パーティーを組んだのです!
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さて、ギルドも再開して数日経って、今日も朝からロビーにいるのだが。
「ふむ、今日はどうするかな?」
「また、ゴブリンを倒すのです?」
「その依頼がないから困ってるんだよなぁ。他の冒険者に殆ど倒されちまったんだろう」
まぁ、俺達だけでも、かなりの数のゴブリンを殺しまくったからなぁ。
オルトガ師匠も、修行の一環として依頼を探しているから、採取の仕事とかは受けないはずだ。
「簡単な討伐がないな」
「そうなのです?」
「プヒーッ」
「さて、どうしたものか」
三人と一匹で、ダラダラと悩んでいた。
その頃、ギルドの掲示板で一組の冒険者が言い争っていた。
「ねぇ、コレなんかいいんじゃない?」
「それは、俺達だけでは無理がありすぎる」
「そんなこと言っても、他だって遠征しないと厳しい仕事よ」
「採取や雑用なら、たくさんあるんだがな」
「そういうのは、低ランク冒険者に残しておかないとダメよ」
「だよなぁ」
そんなやり取りをしている一組の男女。
それを見ていたオルトガ師匠が何か閃いたようだ。
「よし、今日はパーティー組んでみるか?」
「パーティーなのです?」
「そうだ、他の人と一緒に戦って協調性を学ぼう」
なるほど、俺にしてもディベルにしても単独での戦闘ばかりだ。
慣れているとはいえ、連携などとは程遠い。
他人と行動するには、その辺りに気を使わないと、最悪同士討ちしかねない危険がある。今回は、それを学ぼうということか。
ただ、その修行に他人を巻き込むと思うとなぁ。
オルトガ師匠が、掲示板の前にいる冒険者に声をかける。
「ちょっといいかい?お二人さんは、何か討伐依頼を受けるのかい?」
「はぁ、あなたは一体誰ですか?」
「俺は、オルトガっていうんだが、向こうに座っているパーティーの保護者みたいなもんだ。よかったら、パーティーを組んで依頼を受けないか?」
「なんか胡散臭いおっさんね」
ははっ、女性の方に胡散臭いなんて言われてる。
「なかなか、手厳しいお嬢さんだな」
「すみません、連れが失礼した」
「ししょーを侮辱したら、許さないのです」
「プヒーッ」
いつの間にかディベルがいた、アレキサンダーもだ。
「落ち着け、嬢ちゃん。こんなところで魔法ぶっ放そうとするな」
「プヒーッ」
「この子が、さっき言ってた仲間なんですね。魔導師ですか」
「ねぇねぇ、魔導師がいれば、さっきの依頼も受けられるんじゃない?」
「そうだな・・・」
女性の提案に、男性の方が悩んでいるようだ。
「よし、僕の名はツェイスといいます」
「私は、サナエよ!」
決まったようだ。
二人が自己紹介してきた。
「わたくしは、ディベルなのです」
「プヒーッ」
「この子は、アレキサンダーなのです」
ぽんこつ女神が、踏ん反り返りポーズで自己紹介し、豚が跳ねながら自己主張している。
ディベルに手刀をくれながら、俺も自己紹介した。
「サクジロウ君に、ディベルちゃんにアレキサンダーちゃんね!」
サナエさんが、楽しそうにアレキサンダーを撫でている。
悪い人ではないようだ。
「サクジロウ君、よろしく頼む」
ツェイスさんと、握手を交わし臨時パーティーを組んだ。
ツェイスさんが前衛で槍を使い、サナエさんが後衛の弓だそうだ。
「ところで、お二人さんはエルフなんだな」
「はい、そうです」
そういえば、気がつかなかった。よく見れば、耳が尖っている。
エルフと会うのは、前に宿泊した宿屋の受付嬢の人以来だ。
「正直、エルフ二人だと戦力不足に見られて困っていたんです」
「胡散臭いなんて言って、ごめんなさい。本当は誘われて助かったの」
