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しんがりって、美味しそうな響きなのです!

いつものように、ギルドのロビーで朝食を食べている。

ここ数日の特訓おかげか、全体的に戦力の底上げができたので、久しぶりにギルドの依頼を受けようってことになった。


「今の力量なら、あの猿モンスターの様な化物が出ても対処できるだろう。このところ、護衛関係の依頼が滞っていて流通に問題があるってガナンドに言われてな。とりあえず、今回ガナンドの商隊の護衛を引き受けてくれと頼まれた」

「たしかに、最近商店に並ぶ品が少なくなってきましたね。遠征依頼は、上位冒険者が合同で護衛を受けないといけないので、人手不足の状態が原因ですね」

「ガナンド商会の系列店は、在庫が十分だったので後回しにしていたらしいが、そろそろやばいらしいってことで依頼を受けたんだが」

「実際、掲示板見ても護衛依頼の報酬が高額になってるものねぇ。各商会も、それだけ切羽詰ってるのね」


今のところ被害は出ていないが、冒険者達もギルドと自警団両組織から厳戒命令が出ている以上無視はできない。

もし、それで問題が起きたら冒険者として信用が無くなり、まともに依頼を受けることもできなくなるだろう。

そんな不安もあり、今は簡単な討伐依頼でも冒険者は2~3組の合同パーティーで受けている。

そんな理由で、慢性的な人手不足でギルド側も対応に追われている。自警団も、協力しているが街の警護をおろそかにしては意味が無いだろう。


「みんな困っているのです」

「プヒー」


ディベルとアレキサンダーも、ギルド内の雰囲気を感じ取ったのか意気消沈している。


「こればかりは、俺達で解決できる問題じゃないしな。嬢ちゃんの気持ちも分かるが、俺達は俺達のできることをしよう」

「そうね、今はガナンドさんの依頼を受けて、街に活気を取り戻しましょう」

「わかったのです」

「プヒプヒ」


オルトガ師匠とサナエさんの言葉に励まされたのか、ディベルに笑顔が戻った。

だが、俺はこれから何かしらの面倒ごとに巻き込まれるんじゃないのかと憂いていた。



「こんにちは、今日はよろしく頼みます」

「おう、大船に乗った気持ちでいてくれ」


次の日の朝、オルトガ師匠とガナンドさんの挨拶からはじまった。

よく見ると、ガナンドさんは武装している。まさか、自ら護衛に出るのか?

ガナンドさんは背中に、不釣合いなほど大きな剣を背負っているのは見なかったことにした。


「ヴァンデエミオンのみんな、今日はよろしく」


さすがのツェイスさんも、その姿に少し苦笑いだった。


ガナンドさんの案内で来た場所は騒然としていた。

街の門前で待っていたのは、とんでもない数の荷車と、どこにいたんだと思うくらいの数の冒険者達だった。

ガナンドさんの話によると、今回の流通を回復させるために各商会と話し合い、合同で商隊を組んだそうだ。

この提案にギルド側も了承し、自警団の許可も取り実行に踏み切ったそうだ。


「しかし、この街にはこんなに冒険者がいたのですね。よくここまで集められたものです」

「上位冒険者の殆どは、指名依頼が多いからギルドのロビーにいることないしねぇ」

「かなり有名な冒険者もいるね」

「人がいっぱいなのです!」

「プヒーッ」


俺も含め、みんな驚いてる。

そんな話をしていると、ガナンドさんが低めの櫓から大きな声で説明をはじめた。

かなり後ろの方にいる俺達にも聞こえるくらいなので、何か魔法でも使っているのかな?

たぶん、風魔法か何かに声を乗せているのだろう。

特訓のとき知ったのだが、ガナンドさんは騎士団の中でも魔法も使える優秀な騎士だったらしい。

オルトガ師匠曰く、騎士の団長クラスは魔法が使える人も少なからずいるとか。

それでも、オルトガ師匠のほうが強かったと、ガナンドさんが後から付け加えていた。



「俺達は、この商隊の殿を任されているわけだが」


ガナンドさんの説明を聞き、冒険者パーティーが各々配置場所に向かいはじめると、オルトガ師匠がとんでもないことを言ってきた。


「はっ?殿?はじめて聞きましたよ?」


隣で、ツェイスさんとサナエさんも、聞いてないよって顔をしている。

朝のうちに頼まれていたらしい。

なるほど、俺達のパーティーに配置の説明が無かったわけだ。


「しんがりって何です?なんか美味しそうな響きなのです」

「プヒーッ」


殿って言うのは、一番後ろで護る役目のことだ。

こういう仕事では、大事な役目なんだぞ。


「大部隊で行動しているときは後ろが狙われやすいんだ」

「そうよ、みんな前方に意識が集中してるしね」

「殿に強い奴置いて挟撃なんかに備えるんだ、まぁ囮っていう言い方もできるな」

「なるほど、よく分からないけど分かったのです!」

「プッヒーッ」


本当に理解できたのかね、ぽんこつ女神は?

まぁ、豚は匂いとか気配に敏感だから適材適所なのかもな。他に、使役獣ペットを連れている冒険者もいなかったことだし。


「それでは、出発いたします」


そんな号令が響き商隊が動き出す。

ちなみに、ガナンドさんは俺達と一緒に商隊の最後尾にいる。

ガナンドさんが、この商隊の指揮を執るんじゃないの?


「私は、今回は護衛側です。久々の実戦ですが、体も慣らしてあるので大丈夫ですよ」


なるほど、だからこの前の特訓に参加していたんですね。

あの頃から既に、この企画を考えていたのとは、さすがに抜け目が無いです。

実際ガナンドさんの実力は、特訓での戦いぶりを見た俺にしてみれば心強いことこの上ない。

しかし、こう都合がいいと不安になってくる。

そして、その不安の原因の一角でもあるぽんこつ女神は、豚と一緒に楽しげに歩いているのだ。

読んでくださる皆さんの応援が励みになります。


次はたぶん、あれが出てきます。

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