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帰還なのです!

おそくなって、すみません。

ようやく再開です

疲労困憊になりながらも、やっとのことで街に帰ってきた。

帰りは、あの猿モンスターがいなくなったせいか、他のモンスターも現れるようになった。

本来なら調査をしなくてはいけないのだろうが、ことがことなので急いで帰還することにしたのだ。


「とにかく、ギルドに報告と自警団に問い詰めないとな」


オルトガ師匠の言葉に怒気と苛立ちがみえる。

まぁ、あれだけのことがあったんだ怒っていて当然だろう。

ただの調査が、命がけの戦いになってしまったんだ、下手したら全滅していたかもしれない。


「今回のことは、自警団の不手際すぎます。確かに、謎のモンスターに注意するようなことが記載されていたとしても、あまりにも予想外すぎる」


いつも冷静なツェイスさんも、今回のことには怒っているのがわかる。


「でも、なぜ自警団はあんな依頼をだしたのかしら?あれだけ危険なモンスターと分かっていれば、それなりの情報の提供と注意喚起するでしょ?」


サナエさんは、ぐっすり眠っているアレキサンダーを抱きかかえながらそんなことを言ってきた。

確かに、依頼自体も下位の冒険者でも受けれるものだった。もし俺達以外がこの依頼を受けていたら、もっと大惨事になっていたかもしれない。


「あぁ、あの化物相手じゃ、下位の冒険者や自警団ではかなりの被害が出ていただろうな」

「本当に、僕らは運がよかったとしか言いようがないです」

「サクジロウ君が、最後に使った技凄かったものね」


あの時は、マジで死ぬかと思ったからなぁ。

偶然、あの謎の現象が起きてくれたから助かったようなもんだ。

ツェイスさんとサナエさんは、猿モンスターを倒したのは、俺の必殺技だと思っているみたいだが・・・。


「サクジロウが怪我してなくて、よかったのですぅ」


ディベルが、俺の背中でおぶさりながら寝言を言っている。

あれから、何があっても俺から離れようとしなくて大変だった。

でも、それだけディベルは俺の心配をしてくれたのだろう。

もう、ディベルが泣き叫ぶ姿は見たくない、俺はもっと強くならなくちゃいけないな。

そんなことを思っていると、いつの間にかギルドの前に到着していた。



ギルド職員に依頼の報告をし、ギルドマスターを呼んでもらった。

オルトガ師匠が、カウンターで怒鳴るので女性職員は涙目だし、ロビーにいた他の冒険者は驚いてこちらを見ていた。


「さて、今回の依頼についてだが確認したいことがある」


ギルドマスターの部屋について早々、オルトガ師匠が詰め寄る。


「あなた達の話にある猿モンスターだが、ギルドも自警団からは詳しいことは何も聞かされてないのじゃよ」


ギルドマスターは、なにを焦っているのか額に汗が浮かんでいる。


「ですが、依頼書には謎のモンスターについて記載されてるので、ギルド側が知らないはずはないと思いますが?」


ツェイスさんも、納得がいかないのか怒気を含んだ言い方になっている。


「それじゃよ、確かに謎のモンスターについては聞いていたが、自警団からは危険がないと聞いていたからのう」

「はぁ?危険がないだと、ふざけるのもいい加減してくれよ。こっちは何も知らず、へたすれば全滅するとこだったんだぞ!」

「あんな危険なモンスターなら、通常依頼じゃなく合同依頼で討伐隊を編成するべきでしょ!」

「でも、あんた達は帰ってきたじゃないか。その、猿モンスターを倒せたのだろう?だったら、通常依頼でも問題なかったのではないのか?」


あきれたギルドマスターだ。結局ギルド内部には、こんな奴しかいないのか。


「ちっ、あんたと話していても拉致があかねぇ。腐った組織は所詮何しても腐ってんだな」

「そうですね、僕もこんなギルドに所属しているのが恥ずかしくて嫌になります」

「どうして、私達の話をちゃんと聞いてくれないの?これで被害が出てたら、ギルドの信用問題よ?」


三人とも、苛立ちを隠しきれず益々言葉が強くなっていく。

結局、何を話しても我関せずを貫くギルドマスターにあきれ果て、これ以上は無駄だとギルドを後にした。

実際に、何も知らないのかもしれないが、そうだとしてもあまりにも対応が酷すぎる。

