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ツェイスとサナエ、仲間のあり方なのです!

結局、あの猿モンスターのことも、秘密結社ゴルデアバースのことも何も分からず自警団の詰め所を後にした。

もう一度ギルドに戻って、依頼の処理と報酬を貰わなくては。


とりあえず、ギルドにある一室を借り、これから報酬を分配することになった。


「さて、報酬だが今回は、ギルドの成功報酬が金貨五十枚、調査報告による追加報酬が金貨十枚、自警団からの侘びの追加報酬が金貨百枚だ」

「すごーい!一回の依頼で、こんなに報酬が貰えるのはじめてよ!」

「確かに、破格の報酬ですね。通常報酬が、上位の高額依頼分ぐらいに増えてます」

「たしか、依頼書に書いてあったのは金貨十五枚だったはずよね?」

「今回、かなり面倒ごとになったからな、ギルドの方が色をつけてくれたのさ」


目の前にある金貨の山を見て、サナエさんが嬉しさのあまり飛び跳ねている。

なぜか一緒に、ディベルとアレキサンダーも飛び跳ねて喜んでいる。

ツェイスさんも、金額に驚いているようだ。

正直、俺達はゴブリン退治で銅貨をチマチマ貰っていたので、依頼の相場が分からなかったが。

サナエさんが言うには、どうやら上位の依頼で平均金貨十枚くらいだそうだ。

さらに、侘びの報酬で金貨百枚が追加された。今回のことについて自警団も、事の重大さが分かったのだろう。あと、どちらも口止め料ってことだろうな。


「合計金貨百六十枚だが、配当は半分ずつで金貨八十枚ずつでどうだ?」

「ちょっとまってください、それでは僕達の貰う分が多すぎます」


オルトガ師匠の提案に、ツェイスが待ったをかける。


「確かに、等分配したらそうかもしれないが、この場合はチームで分けるのであって妥当だと思うのだが?」

「でも、結局あの猿モンスターだって倒したのはサクジロウ君だし、私達はオルトガさんから特訓も受けてるし」

「たしかに、オルトガさんの特訓は逆に報酬を払わないといけないほど充実していたものだ」

「そんなこと言ってもなぁ。俺達にしてみれば、逆に修行に付き合ってもらったようなものだし。正直、侘び報酬はそのままお前さん達に渡してもいいと思ってたぐらいなんだが?」

