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はじめてのお仕事なのです!

読んでくれた方、いつもありがとうございます。

ブクマしてくれた方、ありがとうございます。

あれから、数日のんびりと街で過ごした。

メルオルギルド及び、ギルドマスターの不祥事が明るみなり、一時的にギルドが閉鎖されている。


「今日で三日か、そろそろギルドも処理が終わる頃か?」


ギルドの前を歩きながら、オルトガ師匠がそんなことを言った。

表向きは、業務拡張による人事采配の為の一時閉鎖となっている。

昨日まで、朝から晩までバタバタと何かしていたが、今日は静かだ。


「今日は、どんな特訓をするのです?」

「プヒーッ」

「また、魔法対手刀かな?港で浮島借りて、バランスも鍛えよう」


昨日の修行は、珍しく二人と一匹で特訓していた。

アレキサンダーが、思ったより手強く手こずってしまった。


「よかった、まだ修行始めてなかったのですね」


ガナンドさんが、港の入り口で待っていた。


「どうしたんだ、ガナンド?」

「いえ、今日から少し出掛けるので挨拶にと思ったので」

「ガナンドさん、どこか行くのです?」

「はい、一応他の店舗も視察しないといけないので」


なるほど、ガナンド商会の社長さんだもん、忙しいはずだよなぁ。

ギルドのことで、余計な時間とられたしね。


「それと、ギルドも今日の昼から業務再開するそうです」

「それじゃ、午前の特訓が終わったら行ってみるか」

「また、カード取られたりしないのです?」

「プヒーッ」


まぁ、大丈夫だろう。ギルドのお偉いさんと一緒に、新しく着任するギルドマスターが挨拶に来てたし。


「じゃあ、さっさと特訓はじめちまうか」

「はいなのです」

「プヒーッ」


そう言って、内湾の一角に向かった。

プカプカと揺れる浮島の上で、俺vsディベルとアレキサンダーで対峙した。

ディベルも、動きながら魔法を使えるようになり、アレキサンダーもフェイントや跳んで空中から突撃してくるようになっていた。


「上手く魔法を、当てられるようになったじゃないか嬢ちゃん」

「はい、サクジロウを追いかけながら、魔法が使えるのです!」

「アレキサンダーも、まさか跳ぶとは思わなかったわ」

「プヒーッ!」


褒められてる、ディベルとアレキサンダー。

俺だって、豚が跳ばなければ、遅れをとったりしなかったわ。


「さて、昼飯でも食べに行くか」

「それがいいのです」

「プヒプヒーッ」


ガナンドカードで、あれだけ面倒ごとになったで、普通に食堂で食べるようになった。

結局、ガナンドの食堂は、高級なものでなくても満足いく美味さだったので、ディベルも喜んでいたが。


「あっ、ギルドがやってるみたいなのです」

「冒険者が押し寄せてんな」


再びギルドに来てみると、人が溢れかえっていた。

そりゃあ、三日も閉鎖してたんだもんな。

さて、どんな依頼があるのかな?


「ふむ、結構討伐依頼があるな」


一応、俺達は上位ランクなので、難易度の高い依頼を受けられるが。


「お前、野生豚しか戦ったことないんだよな?」

「そうなのです、二人で倒したのです!」


そう、持っているダガーを使ったのも、その時だけなのだ。


「それなら、まずは下位の討伐依頼からだな。これなんか良いな、ゴブリン退治だ」

「ゴブリンなのです?」

「定期的な討伐依頼だ、討伐数は幾らでもいいらしい。初めての実戦には丁度いいだろう」

「わたくしのチカラを、思い知らせてやるのです!」

「この時期は、ゴブリンが活発になって悪さするからな、思う存分やっちまえ!」


そう言って、受付をして街の外へ出た。

ゴブリンがいるのは、森の奥か洞窟などだ、この街の南西に大きな森があるらしい。


「そこいらにいる、ゴブリンも倒しつつ住処を探そう」


半刻ほど歩いて、大きな森の入り口に着いた。

なんとなく気配を感じる、動物ではない気配だ。

森の中に足を踏み入れると、ひんやりとした空気が漂っている。


「ここは、すごく涼しいのです」

「プヒーッ」


暑さが苦手な、ディベルとアレキサンダーが喜んでいる。

すると、前の方から感じる気配が強くなってきた。

オルトガ師匠の、かくれんぼ特訓のおかげだ。

ゴブリンの気配というか、殺気がチリチリと肌に感じる。


「サクジロウ、なんかいっぱいいるのです」

「プヒーッ」


どうやら、ディベルとアレキサンダーも気配を感じるみたいだな。


「とりあえず、お前らで対処してみろ。危なそうなら手助けしてやる」


オルトガ師匠は、サポートに回ってくれるらしい。

そんな話をしていると、ゴブリンが数匹現れた。

あぁ、元の世界のゲームで見たのそっくりだ。

子供くらいの背に醜悪な顔をした、亜人と呼ばれる種族。

手には、小型のナイフや斧を持ち興奮した面持ちで、こちらを睨んでいる。



十人のゴブリンが現れた。


「俺から仕掛ける!」


バックラーの内側に仕込んであるダガーを抜き、一気に踏み込む!

