特訓好きは二度笑うのです!
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夕飯も食べ終わり、各々くつろいでる所にサナエさんが質問してきた。
「そういえば、サクジロウ君達はどこから来たの?」
唐突な質問だった。
んー、なんて答えようか迷うな。
「わたくし達は、隣の大陸から来たのです」
「そうなんだ、隣というとアルドネス王国かな?」
「当たりなのです!」
ぽんこつ女神は普通に答えてしまった。
まぁ、いいか隠すようなことでもないし。
「こいつらと、修行の旅をしてるんだ。俺は、保護者みたいなもんだ」
「プヒーッ」
「アレキサンダーは、サクジロウのライバルなのです」
俺は、豚にライバルと認定されてるらしい。
どうりで、最近オルトガ師匠の特訓を、やたらとしたがるわけだ。
「なるほど、ギルドの仕事も修行の一環なのですね」
「何せ、実戦をしたことないからな。ゴブリン相手も飽きてきたし、あんたら二人がいて、本当に助かった」
「そうなると、ディベルちゃんとアレキサンダーちゃんの強さも気になるけど、オルトガさんの強さも気になるわね」
「少なくとも、俺らで勝てるどころか、一撃当てるのも難しいぞ」
いまだに、手合わせで攻撃を当てたこと無いことを話した。
それよりも、豚が強いのがムカつくことも話した。
「どうせなら、明日の朝手合わせしてみればいい、お互いの強さが分かれば連携もさらに良くなるだろう」
パワーファイターのエルフか、昼間のステッペンドッグとの戦いを見れば、その攻撃力は分かる。
明日を楽しみにしつつ、ゆっくり休むのだった。
次の日の朝、朝食前に軽く手合わせをしてみた。
「じゃあ、サクジロウ君、よろしくお願いするよ」
「えぇ、こちらもよろしくです、ツェイスさん」
「それでは、はじめっ!なのです」
ツェイスさんの武器は槍、リーチではおれの短剣の方が不利だ。
合図と共に、一気に距離を詰め木短剣で喉を狙う。
だが、ツェイスさんは予測していたかのように躱し、木槍の石突きを素早くかち上げた。
ツェイスさんは勢いを殺すことなく、回転力を攻撃に変え自由自在に扱う。
木槍が生き物のような動きを見せ、ツェイスさんの懐に入ることが出来ない。
距離を取り、様子を見る。
じりじりと、少しずつ距離を縮めるが、攻撃範囲に入ると木槍が襲ってくる。
「なるほど、鉄壁の守りか」
だが、待っているだけでは埒が明かない。
ツェイスさんの周りを動きながら、隙を探す。
少しでも攻撃範囲に入ると、木槍が反応してくる。
「無駄だよ、この護の槍は簡単には突破できないよ」
ならば、ツェイスの反応より速く、懐に飛び込む!
木槍の切っ先がこちらに向かう、さらに速く踏み込む、目の前に木槍が伸びてくる。
木槍の軌跡を予測して、ギリギリで躱し、擦れ違いざまに木短剣を滑らせる。
ツェイスさんは、体を捻り躱すが、間に合わず肩に攻撃がかすめた。
「くはっ、凄いなサクジロウ君は、正面から突破されたのは初めてだよ」
「ツェイスさんも、凄いですよ。それでも、急所を狙うことが出来なかった」
最後に、ツェイスさんは体を捻り、躱す動作と同時に槍を横に振り抜き、俺の体に槍を打ち付け軌道を反らせた。
「いやはや、こんなに速く動くことが出来るし、高速の突きを正面から躱すなんて、オルトガさんはどんな特訓をしているのか、興味出てきました」
なら、受けてみればいい、最初は裸足で逃げ出したくなるぞ。
「今度、頼んでみようかな」
そんなことを話していると、向こうでディベルとサナエさんの声が聞こえる。
「くらえ、なのです!」
ディベルが、掲げた杖の周りに青白い光が集まり、光の球を作り出す。
複数の光の球から、幾つもの光の筋が伸びてサナエさんを襲う。
「いやーーーーーーっ」
サナエさんが、逃げながら矢を放つ。
真ん中あたりに、見た事のある人形がいた。
「ほらほら、ちゃんと的を狙わんと当たらねぇぞ」
「いやーっ、無理だって〜」
ディベルの魔法を躱しながら、弓を引く特訓か。
光の筋も、数は少ないし、追尾もしてないな。
「どんな状況でも、攻撃できねぇと生き残れんぞ」
オルトガ師匠は、木刀を持ってサナエさんを追いかけている。
見方を変えれば、ヤバい光景だ。
「君達は、いつもあんな特訓をしているのかい?」
「そうですね、オルトガ師匠が攻撃していない分、楽な方だと思いますよ」
「ますます、興味が出てきたよ」
そういえば、ツェイスさんは、トレーニングが好きだって言ってたな。
なら、まずはアレキサンダーと戦ってみればと言った。
「なるほど、サクジロウ君と同じくらい強いんだったね」
本当に、いい笑顔だなぁ。
ツェイスさんは、アレキサンダーの所に行って交渉を始めた。
というか、なんでツェイスさんは豚と会話が出来るんだ?もしかしてエルフだからだろうか?
