ここからはじまる、剣技大会なのです!
今日から始まる剣技大会で街の中はお祭り騒ぎだ。
カナイの街には闘技場があり、その周りには色々な屋台が並んでいた。
「あれが食べたいのです!」
「プヒー!」
「おーい、あんまり俺から離れるんじゃない、また迷子になるぞ」
早速、ぽんこつ女神と豚が匂いに誘われて、屋台をはしごしている。まったく、俺の注意など聞きやしない。
「朝から嬢ちゃんは元気だな」
オルトガ師匠は、昨日あれからずっとお酒を飲んでいたのか、二日酔いでグッタリ気味だ。
「さて、受付は終わったので試合の順番が来るまで待ちましょうか」
「今回は12人が参加するんだってね。私達もうまい具合にばらけて、当たるとしても二回戦以降だね」
「一応、観客席で試合を観戦してもいいみたいだから移動するか?」
そんな話をしながら、観客席の出入り口に向かった。
既に、先ほど受付でクジを引き試合順が決まっており。
俺は第五試合、ツェイスさんは第ニ試合、サナエさんは第三試合だ。
ただ、一回戦の対戦相手は入場するまで、分からないようになってた。
自分の試合が始まる時に、初めて相手が分かる仕組みになっているようだ。
とにかく、初戦を勝てれば二人のどちらかに当たることになる。
見た感じだとツァイスさんもサナエさんも準備万端のようだ。
「俺も遅れをとらないようにしないと」
そんなことを考えながら観客席に向かった。
「みなさんこっちですよ」
俺達が、どこか席が空いてないか探しているとガナンドさんの呼ぶ声が聞こえてきた。
「多分、観戦するだろうと思って席を取っておきました」
「すまんなガナンド」
俺達より先に宿を出て行ったからどうしたのかと思ったら、席を取っていてくれてたのか。しかも、一番前のいい席じゃないですか。
オルトガ師匠は、ガナンドさんに礼もそこそこに、そそくさと席に向かい酒瓶を出して酒盛りを始めた。
「もうすぐ、第一試合が始まるみたいですよ」
ツェイスさんがそう言うと、闘技場の中央に人がいるのに気付いた。
「ただいまより、カナイ剣技大会を始めたいと思います」
どうやら審判らしい。
白の上着と黒のパンツ、赤い蝶ネクタイのいかにもってスタイルだ。
「それでは、第一試合の対戦選手をお呼びしたいと思います」
審判の声に観客席から歓声が上がる。
そういえば、こういう時に騒ぎ出すぽんこつ女神と豚が静かだな?
「おい、嬢ちゃんとアレキサンダーはどうした?」
「あれ?ほんとだ。さっきまで、そこで串焼き食べてたのに」
「まさか、こんな時に迷子か?」
「それじゃ、探しに行かないと」
サナエさんとツェイスさんが心配そうな顔をして立ち上がる。
「まったく、毎回毎回俺の言うことを聞かないで勝手に行動しやがって」
とにかく早く探さないと。多分、食べ物の匂いに誘われて闘技場の外の屋台にでも行ったのだろう。
俺達が観客席の出入り口に向かおうとすると・・・。
「対戦相手は、自称美少女女神エインディベルと孤高の使役豚アレキサンダー」
なんだと?
「はぁ?」
「えっ?」
「なになに、どういうこと?」
審判が高らかに叫ぶ、胡散臭そうな自称と名前を。
そして、闘技場の脇の選手入場口から出てきたのは、我らがぽんこつ女神と豚だった。




