まだ見ぬ新世界なのです!
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船の上で生活すること七日目。
隣の国に着くのは、今日中になると聞かされた。
「おらおら、しっかり立ってないと避けられんぞ」
そう言って、オルトガ師匠が木刀を振るう。
船首での特訓は、ただ立っているだけだった。
ただし、紙一重でオルトガ師匠が木刀を振るうので、少しでもよろけると直撃をくらうのだ。
「プヒーッ」
最近は、アレキサンダーも特訓をしているようで縄を体に綴りつけ、オルトガ師匠と一緒に俺に体当たりをしてくる。
肝心のぽんこつ女神ことディベルは、暇な時に厨房で料理を習っているらしい。
なんでも、港町と船で食べた魚料理が美味かったらしく、自分でも作りたくなったそうだ。
「今度は、俺の攻撃を短木刀で受け流せ。もちろん動かないでな」
次々と繰り出される木刀を受け流す。
俺は、主に短剣を使うので攻撃を受け止めず、受け流すか避けるかを重点に防衛術を磨いている。
しかし、揺れる船首の上で、動かずに攻撃を受け流すは難しい。
「よし、今日の特訓は終わりだ。ここ七日で随分良くなったじゃねぇか」
久しぶりに、オルトガ師匠から褒められた。
これがあると、特訓の成果が出てきたことになる。
「プヒーッ」
「おう、アレキサンダーは特訓続けるか?じゃあ、俺の剣を全部避けろよ」
アレキサンダーは、おねだりして特訓を続行するらしい。
しかも、オルトガ師匠の攻撃を避けるという、豚には高度な特訓だ。
「なんで、あの豚はオルトガ師匠の剣を躱せるんだ?どう見ても、俺の時より早い剣戟じゃねぇか」
悔しい、豚に嫉妬心が芽生える。
そんなことを考えながら、船から釣り糸を垂らす。
すっかり、釣りにはまってしまったのだ。
「おおっ、俺も釣りに参加させろよ。よしっ、アレキサンダー特訓の〆だ!」
そう言って対峙する、一人と一匹。
刹那の世界が垣間見えた。
「なかなかやるようになったな」
「プヒー」
なんか釈然としない。
そう思いながら、プカプカ浮いてるウキを眺めていた。
「そろそろ、お昼なのです」
ディベルが、そう言いながら甲板に上がってきた。
可愛らしいエプロンを身に付け、おたまを持っている。
ザ・幼馴染な格好だ。
「もうそんな時間か、どうりで腹が減るはずだ」
「プヒーッ」
今日のノルマの魚を釣り上げ、昼寝をしていたオルトガ師匠が起きた。
「おや、こんなところでお昼寝ですか?」
ガナンドさんも、甲板に上がってきていた。
「そろそろ、隣の国に着く頃ですよ」
「そんなことわかるんですか?」
「ええ、目印の島を確認したから、あと二刻もすれば港に着きますよ」
なるほど、航海術のことは分からないが、たぶん海路にはそういう目印とかがあって迷わないようになってるんだろう。
とうとう新しい大陸か。
また、ディベルに説明してもらうわないとな。
とにかく、今は昼飯を食べよう。
腹いっぱい昼飯を食べ、ディベルに説明をたのんだ。
オルトガ師匠とガナンドさんも、一緒にお茶しながら聞くらしい。
この二人は、俺達のことを詮索してこない。
だから言葉にはしないが、不自然に隠すのもやめた。
ディベルは、袖からいつもの大きな本を出し捲り始める。
「隣の国は、キレスウェイン公国ですね」
「そうなのです」
「あれだろ、自治体って言う小さな国みたいなのが幾つか集まってできてる国」
「当たりなのです」
「プヒーッ」
「そうなのです、王様が治めるのでなく、自治体から選出された人の中から大統領を決めてるのです」
オルトガ師匠や、ガナンドさんはともかく、豚が世界の情勢を知ってるのかよ!?
「でも、大統領が絶対の権力者でなく。自治体は各自の代表者がいて、何かある時はみんな集まって会議で決めるのです」
なるほど、いわゆる民主主義の国ということか。
前の国とは、随分変わってくるんだろうな。
「騎士団の代わりに、自警団てのがあるんだよな」
「ええ、騎士団のように王様や統治貴族の命令がなくても、各自の判断で活動できるし、現場でも迅速な対応を行えるから優秀ですよ」
「ただ、そうなると活動範囲が狭まるので、街の外が少しおざなりなのです」
ほうほう、三人の話を聞くと分かりやすくていいな。
とくに、ガナンドさんは商人で、キレスウェイン公国にいることが多いのか、色々と詳しく話してくれた。
「統治が各自治体任せだから、自警団の他にギルドもあって、冒険者が街の外のことに対処してるから、安全なことは安全なんですよ」
「ギルドの仕事を修行にするのもいいかもしれんな。モンスター相手に実践をはじめてみるか」
そう言って、ガナンドさんとオルトガ師匠はギルドの話をしてくれた。
ギルドかぁ、本当にゲームみたいな組織があるんだなぁ。
そんな話をしていると、汽笛が鳴りはじめた。
ガナンドさんが、大陸が見えたのだろうと言った。
新しい大陸、新しい国、新しく出会う人。
何が俺を待っているのだろう。
「サクジロウ、なんか楽しそうなのです!」
「あぁ、楽しみだ!」
「プヒーッ!」
「アレキサンダーもやる気満々なのです」
さぁ、新しい旅のはじまりだ。
つい隣の国の情報出ました。
この国の話は、仕事します。