一番手前のゴブリンの喉元を一刺し、返す刀で二人目の喉元を掻っ切る。

二人のゴブリンが血を吹き出し倒れた、それを見た他のゴブリンは何があったのか理解できずに棒立ちになっていた。


「まだまだぁーっ!」


叫び声と同時に息吹を使い、全身の筋肉を活性化させる!

三人目四人目と一撃で倒し、五人目を蹴りで首を刈り折る。


「わたくしも、いくのです!」


ディベルは、杖を掲げると周りに青白い光の玉が現れる。

五つの光の球から、輝く光の筋が幾つも伸びていく!

次々とゴブリンに命中する。

修行のときと違って威力を抑えていないので、光の筋がゴブリン達を貫通し、戻ってくる光の筋が惨たらしいほど何度も貫く。

特訓とはいえ、あんなものを受けていたのかと思い、俺はゾッとした。


戦いの音を聞きつけたのか、ゴブリンが五人現れた。

ところが、アレキサンダーが物凄い勢いで突撃をして、纏めてぶっ飛ばしてしまった。


「すげぇ」


俺は、思わず声に出していた。

その後も、ゴブリンを倒しつつ森の奥に進んだ。


「あそこが、ゴブリンの集落だな」


オルトガ師匠が、そう言って俺達を手で制した。

結構数がいるな、三十人くらいか。


「まずは、わたくしが先制攻撃ですの!」


分かってはいたが、いきなりぽんこつ女神が魔法をぶっ放した。

オルトガ師匠も、気にせず様子を見ている。


「サクジロウデストロイビューティフルガッデス美少女女神殺人光線MAXなのです!くらったヤツは、必ず死ぬのです!」


見たこともない数の光の球から、見たことないほどの光の筋が放たれる。

ぽんこつ女神が叫んだ言葉に疑問を感じる。ゴブリンに対してもデストロイされるのは、サクジロウなんですね。

あっという間に、集落を蹂躙する光の暴力。

残ったゴブリンは数人、すでにアレキサンダーが突撃をかましていた。

俺は、こちらに逃げてきたゴブリン一人を殴り殺す。


「あんまり、サクジロウの修行にならなかったな」


そう言って、顎をさすりながら笑っているオルトガ師匠。

一応、集落の場所を入念に調べ、残党がいないことを確認する。


「もういないのです」

「プヒーッ」

「んじゃ、さっさと帰るか」

「ここまで、ゴブリンを五十人ほど討伐したが、証拠ってどうするんだ?」

「ん?サクジロウ聞いてなかったのか?」


こいつに、討伐依頼の成果が記録されると、オルトガ師匠がギルドでもらった紀章を出した。


「そうなのです?」


ディベルも知らないらしい、あの分厚い本の知識はどうした?

あいかわらず、ぽんこつ女神は健在だ。

確かに、依頼を受けるとき、紀章を出してくれと言われたわ。


「今回は、パーティー登録してあるからまとめて合算されるはずだ」

「アレキサンダーの分は?」

「あぁ、もちろん登録してあるから大丈夫だ」


なぜか、アレキサンダーもギルドの紀章をもらっているのだ、豚なのに。

なびくマフラーに煌めく紀章が憎いぜ。

そんな感じで、帰りも何人かゴブリンを倒し街に帰還した。



「ゴブリン討伐お疲れ様です」


ギルドの職員にそう言われて、紀章を渡す。


「凄いですね、合計で七十二人もゴブリンを討伐したんですね」

「そうなのです!」


ディベルが、踏ん反り返りポーズを決めている。

今回は、ディベルが活躍したのは確かなので、手刀をくらわすのは控えた。


「今回の討伐報酬は、ゴブリン一人につき銅貨五枚ですので。銅貨で三百六十枚になります。両替はどうなさいますか?」

「そのままで、大丈夫なのです」


そう言って、ディベルが銅貨を受け取り、いつもの革袋に入れた。

銅貨をそんなに入れたら、嵩張るだろ?


「大丈夫なのです。この革袋に入れれば、いつでも好きなお金が、好きなだけ出せますから」


女神のとんでも財布は便利すぎるだろ。


こうして、俺達のはじめてのギルドの仕事と、はじめての実戦の特訓が終わったのだ。


問題なく、ギルドのお仕事です。

エルフやドワーフ出したいです。

パーティー組みたい。

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