「エルフは、速さを売りにしているのですが、やはり力を求められるとドワーフを選ばれてしまって」
なるほど、やはりパワーファイターはドワーフなんだな。
「正直に謝ってくれたから、もう気にはしないさ」
「ししょーは、器が大きいのです」
「プヒーッ」
「それで、依頼はどれを受けるんだ?」
オルトガ師匠は、たいして気にもしてない様子で依頼を聞いていた。
「簡単な討伐が無いので、山岳部のオーガ退治か、南のモンスター調査を受けようと思ってたのですが。どちらも長期の遠征になるので、二人だけでは危険で困ってました」
「なるほど、五人なら長期遠征でも大丈夫だろう。ゴブリンも慣れてきたし、色々なモンスターと戦うのもいいな」
「特訓の成果を見せてやるのです!」
遠征で討伐か、ディベルが張り切っている。
アルドネス王国では、街道は安全だし定期的に騎士団がモンスター討伐するから、少人数でキャンプでも安全だったんだよな。
「だったら、モンスター調査方がいいだろう。調査費が別に出るし、報酬が多い方がいいだろう?」
「そうですね、報酬が増える分には僕達も助かります」
「なら、決まりなのです!」
「プヒーッ」
モンスター調査の依頼を受付で確認し、調査内容と注意事項を聞いた。
「まぁ、とにかく南部の草原から遺跡跡にいるモンスターの種類と分布を調査、注意事項は最近遺跡に出る、謎のモンスターに注意することだそうだ」
「謎のモンスターですか、どうりで報酬が高いはずです」
「自警団からの依頼だしな、ちょいと面倒いかもな」
謎のモンスター調査がメインって事だな。
ツェイスさんが、報酬の高さに納得している。
「ししょーが、いるから大丈夫なのです」
「プヒーッ」
「当てにされても困る、お前らの修行だぞ」
依頼を受けたので、親睦を深める為に昼飯と、道具屋にキャンプの買い出し出しに行く事になった。
「ここって、ガナンド商会系列の高級店じゃ無いですか!?」
「ちょっと待ってよ、私こんなお店入った事無いわよ」
「あぁ、気にすんな。せっかく親睦を深めるのに、そこいらの酒場じゃマズいだろ。ここは、俺が奢るから大丈夫だ」
いつもの食堂で、昼飯を食べようとしたら、ツェイスさんとサナエさんが驚いていた。
でも、感覚が狂ってるのは俺達なんだろうなぁ。
よく見れば、奢るという言葉にサナエさんが目を輝かせていた。
料理が運ばれてくるなり、二人とも凄い勢いで食べている。
「うわーっ!こんなの食べた事無いよ!」
「凄い、肉ってこんなに柔らかいんだ」
二人の食いつきに、ディベルが対抗してた。
三人と一匹が、満腹になったところで道具屋に向かった。
俺達も、初めてガナンド商会の道具屋に来たが、確かにデカイな。
「大きい店なのです」
「プヒーッ」
「ここも、ガナンド商会系列ですね」
「実は、俺達も初めて来たんだ」
「上位ランクでも、凄腕の冒険者とか金持ちしか入れないお店じゃない」
そんな事を話しながら店に入ると、店員が出迎えてくれた。すげぇ。
「いらっしゃいませ」
ツェイスさんとサナエさんに見えないよう、ガナンドカードを店員に見せた。
それを見た店員が、かしこまりましたと、囁くように呟いてお辞儀をした。
「こんなところで、買い物できるの?」
「置いてある商品の値段が数桁違うのだが」
やはり、二人が驚いている。
確かに違うな、一桁どころか二桁三桁違うのもある。
ここは、どんな人が買いに来るんだ?今だって、俺達しか店の中に居ないぞ。
とりあえず、店員にキャンプ用品を幾つか見繕ってもらった。
人数増えたし、女性もいるから、テントは新しいものを二つ購入した。
代金を払い、いつものようにディベルの袖に収納する。
