切れ味だ。何度も何度も切り裂いていく。
「サクジロウ、さっきからニマニマと気持ち悪い顔をしているのです」
「はぁ?」
「そんなことより暇なのです。ずーっと歩いてるけど何にも無いのです」
ダガーの切れ味が良くて、楽しんでいたのが顔に出ていたらしい。
ディベルは、俺の胸を抉るような言葉を訝しげな表情で浴びせてきた。俺泣いちゃうよ。
「まぁ、街道沿いは結界で安全だし、モンスターも討伐後じゃ殆どいないだろう。」
「でも、誰一人道を歩いてる人も見かけないのです」
ここいらは最東端だし、村の人も何にも無い所って言ってたから、滅多に人が来ないんだろうな。
たまに、冒険者が山岳地帯に腕試しに行くのに通るらしいが。多分、商人もたまに通るくらいじゃないだろうか。
「この先の、商業都市まで歩いて二日くらいだ。そのうち人とすれ違うさ」
「ふぇ?」
次の街までの道のりを教えてやったら、ディベルが間抜けな顔をしてこちらを見る。道具屋で買った地図を見ながら、キーリカさんから聞いた距離と時間の話をしてやった。
俺だって、昨日までぐうたらな生活していて、こんなに歩くのなんて久しぶりだ。
正直、車で移動していた現代世界が恋しいわ。
「二日って、次の街までそんなに遠いのです?」
「そりゃそうだ、なんだもう辛くなってきたか。なんならおぶって差し上げましょうか、ぽんこつ女神様」
「むうっ、そんなことないのです。まだまだ楽勝なのです。あと、ぽんこつじゃないのです」
いつものようにディベルをからかう。すると、突然走り出し元気をアピールする。わざわざ、道幅いっぱいにジグザグと走り、そしてコケた。こんなところでも、ぽんこつ女神の本領を発揮した。
「痛いのです」
そう言って、道に座り込んでいる。
派手にコケたようだが大丈夫か?怪我は無いようだ、さすが女神の衣だな。
砂埃だらけになっているポンコツ女神の手を取って起こしてやる。
「もう疲れたのです。一歩も歩けないのです」
とうとう、わがままを言いはじめた。
ぽんこつ女神についている砂埃を払ってやりながら気付いた。
こいつ、出会った頃より子供っぽくなってるな。喋り方とか、精神年齢が下がってるのは、絶対に気のせいじゃない。
そんな疑問を、本人にぶつけてみる。
「そ、そ、そ、そんなこと無いのです。サクジロウの気のせいなのです」
あきらかに、どもってるじゃないか。正直に言わないとこうだっ!
おもむろに、ディベルの両頬をつまみムニムニと弄りまくる。柔らかい頬が、上下左右に形を変えて楽しい。
「ふわぁ、ひゃめりょ〜、ふぁたふひのかほぉではしょぶんひゃない」
何を言ってるか分からないなぁ。
そう言いながら、ディベルの頬をもてあそぶ。思った以上に柔らかく手触りがいい。
あっ、ディベルの目に涙が薄っすらと見える、やり過ぎたか。
「サクジロウは、バカなのです。おたんこなすなのです。あんぽんたんなのです。」
ディベルが俺に罵倒を浴びせる。あえて、その罵倒を受ける。なぜなら、俺をポカポカと叩きながら、頬を膨らませ怒ってる姿が可愛いからだ。
ん?俺はロリコンじゃないぞ…というかまた違和感を感じる。
もう一度ディベルに聞いてみる。
「お前、この前よりあきらかに小さくなってないか?言葉づかいも幼い感じだし、初めて会った時の姿の面影が微塵もないんだが」
「ふへぇ?多分最適化が進んだと思うからなのです」
「えっ?最適化って。大丈夫なのか?このまま縮んで、赤ん坊になったりしないよな」
「大丈夫なのです。すでに最適化は終わってるので、これ以上は変化はないのです」
ディベルは、太陽のような笑顔でニコニコしている。幼い感じがより映える。
身長も140cmくらいだろか?胸は膨らみは一切無く、お尻も薄くなってる。
俺好みのグラマラス女神は、もうそこにはいなかった。ショックを隠しきれない。
「絶対サクジロウがバカにするから、言いたくなかったのです。そして、やっぱりバカにしたのです。」
しかし、疑問がある。ここまで姿が変わるほど最適化されたというなら、抑制された女神の力はどうなったのか。
「女神の力ですか?」
ふふんっと、いつもの踏ん反り返りポーズをする。
胸を張っても、虚しくなるくらい平野なのでガッカリである。
「サクジロウが、そんなに女神のチカラが見たいというのなら見せてあげるのです!」
そう言うと、ディベルは空に手を掲げ目を瞑る。
すると、手の平に青白い光が集まり大きな球体を生み出す。
「どうなのです!これがわたくしのチカラなのです!」
なにそれ?魔力の塊ってヤツですか?
