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巨大モンスターなのです!

毎回読んでいただき、ありがとうございます。

ブクマしてくれた方、ありがとうございます。

評価していただき、ありがとうございます。

ここが、遺跡か。

目の前に広がる、かつて大都市があったと言われる場所。


「遥か昔、この大陸が王政国家だった時に、王都だったと言われている所です」

「他にも、小さな遺跡があちこちにあるのよ」


ツェイスさんと、サナエさんが遺跡について教えてくれた。

そう聞くと、今いる場所が元が城下町の一角だと分かる。


「ふへぇ、ここに街があったのです?」

「プヒーッ」


ディベルとアレキサンダーが、崩壊した建物の跡らしき所を、覗き込んだりしている。


「しかし、なんか変じゃねぇか?」

「オルトガさんも、気がつきましたか」

「あぁ、モンスターどころか、動物の気配もねぇな」


確かに、ここに来てからステッペンドッグはともかく、鳥の一匹も見かけなかった。


「やっぱり、何かいるな。だが、そいつの気配はここにはない」

「まだ、縄張りに入ってないのでしょうか?」

「どうする?王宮跡の辺りまで行ってみる?」


サナエさんが、そう提案してきた。


「そうだな、調査しながら奥まで進んでみるか」


オルトガ師匠も慎重になるくらい、この遺跡の雰囲気はおかしい。

俺も、出来るだけ周りに気を配りながら歩く。


「ここは、命の気配がないのです」

「プヒーッ」


ディベルが、意味深げな言葉を零す。

ぽんこつ女神でも、女神の能力は健在なのだろう。


城下町であったであろう場所を、隈なく調査する。

建物の残骸が多いが、さほど邪魔ではなく、簡単に調査が進む。

一刻ほどで、街であった場所の調査は終わった。


「何も無いし、何もいないな」

「幾つか動物の糞を見つけましたが、乾燥していてかなり古いものみたいです」


ただ、明らかに壊したばかりのような残骸もある。

何かが、ここに何かいることは確かだ。

とにかく、王宮跡の方に調査を移すことになった。


「明らかに、街の方と雰囲気が違いますね」

「あぁ、所々にモンスターらしきモノの真新しい残骸がある。それに、これを見ろ」


オルトガ師匠が指差す先に、抉られたような痕がある。


「なにこれ!?まるで、大きな爪で引っ掻いたみたい」

「凄いのです、サクジロウでも、たまらないのです」


サナエさんが驚いてる横で、ディベルが不穏なことを言う。

さらに、よく見るとあちこちに虫モンスターの残骸らしきモノが沢山落ちている。


「どうやら、当たりらしいな。虫モンスターだけを食い荒らしてたのか」

「偏食なモンスターなんですね」


オルトガ師匠の言葉に、サナエさんがズレた返答をする。

さらに奥に進むが、あるのはおかしな抉れた痕と虫モンスターの残骸だ。


「それでも、何にも気配が無いのが不気味だな」


オルトガ師匠が、そんなこと言って王宮跡の中央部に入っていくと。

突如、得体の知れない気配が生まれた。


「オルトガさんっ!」

「何、この気持ち悪い感じ」

「さがれっ!この奥に何かいるぞっ!」


爆発音と共に、建物だったものが吹き飛んだ。

多分、大聖堂みたいな場所だったのだろう、大きな空間が広がっている。


「なんですかあれ?」

「あんなモンスター、見たことないよ」


土煙の中から、大きな影が現れる。

大きさは、5mを超えている。

その姿は、まるで巨大な猿のようだ。


「大きいのです」

「プヒーッ」


ぽんこつ女神は、呑気すぎるだろ。

とにかく、ここを離れないと!


巨大な猿のモンスターは、雄叫びのような声を上げ、丸太のような腕を叩きつけた。石で出来ている遺跡の残骸を簡単に破壊する。


「オルトガさん、どうします?」

「逃げられるなら、それでもいいが無理そうだな」

「あんなのと戦えるの!?」


確かに、逃げられるなら逃げたいが、この遺跡と草原には隠れるところもない。あの、猿モンスターが追いかけてきたら、体力がなくなったところを襲われてお終いだ。


「とにかく、態勢を立て直せるところまで逃げろ、街の開けた場所まで走れ!」


全員が、それぞれ一気に走り出し王宮跡を抜け出す。


「サナエ、大丈夫かっ!」

「私は、大丈夫!でも、ディベルちゃんとアレキサンダーちゃんが見当たらないのっ!?」

「たぶん、違う方向に逃げたんだ!こっちに猿モンスターが追っかけてきたから、サクジロウの方は大丈夫だろう」



俺は、ディベルを抱え上げ、オルトガ師匠達とは違う道から逃げていた。

アレキサンダーは、器用に瓦礫を避けながら駆けている。

見ると、巨大な猿は向こうを追っているようだ。

正直助かった、ディベルを抱えたまま振り切れるとは思えなかったから。

ただ、オルトガ師匠達と猿モンスターの距離が近い。


「ディベルっ!ここから、あの猿に向かって魔法を放つんだ!」

「わかったのです」


抱きかかえられながら、ディベルが杖をかざすと、青白い光の球が幾つも作り出された。


「くらえなのですっ!」


そう言って、光の球から幾重にも連なって、光の筋が巨大な猿に向かって伸びていく!

幾つもの光の筋が、猿モンスターに命中するが、貫通することなく破裂する。

だが、猿モンスターの動きが鈍くなった。

よし、これでオルトガ師匠達が、逃げるのに時間が稼げる。


「ディベル!もう一度だっ!」

「はいなのですっ!」


再び、幾つもの光の筋が、猿モンスターに命中する。

すると、こちらの睨み目標を変えてきた。



「あれは、ディベルちゃんの魔法!?」


猿モンスターとの、距離が縮まってきたところに、光の筋が打ち込まれた。


「ナイスだ嬢ちゃん!」

「猿モンスターの意識が逸れたようですね」

「このまま、広場まで駆けろっ!そこで合流して迎え撃つ!」


あと少しで広場に着く、距離からしてサクジロウ達の方が先に着くだろう。

猿モンスターとは、かなり距離が離れた。

上手くすれば、挟撃できるな。



来た来た来た、猿モンスターが追いかけて来た。

多分、このままなら俺達が先に広場に着くだろう。


「サクジロウ、広場なのです!」

「プヒーッ」


よし、先に着いた!


「ディベル、空に向かって魔法を一発放て!オルトガ師匠達に、俺たちが広場に着いた合図をするんだ」

「まかせろなのです!」


多分、あの状況ならオルトガ師匠は挟撃が出来ることも想定しているはず。

ならば、合図を送れば俺が挟撃の準備することに、気付いてくれるはず。


ディベルが魔法を放ったところで、丁度広場に着いた。

ディベルを降ろし、戦闘態勢をとる。


大きな音を立てて、猿モンスターが現れた。

さて、オルトガ師匠達が到着するまで、こいつに少しでもダメージを与えておくかな!


「わたくしのチカラ、存分に味あわせてやるのです!」

「プヒーッ、プヒーッ!」


ディベルもアレキサンダーも、やる気満々だ。


巨大モンスター、パーティー戦闘、ファンタジーの醍醐味です。



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