異世界ヴィルガレストなのです!
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あれから、どのくらい歩いたのか、少し日が傾き始め頃に小さな村を見つけた。
「おっ、あそこに建物が見えるぞ、村があるみたいだな」
「本当なのです?サクジロウ」
「なんとか暗くなる前に、安全を確保できそうだな」
さすがに、何もない所で夜を迎えるのは勘弁だった。
まず、野営なんて出来ないし、道具もない。
ましてや、異世界の夜にモンスターに襲われたりしたら、生き残る自信はない。
途中から疲れたのか、黙り状態だったディベルも、少し元気が戻ったみたいだ。
ようやく辿り着いたのは、小さな村だった。
家の数も多くなく、こじんまりとしたのどかな感じだ。
「あまり大きい村じゃないけど、宿はあるのかな?」
「うぅ、早く休みたいのです」
ぽんこつ女神が、愚痴りはじめた。
とりあえず、近くの畑で作業してる人に声をかけようとしたが躊躇した。
「まてよ、言葉って通じるのか?異世界の言葉なんて、分からないぞ」
そうだ、この世界に来てから話してるのはディベルだけ。もし言葉が通じなくて、不審者と思われたら厄介だ。
もしもの時は、ジェスチャーとかで頑張ってみるしかないな。
そんなことを考えていると・・・。
「こんにちは!この村には、宿屋はあるのです?」
チョットマテーイ!
ディベルの奴、いきなり声掛けやがった。
いつものように、ニコニコ笑顔で話しかけてるよ。
「歩き疲れて、もうヘトヘトなのです」
その何も考えることなく、行動に移せるお前は凄いよ。
少しは、俺の苦労もわかってほしい。
「こんにちはお嬢さん、宿ってわけじゃないが酒場の2階の部屋が泊まれるよ」
「ありがとうなのです」
普通に話してるね。俺にも、おじさんが何言ってるか理解できてるよ。なんか無駄に疲れた。
「こんな辺鄙な村に来るなんて、旅人かい?ここいらは何にもないのに珍しいね」
「こんにちは、連れが突然失礼しました」
「なんだ、お嬢さんはお兄さんの連れだったのかい」
ディベルの相手してくれたことに、お礼を言い話を聞いてみる。
おじさんは、丁寧に宿のことを教えてくれて、わざわざ酒場まで案内してくれた。
「いらっしゃい」
酒場に入ると、弾けるような声で挨拶してくれた女性と、数人のお客さんがいた。
思ってたより広い店内で、料理の美味しそうな匂が漂ってる。
「すいません、部屋を借りたいのですが大丈夫ですか?」
「旅人さんかい、簡単なベットで寝るくらいしか出来ないけど、それでいいなら銅貨五枚でいいよ」
よかった、ベットで寝ることができるんだ。
いや、まてよ銅貨なんて持ってないぞ!?
というか、この世界の通貨も分からないし、持ってもいない。
「おい、ディベル。お前この世界の通貨持ってるか?」
迂闊だった、このぽんこつ女神から何の説明も受けてなかったことを、村に着いた安心感からすっかり忘れてた。
すると、ディベルは袖をゴソゴソと探って、皮袋を出してきた。
「大丈夫です、ちゃんとお金持ってるのです!」
「さすが、女神エインディベル様」
「もちろんなのです!ぽんこつ女神とは、言わせないです!」
とりあえず、ぽんこつ女神のご機嫌をとっておく。
ディベルから皮袋を受け取り、中身を出して確認してみる。
金銀銅と、様々なコインが入っていた。
「これで、大丈夫ですか?」
とりあえず、カウンターにいる女性に聞いてみる。
「あぁ、確かに銅貨五枚だね」
「よかったぁ、さすがにここまで来て無一文とかしんど過ぎるわ」
「何か大変そうだね、大丈夫かい?」
「ありがとうございます、お姉さん」
「お姉さんだなんて嬉しいねぇ。部屋にはちゃんとベットは二つあるから、ゆっくり休みな」
とにかく、一度部屋に行って休もう。
それからご飯かな?ずっと歩き通しで、お腹も減ってる。
部屋の場所を聞き、鍵を貰い二階に上がる。
まずは、ディベルにこの世界『ヴィルガレスト』の説明をしてもらわなければ。
さすがに、自分で転生させた世界だし大丈夫だよな。
「おい、ディベル。とりあえずこの世界のこと説明してくれよ。さすがに、何も知らずこの先進むには、不安でしょうがない」
「仕方ないですね、特別なのです」
胸を張って、踏ん反り返るディベル見て違和感を覚える。
ん?なんか色々足りなくないか?