「そうなのです!サナエもツェイスもがんばったのです!」

「プヒーッ」

「俺も、オルトガ師匠の意見と同じだな」


たしかに、こちらが貰いすぎのような気がする。

こんな面倒ごとに巻き込んだ以上、侘び報酬は二人に全部渡した上で残りを分配してもいいくらいだ。

しかし、ツェイスさんとサナエさんは依頼中に受けていた特訓に報酬を払いたいと言いだした。

いやいや、もともと修行の一環で依頼を受けていたのだし、特訓だってこちらが付き合ってもらっていたようなもの。

それを含めても、平等な配当だと思うよ。


お互いに譲り合い、色々と言い争いながらも、なんとかツェイスさんとサナエさんは納得してくれた。


「本当に、僕達がこんなに貰っていいのでしょうか?」

「なんだか夢見たいだけど、これ以上言い争うのはオルトガさん達に失礼になっちゃうわ」

「そうだね。オルトガさん、サクジロウ君、ありがとうございます」


最終的には、オルトガ師匠が金貨六十枚しか受け取らんと言い出し、二人は特訓の報酬として金貨二十枚払うと言い出した。

結局は報酬を半分ずつのするということで収まった。



そして次の問題だが。


「ガナンドは、俺の知り合いなんだ」


オルトガ師匠が、そう切り出した。

まぁ、確かに間違っていない。だが、それだけではツェイスさんとサナエさんは納得しないだろうなぁ。

たぶん、はじめて会ったときにガナンド商会の店で武具を格安で買えたのは、ガナンドカードのおかげだと感づいているだろうし。

だが、オルトガ師匠とガナンドさんの詳細を話したところで意味があるとは思えない。


「そう言われても、ただ知り合いってだけで手にすることの出来るアイテムではないと知っています」

「そうなの?」

「あぁ、ましてや一介の冒険者が持てる様な物でもない。貴族ですら喉から手が出るほど欲しがるの物だ」

「ほへー、貴族が欲しがるほどの物なのね」

「サナエ、考えてもみろ。ガナンド商会の店で売ってる武具が、殆ど半額で買えるなんて普通じゃ考えられない」

「たしかに、どう考えてもこの装備が、私達みたいな貧乏冒険者に買えるはずないわよねぇ」


なるほど、さすがツェイスさんだ。そんなことまで知っているなんて、君もただの冒険者じゃないようだね。

サナエさんも、高額な武具を買えたことを思い出し、目をキラキラさせながらこちらを見ている。

これについては、ツェイスさんも怪しんでいるようだが。


「そんなこと言われても、ガナンドが勝手に渡してきたわけだし」

「これは、ガナンドから貰った大事なカードなのです!」

「プヒーッ!」

「前に、不届きなギルドマスターに奪われそうになって面倒なことになったよなぁ」

「まったくなのです。しっかり、わたくし達がお灸をすえたのです!」

「プヒプヒッ!」

「あのときは、ガナンドも大変だったろうなぁ。自分が渡したカードのせいで、ギルドの不祥事に巻き込まれたんだしな」


案の定、ディベルとアレキサンダー、さらにオルトガ師匠まで一緒になってギルドの不祥事のことをばらしてしまった。

こうなることは分かっていたが、オルトガ師匠までディベルのぽんこつに当てられてしまうとは・・・。


「まさか、あの件に係わっていたのがあなた達だったとは。しかも、実際はギルドが不祥事を起こしていたのか」

「あれって、ギルド内の人事異動じゃなかったの?」

「だから、今回の件で新しいギルドマスターに会ったとき、ギルドが腐っているとか言っていたのですか」


ある程度のことは知っていたみたいだが、事の真相を知ってツェイスさんが頭を抱えている。

さらに、この街に来て間もない短期間でトラブルに巻き込まれている俺達に、哀れみの目を向けはじめた。


「まぁ、詳しいことは話せないが色々あってなぁ」

「ししょうが、ガナンドカードは人のいるところで出しちゃいけないって言っていたのです」

「ガナンドは、良かれと思ってくれたんだけどな、面倒ごとを呼び寄せる呪いのアイテムになってるな」


そういって、オルトガ師匠は笑っている。

実際のところの原因は、俺もしくはディベルのぽんこつ女神の力が面倒ごとを引き寄せているのだが。


「実際に、僕がこうやって問い詰めようとしていること自体が、その面倒ごとの一つなんでしょうね」

「まぁ、そうなるかもな」

「ご、ごめんなさい」


ツェイスさんとサナエさんが、申し訳なさそうな顔をしている。

オルトガ師匠は、気にするなと言っている。



とにかく、これ以上俺達と一緒にいると、何かしら面倒ごとに巻き込まれる可能性があるので係わらない方がいいと二人に言っておく。

なにせ、秘密結社ゴルデアバースなんて怪しいものも出てきたんだ。

どのみち巻き込まれるのだろうから、被害を被るのは俺達だけでいい。


「今回は、ありがとな」

「ありがとうなのです」

「プヒーッ」


オルトガ師匠が、ツェイスさんとサナエさんにお礼を言う。

ディベルとアレキサンダーも寂しそうだが、なんとなく分かっているのか二人にお礼を言った。

俺もお礼を言って、パーティーを解散する。

もともと、協調性や連携を学ぶために組んだ臨時パーティーだ。

そんなことを思いながら、俺達は部屋を出ようとした。


「ちょっと待ってください」


はじめてツェイスが大きな声を出すところを見た。

隣にいたサナエさんも、あまりのことに驚いたようだが、何か感づいたのかこちらに顔を向ける。


「そんな勝手にパーティー解散しないで下さい」

「そうよ、確かに短い間だったけど、一緒に戦った仲間じゃない」

「僕達を面倒ごとに巻き込みたくないってことは分かります。でも、ここまできたら既に巻き込まれてるのと一緒ですよ」

「なら、私達は仲間を助けるために一緒にいたいよ」

「仲間のためなら、どんな面倒ごとだって一緒に乗り越えてみせる」


二人は、俺達を仲間と言ってくれた。

たった一度だけ依頼を受けただけなのに。


「だが、今回のことを含め、俺達と一緒だと危険な目にあう可能性は高いぞ?」


オルトガ師匠が釘を刺す。


「冒険者になった以上、そんなことは承知の上です」

「いまここで別れてしまったら、きっと後悔することになると思うの」


二人の目は真剣そのものだ。

俺は、二人が一緒にパーティー組んでくれるなら心強いと思った。


「ツェイスとサナエが一緒なら、もっともっと楽しくなるのです」

「プヒーップヒーッ」


ディベルとアレキサンダーも賛成のようだ。


「そうか、全員賛成なんだな。なら、一緒に行こうじゃないか」


オルトガ師匠も賛成のようだ。


「よろしくお願いします!」

「みんな、これからもよろしくね!」


こうして、五人と一匹は新たにパーティーを組んだのであった。

パーティー再結成!

そして、再び修行の日々がはじまる。


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