レアアイテム、ガナンドカードなのです!
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じっとりと汗をかく日差しの中、俺達はキレスウェイン公国に着いた。
南に位置する大陸なだけあってかなり暑い。
到着したのは、キレスウェイン公国の玄関である港街メルオル。
「サクジロウ、暑いのです」
「プヒーッ」
ディベルとアレキサンダーが、今にも溶けそうな表情で訴え掛けてきた。
そんなこと言われても、俺にだってどうにもならん。
俺にとっては元の世界の夏に比べれば過ごしやすい気候なので、この程度の暑さなら逆に気持ちが良いくらいである。
「手続きは必要ないので、このまま港を出て街に行っても大丈夫ですよ」
「悪いなガナンド、何から何までやってもらって」
ガナンドさんが、荷卸しの準備から戻ってきてそう言ってくれた。
オルトガ師匠が、お礼を言って戻ってくる。
「とにかく、今日は宿を探してギルドを覗こうと思う」
「早く涼しいところに行きたいのです」
「プヒー」
ギルドかぁ、どんな所だろう?
やっぱり荒くれ者や、ならず者がいたり、色んな種族のパーティーとか組んで、ダンジョンとか行くのかな?
ワクワクが止まらない!
宿はガナンドさんの取引のある、大きな宿屋を紹介してもらうことになった。
かなり立派な宿屋だか、ガナンドさんの口利きで安くしてもらえるらしい。
中に入ると、大きなカウンターがある。
「メルオル・ユハイラドホテルへ、ようこそ」
「三人と一匹で、部屋を借りたいのですが」
「これはこれは、ガナンド様。ようこそ当ホテルへ!今日は、どうなさったのですかな?」
カウンターで、ガナンドさんが宿泊の手続きしてくれていると、髭を蓄えた恰幅のいい男性が声をかけてきた。
「ユハイラド様、お元気そうでなりよりです。今日は、私の友人がメルオルに滞在するので、宿泊の手続きをしていたのです」
「なんと、ガナンド様のご友人とな!ならば、特別なお部屋を用意いたしましょう!」
ユハイラドと呼ばれた人は、このホテルのオーナーらしい。
ガナンドさんの取引相手で、友人でもあるらしい。
そんなこんなで、いかにも特別な制服の女性が呼ばれ、部屋まで案内するという。なんと部屋専任の女給さんらしい。
「ほう、かなりいい部屋だな」
「前よりも大きな部屋なのです」
「プヒーッ」
案内され、部屋に入ってさらに驚く。
前の部屋の倍以上広く、調度品もありベッドはふかふかだ。大きな窓から、港越しの大海原が一望できる。
ここは、ただの冒険者が借りるような部屋ではない。
「ベッドが、ふかふかなのです!」
「すげぇな、ガナンドの奴こんな部屋を格安で借りてくれたのか」
二人は、ベッドの上でくつろいでいる。
こんな豪華な部屋が、前に借りてた宿屋の部屋と同じ料金とか。
本当に、ガナンドさんに足を向けて寝られないわ。
「どうですか、気に入っていただけました?」
そんなこと考えていると、ガナンドさんがノックをして入ってきた。
俺達は、とにかくお礼を言いまくった。
「私も、しばらくはキレスウェイン公国で仕事してますので、何かあったら連絡してください」
そう言って、この街にあるガナンドさんの店の場所を教えてくれた。
道具屋、武器屋、食堂まである。
さらに、不思議な紋章の入った小さな金属の板を貰った。
なんでも、ガナンド商会の優待カードで、信用のある人しか譲渡されない物らしい。
「大抵の店なら、このカードを見せれば融通が利くし、ガナンド商会の店なら優待扱いされますよ」
テレレレーッ!『ガナンドカード』を手に入れた!
この人、とんでもない物をくれたよ。
「本当か、じゃあ早速食堂で酒飲もうぜ!」
「わたくしも、料理がたくさん食べたいのです!」
「プヒーッ」
おいおい、これからギルドに行くんじゃなかったのか?
早めの昼ってことで、先に食堂に行くことになった。
食堂に行ったら、マジで優待扱いされました。
個室に案内されて、渡されたメニューに書いてあった料理の値段は、値段が一桁違っていたのだ。
もちろん、普通のメニューに変えてもらいました。
「あれだけ食べて、この値段とは恐れ入った」
「美味しかったのです」
「プヒーッ」
結局、二人と一匹が途中から高いメニューも選び出しヒヤヒヤしたが、店長らしき人の好意で、格安で高級料理を食べました。もちろん俺も。
ガナンドカード、マジパネェっす。
とにかく、食事に満足してギルドに向かうのであった。
街の中心部に程近い場所にギルドはあった。
俺達の泊まっている宿屋ほどではないが、そこそこ大きな建物だ。
「ここが、ギルドだな。俺もはじめてだから、どういうものか分からんのだが」
「ギルドって、何をする所なのです?」
「簡単に言えば、仕事を斡旋してくれる所だな」
そんな話をしながら、ギルドの中に入る。
かなり広いロビーに、たくさんの人がいた、みんな冒険者なのだろう。
奥の方にカウンターがあり、忙しなく職員が動いている。
人の少ない列に並び順番を待ってると、職員の呼び出しがあった。
「今日は、どのようなご用件ですか?」
「はじめてギルドに来たんだ、簡単に仕組みを教えてほしいんだが」
「はじめてのご利用ですね、かしこまりました。それでは、この書類に必要事項を記入してください」
三人とも、サラサラと記入していく。
まぁ、書くのは名前と現在住んでいる場所だ。
そのまま、職員から注意事項など聞いて、簡単に手続きが終わった。
「三人とも、ユハイラドホテルに滞在なさってるのですね」
「そうだか、何か問題でもあるのか?」
「すっごい綺麗な部屋なのです!」
「プヒーッ」
職員が書類を見て驚いている。そりゃそうか、ギルドをはじめて使う奴が、あんな高級な所に宿泊してたら不審にしか思わんな。
「本当ですか?何か証明できるものはお持ちですか?」
証明できるものと言われても、そんなもの持っているわけがない。
「これなのです!」
そう言って、ディベルがガナンドカードを見せた。
受け取った職員は、マジマジとガナンドカードを見ている。
「ま、まさか本物のガナンドカード!?」
職員は、お待ちくださいと言うと、慌てて奥に走っていった。
「ディベル様、サクジロウ様、オルトガ様、別室を用意しております。どうぞこちらへ」
奥から、女性の職員が現れ、別室に案内してくれた。
あぁ、いきなり面倒ごとになった。
ガナンドさん、貴方は本当に何者ですか?
ガナンドカードは、某ブラックカードと同等です。
俺も欲しいわぁ。