「今まで、ドタバタしていたから気にならなかったけど。お前、最初に会った時と姿が、その胸とか尻とか足りなくないか?」
「ほへっ?」
アホ面で、間の抜けた返事を返してくるディベル。
セクハラ気味に聞いているが、よく見ると背も低くなってるし肉付きも薄い。見た目は150cmくらいか?胸も尻も、小さくなってるのがよく分かる。
「わたくしの、姿のことですか?そうですね、簡単に言えばこの世界に顕現する為に、最適化したのです」
顕現?最適化?
「一応女神なので、無駄な力を行使しないように、制限がかかってるのです」
本当なのか?そんなに強い力を、このぽんこつ女神が持っていると思えない。
「女神の力は、強すぎて危険なのです」
それなら、俺を転生させる時、何かしら特別な力授けてもいいだろう。泣きたくなってきた。
「しかし、ずいぶんと子供っぽくなったな」
「サクジロウは、グラマーなわたくしがよかったのです?」
正直に言うと、そうだ。巨乳が好きなので、元の姿の方が好みなのだ。姿が好きなのであって、断じてディベルが好きなわけではないぞ。
「話が脱線してしまったな。とりあえず、ヴィルガレストのことを教えてくれ」
「むふふふふっ、恥ずかしがらなくてもいいのです」
ディベルが、煽ってくるが無視だ。
とにかく話を戻そう。
ディベルは、袖から大きめの分厚い本を出しペラペラとページを捲っている。あの大きさの物が、どうやって入っていたんだ?
よく見たら、あっちの世界の女神エインディベルが持ってた本に似ている。
(・・・)
(・・・・・・)
(・・・・・・・・・)
なるほど、ディベルの話を聞いてある程度は理解できた。
この、異世界ヴィルガレストは、四つの大陸から出来ており、各大陸を統制してる組織があるってことだ。
それは、王政が必ず最高権力というわけでもないらしい。
俺たちがいる大陸は、東に位置していてアルドネス王国が統治しており、国王が最高権力者だ。
モンスターも、それほど凶暴でなく北の山岳地方に行かなければ安全らしい。
今いる村は最東端で、西に進み中央に行けば王都があるとのことだ。
通貨は全大陸共通で、金貨、銀貨、銅貨が流通している。
銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚になるそうだ。
時間の概念は、一刻が二時間、半刻で一時間、四半刻で三十分、それ以下の細かい時間の認識は適当らしい。
文化水準は、西洋の中世時代や日本の江戸時代みたいな感じか?科学なんてものはなく、魔法と錬金術が発展してるらしい。
「こんな感じなのです、前にも言ったけど文化水準は、サクジロウの世界よりかなり低いのです」
「魔法とか錬金術は、見てないからよく分からんが、身を守る用意はしなければ危なそうだな」
少なからずモンスターがいるのだから、戦える装備が必要だ。旅をするなら、キャンプ道具も揃えないとまずいか。
「ところで、ディベルはどうするんだ?俺に異世界の説明もしたから帰るのか?」
「ほへっ?帰らないのです、サクジロウと一緒なのです」
アホっぽい返事を返すディベル。
はっ?こいつ、俺について来るつもりなのか?
説明だけに来たんじゃないのか?
「本当は帰るつもりだったのですが、サクジロウと一緒の方が楽しそうなのです。だから旅について行くのです」
ぽんこつ女神がついて来るのか、不安しか感じないぞ。
「サクジロウが迷わないように、この女神エインディベルが導いてあげるのです!」
再び、ない胸を張って踏ん反り返るぽんこつ女神。
「仕方ない、一緒に連れて行ってやる。途中で帰りたいとか駄々こねるんじゃねぇぞ」
「大丈夫なのです、サクジロウこそ泣き言言わないようになのです」
それなら、まずは食事だ。腹減ってしょうがない。
体力回復したら旅の準備だ。
この、異世界ヴィルガレストを隈なく制覇してやるぜ。
待ってろよ、まだ見ぬ神秘の世界よ!
これから旅の準備です
しかし、サクジロウはオマケです
ポンコツ女神様エインディベルの珍道中なのです