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お約束の、剣技大会なのです!

この商業都市カナイでは、各商会の商談が終わるまでの滞在だが、期限が決まってないので適当にギルドの仕事をしようかと、カナイギルドのロビーに足を運んだ。


「なんだこれ?」


そう言って、オルトガ師匠が一枚の情報紙を手に取った。


『カナイ剣技大会。たくさんのご参加お待ちしております』


情報紙には、そう書かれた。

ガナンドさんの話だと、なんでもカナイには商談に来る商会の護衛で、かなりの腕の冒険者が集まるらしく、商談中の暇な期間の時間潰しに草試合が始まったらしい。

それがいつの間にか、街全体での催し物になり、剣技大会として定期的に行われるようになったということだ。


「名を売るために出る冒険者もいるし、商会も強い冒険者を専属で雇ったりで、街も活気で溢れて良いこと尽くめですよ」


ガナンドさんは、何度か見学をしたことあって、今回の護衛についた冒険者の中にも、剣技大会で成績を残した人もいると教えてくれた。


「なるほど、こいつは丁度いい。暇潰しがてら、剣技大会に出てサクジロウの修業の成果を見せてもらおうか。本気の対人戦ってのも味わってみるといい」


オルトガ師匠が、ニヤニヤと笑いながら情報紙を見ている。

確かに、本気で対人戦はしたことがない。

ツェイスさんやサナエさんと特訓で戦ってはいるが、あくまで特訓なので本気ではない、豚は別だが。


「なら、僕も出ますね。今、自分の実力がどこの程度なのか、どこまで通じるのか試してみたい」

「私も、出るわよ。オルトガさんとガナンドさんに叩き込まれた暗殺術を試してみたい」


ツェイスさんとサナエさんも出るのか。出来れば当たりたくないな、特にサナエさんは暗殺術とか言ってるし、隠密術でなく暗殺術か、最悪な惨状が目に浮かぶ。


「プヒーッ」

「アレキサンダーも、やる気満々なのです!」


いや、残念ながらペットは出られないぞ。

剣技大会と言っても、魔法や使役獣は大丈夫だが、さすがにペットの豚が単体で出場はダメだろう。

今、再確認するが豚はペットだ、証拠に首輪を着けてリードも付いている。

残念そうにしているディベルとアレキサンダーを、ガナンドが慰めている。

何とか言いくるめたのか、ぽんこつ女神と豚に笑顔が戻っていた。


「それじゃ、とっとと登録しちまうか。カナイギルドとカナイの商会の合同主催らしいから、そこのカウンターで登録出来るみたいだな」


そう言われて、ギルドの受け付けで登録用の紙を貰い、必要事項を埋めていく。

名前と、パーティー名、年齢に性別、住所もしくは所在宿の場合は証拠となる手形も。

そして、使っている武器の種類と数だ。

最後に、剣技大会は通常の武器、魔法を使う事が前提なので、怪我した場合は自己責任である事が書いてあり、ギルド職員の確認の上サインをする。


「自分の武器が使えるのはいいな」

「確かに、模擬武器だと公平かもしれないけど、実力を発揮できませんからね」

「私も、機械式変形短弓が使えないと、接近戦に持ち込まれたら何も出来なくなっちゃうし、よかった!」

「ある程度の怪我は覚悟しておかないとな」


ふむ、ツェイスさんの本気は何となく想像できるが、サナエさんの本気は想像すら出来ない。

というか、あんな異常武器を使わないでほしいのだが。



剣技大会の予選は、明日から始まるらしい。

結構忙しないな。ゆっくり休む事も出来ないし、街を楽しむ事も後回しになってしまうが仕方ない。

することもないので、ホテルのロビーでダラダラとしていたら、ディベルとアレキサンダーがガナンドさんと一緒に外に出て行くのが見えた。

俺はソファに寝転んでいたので、こっちには気が付かなかったようだ。

珍しい組み合わせだが、どうせ食べ物にでもつられてついて行ったのだろう。

あれで、ガナンドさんもディベルとアレキサンダーには甘いからなぁ。


「おーい、ガナンドのやつ知らんか?」


するとオルトガ師匠が、酒瓶持ってフラフラと歩いていてきた。

先程、ディベルとアレキサンダーと外に行ったことを伝えると、愚痴を言いながらホテル併設の酒場の方に消えて行った。


「せっかく、どの弟子が勝つか賭けようと思ったのに、どこ行きやがったんだぁ」


おいおい、弟子を賭け事の対象にしようとしてるのか、なんて師匠だ。

だが、剣技大会の賭け自体は禁止されていない。

一応、カナイ商会が胴元で行われるらしい。

そんなことを考えていたら、小腹が減ってきたので屋台の焼き鳥でも食べに行くことにした。



「あれ、サクジロウ君こんなところで何してるの?」


街の中央広場で焼き鳥を食べてると、後ろからサナエさんが声をかけてきた。

口いっぱいに頬張っていたので、頑張って咀嚼を早めた。


「ごめん、焼き鳥食べてたんだね。急かしちゃったかな」


サナエさんが、手を合わせて可愛いポーズで謝ってくるので、大丈夫だと言い俺に何の用なのか聞いた。


「ううん、広場で散歩してたらサクジロウ君が見えたから」


ただ、声を掛けただけらしい。


「そういえば、いつも一緒にいるツェイスさんがいないな。必ず二人でいると思ってたんだが」

「そんな、いつも一緒にいるわけじゃないよ。でも、昔からツェイスは目が離せなかったからねぇ、お姉ちゃんである私が常に見張ってないと、何しでかすか分からなかったから。今だって迷子になってるし」


今、驚愕の事実を知った。

まさか、サナエさんの方が年上だったなんて。

今まで見てきて、俺にはツェイスさんが兄にしか見えなかった。


「えぇ、酷いよサクジロウ君、どう見ても私の方がお姉ちゃんじゃない!」


プンプンて感じで怒っているサナエさん。

すると、ツェイスさんがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。


「こんなところにいたのか、気が付いたらいないか心配したぞ」

「あっ、ツェイスいいところに来た。あのね、私がツェイスより年上で、お姉ちゃんていうのを、サクジロウ君が信じてくれないの」

「うん、大抵の人は信じないね」

「ツェイスまで酷い!?」


ていうことは、本当にサナエさんが年上なんだな。

あと、迷子になってたのはサナエさんだったか。


「年上と言っても一歳しか変わらないし、サナエは昔からお姉ちゃん風吹かしてるけど、行動が伴ってないから僕が常に見てないと、何しでかすか分からなかったからね」


さっきサナエさんが言っていたことを、まんまツェイスさんが言っている。

その、件の人物は顔を引きつらせながら、隠密術で消えようとしていた。


「ともかく、明日の剣技大会はお互いに頑張ろう!たとえ、試合が当たろうとも手加減は無しだ」


ツェイスさんが、爽やかな笑顔で言ってきた。

もちろんですと返し、ホテルに向かって歩き出す。

サナエさんも、ツェイスさんに襟首を掴まられながらも「おーっ!」と叫んでいる。



そして、剣技大会の日が訪れるのだった。

剣技大会開始です。


もちろん、アレも出てきます。

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