階層ごとに扱ってるものが違うのか、ツェイスさんとサナエさんが二階の武具を見に行っていた。
「たまには、俺も防具を見てみるかな?」
最初の村で買った革鎧、オルトガ師匠の厳しい修行を続けていたせいかかなりボロボロだ。ほとんどがディベルの魔法のせいだけど。
遠征に行くのだし、新しいものに変えておいた方が安全かもな、そう思いながら二階に足を運んだ。
「こいつは、なんて素晴らしい槍だ。そこいらの武器屋じゃ、なかなか手に入らないぞ」
「お客様、お目が高い。その槍は、有名鍛冶職人の作ったもので、バランスも良く手に馴染みやすく、素晴らしい物です」
ツェイスさんが、槍を見て興奮している。
店員の説明に、激しく頷いていた。
「この、ドレスアーマー凄く可愛い!」
「こちらの商品は、当社のデザイナーが手がけたもので、オーナーであるガナンド様がお気に召した事で、正式に採用されたばかりのドレスアーマーになります。性能もデザインも最高の物ですよ」
「ほし〜い!」
サナエさんが、淡い水色のドレスアーマーを、姿見で自分に当てがい、はしゃいでいた。
俺はというと、動きを重視したいので、ライトアーマーを探していた。
「結構、種類があるんだな」
「お客様、何かお眼鏡に叶うような物はございますか?」
「できれば、ライトアーマーで良いものがあれば欲しいのだけど」
店員にその事を伝えると、売り場に案内され商品の説明をしてもらった。
「なるほどねぇ、基本は革なんだね」
「はい、革と言っても、種類や加工方法で強度も軽さも変わってきます。また、内側に仕込む金属板の種類でも違うので、高性能でもお値段が抑える事もできますね」
それでも、値段を見ると驚く程だ。
ふと見た先で、ツェイスさんとサナエさんが、ガックリと頭を垂れていた。
「あぁ、無理だわ。性能は程々で、もっと安いのありませんか?」
ディベルの謎財布があるが、それでも高すぎる。
そう言って、その場を離れようとすると、店員が囁くように言った。
「ガナンド様から、お客様のことは承っております。今回は、色々とお詫びという事でお値引きさせて頂きます。とのことです」
ガナンドさん、そんなに気を使わなくてもいいのに。
そう思いつつも、値引きの額を聞いて驚いた。
さっきの、高性能なライトアーマーが半額以下になるってさ。
はっきり言おう、欲しい!
「ガナンドが、そう言ったならいいんじゃねぇか?」
オルトガ師匠が、新しい服とライトアーマー着けて現れた。
すでに、新装備を物色していたらしい。
向こうでも、飛び跳ねて喜んでる二人が見えた。
「今回は、特別にあの二人にも値引きしてもらった。まぁ、修行に付き合ってもらうんだしな」
なら、俺も買ってしまおう。
ディベルも、オシャレなドレスアーマーを、女神の衣に合わせてもらっていた。
あれ、女神の衣ってそこいらの防具は、足元にも及ばなかったのでは?
「可愛いのは、別なのです!」
ぽんこつ女神も、今時の女の子だったということか。
アレキサンダーも新しい首輪をしている。
知ってるぞ、それミスリルってヤツだろ?カッコいいな!
「いやぁ、まさか名匠の槍を手に入れることが出来るとは思いませんでした!」
「私も、こんな可愛いドレスアーマーを着れるなんて夢みたいよ!」
「オルトガさん、ありがとうございます」
「本当に、パーティー組めたのは神様のお導きね」
二人とも喜んでる。
ガナンドさまさまだな。
「さて、準備も出来たことだし、モンスターの調査に行くとするか」
「行くのです」
「プヒーッ」
「がんばりましょう」
「えいえいおーっ!」
こうして、パーティーを組んで、南の遺跡跡を目指すのであった。
エルフの二人とパーティー組みました。
臨時パーティーですが大丈夫だろうか?