次に向かうのは自警団の詰め所だ。


「さて、悪いが今回はカードを使わせてもらう」


オルトガ師匠がそう言って、ディベルからガナンドカードを受け取っていた。

できれば、あまり使いたくないが、今回はガナンドさんの威光を借りよう。


「多分、今回の話を掛け合っても自警団の団長には会わせてもらえない可能性がある」

「そうですね、もし自警団にやましいことがあれば接触を拒んでくるでしょうから。でも、そのカードでどうするんです?」

「やっぱり、ツェイスさんでもガナンドカードは見たことないのか」


まぁ、このカードがあればこの街、いやこの大陸で殆どの無理が通る魔法のカードなんだけどね。


「ガナンドカードって、あの幻のガナンド商会の優待カードですか!?」


一応名前は知っているみたいだ。隣でサナエさんは首をかしげているが。

詳しいことは後で話すとして、とにかく自警団を問い詰めよう。

オルトガ師匠は、すでに自警団の詰め所に向かって歩き出していた。



「悪いが、自警団の団長に会わせてくれ」


オルトガ師匠が、門番にいきなりそう言ってガナンドカードをちらつかせる。


「ただいま確認いたしますので、少々お待ちください」


そういって、門番の一人が慌てて建物の中に駆けていく。

さすがに、自警団はガナンドカードがどんなものか分かっているみたいだ。

この大陸でガナンド商会は敵に回せないからねぇ。

すぐに戻ってきた門番に連れられて建物の中を案内された。


「ようこそ、メルオル自警団へ。私が、団長のガイエンだ」


そういって、自警団団長が自己紹介する。

そこそこの年齢っぽいな、オルトガ師匠より少し歳が上か?


「たしか君達は、あの件を解決してくれた冒険者だったな、あの時のことは感謝しているよ。先ほど、門番からガナンドカードを持っている冒険者が会いたいと聞いたものでな、多分そうだろうと思っていたよ」


団長は俺達が何者か知っているみたいだな。

だが、今回の依頼のことは、まだ耳には入ってないみたいだ。


「我々自警団も、ガナンド氏とガナンド商会にはお世話になっているからな。先日の件もあるし色々と話してみたかったのだよ」


そう言って、ガイエン団長はお茶の用意をはじめた。


「そんなことはどうでもいい、俺達が聞きたいのはこれのことだ」


オルトガ師匠は、そう言うと同時にギルドに貼ってあった依頼書を机に叩きつけた。


「ふむ、これは自警団から出したギルドの依頼書だな。これがなにか?」


ガイエン団長は、何か問題でもといった感じにこちらを見ている。

ただ、平静を装っているのか、とぼけているのか今の表情からは読み取れない。


「こいつは、俺達が受けたものだが、この謎のモンスターもついて聞きたいことがある」

「あぁ、これは最近現れた亜種ではないかと思われるモンスターですね。自警団が遠征先で遭遇したと報告を受けたのですが、なかなか調査に派遣できないのでギルドに頼んだものです」


ガイエン団長は、謎のモンスターについて色々話してくれた。

どうやら、見たことないモンスターが度々報告されるので依頼したらしい。

強さも、たいして強くないらしい。


「だが、俺達が戦ったのは巨大な猿モンスターだ、ただの亜種なんてもんでもない。あんな化物、一介の冒険者や自警団が倒せるもんじゃないぞ」

「猿のモンスター?報告にあったのは犬や虫のモンスターだったのだが」


そういって、ガイエン団長は考え込んでしまった。


「もしかすると、それは今回の依頼とは別件かもしれない」

「別件だぁ?今更そんなこと言っても、俺等はこの依頼を受けて死にそうになってんだぞ!たまたま倒せることが出来たが、下位の冒険者も受けられるような依頼じゃ、へたしたら犠牲者が出ていたかもしれない」


ガイエン団長の言葉に、オルトガ師匠が怒鳴る。


「今回のことは、確かにこちらの不手際なので、あなた達に謝罪しないといけないですね」


そういうと、ガイエン団長は深くおじぎをして謝罪してきた。


「本当にすまなかった。今回のことを肝に銘じ、自警団の体制を見直すことにしよう」


どうやら、謎のモンスターと言うのはモンスターの亜種で、それの調査依頼だったことは本当らしいな。

なら、俺達の戦った猿モンスターはいったいなんだったのだろうか?