あっ、本当に始めた。
アレキサンダーも、特訓好きだから気が合うのだろう。
手持ち無沙汰になってしまったので、昼飯の準備でもするか。
そんなことを考えながら、魔法を放つディベルの邪魔にならないように、袖からキャンプ用品を出した。
特訓が終了したのか、四人と一匹が戻ってきた。二人は、ボロボロになって息が上がっていた。
「おっ、サクジロウ、いないと思ったら飯作ってたのか」
「そりゃ、特訓の相手がいなくなったから、することなかったんですよ」
「今度は、サクジロウと特訓するのです!」
やる気があるのはいいが、午後は移動しながらモンスターの調査だ。
「ね、ねぇ、サクジロウ君も、あんな過激な特訓をしてるの?」
「まぁ、修行の旅ですからね。今回は、オルトガ師匠が攻撃しないだけマシでしたよ。」
サナエさんの質問に答えると、「マジかっ!?」とか叫んでツェイスさんと何やら話し合いを始めた。
まぁ、ツェイスさんもアレキサンダーの強さにかなり驚いていたようで、お互いに何をしていたのか聞いてげっそりしていた。
そんな感じに、ワイワイと特訓の事について話しながら、昼飯を平らげるのであった。
「さて、それじゃ調査に行くとするか」
オルトガ師匠が、そう言って立ち上がる。
そろそろ、腹もこなれてきたので、移動を始める。
「あいかわらず、ステッペンドッグしかいませんね」
「遺跡に近づいてるのに、これだけモンスターが少ないと、謎のモンスターってのが気になるわね」
モンスターの生態系が、著しく崩れてるのか?
ますます、この仕事の面倒さが見えてきたぞ。
「この時期なら、虫型のモンスターも増えているはずだけど。いまだに一匹も遭遇してない、おかしすぎますね」
ツェイスさんが、難しそうな顔をしている。
「とりあえず、遺跡まで行ってみるぞ。原因が、その謎のモンスターなら、調査して報告しないと後で面倒になりかねん」
「自警団は、何か掴んでいるんでしょうか?」
「あいつらは、街の中でしか働かないし、外の事気にするのかな?」
謎のモンスターについて、自警団は何か知っているのだろうか?
ただ単に、面倒ごとをギルドに押し付けたのではないだろうか?
あの、ガナンドさんが優秀と言っていたくらいだ。
だからこそ、リスクヘッジを分かっていると思う。
危険が及ぶなら、金で解決か。
それでも、依頼に出てたのは新しく来たギルドマスターも承知の上でなんだろうな。
「サクジロウ、怖い顔になってるのです」
ディベルが、覗き込むように俺を見ていた。
どうも、考え事してると顔に出てしまうようだ。
「おトイレなら、我慢しない方がいいのです」
うむ、ぽんこつ女神は健在だ。
ディベルに手刀をくれながら、遺跡に向かって進んでいく。
ツェイスとアレキサンダーは、鍛えるのが好きです。
サナエは、前衛弓を世に広めるのです。




