アレキサンダー活躍するなのです!
どうして、ディベルとアレキサンダーが闘技場の舞台にいるんだ?
一瞬だが理解が追いつかなかった。
「あれって、ディベルちゃんとアレキサンダーちゃんよね?」
「まさか、何かの間違いでは?」
「おいおい、どうなってやがる。まさか嬢ちゃんとアレキサンダーが剣技大会に参加してるなんて」
「あれっ、みなさん知らなかったのですか?」
俺たちが驚いている中、ガナンドさんだけがあっけらかんとしている。
「ガナンドさん、ディベルとアレキサンダーが参加していること知っていたんですか!」
「ということは、サクジロウ君達は話を聞いていなかったのかな?実は、昨日宿で解散した後ディベル嬢が剣技大会に参加したいからと、私の用事もあってギルドまで一緒に行って登録してきたんだけど」
昨日、ロビーで寝転んでいるときに見たあの時か!?
しかし、剣技大会は武器で戦う為、魔法しか使えないディベルは参加はできないなずだが、どうやって登録したんだ?
「そうだ、嬢ちゃんは杖を持ってはいるが杖術は使えないぞ」
「そのことなんですが、なんでもアレキサンダーを使役獣として登録して参加すると言っていましたよ」
「そうか、使役獣は武器扱いになるからディベルちゃんでなくアレキサンダーが戦うつもりなんですよ」
オルトガ師匠の疑問にガナンドさんとツェイスさんが答える。
「その手があったか」
俺は、そう言って二人の方を見る。
既に中央で対戦相手と向かい合っている。
ふと、こちらに気づいたディベルとアレキサンダーが手を振り跳ねている。
「あのぽんこつ女神と駄豚め」
ディベルは杖を持っているが魔法しか使えないので戦えない、アレキサンダーは戦えるがペットなので参加はできない。で、考え付いたのがアレキサンダーを使役獣としてディベルが参加するという方法。
どうしてそういうとこだけは頭が働くのか。
俺たちが考えもしない方法で剣技大会に参加したディベルとアレキサンダー。
もう後には引けないが、アレキサンダー程の強さがあれば大抵の冒険者は勝てないだろう。
心配なのは、ディベルのぽんこつが発動して面倒ごとに巻き込まれることなのだが、何事もなく終わってくれよ。
「それでは、第一試合開始っ!」
そんな心配はよそに、闘技場に審判の声が響き第一試合が始まった。
今、自分たちは闘技場の脇の控え室にいる。
サクジロウ達の所からこっそりと抜け出し、闘技場の案内係りにここまで連れてこられたのだ。
なぜって?それはディベルと自分が剣技大会に参加したからさ。
「あっ、名前が呼ばれたのです!アレキサンダー行きましょうなのです」
「プヒーッ」
今、自分たちの名前が呼ばれ闘技場の舞台に出る。
ディベルは楽しそうに歩いている。
自分も、サクジロウ達以外と戦うことができるのでワクワクしている。
入場口を出ると、とてつもない歓声が聞こえる。それだけ自分達に期待が寄せられているということだろう。けして、面白がって煽っているわけではないはず。
「あの白黒の人がいるとこまで行くって言ったのです」
「プヒーッ、プヒーッ」
中央に進むと、そこにはもう対戦相手がいた。
ディベルよりも大きいな、多分倍くらいあるだろう。
筋肉質で、いかにも力任せの戦いをしそうな感じだ。
自分たちを見下すような目つきが気に食わないな。
「よろしくお願いしますのです」
「プヒーッ」
ディベルが丁寧に挨拶をする。
「おいおい、俺様の初戦の相手がこんなちんちくりんのしょんべんくせぇガキかよ、楽勝だけどハズレだわ」
なんて失礼なやつだ。
ディベルが挨拶をしてるのにバカにした言葉を吐きかける。
「大人なのにちゃんと挨拶できないなんて、可哀想な人なのです」
「プヒーッ」
本人は、大して気にしてないどころか相手を哀れんでいる。
「おうおう、生意気なこと言ってくれやがるじゃねぇか。手加減してやろうかと思っていたが、そんな気は失せたわ覚悟しろよ」
そう言って睨みを効かせるが、ディベルは観客席の方を見ている、何かに気づいたようだ。
「あっ、あそこにサクジロウ達がいるのです」
「プヒーッ」
どうやら、サクジロウ達にバレたらしいな。
まぁ、盛大に名前を呼ばれたんだ当たり前か。
ディベルは、サクジロウに向かって手を振っている、自分もアピールするために跳ね回る。
「サクジロウ、ヤッホーなのです!」
「プヒーッ」
おっ、諦めたような顔をしてこっちに手を振ってるぞ。
なにやら口がパクパクしてるが、歓声のおかげでなに言っているかわからないが。
「この、クソチビが!この俺様を無視しやがって。無事で帰れると思うなよ」
対戦相手が何か言っているが無視でいいだろう。
ディベル本人には聞こえてもいないしな。
「それでは、両者向かい合って」
審判が合図を送ってきた。
自分とディベルが相手に向かい構える。
「第一試合始めっ!」
審判の声と同時にディベルが叫んだ。
「行くのです、アレキサンダーっ!」
「プヒーッ」
自分は、対戦相手に向かって突撃をかます。
「なっ、ガハッ!?」
体当たりを食らった相手は吹き飛び、途中から地面に激突。そのままの勢いで転がり舞台の反対側の壁に激突して止まった。
もうもうと、砂煙が舞い上がり観客席にまで及ぶ。
審判が駆け寄り状況を確認している。
突然の出来事に、観客席は静まり返っている。
オルトガが『よくやった』と叫んでいたのだけは聞こえた。
「さすがアレキサンダーなのです」
「プヒーッ、プヒーッ」
ディベルが自分を抱き上げてくるくる回り始める。
ふっ、まだ六割程度の力しか出してないがな。
おっ、審判が砂煙の中から出てきたぞ。
くるくる回る視界から確認する。
手を交差しているのが見えた。
「勝者、エインディベルとアレキサンダー!」
審判がそう叫ぶと、闘技場全体が震えるほどの歓声が響く。
「勝ったのです!楽勝なのです!」
「プヒーッ」
ディベルが手を振ると、さらに歓声が大きくなる。
さて勝利の美酒、いや串焼きに酔いしれるとするかな。