「とにかく、今回のことを反省してギルドの方にも注意喚起しておこう。それと、できれば猿モンスターのことを詳しく教えてほしい、似たようなことが起きてないか、各町の自警団に連絡しておきたい」


ガイエン団長がそう言って情報提供を申し込んできた。


「本当に何も知らないんだな。なら、これ以上自警団に文句を言ってもしかたないな」


オルトガ師匠も、溜飲が下がったのか言葉に怒気がなくなった。

とりあえず、今回の調査の結果とまとめて猿モンスターのことについて話した。


「なるほど、そんなことになっていたのですね」


話を聞いて、ガイエン団長の顔が険しくなった。


「これから話すことは、機密事項なのだが、あなた達も係わってしまったかもしれないので話しておこう」

「おいおい、機密事項だなんて厄介事が増えるじゃねぇか」


ガイエン団長の言葉に、オルトガ師匠が面倒くさそうに答える。

俺も、出来れば巻き込まれたくないのだが。


「あまり言いたくはなかったが、この大陸には秘密結社なるものが存在しているのだよ」


あぁ、とんでもないことを言いはじめた。

秘密結社?マジで?

昔よく見た特撮ヒーローもので、怪人を使って悪いことする組織でしょ?


「秘密結社だぁ?なんだそりゃ?」


オルトガ師匠も、胡散臭そうと思ったのかドスの利いた声で聞き返している。


「秘密結社ですか・・・。まさか、ゴルデアバースでは?」


ツェイスさんは、何か知っているようだ。

なんで、自警団が機密事項にしているようなことを知っているのかなぁ?


「ふむ、あなたはゴルデアバースを知っているのだな」

「えぇ、ほんの噂程度ですが」

「ねぇねぇ、ゴルデアバースって何?」


サナエさんは、二人の話はそっちのけで俺に聞いてきた。


「残念ながら、俺は知らないです」


この大陸だって来たばかりだし。

ツェイスさんは、こちらのことは気にせずガイエン団長の問いに答えていた。


「本当に噂でしかないのですが、色々非合法なことをして大陸に混乱をもたらそうとしている犯罪組織。組織の構成や、その構成員の存在、組織の拠点、様々なものが不明の闇の組織との噂だ」

「そう、それがゴルデアバースだ」


つまり何も分かってないが、組織は存在してるのか。

なんだか、本当に胡散臭いなぁ。


「なんだそりゃ、何にも分かんないのに存在してるなんて言えるのかよ」

「そうよね、そのなんとかバースってのがあるのなら、何か証拠でもあるの?」


オルトガ師匠も、サナエさんも信じてなさそうだ。


「この街では、いまだゴルデアバースによる被害はないが、他の街では色々不可解な事件や犯罪が起こっていると、自警団から連絡が来ている。しかも、その殆どが未解決のままだ」


なんだか凄いことになってるなぁ。

実際に被害をこうむってないから何とも言えないが。


「そう、そこで今回あなた達が遭遇した猿モンスターだ。いままで、そんなモンスター聞いたことないし、さらに異常な再生能力とくれば」

「ゴルデアバースの仕業なのかもしれないですね」

「そんなの本当にあるのか?」


ガイエン団長とツェイスさんは、神妙な面持ちになっている。

オルトガ師匠も、いぶかしげな顔をしているが心配になっているみたいだ。

秘密組織が作った化物モンスターか・・・。

あながち間違ってないのかも。

ディベルも、あの猿モンスターから普通とは違う変な力を感じると言っていたし。

もし、あの黒い宝石が化物に変えてしまう物だとしたら。


「ちょっと、これを見ていただけますか」


そういって、俺は猿モンスターの心臓から取り出した黒い宝石を取り出した。


「これは?」

「猿モンスターのとどめを刺すときに心臓から出てきたものです。モンスターから取り出す前は割れてなく輝いていましたが、触れたとたんにひび割れてしまいました」


そう言って、ガイエン団長に黒い宝石を渡す。

ガイエン団長が、黒い宝石を手にとって見るが、やはり見たこともなく何なのかも分からないそうだ。

やはり後で、ディベルにも見てもらおう。


「とにかく、モンスターの中にあったというなら、人工的に作られたものなのかもしれない。もし、これが本当にゴルデアバースの仕業なら大変なことになるな」


とにかく、このことは内密にとガイエン団長が釘を刺す。


「他の自警団からも色々と情報を集めてみるが、間違ってもゴルデアバースらしき件には単独で首を突っ込まないように」


そう言われたが、もう遅いと思う。

すでに、ゴルデアバースという名が出てきた時点でまずいと思っていた。

たぶん、ディベルのぽんこつは発動してるはずだ。

これから面倒くさいことに巻き込まれるのは決定事項だろう。


ずっと寝ている、ぽんこつ女神の頭を撫でながらこれからのことを憂いていた。

次は、すこし外伝的なものを挟みたいと思います。

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