10mぐらいの、青白く光る球体からビリビリと力を感じる。
「サクジロウに特別に見せてやるのです。その目かっぽじってよく見やがれなのです」
ディベルが、どこかで聞いたようなセリフを叫ぶ。
すると、その球体から空に向かって光の帯が放たれる。街道に、小さな衝撃と振動が発生する。とんでもないチカラだ。
お前、チカラが抑制されてるって言っててその威力かよ。
「どんなものなのです。サクジロウも、さすがにビビったのです!」
なんでそんなチカラ持っていながら、俺にチカラを授ける方法知らないんだよ。心の底から悔やんでいる。たぶん、そんな所がぽんこつ女神なのだろう…。
すると、どこからか悲鳴が聞こえる。
街道の先を目を凝らして見ると、一台の荷車と人が見える。今のディベルのチカラを見て驚いたのだろう。馬がビックリして暴れている。
大丈夫ですか?と、声を掛けながら駆け寄る。
「今のは何じゃったんだ?突然光が空に向かって伸びたと思ったら、突風が吹いて思わず叫んでもうたわ」
話を聞くと、俺達がいた村に商品を届けに行く商人だった。護衛の冒険者も二人いる。
とりあえず謝り、事情を話す。
「そうだったのか、突然だったからビックリしたわい」
「それにしても、凄かったですね」
「モンスターの襲撃でもあったのかと思ったよ」
なんとか魔法を失敗したことにして誤魔化した。
それで納得してくれた三人も大概だが。
「そうなのです。サクジロウがどうしても見たいというので見せてあげたのです」
「なるほど、なるほど。お嬢さんは、かなり魔法の才能がありそうだね。その年で、あの魔法力は大したもんじゃよ」
商人に褒められて、ニコニコとしているディベル。
サンドイッチを頬張り、楽しそうに話している。
その横で、護衛の冒険者と俺は食事をしている。
ちょうどいい時間なので、皆で一緒に昼飯を食べようと商人から提案があったのでご相伴にあずかる。
「お二人で旅をしてるのですか?」
冒険者の一人が聞いてきた。
「そうだよ、俺も気になっていたんだわ」
「今時、二人だけの旅人なんてのは珍しいからね」
そんな疑問に、自分を鍛える為の旅でディベルも魔法の修行という事にしておいた。
最近、騎士団がモンスター討伐したので、それに乗じて大陸を巡る旅をすると話したら納得してくれた。
騎士団が、信用されている証拠だ。
そんな話をしながら昼飯も食べ終え、商人達と別れ俺達は街道を西に向かい歩き始める。
「とっても楽しかったのです。もっと、たくさんの人に会ってみたいのです」
この先の、街道の状況も聞けたしよかったな。ディベルも、旅の醍醐味でもある人との出会いを楽しみ嬉しそうだ。
そんなことを思いながら、街を目指して歩いていく。
ゆっくりと歩んでいく旅です。
女神エインディベルがどんどん幼くなってます。